クリムゾン

小説投稿投稿掲示板より。


1    RIN  [id : 34ztaNr0] [2016-07-24(日) 13:57:52] 削除依頼

クリムゾンまたはクリムソン (英語: crimson) は濃く明るい赤色で、

若干青みを含んで紫がかる。

イギリスでは伝統的に血の色と関連付けられており、

それゆえ暴力、勇気、苦痛を連想させる色でもある。

(Wikipediaより抜粋)

108 RIN  [id : kFFKsQj0] [2016-10-26(水) 20:53:24] 削除依頼

家事を一通りこなしてから家を出た。

時間丁度に屋敷に着く。

玄関を入るとすぐのところに隼さんが立っていた。

「やあ、紫蘭。

来てすぐで悪いんだけど、場所を変えよう。

ここは、Xのテリトリーだからね」

「わかりました」

お互いに無言のまま細い道を歩いていく。

20分程歩くと小さめの倉庫があり、そこへ入っていく。

「こんな場所で申し訳ないんだけど、勘弁してね」

「私はどこでも構いませんよ。

変な罠さえ仕掛けられていなければ」

「そんなことはしないよ。

弟子である君にはね」

倉庫の中は物置のような感じだった。

壁に沿うように段ボールやコンテナなどが置かれていて、真ん中にぽっかりとした空間が空いていた。

ここでなら話し合いも殺し合いもできるだろう。

109 RIN  [id : pk3XQEz1] [2016-10-27(木) 21:38:23] 削除依頼

「世間話でもしたいところだけど、そんな気分じゃないだろう。

早速だけど本題に入ろうか」

隼さんは手近な椅子を取り出して勧めてきた。

あわせて小さなテーブルも出され、そこへ座ると缶コーヒーを渡された。

自分を落ち着けるためにも、一口だけ飲んでから話を切り出す。

「まず、一つだけ答えてください。

本題はそれからです。

なぜ今なんですか。

今までにも機会はあったはずですよね。

会っていなかった3年にも」

「自分の身が危ういと、本気で思ったからかな。

本当は、君自身が僕にたどり着くまで黙っているつもりだった。

だけど、君は僕を殺しに来た。

クリムゾンまでもが僕を殺しに来たなら、僕はもう長くはないだろう。

だから、久しぶりに会った君が紫蘭ではなく“クリムゾン”だと悟った瞬間、僕は君にすべてを話す覚悟を決めたんだ」

110 RIN  [id : LaV5OyQ/] [2016-10-29(土) 17:34:12] 削除依頼

正直私は、ここに来ても迷っていた。

けれど隼さんの目を見て、この言葉を聞いて、覚悟を決めた。

「わかりました。

隼さんを信じます。

隼さんが知っていることを教えてください」

「わかった。

長くなるけど聞いてね。

もう後戻りは出来ないよ」

隼さんはそう前置きしてから、ゆっくりと話し始めた。

111 RIN  [id : XaY5gmX0] [2016-10-30(日) 15:41:20] 削除依頼

「賢治さんとXと僕はよく3人で組んで仕事をしていたのは知っているよね。

僕たちはキャリアも実力もほぼ同じくらいで、戦い方もよく似ていたから仕事がやりやすかったんだ。

殺し屋どうしだったけど、僕たちはお互い命をあずけ合う仲間だった。

兄弟みたいな関係だったと言ってもいいかもしれないね。

一人ずつだとその辺の殺し屋と変わらないレベルだったけど、僕達が組んだら最強だった。

負ける気がしなかったよ。

これからも3人で殺し屋を続けていくものだと疑わなかった。

でも、そうはならなかった。

賢治さんは巨大組織の機密情報を知ってしまった。

知らなくていいものを知った殺し屋は処分される。

この世界の常識だろう。

だから、賢治さんも殺された」

112 RIN  [id : XaY5gmX0] [2016-10-30(日) 21:08:24] 削除依頼

「それは私も知っています。

Xから聞かされましたから」

「うん、ここまではね。

君に聞いて欲しいのはここからだ」

長い前置きを終えて、ついに本題に入った。

「問題なのは、賢治さん殺しをどの殺し屋が行ったかだ。

その組織のトップは切れ者だったね。

確実に賢治さんを殺せる方法をはじき出した」

隼さんはここで一度言葉を切った。

目を閉じてゆっくりと息を吐き出した後、覚悟を決めて目を開けた。

113 RIN  [id : 2TxxouF.] [2016-11-02(水) 23:00:10] 削除依頼

「それが、僕とXだったんだ。

