きっと、眠りにつくでしょう3コメント

1 ハク. id:Q25FTw1.

2016-06-16(木) 01:18:43 [削除依頼]


act◇01.『夢を喰らいて、眠りましょう』
act◇02.『ゆめと、うつつ、と』
act◇03.『瞼を閉じればすぐそこに』
act◇04.『あさき、ゆめみし』
act◇05.『徒夢誘い、たれそかれ』
act◇06.『彼と少女を繋ぐもの』
act◇07.『きっと、眠りにつくでしょう』
  • 2 ハク. id:Q25FTw1.

    2016-06-16(木) 01:23:45 [削除依頼]
     
     
     
    彼は私の、『夢』を食べて生きている。
     
     
     
  • 3 ハク. id:Q25FTw1.

    2016-06-16(木) 02:47:03 [削除依頼]


    act◇01.
    『夢を喰らいて、眠りましょう』
     
     
     
     
     
     
    「杏奈」
    .
    .
    彼の声が聞こえた。遠くはないけれど決して近くもない。まるで曖昧な境界線上のみにだけ存在しているような不明瞭な人だと、私は思った。神経が通っていないような、感覚の消え失せた自身の脚。今この場で立っていられることが不思議でならない。辺り一面、見渡す限り真っ白だった。何も無い。上も下も右も左も区別がつかないほどに目の前のその光景は、ただだだ果てしなく真っ白なだけだった。
    「杏奈」
    彼の声が聞こえる。低すぎない、男の人特有の、非常に耳当たりに良いこの音程と音域。この声を聞くと私は必ずと言っていいほど心のどこかしらで安堵というものを覚える。それは、彼の声を初めて聞いた時でさえもそうだった。一体彼の何が私にそうさせているのかは残念ながら分かっていない。しかしながら、今の私がこれだけは確信を持って言えること。私が、彼を嫌いではないということだった。
    「こんにちは、ザックさん。お元気そうですね」
    背後に顔だけ振り向かせ、わざとらしく笑いながら彼にそう言えば、ザックさんは口をへの字に曲げながらその矯正な顔を歪めた。眉間に皺を寄せている。肩まで伸びたセミロングの黒い髪。鼻筋はシュッと通っていて、唇は綺麗な形をかたどっている。彼の身を飾っている服装は、スーツではなく、黒色の礼服のようなものだった。首元の真っ黒なネクタイが、ザックさんを更に凛々しく際立たせている。
    「ああ。君の夢は不味くないからな」
    ザックさんの言葉に、私は両肩を竦めて口を開く。
    「相変わらずですね」
    本当に、ザックさんてば薄情な人。私は悪態をつくようにそう言葉を付け足してみた。すると予想通りザックさんの眉間の皺は追い討ちをかけるかの如くさらに深くなっていく。その既に見慣れてしまった目の前の光景に、私は再び肩を竦めた。
    「ごめんなさい。半分はウソ」
    「……杏奈。君こそ薄情じゃあないか?」
    「これが私なので。大丈夫ですよ、嫌だったらとっく走って逃げてます」
    ザックさんは眉をぴくりと動かした。……ああ、何だかまた眠くなってきてしまった。うっかり瞼が落ちそうになる。これもきっと、ザックさんのせいだ。
    「走って逃げた所で、それ以上の何かを得ることはできないけどな」
    「揚げ足取るのやめてくれません? 大人気ない」
    そう言いながらも重たい瞼を必死に擦っては何度も意識を集中させる。ザックさんは半ば呆れながらため息を一つだけ零した。
    「君も大概、な」
    「へへ。……それじゃあ、また後で」


    act◇01.
    『夢を喰らいて、眠りましょう』――了
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