背徳Dystopia.13コメント

1 夜未 id:PemW0d9/

2016-08-27(土) 12:10:14 [削除依頼]
 
 
I drowned by love, and I die in love.
 
 
 
 
  • 2 夜未 id:PemW0d9/

    2016-08-27(土) 12:47:04 [削除依頼]
     
     
     
    ●I drowned by love, and I die in love.
     
     
     
     
    ぞくぞくする。
    どうしようもなくぞくぞくしている。

    彼の冷たい指先が私の髪に触れる度、甘美な痺れが神経を通って脳を刺激しているようだった。


    「ボクがいないと生きていけないきみは、本当の本当にダメな子だなあ」


    くつりくつりと喉を鳴らして彼が笑う。彼の吐息に支配されると、考えることを止めたくなる。

    彼の冷え切った手の平により、直に塞がれた私の視界は底なしの闇へと続いているように感じられた。

    静寂が蟠る部屋の中では、私と彼の唇から漏れる湿っぽい息遣いがやけに鮮明に反響していた。


    私に溺れる彼。彼に溺れる私。


    「ああ、きみとこうしている時間が堪らなく愛おしく感じるよ」


    私に触れる冷たい手。

    機械的になぞる冷たい指先。

    零れ落ちるのは意味のなさない無機質な言葉だけ。


    溢れんばかりの鎮痛な愛の中で、死にゆきたいと願ったのは、だれ?
  • 3 夜未 id:PemW0d9/

    2016-08-27(土) 13:28:20 [削除依頼]
     
     
     
    ●Confidential×Confidential...
     
     
     
     
    ジャラリと虚しい金属音が耳に入る。
    枷によりきつくきつく縛られていた手首は、彼の望む色へと変貌を遂げていた。

    それを目の当たりにすると、彼は真底嬉しそうに、二つの目をゆらりと細める。


    「痛そう。……ね、痛い?」


    そう言葉にしてからペロリと上唇をなぞる赤い舌。霞む視界に水膜が浮かぶ。

    骨の浮き上がる朱く染め上げられた私の手首を、優しい手付きで掴み取る。

    彼の手が触れた途端、反応するかのようにそこだけがじんと熱を帯びた。


    私の頬をゆっくりと伝ったのは、何だったのか。


    動かなくなった私をもう一度目にした彼は、再び嬉しそうにすると口元を緩めた。

    彼の唇が唾液で妖しく光る。

    獲物を捕らえたかのような、そんな瞳をしていた。


    「美味しそう」


    次の瞬間、彼は掴んでいた私の手首を自分の方へと引き寄せると、躊躇いなく私の手首に噛み付いた。


    「……っ」


    痛みに顔が歪む。

    彼は噛み付いたままの状態でチラリと私の方へ目配せをしてきて。視線が絡み合う。

    その光景にまた顔が歪むと、彼は更に愉しそうにしながら手首に歯を立ててきた。


    痛い。痛い。痛い。痛いのに。

    ……イヤじゃ、ないの。

     
     
    「美味しいね。非常食」
     
     
     
     
  • 4 夜未 id:PemW0d9/

    2016-08-27(土) 14:53:01 [削除依頼]

     
     
    ●Jealousy is hidden.
     
     
     
     
    シルクのカーテンの隙間から射し込む月明かりが暗く埃っぽい書斎を僅かに照らす。

    気が付けば、私の目線はいつの間にやら自分の足の爪先にへと落ちていて。

    幾つもの小さな塔となって書斎の至る所に積み上げられる質の良さそうな本達が、視界に映り込んだ。


    背後から感じる鋭利な視線。

    それは容赦なく背中に突き刺さり、まるで私の身体を貫通してしまいそうなほど鋭くて。

    冷や汗が額に浮かぶ。動く心臓の音は乾いていた。


    「あいしてないよ」


    彼の口から紡がれたのは、熱も優しさもない言葉。


    「随分と思い上がってるんだね?」


    私の体から徐々に熱が逃げていく。下がる、温度。


    「ははっ。笑っちゃうなあ」

    「……っ」


    背筋が凍るというのはこういうことなのだと、多分彼と会う前の私なら決して知らなかったこと。

    こつり。こつり。一歩ずつ、丁寧に、彼は私にへと距離を詰めてくる。心臓が、はち切れそうだ。


    「ねえ。……こっち見なよ」


    私の背中に彼の熱がピタリと合わさった。

    彼の口から発せられる甘い吐息とその声が、後ろから私の鼓膜を目一杯に揺るがす。


    目眩が、した。
  • 5 夜未 id:PemW0d9/

    2016-08-27(土) 15:22:11 [削除依頼]
     