僕たちは3人で活動していたから、疑われることなく賢治さんに近づける。

だから、僕とXは組織に雇われた。

引き受けたくなんかなかったけど、僕たちに拒否権はなかった。

あの組織の権力は絶対的だったからね。

僕たちはその仕事を引き受けざるを得なかった。

そしてその1週間後、僕とXは任務を遂行した。

賢治さんを殺したのは、僕とXだ」

私たちの間に重たい沈黙が流れる。

しばらくお互いに何も言わなかった。

なんと言っていいのかわからなかった。

永遠とも思えたその時間を破ったのは隼さんだった。

「その後、僕はその組織に残った。

Xは組織を抜けて、自分の組織"X"を作り上げた。

組織を潰すためにね。

内と外から、長い時間をかけて準備を進めていった。

4年もかかったけど、僕たちはついに組織を滅ぼした。

僕たちにとっては、それがせめてもの罪滅ぼしだった。

そして、目的を果たした僕らは、それぞれに殺し屋のトップに立った。

Xが君を連れてきたのは、それからすぐの事だったよ。

賢治さんの子だと聞いた時は大反対だった。

だけど君はXに懐いて、すぐに裏の世界に適応していった。

さすが賢治さんの子だね。

次に君に会った時には、既に殺し屋の目をしていたよ。

もう引き返せないところまで来ていた。

だから僕は、Xと一緒に君をこの世界のトップに育て上げることを決めた。

誰にも殺されないレベルのね。

そして君は、見事にその期待を超えてクリムゾンとなった。

……今なら、あの時Xが君を連れてきた理由がよくわかるよ。

自分自身への戒めだったんだ。

自分のやったことを忘れないようにね」

114 RIN  [id : EISkBK5.] [2016-11-04(金) 21:33:26] 削除依頼

一気に話し終えた隼さんは、やっと表情を少し緩めた。

一体、どれだけの後悔を背負ってきたのだろう。

Xも隼さんも、20年以上苦しみ続けてきたのだ。

隼さんの手がすっとこちらへのびてきた。

「紫蘭は優しい人だね。

こんなに綺麗な涙を流せる」

知らぬ間に流れていた涙をすくい上げた。

ああ、私もまだ泣けたんだ。

もう何年も涙を流すことをしてこなかったので、泣き方を忘れてしまったとばかり思っていた。

「全部話してくれて、ありがとうございました。

もう、背負ってきたものを下ろしてください。

私には2人のことを恨んだり憎んだりする気持ちはありませんし、父も2人が苦しみ続けることを望んではいないはずです」

115 RIN  [id : dQ/TRnY.] [2016-11-05(土) 17:31:18] 削除依頼

隼さんは少しだけ驚いたような表情を見せた後、ふっと笑い、肩の力が抜けた。

「ありがとう。

君は本物の殺し屋になるよ。

必ずね……」

そして、悲しげに目を伏せた。

こんな隼さんを見たのは初めてで、私は思わず目をそらしてしまった。

「君に同じ思いは味わって欲しくない」

独り言のような、消え入りそうな声でつぶやいた後、隼さんが腰のナイフに手をかけた。

そして、真っ直ぐに私の目を見て、力の戻った声で言った。

「紫蘭、君は生き延びるんだ。

なにがあっても。

トップに立ち続けろ」

その瞬間、すべてを悟ってしまった。

慌てて飛び出したが、隼さんの躊躇のない動きには追いつくことが出来ない。

「隼さん、駄目!」

116 RIN  [id : vnPu6aC/] [2016-11-06(日) 18:11:00] 削除依頼

目の前で深紅の噴水が吹き上がった。

「隼さん、しっかりして!」

さすがというべきか、一寸狂わず頚動脈をとらえているため、またたく間にあたり一面を赤に染める。

必死に止血を試みるも、無駄な足掻きでしかない。

すると、ぐったりしていた隼さんの手がゆっくりと動いた。

そして、ジャケットのポケットから一枚の封筒を取り出した。

真っ白い封筒も赤く染まってしまう。

消え入りそうな声で、

「紫蘭……、君に、全てを、託すよ……」

そう言いながら、震える手でその封筒を私に差し出す。

そして、私がそれを受け取ると、再びぐったりと手を下ろしてしまった。

117 RIN  [id : 7WuCPh4.] [2016-11-07(月) 22:08:48] 削除依頼

「隼さん、隼さん!

死んだらだめ!」

私の叫びも虚しく、徐々に脈が弱くなってくる。

「背負ってきたものを下ろしてとは言ったけど、下ろし方が違うでしょう!

あなたの死は望んでいない!

お願い、目を開けて!

