1192年、朝が来て。

小説投稿投稿掲示板より。


1    真理  [id : I/jR7UP0] [2016-07-25(月) 20:41:41] 削除依頼

え〜短編とゆーことで、
不定期的に書いていこうと思います。
正直言って、私はひねくれた性格をしているので、ひねくれた話かかけません。
青春小説とか無理です。
爽やか〜なのも無理です。
読んでくれたら嬉しいです。

61 ☆イエイ☆  [id : ICJENNj0] [2016-08-13(土) 22:42:02] 削除依頼

すごいおもろい!
まりってよぶね!イエイてよんで!うちのスレもきてね☆ヨロ!

62 真理  [id : U2UAsVz.] [2016-08-14(日) 21:27:09] 削除依頼

>61
ありがとうございます。
はい、行きますよ。
よろしくです、イエイ!

63 真理  [id : yXQn3mk1] [2016-08-15(月) 18:53:59] 削除依頼

「えーと、だからどう言うこと?」
 あたしはあたしの手を引く与一に声を掛けた。
「かいつまんで話すと、僕ら、そして僕の目的は君なんだ。ここまでは良いよね。」
 あたしは与一の問い掛けに頷く。
「君は先の世からやって来た、所謂、君らの言葉でタイムトラベラーって奴だ。そうだろ?僕らの狙いはソレだ。数年前、僕らの占い師が予言してね、その先の世からやって来た姫君のことをーー」

64 真理  [id : yXQn3mk1] [2016-08-15(月) 19:11:18] 削除依頼

ー僕らの占い師が予言したのは、君のことだ。先の世からの異分子の君は、この時代の歴史を幾らか学んでいるだろう?つまり、これから起こることを知っている。そこが問題だ。これから貴族共が、君のその知識からの助言を得て力をつけられたら困る。でも君は一番最初に貴族の手に落ちてしまう。だから拐ったと言う訳さ。僕ら武士にとって貴族に力を付けられるってのは、反乱の余地がまた余計に無くなるってことだしね。今から君の協力を経て上手く立ち回って、力を付けたいって言うこともあるし。

65 真理  [id : yXQn3mk1] [2016-08-15(月) 20:40:24] 削除依頼

「以上の点から、君を拐いました。僕らに協力してくれる?」
 あたしは突然の問い掛けに少し戸惑いながら、口を開いた。
「あ、待って、じゃあ幾つか条件を出すから、あんたらがそれを飲んでくれたら協力する。」
「なんだい?」
「ひとつ。協力したら、あたしが元の時代に帰れるまで、飯と、家と、その他の生活を確保してくれ。ふたつ。あたしに害を加えるような行為または言動をしたら最期、貴族側に協力する。以上だ。」
 そう一息に言い終えると、あたしは口を閉じた。与一は、少し考え込むような神妙な顔をしていたが、パッと顔を上げた。
「いいよ、君の今言った条件をのもうではないか。て言うかもともとそう言うつもりだったし。」
 そう言うつもりだったなら何故考え込んだのだろう、とまあ思いつつ、ひとまず安心した。
「じゃあ行くよ、僕らのアジトへ。」
 いや、あの…アジトってこの時代もあったんですね、はい。
 それはそうと、お宅の占い師さんは随分な実力者ですね。だってあたしが未来から来たことや、あたしの時代の言葉ー例えばタイムトラベラーとかーまで分かるんだから。

66 真理  [id : Fen1GMH.] [2016-08-16(火) 09:38:51] 削除依頼

 今、私たちは山道を歩いている。あたしは普通の道を歩きたかったんだけど、関所を通るお金が惜しいとか言って、与一がこっちの道を選んだのだ。
「ねぇ、道を変えない?」
「僕さ、今お金が無いんだよな。君は持ってる?ねぇ推古さん?」
「あたしの名前は椎名鈴。貴族では無いのでお金はありません。」
 もう、しょうがないなぁ…なんてブツブツ言いながら、やっぱり与一はあたしの先の山道を歩いて行くのだった。