     
     
    〇Jealousy is hidden. ≪アーシュ≫
     
     
     
     
    月光が彼女の腰まである長い黒髪を艶めかせる。

    彼女の目線はいつまで経ってもボクの方には向けられない。分かっていたことだけど。

    少し手を伸ばせば触れられる距離にいるのに、伸ばさない、触れない。この快感が堪らなかった。


    「ねえ。……こっち見なよ」


    彼女のすぐ背後に立って、彼女の耳元に口を寄せてはそう呟いた。

    そうすれば彼女は分かりやすく反応を示すようにしてビクリと肩を揺らす。

    思わず笑みが零れた。


    こんなボクを見て周りの奴はどう思うだろうか。

    神経を患っていると思うだろうか。狂っているとでも思うだろうか。


    どちらにせよ、ボクに相応しい発言であることは確かだ。


    「聞いてるの? こっち見ろって言ってんだけど」


    少しトーンを低くしてそう言えば、やっぱり彼女は体を震わせた。

    恐る恐る持ち上げられる彼女の顔。そしてようやく絡み合う視線。

    目尻に溜まっていた水はもう少しすれば溢れてしまいそうだった。


    ―――本当に、堪らないな。

     
     
    「誰が他の男と喋って良いなんて言った?」

    「……いって、ません」

    「そうだね、言ってないね。でもきみは喋った」

    「……っ」

     
     
    怯えているのかな。そんなに体を震わせちゃって。


    「約束を平気で破るような子、ボクは嫌いだ」


    ……ああ、泣いちゃったよ。どうして泣くの?

     
     
    「だから、あいしてないよ」

     
     
    もう一度、熱も優しさもない言葉を口にして。

    傷付いたきみの唇へと噛み付いた。

     
    「リラが喋っていい相手は、誰だっけ?」

    「……アーシュ、だけ、です」

     
     
    (あいしてないけど、ボクに怯えるきみはどうしようもなく可愛いね)
  • 6 夜未 id:PemW0d9/

    2016-08-27(土) 21:08:26 [削除依頼]
     
     
     
    ●A doll.
     
     
     
     
    ―――チリン、と彼の帰宅を知らせるベルが鳴る。

    書斎の整理から顔を上げ、汚れ防止のためのエプロンを外してから彼の元へと駆け寄った。


    「お、おかえりなさいっ」


    私の駆け寄る足音とその発せられた声に、彼は上等なネクタイを緩めながら「ああ」と声にする。

    そうして私を一瞥すると、彼――アーシュは美しくにこりと微笑んだ。

    そんな一連の動作に思わず息を呑む。


    アーシュは、私が出会ってきた中の人で一番綺麗な顔立ちをしていた。


    「へえ。それ、ちゃんと着てくれているんだ?」


    アーシュはこてんと首を傾げた。

    アーシュの目線の先にあるのは、昨夜彼がプレゼントしてくれたワンピースを身に付けた私で。

    上品なライトブルー色の生地に、しつこ過ぎない控えめなレースが施されたワンピース。


    余りにも見られるものだから頬が勝手に熱を帯びて体温が上昇する。

    恥ずかしくなって俯いた。けれど、それも束の間。あっという間に熱は冷める。


    アーシュはこうしてよく色んな種類の洋服を私に与えてくれる。

    けれど彼にとってはきっと深い意味なんてない。

    私がそう考えるのには、この後紡がれる毎度お馴染みの彼の言葉の中に充分に意味が通っていた。


    「リラに似合うと思ったんだ。可愛いよ、凄く」


    アーシュの綺麗な二つの瞳がキュッと細められる。

    ―――ああ、ほうら、いつもの“目”だ。

    私は今日も、都合の良いあなただけの着せ替え人形でしかない。
  • 7 夜未 id:DIbW1mD0

    2016-08-28(日) 21:28:48 [削除依頼]
     
     
     
    ●Complacence.
     