お願いだから……」

それから間もなく、隼さんは赤い海の真ん中で完全に脈がなくなった。

私は、こんなにも赤を憎いと思ったことはなかった。

手を尽くしても、どれだけ願っても止まることを知らない赤。

こんな赤、美しくもなんともない。

118 RIN  [id : tnx2.261] [2016-11-09(水) 21:50:39] 削除依頼

しばらくは放心状態だった。

どれくらいの時間が経ったのかわからない。

手にべっとりと付いた血が茶色っぽくなるほどの時間、私は隼さんの亡骸にすがっていた。

私が、もっと早く変化に気づいて飛び出していれば。

私が、背負ってきたものを下ろせなんて言わなければ……。

後悔の念が押し寄せ、手をきつく握り込む。

封筒がクシャっと音を立てたことで、隼さんからの封筒の存在を思い出した。

ゆっくりと封を開け、中身を確認する。

119 RIN  [id : T58KZim1] [2016-11-13(日) 17:15:09] 削除依頼

『紫蘭へ。


君は全てを知ったんだね。

よく覚悟を決めたね。

僕たち2人が手塩にかけて育てただけはある。

こんなに立派になったならもう安心だ。

だから、僕も覚悟を決めるよ。

よく知る人を手にかけるのは辛いことだ。

命の重さは同じだというけど、やっぱり見ず知らずの人とはわけが違う。

僕は君に、僕たちと同じ思いはしてほしくない。

それに、弟子に殺されるのは殺し屋ウルフの名が泣くからね。

だから、僕は自分の手で地獄に落ちるよ。

ただ、Xには自分の手柄だと言いなさい。

すべてを知ったことも言わないでおくように。

君はこれからもクリムゾンとしてトップに君臨するんだ。

そして、僕に変わってこの世界を牛耳るんだよ。

今の紫蘭なら大丈夫。

殺し屋として生き抜きなさい。

何十年か後、地獄で会おう。


立花隼』

120 RIN  [id : .WdwmIr/] [2016-11-14(月) 20:29:44] 削除依頼

一枚の便箋にきれいな字が並んでいた。

黒ではなく、セピア色のインクを選ぶところが隼さんらしい。

隼さんは私にすべてを話した後、自らの手で死を選ぶ覚悟を決めてきていたのだ。

だからといって私の後悔や罪悪感が軽くなるわけではないが、私も殺し屋だ。

相手の死の意思は尊重する。

私には隼さんの死の選択を批判することも、軽蔑することも出来ない。

だから、彼の描いたストーリーを完成させよう。

121 RIN  [id : z3mCt9B/] [2016-11-16(水) 20:53:18] 削除依頼

私はそばに落ちている隼さんのナイフに手をかけた。

そして、その刃先を自分へと振り下ろす。

手に、腕に、脇腹に、太ももに……。

耐えがたい激痛が体中を襲い、意識を手放しそうになる。

その度に新たに傷をつけ、意識をこちら側へ引き戻し、歯を食いしばって耐えた。

全身を血だらけにすると無理矢理立ち上がり、おぼつかない足取りで倉庫の中を歩き回った。

床や壁、倒した荷物に血痕をつけていく。

ウルフとクリムゾンの殺し合いの現場になるように。

122 RIN  [id : 7ojYe8./] [2016-11-18(金) 17:06:58] 削除依頼

一通り倉庫内を荒らすと、私は隼さんの元へと戻った。

彼のナイフを亡骸の傍らに投げ捨て、自分のナイフへと持ち変える。

そして、その刃先を隼さんへと突き立てた。

私ほどは痛めつけず、脇腹と腕にナイフを振り下ろしていく。

そして、最後に1箇所だけ致命傷になる傷を作った。

普通に殺し合えば隼さんの方が格段に上手なのだから、このくらいが妥当だろう。

全ての作業を終えると、私は床へと倒れ込んだ。

砂やら石やらが傷口に入って激痛を伴う。

もうこのまま意識を手放してしまいたいところだが、最後の仕上げが終わっていない。

もうほとんど力の入らない手を無理矢理動かす。

Xにメールを送り電話をかける。

「――私よ。

片付いたわ。

早く、来て……」

私の意識はそこで途切れた。

123 RIN  [id : 1T8V1JE.] [2016-11-19(土) 23:25:02] 削除依頼

5年前、私がまだ12歳だった頃。

その日は、実戦訓練のためにXの屋敷にいた。

私はいつも、Xを相手にトレーニングをしている。

けれど、その日は違った。

「紫蘭、今日の相手は俺じゃない」

「あんたじゃなきゃ誰だって言うのよ」

私の実戦訓練に付き合える殺し屋は“X”にはいない。

“X”の人間だと、私にとってはもうお遊び程度にしかならない。

それはXもわかっているはずだ。

自分より弱い相手はごめんだと言おうとした時、奥の部屋から長身の男が姿を現した。

「僕じゃあ、力不足かな?」

Xと一緒に、この世界のことを教えてくれた人。

もうひとりの師匠である立花隼だった。

124 RIN  [id : Mg/b/3n/] [2016-11-22(火) 00:56:47] 削除依頼

「立花は俺よりも強い。

徹底的に鍛え上げてもらえ。

立花、任せたぞ」

「ああ」

Xが屋敷から出ていき、隼さんと二人きりになった。

「Xの言う通り、僕はかなり強いよ。

一瞬でも気を抜いたら、容赦なく首を飛ばすからね」

口元は笑みを浮かべているが、瞳は氷の刃のような冷たい鋭さを持っている。

隼さんのこんなに鋭い瞳を見たのは、これが初めてだった。

優しい瞳で微笑んでいた隼さんしか知らない。

殺し屋の立花隼には初めて会ったのだ。

その瞳に射抜かれて動けない私をよそに、隼さんがナイフに手をかけた。

一気に空気が張り詰める。

刺すような、ピリピリとした殺気を纏っている。