67 真理  [id : Fen1GMH.] [2016-08-16(火) 16:10:04] 削除依頼

「与一…さん?」
 そう言えば、と思いあたしは前を歩く与一に声を掛ける。
「はい?」
「あのあたしの所に始めに来た少年、あの子は誰ですか?」
 あぁ、玲のこと。与一は呟くと、話始めた。玲と、自分の生い立ちを。

68 真理  [id : Fen1GMH.] [2016-08-16(火) 16:20:41] 削除依頼

「僕らは、小さな農村に生まれた、ごく普通の農民の子だった。その頃村は豊かで、とても幸せに暮らしていた。」
 そこで与一は、一度口を閉じる。息を大きく吸って、そして幾分か辛そうにまた話始めた。

69 真理  [id : 8vOdX1k0] [2016-08-17(水) 20:13:28] 削除依頼

「ああ、そう言えば僕と玲は幼馴染みなんだ。知ってた?歳は違うけどね。僕は16、玲は14。君は?」
 唐突に訊かれて、私は慌てて答える。
「14。」
「じゃあ玲と同い年だ。」
「そうだな。」
「で、まあ、ある日その生活は壊されたって話だ。」
 与一は急に話をもとに戻した。いや、前置きくらいつけろよ。
「原因は、重い税だ。藤原って奴が摂政になってから、僕らの食べる分がなくなっちまうくらいに米をとられた。」
 ああ、似たような話を前に聴いたことがある。あたしは歴史の中の出来事としか思ってなかったけど、実際に話を聴くと、他人事だけど他人事じゃないように思えた。

70 真理  [id : IUc/P9K0] [2016-08-18(木) 10:25:37] 削除依頼

「僕の両親は村でも少し力を持っていたから、税が重くなってしばらくたった頃、都に行ったついでに税を減らすように役人に掛け合ってみる。そう言って都へ出かけたんだ。」
 でも、と与一は重々しく言った。
「両親は帰ってこなかった。」
 風の便りに聴けば、与一の両親はその場で首を刎ねられたと言う。与一は下を俯いて、低い声で言った。
「それから、僕らの村は税を納められなくなり、近隣の村への見せしめとして焼き討ちに遭った。夜中の奇襲だったから、遅くまで起きて話していた僕と玲しか助からなかった。それで、次の朝焼け野原になった村に座っていたところ、あの人に出会ったんだ。」
「あの人……?」
「近衛蝦夷だ。」
 近衛蝦夷? 蝦夷は東北地方の朝廷に従わない人々のことで、初代征夷大将軍、坂上田村麻呂に制圧されたはずではないのか。と言うかその人はあの蝦夷と関係があるのか。
「その人は、武士だった。武士と言うのは貴族の屋敷の警備に努めた人のことだが、近衛蝦夷はその仕事をこなしつつ、貴族の時代を終わらせるべく反乱を起こそうとしていた。」

71 真理  [id : IUc/P9K0] [2016-08-18(木) 20:43:30] 削除依頼

「蝦夷はその時、反乱の仲間集めをしていたんだ。僕らは彼の話を聴いて、直ぐ様、武士になることを決めた。僕らが、貴族に力を知らしめるいい機会だと思ったからね。」
 そこで、与一は私に目配せして、それから微笑んだ。
「まあ現実は、そんなに上手くは行かないんだけどね。実のところ、今、武士は貴族共の召使いさ。屋敷の警備をしてやって、金を貰う。まあ賃金はいいかな。僕らは結構、贅沢な暮らしを送ってるんだ。で、以上が僕らの生い立ちさ。ああ、あと今、玲と僕は別々の組織で動いている。僕は武士の本職で食ってるけど、玲の仕事は主に情報収集や誘拐だ。ほら玲ってすばしっこいだろ? だからだ。」
 与一は話終えると、大きく深呼吸をした。
「なんか、久しぶりに長く喋ったよ。」
「そうか。」
 与一は何もそれから、言わなかった。あたしは今の話を聴いて、まあ頑張りたまえと思った。あたしは知っている。貴族社会が終わりは、まだまだ先が長いって。

