クリムゾン212コメント

1 RIN id:34ztaNr0

2016-07-24(日) 13:57:52 [削除依頼]
クリムゾンまたはクリムソン (英語: crimson) は濃く明るい赤色で、

若干青みを含んで紫がかる。

イギリスでは伝統的に血の色と関連付けられており、

それゆえ暴力、勇気、苦痛を連想させる色でもある。

(Wikipediaより抜粋)
  • 193 RIN id:JWRGSPA8

    2017-04-02(日) 20:53:19 [削除依頼]
    両手にナイフを持つ。

    Xの二刀流は久々だ。

    いや、初めてと言っていいのかもしれない。

    お互い、訓練で本気は出していない。

    昔こそ全力でがむしゃらにXへ向かって行ったが、ある程度になってからは私も本気を見せることはしなくなった。

    所詮は殺し屋同士だ。

    手の内を全て見せるような安易な真似はしない。

    だから、Xの本気を見るのは初めてだし、Xも今の私の本当の実力は知らないはずだ。

    私も両手に持っていたナイフと拳銃をジャケットにしまい、専用のバッグに入れてきた大型ナイフへと持ちかえる。

    刃渡りが35センチほどあるナイフ。

    この2本だけはジャケットには収まりきらない。

    だから、専用の筒状のバッグを使わなければならなかった。

    私は小型から中型のナイフを主に使う。

    持ち運びやすい上に、メンテナンスも大型より楽だからだ。

    しかし、Xは超近戦型。

    私も近戦は得意ではあるが、X相手に近戦を仕掛けるのはリスクが高い。

    普段大型ナイフを振る機会は多くないが、超近戦になるよりはマシだという判断に至った。

    軽く2・3回ほどナイフを振る。

    そして一度深く息を吸いこみ、一気に吐き出すと完全なる戦闘モードに入った。


    トップレベルの殺し屋の、本気の命の削り合いが始まる。
  • 194 RIN id:JWRGSPA8

    2017-04-04(火) 19:19:29 [削除依頼]
    最初の一手は同時だった。

    互いに一切無駄のない動きで踏み込む。

    タイル張りの床がキュッと声を上げた。

    その音から間髪入れずに、パンッと刃と刃の当たる音が高い天井に響く。

    その反動が腕から体全体へと伝わり、互いの刃を押し返し間を取る。

    すぐに一歩下がったその足でまた踏み込み、キュッという音とパンッという音が響く。

    隙なんて、一つもない。

    隙を作り出そうと動いても、完全にその動きに対応してくる。

    対応してくるだけではない。

    その動き以上の動きで私を押さえつけていく。

    洗練された体使いは、敵ながら美しいとさえ感じてしまう。

    本物のX。

    訓練では見たことのないような身のこなし。

    これでもまだ100パーセントでは無いのだろうから末恐ろしい。

    Xが覚醒してしまう前に片付けてしまいたいのが本音だ。

    しかし、そう簡単にいくはずがない。

    私がギアを上げるのに合わせてXも上げてくるだろう。
  • 195 RIN id:JWRGSPA8

    2017-04-05(水) 23:24:27 [削除依頼]
    ※本文とは関係ございません。

    宣伝です。
    冬のSSコンテストで白賞を頂いた『白』の改訂版を、SS投稿板に投稿しました。
    もし宜しければ読んでいただければと思います。

    スレ番号 1491400092
  • 196 RIN id:JWRGSPA8

    2017-04-06(木) 21:07:25 [削除依頼]
    しかも、私自身にも問題がある。

    大型ナイフ二刀流での戦闘は久々。

    訓練はたまにしていたが、それすらも最近の記憶ではない。

    長く鋭い2本の腕を、まだ完全には使いこなせていない。

    いつもより長い刃、いつもより大きい空気抵抗。

    まだ、体とナイフが別物だ。

    一体化してこない。

    それでも、大型ナイフに持ち替えたのは正しかった。

    大型な分、Xよりもリーチが長くなる。

    つまり、Xの得意な超近戦には持ち込まれていないということだ。

    それも、Xが完全に覚醒できない原因の一つだろう。

    しかし、Xが優勢なのは否めない事実だ。

    それもそのはず。

    私の技術は、全てXと隼さんに教えこまれた。