思わず後ずさりをしてしまった。

この部屋にいたらだめだと、私の中のなにかが訴えたのだ。

125 RIN  [id : eru5C/w1] [2016-11-23(水) 23:04:47] 削除依頼

「紫蘭、集中しろ。

本番だったらもう殺されているぞ」

はっとして慌ててナイフを抜き、殺し屋の灰原紫蘭へと切り替えた。

圧倒されるのは最初だけでいい。

「いい殺気をしているな。

俺じゃなかったら一瞬怯んだだろうね」

隼さんの一人称が"僕"から"俺"に変わり、口調も少し乱暴になっている。

隼さんは、人格が変わるタイプの殺し屋だった。

「さあ、始めよう」

隼さんが地を蹴った。

軽やかな身のこなしで私の間合いへと踏み込んでくる。

Xよりも幾分早いが、対応出来ないほどではない。

攻撃を防ぎ、間を取る。

けれど、間髪入れずに隼さんが仕掛けてきた。

攻め込まれては間を取り、攻め込まれては間を取り。

こちらからも攻め込みたいのに、守りに入らざるを得ない。

押され続けたまま数十分が経った。

「紫蘭、守りに入ってばかりじゃだめだ。

相手に付け入る隙がないのなら、自分で作れ」

そんなことはわかっている。

今まででの訓練でも散々言われていることだ。

頭ではわかっているが、隼さんが相手だと隙を作り出すことは容易ではない。

いや、今の私の実力では不可能だろう。

こんな相手に敵うわけがない。

私の戦意は失われかけていた。

126 RIN  [id : aBnbdX7.] [2016-11-26(土) 14:41:46] 削除依頼

その瞬間、隼さんの瞳がさらに鋭くなった。

そして、今までとは比にならないような身のこなしで、私の間合いにまで入ってきた。

――まずい。

そう思った時には既に右手を捻り上げられ、手に持っていたナイフを払い落とされていた。

そして、丸腰になった私の腹に、思い切り拳を叩き込む。

私の体は2mほど吹っ飛ばされ、地面に倒れ込んだ。

胃から嫌な感覚がわき上がってくる。

咳き込みながらもなんとか体を起こすと、目の前にナイフが突きつけられていた。

「一瞬でも気を抜いたら、容赦なく首を飛ばすって言ったはずだけど」

冷ややかな目線を向けられる。

そこには明らかな怒りと、軽蔑の色が浮かんでいた。

「君は、俺とXが育て上げた殺し屋だ。

もっと根性があると思っていたんだけど、がっかりだ。

途中で命を投げ出す程度の覚悟しか持てないのなら、今すぐ俺達の前から消えろ」

127 RIN  [id : PGduCIw0] [2016-11-27(日) 19:00:11] 削除依頼

今まで一度も聞いたことのない、身のすくむような低い声だった。

私はこの時初めて隼さんを怒らせ、そして失望させた。

悔しさと、自分に対する怒りとで、涙が溢れてくる。

「ここは、泣いてどうにかなるような世界じゃない。

それは君もわかっているはずだろう。

失敗した殺し屋に待っているのは死だけだ。

泣こうがわめこうが、それは変わらない。

これが訓練でよかったな。

本当の戦場だったら、君は少なくとも2回は死んでいるんだぞ」

正論すぎて何も言い返せない。

私は途中で、自分の実力に見切りをつけた。

命を捨てたも同然だ。

いくら格上の相手だとしても、決して命を投げ出すな。

這ってでも帰ってくるんだ。

Xとの訓練でそう教えられていた。

隼さんは格上の殺し屋。

だからこそ、食らいつかなければいけなかった。

今回は訓練なのだから尚更だ。

128 RIN  [id : 8ENzvEh.] [2016-11-29(火) 21:50:25] 削除依頼

隼さんと対等にやり合えるようになりたい。

隼さんが手を抜く必要が無いくらい強くなりたい。

「隼さん、私を強くしてください。

隼さんが手を抜かなくても互角にやり合えるくらい」

私の目の前に突きつけていたナイフがやっと下ろされた。

そして、腕をつかみ私を引き上げて立たせる。

「君は、死ぬ覚悟は持っているかい」

やわらかさの戻った声で私に問う。

瞳は相変わらず鋭いが、もう隼さんを怖いとは思わない。

「殺し屋になった時から、覚悟はしています」

まだ12歳の子供だったけれど、もう3年も殺し屋をやっている。

もちろん危険じゃない仕事なんてあるはずもなく、命の危機を感じる場面もいくつもあった。

だから、いつ死んでもおかしくはないのだ。

「強い殺し屋に必要なのは死ぬ覚悟じゃないんだ。

本当に必要なのはね、生きる覚悟だ。

この仕事は常に死と隣合わせだから、必然的に死を受け入れざるを得なくなる。

死を受け入れた途端、人は死に飲み込まれるんだ。

自分が死ぬところを想像出来てしまうからね。

だからこそ、死ぬ覚悟と同じくらい、いや、それ以上の生きる覚悟を持ちなさい。

どんな手を使ってでも生き延びてやるという覚悟を」

129 RIN   [id : bI2lSdP6] [2016-11-30(水) 23:16:35] 削除依頼

生きる覚悟。

そんなこと、考えたこともなかった。

人を殺すことが仕事の殺し屋。

生きたいと願う権利なんて無いと思っていた。

人を人として見ることができなくなった人間が、生きたいと願っていいはずが無いと。

けれど、それは間違いだったのだろう。

綺麗事かもしれないが、殺し屋は手にかけた何十人もの命と、数え切れないほどの憎しみや苦しみを背負っていかなければいけない。

簡単に命を放り投げていいはずがないのだ。

そんな"逃げ"は許されない。

「君には生きる覚悟が無さすぎる。

まずは、矛盾する二つの覚悟を持てるようになりなさい。

技術的な強さはその後だ。