     
     
     
    薫り高い珈琲豆の匂いが私の鼻腔を埋め尽くす。
    アーシュお気に入りのブランド豆。彼はいつもこの珈琲豆を使ったコーヒーを飲んでいる。

    私なんかでは値段の付けようがない、どこかのブランド品であるティーカップと共に。


    コーヒーを淹れたティーカップを持って、彼のいる書斎の部屋の前で立ち止まった。

    二度のノックを済ませて私はそっと扉を開ける。


    「失礼します。コーヒーを淹れました―――」

    「―――ああ、そうだ。ああ。いや、その件は……」


    そう言いながら部屋の中へと視線を移すと、その真正面には目的主であるアーシュの姿が目に入った。

    けれど、そんな彼は壁一面ガラス張りになっている窓に顔を向けながら、自分の耳に黒色のスマートフォンを充てて何かを喋っていて。


    多分、というか絶対に、仕事関係のことだと思う。

    彼が何の仕事をしているのか、このお屋敷の留守番係である私には何一つ分からない。

    それでも、仕事から帰ってきても尚、部屋で書類とにらめっこしているアーシュを見れば、仕事に忠実で熱心なのが私でもよく分かった。


    だから私は、こうして彼の為にコーヒーを淹れる。
  • 8 夜未 id:DIbW1mD0

    2016-08-28(日) 22:04:42 [削除依頼]


    仕事をしている彼の姿を見るのが好きだ。
    アーシュの真剣な表情は、いつ見てもカッコいい。

    ティーカップを落とさないように、両手で支えながら扉の前で彼の背中を見つめる。

    それからしばらくした時だった。ふと、アーシュの声のトーンが低くなったような気がして。

    確信はないけれど、やっぱり彼の声には少しトゲがあるように感じられた。


    「……ああ、早急に頼む。失敗だけはするなよ。……ああ、それじゃ」


    ―――ピッ


    話し終えたらしいアーシュは耳からスマートフォンを離すと、部屋に小さな機械音が一瞬だけ響いた。

    するとアーシュはそのスマートフォンを乱暴にソファーへと投げ捨てる。

    その反動で、アーシュのスマートフォンはソファーの上を小さく跳ねながら転がった。


    「はー……。ったく、どいつもこいつも本当に使い物にならない」


    電話中の話し声とは180°ガラリと変わって、普段のアーシュの声に戻る。

    アーシュは髪をかき上げながらぶつくさと一通り文句を垂れ流すと、ようやく後ろを振り向いた。

    アーシュの瞳が私の姿を捉えた瞬間、ドキリと心臓が脈を打つ。カップを持つ指先は震えていた。


    「ああ、いたんだ?」

    「……っ、はい」

    「何か用?」

    「……コーヒー、を」


    ぎこちなく言葉を紡げば、彼はもう一度覇気の無い声で「ああ」と口にした。
  • 9 夜未 id:DIbW1mD0

    2016-08-28(日) 22:25:26 [削除依頼]


    私と彼の間に流れるのは鉛のように重たい空気。
    完全に、アーシュにコーヒーを手渡すタイミングを逃してしまった。

    一度タイミングを逃してしまうと、後から襲ってくるのは自己嫌悪ばかり。


    もしかしたら迷惑だったかもしれない。コーヒーなんて飲みたくなかったかもしれない。

    そんなことばかりがぐるぐると頭の中で意味もなく渦を巻いて、一刻も早くここから立ち去りたくなった。

    何やってるんだろう、私。


    「あ、の。すみません。……コーヒー、冷めてしまったので、捨ててきます」


    震える声を精一杯に押さえ付けて、カップを持つ手に力を込める。

    部屋から出ようと彼に背中を向けたその時だった。
     
     
     
    「―――リラ。おいで」


    いつになく優しい声で、そんなことを言うものだから。ゆらりと動く私の顔。

    私の視線の先には、仕事用のデスクに寄りかかって微笑むアーシュがいた。


    ふらりふらりと時折もつれながら、彼の元へと迷いなく辿る私の足は正直で。

    気が付けば、私はいつの間にやらアーシュの前に佇んでいた。
  • 10 夜未 id:DIbW1mD0

    2016-08-28(日) 22:49:28 [削除依頼]
     
     
     
    「ボクの為に淹れてくれたんだ?」


    アーシュの声が私の鼓膜を直に揺らす。

    甘ったるい痺れが全身を駆け巡っているような気分になりながら、私はこくりと頷いて見せた。


    ふ、と小さな笑いを口から漏らしたアーシュ。

    それから、とても自然な動きで私の手からティーカップを奪い取ると中の液体を口内へと流し込んだ。

    そんな一連の動作をどこか他人事のような気持ちで眺めていたら、不意に彼の影が私の顔に覆いかぶさって。


    ―――え、と声を漏らすよりも前に、アーシュの唇が私の唇を塞いでいた。


    「んっ……」


    突然のことに体が硬直する。
    私の口内に、彼から次々に流し込まれる苦い液体。

    全てを流し終えると、アーシュは私の上唇をペロリと自分の舌でなぞった。

     
    「たまには苦くないコーヒーもいいよね」

     
    硬直したままの私を見下ろしながら、アーシュはそう言って妖しく笑う。


    ―――私にとっては苦いのに。


    そんなことはもちろん言えず、代わりに私は彼の服をギュッと握り締めることしか出来なかった。
  • 11 夜未 id:PAoQlQy0

    2016-08-30(火) 19:39:44 [削除依頼]

    〇作品紹介
     
     
    >>I drowned by love, and I die in love.