72 真理  [id : iMlu.lD1] [2016-08-19(金) 09:00:38] 削除依頼

「なぁ、なんか食べないかー?」
 すっかり疲れたあたしは与一に問いかける。
「今、何もないよ、本当に。」
「ふざけんな。」
 あたしは今、重い重い、十二単で歩いている。
「着物が重いんだけど。」
 て言うか、何故あたしは十二単などと言うクソ重い、しかも引きずるタイプの着物で山道を歩いているんだろう。
「もっと軽いのないのかよー」
「貴族家のお姫様の口振りとは思えないな……まあいいや、僕の着物があるけど、着る?」
 なんか嫌だ……思ったけど口にはしなかった。

73 真理  [id : hUjgohL/] [2016-08-21(日) 19:51:28] 削除依頼

 結局、あたしは与一の着物を借りた。明星には申し訳ないが、きっと高価なものであろう十二単は、そこに置き去りにさせてもらった。
「似合う似合う。いいじゃないか。」
 与一が満面の笑みで言う。何故かとても嬉しそうだ。
「そうですか。」
 あたしは冷めた調子で言ったけど、内心、満更でもなかった。何故かって、あたしは与一が少し、好きだからだ。いや、少し、少しだ。ほんの、少しだ。

74 真理  [id : tHt9hcK1] [2016-08-23(火) 17:00:39] 削除依頼

 さて、この山道だが、さっきからいっこうに終わる気配がない。与一はもうすぐ、もうすぐ、と連発しているのだが、もうすぐ終わる雰囲気ではないのだ。
「なあ、もしかして迷ったのかい?」
 あたしがそう訊くと与一はびくっと肩を震わせた。
「そんなこと、あるわけないだろ。」
 震える声で言うところから察すると、迷ったらしい。

75 真理  [id : tHt9hcK1] [2016-08-23(火) 20:48:13] 削除依頼

 迷うことは、あまりないのだが、与一について歩いていたから、迷ってしまった。
「可笑しいな……この僕が迷うとは、なん足る失態、いやはや……」
 与一はそう言って振り返り、前髪をかき上げつつ、白い歯を見せて笑った。あたしは不覚にも、少し格好いいと思ってしまった。なん足る失態、いやはや。

76 真理  [id : 8og/me/.] [2016-08-26(金) 22:15:05] 削除依頼

 迷ってから3、4時間で、辺りが暗くなってきた。
「今夜はここらで野宿ってことで手を打たないかい?」
 振り向き様に、与一が言った。
「……飯は。」
「大丈夫、僕の懐は今、ものすごく温かいんだ。町に行って買ってくるさ。」
「町?」
「ああ、そこさ。あの灯りのところだよ。あそこなら半里くらいしか無いだろうから、買って、また戻ってこれる。」
「いや、少し待て。」
「え?」
「よく考えてみろよ……」
 あたしは与一を見上げて言う。与一が随分と長身で、あたしが小さいものだから、いつも見上げっぱなしだ。
「町まであと半里なら、そこまで行けば良いじゃないか。懐だって温かいんだろう。宿をとって、泊まれば良いのだし。」
 全く、与一は何を考えているんだ。と、内心思いつつ、そう言った。すると彼は、拍子抜けしたような顔で、
「あぁ、それは考えてなかったよ……」
と呟いた。与一はアホかも知れない。

77 真理  [id : asv1Zd7/] [2016-08-27(土) 11:58:01] 削除依頼

 いくら懐が温かいと言っても、一人一部屋をとれるほど、お金が有るわけでは無かったらしい。あたしと与一は同じ部屋に泊まることになってしまった。
「酷いなぁ、鈴さん。」
 与一が言う。丁度、あたしが布団を敷いていたときだ。
「何が。」
「何故、そんなに布団を離して敷くのでしょうか?」
 かしこまって言う与一の言葉に、何が酷いのか、納得した。
「近づけたいの。気持ち悪いから嫌だよ。」
「僕が傷付いてるの、知っていたかい。」
 勿論。そう答えると与一はわざとらしく、陽気な調子で言った。
「飯でも食べに行こう。」