君が本気で殺し屋として上を目指すなら、僕達は君に全力を注ぐ」

私は、隼さんやXのような本物になりたい。

本物の殺し屋になりたい。

この時、本気でこの仕事に向き合おうと心に誓った。

「よろしくお願いします。

私は、本物になりたい」

「わかった、君のその目を信じるよ。

僕達が君をトップに育て上げる」

隼さんは優しい笑みを浮かべ、私の頭を撫でた。

130 RIN   [id : bI2lSdP6] [2016-12-02(金) 23:00:20] 削除依頼

目を覚ました時、この天井を見るのは何度目だろう。

白い天井に淡々とした機械音。

いつもお世話になっている病院だ。

Xのコネが効くため、この常識外れの傷の数々を何も聞かずに治療してくれる。

起き上がろうと体に力を入れたが、体中に激痛が走った。

予想以上の痛みに、思わず小さな悲鳴を上げてしまった。

痛みの具合から見て、そんなに長い間意識がなかったわけではないだろうなと、唯一動かせる頭で図る。

間もなく、部屋の扉が開いた。

目線だけをドアに向けると、コンビニの袋を持ったXが入ってきた。

「目覚めたか」

「ついさっきね」

「具合はどうだ」

「過去最悪ね。

起き上がりたくても体中痛くて起き上がれない」

「そりゃ、あれだけ痛めつけられたらそうだろうな」

131 RIN  [id : bI2lSdP6] [2016-12-05(月) 21:19:57] 削除依頼

見えるところに時計がないので正確な時間はわからないが、おそらくお昼時なのだろう。

私の横で、買ってきたコンビニ弁当を広げだした。

無言で食べているが、私はぽつりぽつりと勝手に話した。

「夢を、見ていた。

5年前、初めて隼さんを相手にした日の。

神様は残酷ね。

よりによって、隼さんの夢を真っ先に見せるなんて……」

Xはそうかと呟くだけで、食事の手は止めない。

「あの日、私は初めて隼さんを本気で怒らせた。

あんな姿を見たのは、あれが最初で最後だった。

隼さんのおかげで、自分が殺し屋としていかに未熟だったのか痛感できたの。

あの人がいなければ、私はとっくに殺されていたはず。

隼さんには感謝してもしきれない。

なのに、私は……」

隼さんを助けられなかった。

この言葉をぐっと飲み込む。

この言葉を口にするわけにはいかない。

隼さんの意思を尊重すると決めたのだ。

132 RIN   [id : bI2lSdP6] [2016-12-07(水) 00:01:19] 削除依頼

「よく生きて帰ってきた」

食事の手を止めることなくXが言う。

「正直、お前でも厳しいと思っていた。

良くて相討ちだろうってな。

でも俺は、お前の実力を見誤っていたみたいだな。

紫蘭、よくやった」

どうして、こういう時だけ優しい言葉をかけるのだろう。

頬を伝いそうになる涙を見せたくなくて、痛む体を無理やり動かして布団を頭までかける。

「少し寝ろ。

また夜に来る」

布団の上から頭を撫でて、部屋を出ていった。

Xが出て行ったあと、気が済むまで泣いた私は、いつの間にかまた深い眠りへと落ちていた。

133 RIN   [id : bI2lSdP6] [2016-12-07(水) 23:28:45] 削除依頼

扉の開く音で目が覚めた。

「悪い、起こしたか」

「大丈夫、よく寝たから。

体起こしたいから、手貸してくれない?」

「起きて大丈夫か?」

「もう平気」

Xの手を借り、ゆっくりと体を起こした。

少し動かしただけで体中が痛む。

我ながらよくここまでやったものだ。

おそらく、今までの中で一番の怪我だろう。

「何か食べるか?」

持ってきた袋からおにぎりやサンドウィッチ、ゼリーなどを出す。

「ゼリーもらえる?」

食欲はあまりなかったが、職業柄、食べられる時に食べておかねばと思ってしまう。

「自分で食べられるか?

なんなら食べさせてるやるぞ」

「結構よ。

そんなにやわじゃない」

珍しく軽口を叩くXからゼリーを奪い取り、痛む腕を動かして口に運ぶ。

怪我をしているんだから、飲むタイプのゼリーにしてほしかった。

食欲がなかったため、長い時間をかけてゼリーを流し込んだ。

134 RIN   [id : bI2lSdP6] [2016-12-10(土) 00:14:00] 削除依頼

食べ終わったあと、隼さんの案件に触れてみることにした。

気は進まないが、全く触れないのは不自然だ。

「あの後、隼さんはちゃんと回収したの?」

「ああ、処理班がな。

俺はお前をここまで連れてきただけだ。

その後に立花の死体を確認してきた」

「そう」

「見事に頸動脈を切っていたな。

立花相手によくあれだけ綺麗にいけたもんだ。

あの実力者相手にどう仕掛けたんだ?」

お弁当とゼリーのゴミを片付けながら聞いてきた。

Xが疑問を持つのは当たり前だろう。

隼さんと私の実力差を考えれば、あんな致命傷を負わせるのは不可能に近いことだ。

「自分でもびっくりよ。

隼さんらしくないけど、油断したのね。

これだけ痛めつけた私が、まだ動けるとは思っていなかったんでしょう。

一瞬の隙があった。

だから、それに賭けて飛び出したの。

その隙がなければ、私は確実に殺されていた」

自分でも驚くほど、スラスラと嘘が出てくる。

「油断か。

あいつにしては珍しいな……」

135 RIN   [id : bI2lSdP6] [2016-12-11(日) 00:25:33] 削除依頼

「そういえば」

これ以上口が動くのに任せていたら、必ずどこかでボロが出る。

そう思い、思い切って話題を変えた。

「山城の方の件はどうなったの?

あの殺し屋、賀山だっけ?