    彼と彼女の日常編。【その1】
    この話を見ただけで多分お分かり頂けたかと思いますが、彼の方がかなりのクセ者です(笑)
    こういう雰囲気の主従関係が堪らなく好きです。←


    >>Confidential×Confidential...

    彼と彼女の日常編。【その2】
    彼の性格が『かなり』垣間見えてしまう話。
    サディスティックよりもタチが悪く感じます(笑)


    >>Jealousy is hidden.

    彼と彼女の日常編。【その3】
    この後に続く彼視点の >>Jealousy is hidden. に持っていくための引き立て話。
    これはまだ彼女視点となっています。


    >>Jealousy is hidden. ≪アーシュ≫

    彼女視点である前話の続きの話。彼視点です。
    ここにきてようやく2人の名前が登場(笑)
    基本的にはアーシュ×リラの話を載せていきます。
    内容はタイトル通り。嫉妬を隠すために必死(?)のアーシュです。
    こんな奴でもリラのことになると我を忘れます。彼なりにリラが大切なんだと思います。……多分。←


    >>A doll.

    彼と彼女の日常編。【その4】
    私自身この話は番外編的な感覚で書いてました。
    楽しかったです( ˘ω˘ )←
    ただこの4話目はリラが可哀想なだけでした……。申しわけない。


    >>Complacence.

    彼と彼女の日常編。【その5】
    思いの外長い話になってしまった5話目。2レスで終わらせるつもりが2レスもオーバー。
    ここら辺からは2人の中に少しずつ踏み込んでいきます。
    アーシュの仕事姿とか結局重要な感じのこと書いてますがただ単にキスが書きたかっただk(ゲフンゲフン
    あとアーシュの仕事姿を書くの凄い楽しいです。←
    2人の出会い話や過去編の話、詳しいプロフィールなどは追々書いていきます。
  • 12 夜未 id:PAoQlQy0

    2016-08-30(火) 22:48:13 [削除依頼]
     
     
     
    ●真夜中Syndrome.
     
     
     
     
    全身に通う神経がまるで感電しているかのような感覚に陥る。

    彼の体温が余りにも近くで私を包むから、さっきから眩暈ばかりが酷くなる。

    それは、アーシュと二人で夕食を済ませた後に彼から発せられた一言が全ての始まりだった。


    『今日は一緒に寝ようか』


    そう言って笑うアーシュの表情は妖艶としていて、思わず目を逸らしたくなった。

    多分、私はアーシュのその言葉に対して何かを言いかけていたはずで。―――それでも。

     
     
    『リアに拒否権なんて、ないよね?』

     
     
    私の言葉を遮った彼の声がいつになく冷たくて、私は身を固くした。

    言いかけていたはずの言葉は引き戻されるかの如くするりと喉の奥へ落ちてゆく。


    私を射止める彼の瞳が、少しだけ怖かった。
  • 13 夜未 id:PAoQlQy0

    2016-08-30(火) 23:20:13 [削除依頼]


    静寂の蟠る寝室。
    壁時計の指針の進む音が空気に響く。

    それと合わさるように私の心臓も随分と早鐘を打っていて、身体中を駆け巡る血液が熱く沸騰しているかのようだった。

    私と彼の距離の差は僅か15cmほど。私の背後でアーシュが寝返ったようで、ベッドのスプリングがぎしりと音を鳴らした。


    ―――と、その時だった。

    背骨がなぞられたような違和感に全身が粟立って私は思わず後ろを振り向く。

    視線の先には、人差し指をわざとチラつかせながら妖しく口角を上げるアーシュの姿が目に入った。


    「やっとこっち向いた」


    いつまでそっちを向いてる気?――取って付けたような彼の言葉に、頬が熱くなったのが分かる。

    そして、何も言えなくなるのだ。


    「リラには拒否権ないって言ったよね?」

    「……は、い」

    「いい子」


    アーシュはふ、と目を細めると、チラつかせていた人差し指に私の髪の毛を巻き付ける。

    しばらくそれで弄ぶと、また妖しく笑みを零してから自分の口元へと引き寄せ口付けた。

    それを目の当たりにした私は、ぐっ、と胸の奥で何かが突っかかったような気分になる。


    私は確信していた。

    きっと今夜、彼は寝かせてはくれない。
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