78 真理  [id : asv1Zd7/] [2016-08-27(土) 21:48:30] 削除依頼

 あたしはてっきり、飯なんて宿で食べるもんだと思っていたから、突然のことに少し慌てた。
「ほら、早く。」
 与一があたしを急かす。
「何を食べる?」
「なんでも。」
「じゃあ、鍋にしよう。」
 妙に上機嫌で与一が言う。
「鍋ってなんの?」
「猪肉の鍋。ここら辺は山も近いから、よく捕れるんだ。」
「なんか、詳しいんだな。」
 妙に詳しいと思って、つい、そう呟くと、与一は、
「ここには一度来たことがあるんだ。」
 一度来たことがあるのなら、ここまでの順路で何故迷うのだろう。分からないが、多分そう言う奴なのだろう。
 それから、あたしたちは適当な鍋屋に入って、猪肉の鍋を注文した。
 鍋は、山菜やなんかと一緒に、よく煮込まれた柔らかい肉が、とても美味しい。
「美味しい。」
 しみじみと言うあたしに与一が微笑む。
「美味しいよな。君の今まで食べていた物より、ずっと良いだろ?」
 それは、確かに美味しい。あの橘家の食事である、ナマコの乾物やら干した鹿肉なんかより、物凄く美味しい。変な味の漬け物も食べさせられたし、そもそも量が多すぎた。橘推古の身代わりだった頃、あたしが食っていた物、あれはなんだったのだろうか。
「うん、ずっと良いよ。美味しい。」
「それは良かった。」
 なんだか、幸せだった。この際、もうタイムスリップなんてどうでもいい気がしてきた。あたしはもう、この時代で生きていこう。そう思えた。

79 真理  [id : wF5jcxy/] [2016-08-28(日) 09:43:08] 削除依頼

 腹もいっぱいになったところで、少し余った時間で町を見物することにした。

80 真理  [id : wF5jcxy/] [2016-08-28(日) 21:10:44] 削除依頼

「あ、見て。」
 与一がいきなり指差した。
「何を?」
 あたしが顔をしかめて与一を見る。
「あの女の子……語り辺の子だよ。少し聴いていかない?」
「いいけど……」
 語り辺。確か、道端で物語を語る人だ。どんな話なのだろう。
 語り辺の人は、あたしより少し上くらいの少女だった。綺麗な人だ。あたしは残念ながら、お世辞にも綺麗とは言えない顔をしている。だから、なんだか彼女が羨ましかった。

81 真理  [id : wF5jcxy/] [2016-08-28(日) 22:44:09] 削除依頼

 澄んだ声で、彼女は語り出した。
「いまはむかし、竹取りの翁と言うものありけり……」
 竹取り物語。ふっと浮かんだその言葉が、とてつも無く懐かしく感じて、国語の頼りない萩野先生を思い出した。そうしたら急に、涙が、頬を伝った。
「どうしたんだい?」
 与一が少し驚いたように、こっちを見た。
「……いや。思い出したんだ。」
「何を?」
「あたしがいたところ。」
 訳も無く悲しくなって、語り辺の彼女の声の中、涙は拭っても拭っても溢た。それを見て、与一があたしの手を握った。温かくて、それでまた、涙が溢れた。

82 真理  [id : tMtlQkc0] [2016-08-29(月) 21:39:43] 削除依頼

* * *
 かぐや姫は、月に帰った。鈴さんは、先の世に帰るのだろうか。僕は、その時何を思うんだろう。その時、涙は、今、隣にいる彼女のように、頬を伝って地に落ちていくのだろうか。僕は、彼女とどうなりたいのだろうか。誰かに僕の気持ちを決めてくれないだろうか。僕はしがない平の武士。誰かの指示を仰いで初めて、僕は僕の力を発揮できる。僕と言う人間は、人がいて初めて成り立つものなんだ。大切なことは、人に決めてもらう。そんな生き方をしていたら、僕は鈴さんが好きだと言うこの気持ちすら、それが本当に正しいのかを人に決めてもらわなければ分からない。