あいつ、なにか喋ったの?」

「ああ、知ってることは喋らせただろうな。

まあ、あいつも立場はそれほど高くないから、大したことは知らなかったけどな。

山城が何を企んでいるのかはわからなかった。

ただ、今の山城組の内情はだいたい把握できた」

山城組の勢力が拡大していること。

現在有能な殺し屋を複数抱えていること。

何人かの有力な殺し屋の元へ次々と殺し屋を送っていること。

賀山が知っていたのはこの程度だったようだ。

それにしても、勢力が拡大しているというのが気になる。

山城は一体何を考えているのだろう。

136 RIN  [id : LWE3lqDm] [2016-12-17(土) 20:31:07] 削除依頼

「これからどうするつもり?」

「まだわからないことが多すぎる。

とりあえずば情報収集ってところだな。

お前はまず、その体を治すことだけを考えろ。

もちろん、完全復帰したらお前にも動いてもらう。

2か月後くらいにはなるだろうがな」

ある程度今までのこととこれからの予定を話し合ったところで、ちょうど面会終了の時間になり、Xは部屋から出ていった。

137 RIN  [id : LWE3lqDm] [2016-12-21(水) 22:40:48] 削除依頼

一人になった部屋で、隼さんの案件を整理する。

勝手の利かない場所での訓練にしようと、あの倉庫へと連れていかれた。

いつものように手合わせをしている最中に隼さんが今回の任務に気づき、本気の殺し合いになり、容赦なく痛めつけられた。

私が血だらけでフラフラなことに気を抜いてわずかな隙が生まれ、そのチャンスに飛び出して頸動脈をとらえ、勝敗がついた。

そう順を追い、話を練り上げる。

何度も何度も繰り返し、流れを頭に叩き込んだ。

しかし意外なことに、これ以降Xが隼さんについて聞いてくることはなかった。

138 RIN  [id : XG8vynhb] [2016-12-22(木) 21:42:37] 削除依頼

1週間ほどが経つと自力で動けるまでには回復していたので、リハビリをスタートさせていた。

落ちてしまった筋力と体力を元のレベルにまで戻さなければならない。

まだ早いと医師や看護師たちに睨まれながらも、時間があるときにはリハビリを行った。

そんなある日の夜、私の病院の扉が開いた。

「久しぶりだな、クリムゾン」

「なんであんたが……」

そこには山城組のトップ、山城仁が1人で立っていた。

「お前に話があって来た」

「殺しに来たの間違いじゃないの」

殺しに来たとしか思えないほどの殺気を纏っている。

「お前と殺し合いをしたいのは山々なんだがな、今はその時じゃない。

今日は本当に話をしに来た」

「なら、持っている武器を全て出しなさい。

あんたならナイフと拳銃は携帯しているはずでしょう」

ナイフが2本に拳銃が一丁。

言われた通りに武器を出した山城は、勝手にパイプ椅子を持ってきて座る。

139 芽衣  [id : fjkImPb1] [2016-12-22(木) 22:51:06] 削除依頼

面白いです。凄い引き込まれますえ

140 芽衣  [id : fpTQmla5] [2016-12-22(木) 22:51:52] 削除依頼

「え」は間違いです。

141 RIN  [id : 5UwJ3Tzv] [2016-12-23(金) 00:01:22] 削除依頼

芽衣さん
ありがとうございます

142 RIN  [id : 5UwJ3Tzv] [2016-12-23(金) 16:52:40] 削除依頼

「手短に話してよね」

「ああ、わかってる。

灰原紫蘭、俺と手を組まないか」

一瞬、何を言われているのか理解出来なかった。

冗談にも程がある。

「私とあんたが?

冗談言わないで。

笑えない」

「本気だ。

まあ、話を聞け。

断るのはそれからにしろ」

山城は、何度私の元へ殺し屋を送ってきたのかわかっているのだろうか。

そんな奴と手を組むなんて、考えたくもない。

が、話を聞かないことには絶対に帰らないだろう。

「じゃあ、さっさと話して」

「お前はこちら側の人間だと思っている。

だからこの話を持ちかけた」

「山城組側ってこと?

