Treasure Chest −タカラバコ−7コメント

1 Lu‐Lu id:Ap8BKau0

2016-11-10(木) 01:10:03 [削除依頼]
 
 
 
永久に忘れたくないモノは

タカラバコの中で眠らせて

優しく優しく 抱きしめる

いつか神様が目覚めたとき

どうかそれが 永遠を示す

道しるべになりますように
 
 
 
  • 2 Lu‐Lu id:Ap8BKau0

    2016-11-10(木) 01:18:08 [削除依頼]
    ○はじめまして○

    Lu‐Lu(ルル)です。
    優しく、切なく、温かい、そんなお話をいくつか書いていけたらいいなと思っております。

    短編集となります。どうぞよろしくお願いします。
  • 3 Lu‐Lu id:eKf0W.P1

    2016-11-10(木) 17:03:49 [削除依頼]


     その日は、いつも通りの日でした。

     わたしのよく知る、何の変哲もない、暖かい日差しが街いっぱいに降り注ぐ優しさに溢れた日。木漏れ日はきらきらと輝いて、太陽の光で反射した湖面は七色に彩られ、街を行き交う人々は老若男女問わずみんな笑顔に包まれています。ちょっと変わったことと言えば、今日から十二の月が始まったということぐらいでしょうか。それ以外には何の変わりようもありません。今日もとっても暖かいです。絶好のお洗濯日和です。

    「すてきな街だね。ここはとても暖かい」

     その時でした。まるで鈴のような、そんな透き通った声がわたしの隣から聞こえてきたものだから、蝶がゆらりと飛んで後を追いかけるかのようにわたしはゆっくりと振り返ります。初めて聞く声でした。
     真っ白い男の子でした。頭のてっぺんから足のつま先まで、嘘偽りなく、本当の本当に真っ白な色をしていました。真っ白な男の子が持つ白銀色の髪の毛は艶めいていて、それでいてしっとりとしています。木漏れ日のような、湖面の反射ような輝きとは違って、わたしにはきっと触れることさえ許されない、そんな輝きがありました。初めて見るお顔でしたので、きっとこの街に住んではいないのでしょう。隣街から来たのでしょうか。それとも遥か彼方、はるばると海を越えてこの街へとやって来たのでしょうか。わたしには検討すらつきませんでした。

    「ふふ、そうでしょう? ここは春の街として、みんなから愛されているんです」

     そう言ってわたしは微笑むと、男の子は「そうなんだ。羨ましいな」と呟いて、ほんの少しだけ寂しそうに笑いました。その表情は、わたしが一度でも瞬きをしてしまえば跡形もなく消えてなくなってしまいそうなほどでした。

    「……あの、その首に巻いているのは、何ですか?」
    「ん、ああ、これ? これはね、マフラーっていうんだ」
    「まふらあ、ですか? 初めて聞きました」

     はて、と首を傾げると、男の子は首元のまふらあを弄りながら、「そうだろうね」と答えて、また笑いました。その笑顔は、先ほどの寂しそうなものとは打って変わって、少しだけ、ほんの少しだけ、小さな温もりがありました。
  • 4 Lu‐Lu id:Ap8BKau0

    2016-11-10(木) 22:22:25 [削除依頼]
     けれど、それも束の間。男の子はまた、温もりの存在していた表情にふと陰を忍ばせると、世界を遮断するように二つの瞼を閉じました。真っ白い男の子の、真っ白いまふらあが揺れています。まるでわたしを誘(いざな)うように、ゆらり、ゆらりと揺れているのです。それを目にしているだけで、何だかとても不思議な気持ちになりました。

    「ぼくはきっと、この街の人たちに忌み嫌われてしまうね」

     男の子の言葉にわたしは何も言いませんでした。何となくでしたが、そういった類の言葉を彼は今から言うんだろうなあと、ある程度予想のほどがついていたからです。
     そしてわたしは男の子に何も言わない代わりに、彼の両手を自分の手でそうっと包み込んであげました。男の子の手はとてもひんやりとしていました。わたしの体温が男の子の体温にゆっくりゆっくり浸透していきます。体温が重なる瞬間を、わたしは初めて実感しました。

    「世界があなたを嫌っても、わたしはあなたを絶対に嫌いにはなりません」
    「……どうしてそう言い切れるのか、訊いてみてもいいかな」
    「友だちだからです」

     男の子のグレー色の瞳が揺らめきます。

    「初めて言葉を交わした瞬間――いいえ、こうして初めて目を合わせた瞬間から、わたしたちはもう友だちでしょう? 友だちを嫌いになる理由なんてありません」

     ぎゅっと、冷たくひんやりとした名前も知らない真っ白な男の子の手をわたしは強く握りしめました。名前なら、これから知っていけば良いのです。なぜなら、わたしたちはもう友だちなんですから。

    「……そうだね。ぼくたちは友だちだ。じゃあ、友だちのきみにこれをあげる」

     今日一番の笑顔をわたしに見せてくれた彼はそう言うと、自分の首元に巻いていたそれに手を伸ばし、するりするりと解いていきます。そして一切の無駄な動きがないしなやかな動作で、男の子はまふらあをわたしの首にへと巻いてくれました。