83 真理  [id : b7/NXE8.] [2016-08-31(水) 17:14:06] 削除依頼

 与一の寝相は、本当にひどくて、あたしが部屋の端に敷いて、出来るだけ離した布団の近くまで転がって来ていた。夜の間に、大移動をしたようだ。それから、彼は大の字になって寝ていた。
「おい、馬鹿与一。起きろ。」
 朝、そういってあたしが肩を揺さぶっても、与一は起きなかった。
 仕方ないからあたしは言う。与一の荷物から出てきた謎の鉄板と、謎の木の棒を打ち鳴らして。
「おい、与一!起きろこの……!!」
 言葉の終わりの方は、あたし自信にもよく聴こえなかった。鉄板が鳴り響く音が大きすぎたからだ。
「え、何?火事!?」
 その音で与一が飛び起きる。
「やっと起きたか。」
 あたしは手を止め、辺りはやっと、静かになる。

84 真理  [id : b7/NXE8.] [2016-08-31(水) 19:00:01] 削除依頼

「全く、何かと思ったよ。」
 宿で出された朝食を頬張りながら、くぐもった声で与一が言う。この宿、夕食は出さなかったくせして、こんなすこぶる不味い朝食は出すらしい。
「鈴さん。」
「何。」
「不味いよね。」
「ああ。」
「ねえ、この白いの何だろう。」
「……え?」
 あたしは与一が汁物の椀から、箸でつまみあげたものに絶句した。白くて、弾力がありそうで、妙な艶があった。
「食べてみよう。」
「あ、馬鹿!」
 言ったときには既に時遅し、与一はそれを口に放り込む。
「うぇ、不味いよ、これ。噛むとなんかドロッとした物が出てきて、ものすごく生臭い。外側は噛みきれないくらい弾力があるし。」
 顔をしかめてそれを噛む与一を前に、あたしは残りの朝食(と言ってもほとんど食べてしまったが)にもう絶対、食べないことにした。
 不味い、不味いと連発して大量の水を飲む与一に、さっき食べたものは恐らくナメクジだと言うのは気が引けた。

85 真理  [id : 4z3YhFB0] [2016-09-02(金) 21:49:08] 削除依頼

 さて、与一は何も気付かず、ナメクジ飯を平らげてしまったことはいいとして、あたしたちは町を出ることにした。
「結局あれは何だったんだろうね。」
 あれはナメクジです。のんびりと言う与一にそれを伝えるのは、厳しい現実過ぎるから、黙っておいた。
「僕は思うに、あの地域の沼とかでしかとれない、ナマコだと思うんだ。」
「へ、へぇ……」
 引きつった笑みを浮かべて、そう言うと、与一は、
「何なんだよ、その含みのある言い方。」
と呟いた。もしかして、もっと追求される……? なんて思ったけど、与一は何も言わないで、代わりに大きく伸びをした。あたしはそれに釣られて、欠伸をひとつした。天気は快晴、いい日、いい時代に来たと思って、与一の後に続く。

86 真理  [id : g5Nry4v.] [2016-09-10(土) 10:57:08] 削除依頼

 与一のアジトまで、あと幾日かかるのだろう。いい案配に焼けた鱒を食べながら、思った。かれこれ3日は移動しっぱなしだ。
 パチパチと、焚き火が音をたてる。林道の脇の河原で、あたしたちは昼食をとっているのだ。
「うん、美味しい。」
 あたしはそう呟いた。木洩れ日が綺麗で、今日は晴天だ。

87 真理  [id : 2/2Y1A.0] [2016-09-18(日) 22:51:21] 削除依頼

 尾行に気が付いたのは、あたしが与一に連れ立って歩き始めてから5日ほどたった頃だった。
「なぁ……」
「ん?なんだい鈴さん。」
「つけられてないか……」
「え、嘘だろ!?」
 確かに尾行……誰かの気配が後ろにちらつく。
 うーん、どうしようかなぁ……ぼやぎながら爪を噛んでる与一をよそに、あたしは後ろを睨み付けた。