ありえない」

“X”と山城組は、何かと衝突が多い。

犬猿の仲とでも言ったらいいだろうか。

長年“X”の人間として動いてきた私が山城組側だなんて、ありえる訳が無い。

「まあ聞け。

俺たちが生きているのは裏の世界だろう。

俺たちが表と交わるのは不可能だ。

しかし、表と裏を一体化しようとしている奴がいると知ったら、お前ならどうする」

「そんなの、大反対に決まってるじゃない」

表と裏が交わることはあってはならない。

裏は表に干渉してはいけないのだ。

それがこの世界の暗黙の了解なのは、裏の人間なら誰でも知っている。

「ああ、俺たちもそうだ。

表と裏が同化することはありえない。

今、山城組ではそれを阻止しようと動いている。

そのために灰原紫蘭、あんたの力を借りたい」

143 RIN  [id : 5UwJ3Tzv] [2016-12-24(土) 23:00:22] 削除依頼

「誰かが表裏同化を企てているって言いたいわけ?」

「そうだ。

相手は馬鹿でかい組織だ。

今のままの山城組じゃ潰される。

だから信用に値する、実力のある人間に声をかけているんだ」

「それで“クリムゾン”の力が欲しいと」

「確かにあんたの殺し屋としてのスキルは高い。

だから目をつけたというのもあるが、本当の目的はそっちじゃない。

お前がXと関わりが深いからだ」

「どうしてXの名前が出てくるの」

「Xが表裏同化を企てている張本人だからだ」

何かの間違いでしょう。

そう言おうとした。

けれど、そう言いきれるほど、私はXのことを知らないことに気づいてしまった。

私は、Xの本名すら知らない。

“X”という組織のトップだからXと呼ばれていた。

だからそれに従ったにすぎない。

私は昔から“X”の人間として動いてきて、今ではXの片腕と言われるほどになった。

それなのに私は、何も知らない。

「これは、紛れもない事実だ。

徹底的に調べてある。

そのなかで灰原紫蘭、あんたのことも調べさせてもらった。

何人もの殺し屋を送ったのはそのためだ。

お前も疑っていたからな。

でも、どれだけ調べてもお前が表裏同化に積極的だという事実は掴めなかった。

それどころか、こちら側の人間だとわかったんだ。

これは引き込まないわけにはいかないと思った」

144 RIN  [id : 5UwJ3Tzv] [2016-12-28(水) 21:29:43] 削除依頼

“X”はそれほど大きな組織ではない。

規模で言えば山城組の半分以下だろう。

けれど、“X”の力は絶大だ。

この病院も例外でなく、あらゆるところにコネが効く。

そしてなにより、事件として表に出ないようにどこかで力がかかっている。

本当にXが表裏同化に関わっているのなら、一つの嫌な仮説が浮かんできてしまう。

「もしかして、関わっている組織って警察じゃ……」

半年ほど前、小さな組織に入り込んだ時、水面下で良くない動きがあると聞いたのだ。

「なぜ知っている」

「少し前、仕事中にちょっと耳にしたのよ。

警察上層部と繋がっている殺し屋がいるって。

Xは確実に警察と繋がっている。

しかも、かなり深く。

私におりてくる仕事は警察の人間や政治家も多い。

しかも、かなり大物のね。

でも、それはほとんど事件にはならなかった。

詳しくはわからないけど、警察の力がかなり働いているはず。

警察内部の権力もかなり偏っているんじゃないかと思う」

「さすがに察しがいいな。

その通りだ。

よりによって一番厄介な組織を相手にしないといけない。

中途半端な準備と覚悟じゃ太刀打ちで切っこないんだ。

だから、あんたの力を貸してほしい。

俺なんかと手は組みたくないだろうが、今は利害が一致しているはずだ」

145 RIN  [id : 5UwJ3Tzv] [2016-12-30(金) 00:28:22] 削除依頼

確かに表裏同化は見過ごせない。

ただ、私は“X”の人間。

知らなかったとはいえ、今までXの計画に加担していたのは事実だ。

“X”の人間のままで反同化として動けるかどうか。

Xは完璧主義者。

私の動きを見逃すとは思えない。

「Xを止められるのは灰原紫蘭、お前だけじゃないのか」

考え込んでしまった私に、山城が諭すように言う。

「Xに一番近いのはお前だ。

Xはお前に全幅の信頼を置いているようだしな。

お前が止めるべきだ」

「あいつは、途中でやめるような覚悟では動かない」

「本当は、立花とお前とで組ませるつもりだったんだ。

それが一番望みがあったからな」

「隼さんは、私が……」

山城は言わなくていいと私の言葉を遮った。

「立花はあの日、初めから自分で死ぬつもりだった。

あの時立花がこの話をしたら、お前は間違いなく立花と手を組んだだろう。

そうすれば立花は殺せない。

お前もXから狙われることになったんだ。

だから立花は自分で死を選んだ。

お前とXの繋がりを切らないように。

立花もXを止めたいんだ。

それをお前に託したんだろう」

146 RIN  [id : 5UwJ3Tzv] [2016-12-31(土) 14:06:39] 削除依頼

隼さんは最期に、私に全てを託すと言った。

今やっと、その言葉の真意を理解することができた。

Xを止められる可能性は、私以上にあったはずだ。

けれど隼さんは、それを私に託した。

命をかけてXを止めろと言われているような気がする。

「わかった。

あんたに力を貸す。

ただ、勘違いしないで。

あんたを信用したわけじゃない」

山城はそんなことわかってると笑い、鞄から黒いスマホを取り出して私に差し出す。

「俺との連絡はこれを使ってほしい。

信用できるやつに改造してもらった。

これなら外部の人間に情報を抜き取られる可能性は限りなく低い。

俺のスマホと連携させているから、俺の居場所がわかるようにもなっている」

山城が自分で使っているスマホを出して説明してくる。

私が持つスマホは山城の位置情報を取得できるが、山城のからは私の位置は知ることが出来ない。

こちら側のリスクが低くなるように配慮してあるという。

147 RIN  [id : 5UwJ3Tzv] [2017-01-01(日) 01:52:48] 削除依頼

※本編とは関係ございません

あけましておめでとうございます
いつもクリムゾンをお読みいただきまして、ありがとうございます
読んでくださっている方がいるというのが、書いている中での一番の喜びです
今年も作者とクリムゾンを、どうぞよろしくお願致します