    「くれるの?」
    「うん。ぼくにはもう必要なくなったから。友だちのきみにあげる。きっと役に立つよ」

     わたしはまふらあに視線を落としました。男の子の温もりがまだしっかりと残っているまふらあは、春の陽気のような暖かさとは別の温かさがありました。
  • 5 Lu‐Lu id:Ap8BKau0

    2016-11-10(木) 22:52:32 [削除依頼]
     先ほどまで澄み切った青い空が広がっていたはずの上空には、いつの間にやら厚い鉛色の雲がその全面を覆っていました。年中暖かい春の陽気に包まれているこの街にとっては、それは初めて見る光景でした。けれども不思議と怖くはありませんでした。

    「ありがとう。きっとぼくは、どこかの誰かの優しい記憶や思い出のひと欠片の中に、ほんの少しでも残れることをずっとずっと望んでいたんだと思う」

     男の子の頬が、まつ毛が、目尻が、しっとりと濡れていました。男の子は泣いていたのです。男の子の涙を見るのは、わたしはそれが初めてでした。とても綺麗でした。
     綺麗で、儚くて、消えてしまいそうで、わたしは思わず彼に向かって手を、腕を伸ばします。


     そして、それが叶うことはありませんでした。


    **


     厚く覆われた鉛色の雲から、ゆらりゆらりと無数にも及ぶ白銀の綿が舞い降りてきます。
     口から零れる吐息は白く、その何もかもが初めてみる光景のものばかりでした。


     その日は、いつも通りの日でした。

     けれど、ほんの少しだけ特別に変わった日。


     真っ白い小さな無数の綿は、今も上空から、しんしんと舞い降り続けています。


    # 白の少年
  • 6 Lu‐Lu id:DzlqNFm/

    2016-11-11(金) 13:10:31 [削除依頼]


     青い猫が目の前を通り過ぎると、願いを叶えてくれるんだって。

    「何、それ」
    「今すごい噂になってる」
    「ふうん」
    「うちの学校にも目撃した人が何人かいるらしいけど、全員叶ってるって」
    「へえ」
    「興味なさそう」
    「別に。ただ、黒い猫の話みたいだなと思って」
    「そうね。でも青い猫は黒い猫と違って、禍をもたらしたりはしないから」

     箸の先端で摘んでいた卵焼きが落下した。
     現を抜かしているなと思った。


    **
  • 7 Lu‐Lu id:DzlqNFm/

    2016-11-11(金) 17:59:31 [削除依頼]
     お線香の匂いが目に沁みた。ぬるりと歪な渦を巻きながら立ち上る煙をただぼんやりと眺めていると、どうにも精神(なかみ)を冷たいコンクリートの上へ置き忘れてきてしまったような気分になる。自分という概念が砂時計の砂のように形を留めることが出来なくなるのも最早時間の問題だと悟った。
     遺影の中で微笑む母に人間味なんてものはなく、抜け落ちた亡骸の残骸を私に思い浮かばせた。
    「きみはばかだな」
     青い猫が喋る。生やしたひげをヒクヒクとひくつかせ、挑発しているような欠伸をくあっと一発促すとしなやかな猫背の背を自分の舌で器用に舐.め始めた。どうしてだか無性に腹が立つ。怒り任せにひげを引っこ抜いてしまいたかった。
    「あんたに何が分かるのよ」
     カラカラに乾いた声を絞り出してやっとの思いで音にすれば青い猫は耳をぴんと立たせてこちらを向いた。私を捉える二つの瞳はさながら水晶のようだ。全くもってどうかしている。ただ静かにじっとこちらを見詰める水晶の瞳は、私の何もかもを見透かしているのだと今更ながらに気付いてしまった。
    「わかるさ。にんげんなんてよくのかたまりみたいなものだからね。きみもそのひとりだったというわけさ」
     ガラス張りで出来た私の心臓に、みしりと亀裂の走る音がした。知っていた。だから知らないフリをした。――私は、結局。
    「……願いを叶えてくれるんでしょう」
     青い猫は私に心底興味がないのか前足で顔を洗っている。私の言葉にピタリと動きを止めると、青い猫は前足を揃えてから尻尾を右に左にくねらせた。
    「夢なら、覚めて」
     

    「やっぱりきみはばかだな。それをいうなら『ゆめでなくても』、だろうに」


     青い猫が私の前を通り過ぎる。その美しいブルーの毛並みを靡(なび)かせながら、尻尾を揺らしながら。――私の記憶はそこで堕落した。


    **


     目が覚めるとリビングにいた。起き上がってみるとぼうっとして変な気分になる。何だか夢を見ていたような気もするし、見ていないような気もするし。あやふやでよく覚えていない。
     ぐるりと辺りを見渡すと、やっぱりそこは家のリビングだった。時刻は夜の十八時過ぎ。着ている制服はしわくちゃで、鞄は無残に床の上に置かれていることから学校から帰ってきてそのまま眠ってしまったのだろう。ふう、と一つ息を吐いた。
    「洗濯物取り込まなきゃ。あと夕飯の準備」
     リビングに若干漂っていたお線香の匂いが、何故だか妙に私を急かしていた。


    # 青い猫の話
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