88 真理  [id : tdfmWgw1] [2016-09-19(月) 18:26:19] 削除依頼

 尾行を巻くにはどうすればいいのか、与一は見当もつかないようだった。
「ねぇ、どうすんだよ……」
「さあ…… 如何しようか。」
 困った顔であたしを見る与一は、全然頼りにならなそうだった。

89 真理  [id : sBpgGYa0] [2016-09-22(木) 19:49:29] 削除依頼

 あいつら、誰だ。見当が……あ、推古。橘の奴等だ。橘推古の傭兵だ。拐われたあたしを連れ戻すべく、明星が放ったんだ。でも、何故あたしを捕まえに来ないんだろう。

90 真理  [id : FUYc.dE0] [2016-10-18(火) 20:18:23] 削除依頼

「わかった。」
 与一が唐突にそう言い、あたしの手をとると走り出した。
「何!?」
 あたしが訊く。
 あぁ、着物を着替えておいて良かった。男物だから、こんなに走れる。
「逃げるよ、尾行を巻くんだ。」
 じゃあ言えよ。内心ツッコミを入れつつ、あたしは走り続ける。走るのは好きではない。

91 真理  [id : cTOBZQV.] [2016-10-27(木) 20:42:37] 削除依頼

 いくら走っても疲れる様子の無い刺客達と、走り回ることに慣れていないあたしたちとでは訳が違う。それまでハイスピードで逃げていたあたしたちに徐々に疲れが見えてきて、後ろに刺客が迫ってきた。
「追い付かれちまうよ。」
 切れ切れの息で私は言う。
「分かってる。」
 足がもつれて転びそうだ。ましてやここは山道である。何度も何度も岩に引っ掛かり、前のめりになって転びそうだ。
「あ。」
 与一が急に止まった。
 無我夢中に走り続けて、いつの間にか町へ向かう道を外れたようだ。与一の肩越しに見えるのは、深い深い谷である。
 後ろから、刺客が迫ってくる。
「な、なぁ……」
 与一は、崖を背に刺客を睨む。
「おとなしくしていてください。」
 与一はそう言うと、一歩前に出た。

92 ☆イエイ☆  [id : HLJI6wG/] [2016-11-02(水) 11:29:35] 削除依頼

気になる!!!
あ、おひさ!
なんか、キャスフィはいれなかった(;´・ω・)
またこれるー!!!
°?☆?(???)?☆?°

93 真理  [id : WuoT.ue.] [2016-11-06(日) 18:05:13] 削除依頼

>92
お久しぶりですね。
コメントありがとうございます。

94 真理  [id : WuoT.ue.] [2016-11-06(日) 18:13:50] 削除依頼

 与一は、刀を抜いた。
「え、あんた……刀なんて持ってたの!?」
 そう言ったあたしを無視して、与一は無言で尾行の奴等に刀の切っ先を向けた。
 尾行の方も、刀を抜く。
 2対1。向こうの方がきっと腕もいいし、刀も良さそうだし、こっちが不利なのはあたしにだって分かった。
 だけど、与一は怯むことなくそいつらの方に斬りかかったーーー

95 夜月海麗奈  [id : v4tTvYd.] [2016-11-07(月) 20:02:13] 削除依頼

どーなるんだろ!?
もしかして、尾行のやつらがニセの刀とか!?