148 RIN  [id : 5UwJ3Tzv] [2017-01-03(火) 02:13:34] 削除依頼

「お前が俺を信用していないのはわかっている。

信用してくれとは言わない。

ただ、こちらから声を掛けて力を貸してもらうんだ。

それなりのリスクは背負う。

このスマホをどう活用するかはお前次第だ」

使い方次第では山城を簡単に殺せるし、山城組も潰せる。

そういう使い方も可能だということだ。

もちろん、そんな姑息な手は使うつもりは無い。

私にだってクリムゾンとしてのプライドがある。

「ありがたく使わせてもらうわ」

「今後のことは追って連絡する。

その体じゃあ動けないだろうしな。

Xに勘づかれないようにだけしておいてくれ」

「この私がそんな初歩的なミスするわけないでしょう」

「期待している。

また近いうちに会おう、灰原紫蘭」

テーブルの上に出していたナイフと拳銃をしまい、深夜の病室を出ていった。

149 RIN  [id : 5UwJ3Tzv] [2017-01-06(金) 23:44:00] 削除依頼

表裏同化。

裏の世界が表の世界に入り込んでいくことを言う。

そうなれば、世の中の秩序は間違いなく崩れるだろう。

裏の人間が力を持ち、表の世界をも掌握する。

正当化されたり隠蔽される事件や殺人が急激に増加し、一般人もそれらに巻き込まれていく。

法律なんてものはあってないようなものだ。

そんな世の中を、一般人が一般人のまま生き抜けるはずもなく、皆闇に染まっていく。

闇一色に染められた世界。

最終的にこの国は無法地帯となるだろう。

そんな国と関わりたがる国なんてあるはずもなく、外交は絶たれる。

そして国として回らなくなり、この国は灰と化す。

それが表裏同化というものだ。

150 RIN  [id : 5UwJ3Tzv] [2017-01-07(土) 23:54:18] 削除依頼

今までにも表裏同化を企てた者はいる。

昔には、表裏同化の一歩手前まで行ったこともあるそうだ。

しかし、結局どれも失敗に終わっている。

一度たりとも実現した者はいない。

必ず止めに入る者たちが現れ、阻止する。

表裏同化への勢いより、反表裏同化の勢いの方が強くなるのだ。

過去の例から考えると、今回も失敗に終わる可能性が高いような気がしてしまう。

しかし、Xには今までの奴らとは決定的に違う。

Xには警察という後ろ盾があるのだ。

しかも、警察上層部の。

おそらく、警察の上層部は表裏同化に積極的なのだろう。

他の殺し屋たちと比べてみても、私の仕事は警察や政治家などの官僚殺しが多すぎた。

しかも、上層部の人間ばかり。

151 RIN  [id : 5UwJ3Tzv] [2017-01-08(日) 11:36:18] 削除依頼

読み返していたら、ついに誤字を発見してしまいました……。

>138 4文目
[原文]そんなある日の夜、私の病院の扉が開いた。[訂正]そんなある日の夜、私の病室の扉が開いた。

大変申し訳ありませんでした。

152 RIN  [id : 5UwJ3Tzv] [2017-01-12(木) 03:23:08] 削除依頼

一度気になって、ターゲットを問いつめてみたことがある。

彼は警視正だっただろうか。

『今、警察内部で何が起こっている』

『権力が極端に偏りかけている。

反発する奴は皆左遷される。

俺みたいに殺される者もいただろう。

そう遠くないうちに、権力統制がなされるだろうな』

それが一年ほど前だったはずだ。

その後も2人ほど警察の人間を手にかけた。

確か2人とも警視だった。

警視は上から5番目ではあるが、警察官全体の3%にも満たない階級。

今ではおそらく、権力統制がほぼ完成しているだろう。

そんな警察がXのバックについて、表裏同化に加担しているのだ。

下手に動けば、山城組なんてひとたまりもない。

この案件は、あまりにもリスクが高すぎる。

私がこれを引き受けるメリットはゼロと言い切っていいだろう。

けれど私は、もうあとには引けない。

153 RIN  [id : 5UwJ3Tzv] [2017-01-15(日) 00:45:20] 削除依頼

それから10日程で退院した。

まだ駄目だと言い張る医師を説得し、なんとか退院の許可をもらったのだ。

とても全快とは言えないが、いつまでも病院にいてもどうしようもない。

早く本格的なトレーニングを始めたかった。

退院してからしばらくはトレーニング漬けだった。

時間があれば筋トレやランニングに打ち込んだ。

2週間もすれば体力も筋力もほぼ元通りだ。

何度かXを相手に実戦訓練も行い、殺し屋クリムゾンは、完全復活を遂げた。

間もなく、山城から連絡が入った。

『明日の14時にここに来てほしい』

地図も一緒に添付されてきた。山城の事務所らしい。

山城との接触以降、私は監視をつけられている。

だから、回復した頃合いを見計らって連絡をしてきたのだろう。

山城の方でも徹底的に調べてあるのだろうけれど、私が“X”の人間であることには変わりない。

少しでも怪しい動きをしたら、すぐに私を消せる準備くらいはしているはずだ。

山城の方から声は掛けてきたが、完全には信用されていないことはわかりきっている。

別に信用されていないとしても構わない。

そう簡単に全幅の信用を置かれても、クリムゾンの名が泣く。

信用なんてものは、裏の世界には必要ない。

それでも、毎日毎日の下手くそな尾行や監視は止めていただきたいのが正直なところだ。

付けるのは別に構わないが、もっと上手くやってくれればいいものを。

154 前和田  [id : RtUQlX8O] [2017-01-18(水) 18:33:58] 削除依頼

いつも読ませて頂いております。
女子高生の殺し屋が繰り広げる、ドキドキハラハラした物語で、面白いです。
Xは一体何を隠しているんですかね…これから話が急展開しそうで楽しみです。
応援しています。これからも頑張って下さい!

失礼いたしました。

155 RIN  [id : 5UwJ3Tzv] [2017-01-18(水) 21:49:18] 削除依頼

前和田さん
お世話になっております。
読んでいただきありがとうございます。
ええ、これからクライマックスに向けてああなってそうなってこうなって……。
只今私情により添削が進んでおりませんので、落ち着いたら一気にラストまで行こうかと思ってます。
それまでは亀更新にお付き合いくださいませ。

156 RIN  [id : 5UwJ3Tzv] [2017-01-21(土) 23:59:03] 削除依頼

文句を言ってやると心に決めて、指定された場所に向かった。

そこは、大きな通りから一本裏に入ったところにあった。

二階建ての、何の特徴もない事務所だ。

インターホンを押すと、一人の大柄な男が出てきた。

名前は確か神崎慎吾。

実力はトップクラスで、山城仁の右腕として有名だ。

「灰原紫蘭さんですね。

仁さんがお待ちですので、こちらへどうぞ」

神崎に連れられエレベーターに乗り込んで一番下まで下り、山城の元へと通された。

「久しぶりだな、クリムゾン。

御足労感謝する」

ソファに腰を下ろすと、神崎がコーヒーを持ってきた。

「変なものは入れてないから安心しろ」

そうは言われても、職業柄手をつけようとは思えない。

得体の知れないものを口にするなんて、自.殺行為のようなものだ。

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