ひさー

96 真理  [id : jxfvvNF1] [2016-11-08(火) 18:58:26] 削除依頼

 惨敗。
 与一は強かった。尾行と一対一だったら、その腕前は互角といったところだった。
 だが。
 あちらが与一二人の戦闘力を持つのに対し、こちらは与一一人。惨敗したのだ、あたしたちは。
 凍り付いたように、あたしはしばらく動けなくなった。そして、その場に倒れこんで動かなくなった与一を見た。わき腹をおさえるような形で仰向けに倒れこんでいる彼の周りには、赤黒い液体が広がっていった。
「…与一?」
 あたしはゆっくりと与一に近付いた。呼びかけると、小さな呻き声が聴こえたが、それっきり動かないままだった。
 そんな中、ザッと土が動いた音がして、あたしは顔を上げる。
 気が付けば、すぐそこに尾行の二人がいる。
「椎名鈴殿、ご動向を願います。」
 尾行の一人が、口を開いた。どちらとも忍者少女区のような恰好をしていて、顔はよくわからなかった。が、その声は一本調子で、なんの躊躇も揺るぎもない言葉だった。

97 真理  [id : jxfvvNF1] [2016-11-08(火) 19:00:34] 削除依頼

忍者少女区→忍者装束です。
すみません間違えました。

98 真理  [id : B4CYV2r1] [2016-11-19(土) 10:09:54] 削除依頼

 与一を置いて、尾行の奴等についていく。
 与一を連れて、この崖の下に飛び降りる。
 与一の為に、こいつらと戦って逃げる。
 目まぐるしく脳内を駆け回る思考は、どれもいい策とは言えない。でも、ここに与一を置いていくのはいけないと思った。何故かは、分からないが。
 そして、あたしはひとつの決断を下した。
 あたしは尾行に向かって、低い声でこう告げた。
「断る。」
ーー断る。

99 真理  [id : 3PrcSLm/] [2016-11-20(日) 09:16:26] 削除依頼

 自分でも驚くような早さで、投げ出された与一の刀を拾い上げ、尾行に向かって構えた。
 尾行のふたりが、黒い覆面の下で、少し驚いたように目を見開いたのが分かった。
「……何をするつもりだ。」
 低い声で問い掛けられたが、あたしは答えなかった。
 次の瞬間、あたしは前に飛び出して、奴等に斬りかかった。

100 真理  [id : 3PrcSLm/] [2016-11-20(日) 09:36:00] 削除依頼

 想像していた通り、あたしは呆気なく捕まって、そのうちのひとりに縄で縛り上げられ連れていかれた。
 与一は、そこに放置されたままだ。
 連れていかれたけど、問題は無い。目的は、そこじゃないから。

 前に、与一の荷物を見せてもらったことがあった。与一は毒薬を持っていた。あたしはそれをくすねて、小さな針に塗りつけておいたーー

 それを、斬りかかるように見せかけて二人の尾行に刺したのだ。二人の、首筋に。
 あたしを担いでいる方の男の息が、荒くなってきた。もう片方も、心なしか苦しそうにしている。
 しばらく行くと、あたしを担いでいる方の男が大きくかしいで前に倒れた。驚いて駆け寄ったもうひとりも、やはり倒れた。
 死んだ、ようだ。
 あらかじめ仕込んでおいた短剣で縄を切ると、来た道を戻った。
 もう、綺麗事は言っていられない。生きるためには、殺さなければならなかった。

101 真理  [id : a1JmAB9Q] [2016-12-07(水) 22:13:57] 削除依頼

* * *
 どうするか全く分からなかったから、とりあえず止血だけしておいた。
 大丈夫だろう、と思う。
 呼吸も穏やかで出血も収まってきている。顔色も悪くない。
 でも、あたしは気分が悪かった。嗅ぎ慣れない血の匂いのせいだ。
 見れば着物の袖も、深紅に染まっている。
 すぐ近くに川が流れていたはずだ。そこへ行こう。
 与一の様子を確認して、あたしは立ち上がった。
 遠くで水の音がする。

102 りいい!(志乃りい共同)  [id : mFgrc8Qh] [2016-12-08(木) 20:13:31] 削除依頼

あ!志乃です!
楽しみー!!!

103 真理  [id : 3EDpltje] [2016-12-18(日) 22:05:31] 削除依頼

 冷たい水は、あたしの身体に染み付いた血の匂いでも、深紅の血でも、人殺しの汚れでも流れ落としていった。
 人殺し。
 あたしは人殺しだ。
 人殺しだけど、違う。あたしは、あたしは、あたしは……
 あたしは人殺し。ひとつの命を助けるために、ふたつの命を奪った。それが悪いことかどうかは、分からない。元の世界では悪いことだ。だけど、生きるようとすることが、そんなに悪いことなのだろうか。
 分からない。
 すっかり綺麗になったので、あたしは川から上がった。
 風が吹いて、寒かった。

104 真理  [id : 6fMGP104] [2016-12-19(月) 21:04:47] 削除依頼

「あれ……鈴さん?」
 与一は道の脇の茂で、焚き火をしていたあたしを見た。
「あぁ、やっと目を覚ました。」
 ほっとして、あたしは溜め息を吐いた。
「え、あいつらは……?」
「あいつらは、あいつらは……」
 言いかけて、目頭が熱くなってきた。
「……あ、あたしが、あたしが……殺した…………」
 何だって、と与一が掠れた声で聞き返してきた。
 大きく息を吸う。
「あたしが、殺したの!」
 絶叫するように、あたしは言った。
「何だって?」
 与一がすっとんきょうな声を上げた。
「あの……」
 目を覆ってうめいている与一に、あたしはおそるおそる声をかける。
「その……ごめんなさい。」
 与一の様子に驚いて、泣くどころではなかった。ので、とりあえず謝った。
「いや……」
 ひっくり返ったまま、与一があたしを仰ぎ見た。
「その、助けてくれてありがとう。」
「はぁ!?」
 もう、何がなんだか分からない。

105 真理  [id : 6fMGP104] [2016-12-21(水) 20:45:08] 削除依頼

 ーー優しい人殺しになりなさい。
 揺れる炎を、膝を抱えて眺めながら、あたしはその言葉の意味を考えていた。
 与一は穏やかな寝息を立てて眠っている。与一が持ち合わせた薬草をすりつぶして白湯に溶かして、薬湯を作ってやったし、もう傷の方も消毒はしたし、大丈夫だろう。
「優しい人殺しになりなさい。」
 いつもの様子から考えつかないような穏やかな目をして、与一があたしを諭すように言った。
「……優しい、人殺し……」
 呟いてみる。
 あたしは人殺しだ。それで、与一もそうだろう。その中でも、そんな人間でも、優しさを忘れるなということか? 人の温もりを忘れるなということか?
 きっとこの言葉の意味が分かるのは、ずっとずっと先のことだろうと、今はただ、そう思う。

106 真理  [id : Wyqdbuti] [2016-12-23(金) 22:24:57] 削除依頼

* * *
「いやぁ~参ったなぁ……」
 何が、と思って振り替えると、与一が頭を掻きながら、八の字眉で情けなく笑った。
「この深傷じゃ、あと3日は歩けないや。」
「はあ?」
 昨日は気付かなかったんだけどねー、と与一は言う。
 まだ淡い空色と橙色が混じり合う空が美しい、朝のことであった。

107 真理  [id : xISJCOmH] [2017-01-01(日) 01:00:19] 削除依頼

 と言うわけであたしたちは3日間、ここで足止めを食らうことになった。

108 真理  [id : NE1GrTvt] [2017-01-07(土) 20:37:01] 削除依頼

 あたしは大体、さらさらと流れる川を眺めて過ごしている。何があるわけでもない。魚が泳いでいるのを捕まえるわけでもないし、花鳥風月を愛でている訳でもない。ただ、それを眺めていた。
 人を殺したから、感傷に浸っていたわけでもない。そのことに関しては、もうほとんど何も考えていなかった。本当にすることが無いのでそうしているだけだ。
 川の流れる様を眺める私を見て、与一は変な顔をしていたけど、暇だから仕方がない。あと1日は、このままだ。

109 マグリット  [id : CvJusFl6] [2017-01-16(月) 21:44:18] 削除依頼

一気に読んでもた…面白い…好き…
失礼しましたm(_ _)m

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