    構えも、ナイフの振り方も、この二刀流も、2人のスタイルが根底にある。

    完全に私のものではない。

    けれど私は、Xを生かしては死ねない。
  • 197 RIN id:JWRGSPA8

    2017-04-10(月) 08:41:09 [削除依頼]
    「お前はなぜ、命をかけてまで止める。

    そこまでするメリットなんてないだろう」

    今まで淡々とナイフを振っていたXが口を開いた。

    確かに私は、表裏同化には反対だ。

    裏と表が分かれている今この状態で、この国は上手く回っている。

    それをあえて乱す必要は無いだろう。

    しかし、それは命をかけてまで貫き通すものかと聞かれると、首を縦には振れない。

    表裏同化が成されても、裏の世界で名のある私にデメリットはあまりない。

    大きく影響を受けるのは、表の住人だ。

    私は完全に表から離れたわけではない。

    母親は何も知らない純粋な表の人間だし、高校で同世代の白さも知っている。

    この白い世界をそのままにしておきたい。

    表に戻れるとは思わないし、戻りたいとも思わないけれど、そのままにしておきたいと思うのは私のエゴだろうか。

    「表裏同化の必要性がわからない。

    表と裏が別々だから、今この国は成り立っている。

    表がなくなれば、この国は終わりよ。

    機能しなくなった国と関わりたいと思う国は一つもない。

    そうなれば、この国は孤立する。

    孤立してもやっていけるだけの力はないでしょう」

    「ああ、この国は確実に国としては機能したくなる。

    もっともらしい理由だな。

    でも、お前の本当の理由はそんなものか?」
  • 198 RIN id:JWRGSPA8

    2017-04-13(木) 22:30:26 [削除依頼]
    冷たい瞳と冷たい声が、ナイフと共に降ってくる。

    喋っていても、手を緩める瞬間は決してない。

    一撃でもまともに受ければ、致命傷になりかねないものばかりだ。

    できれば黙々と、目の前のナイフだけに集中したいところだが、無視して地雷を踏むのは賢明ではない。

    「私がそれが理由だって言ってるんだけど。

    本当も嘘もない」

    「何年お前を見てると思ってんだ。

    どうせ表を残しておきたいとか、そんなもんだろ。

    真っ黒に染まったお前が、表にこだわる必要は無い。

    表なんてさっさと見切りをつけろ。

    今ならまだ気の迷いだと目を瞑ってやる」

    「冗談じゃない。

    私は、私の意思で今ここにいる。

    表に戻りたいとは思わないし、戻れるとも思っていない。

    だけど、白い世界を残しておきたいと思ったっていいでしょう。

    私は、もう表裏同化には加担しない。

    あんたを殺して、全てを終わらせる」
  • 199 RIN id:JWRGSPA8

    2017-04-17(月) 17:54:48 [削除依頼]
    最後まで言い終わらないうちに、Xへと深く踏み込む。

    そして、右手のナイフを大きく振り下ろす。

    軽々と受け止められてしまったが、急に鋭くなった私の動きに、一瞬だがXの全神経が私の右手のナイフに向けられた。

    その一瞬の隙に、左手のナイフを真横に振る。

    刃がXを捉える寸前に体を引かれたため、狙った通りのダメージは与えられなかったが、刃先から赤が滴る。

    腹を狙って振った刃は、Xが後ろに飛び退いたことでXの太ももを赤く染めた。

    やっと、やっとナイフと身体が一体化してきた。

    「やっと本気を出したか。

    俺たちの、最初で最後の本気の斬り合いだ。

    ここからは、手加減なしで楽しもうぜ」
  • 200 RIN id:JWRGSPA8

    2017-04-24(月) 22:30:45 [削除依頼]
    結構深く入ったはずなのに、ダメージを感じさせない。

    私を写したその瞳は、怪しく笑っている。

    Xのスイッチが入ってしまったようだ。

    足を負傷したとは思えないスピードで間合いを詰めてくる。

    降ってくるナイフの重みも増した。

    初めて見る、本気のX。

    もう手を抜いてはいられない。

    覚悟を決め、私もXへと踏み込んでいく。


    格段に速くなった身のこなし。

    無駄のないナイフさばき。

    重みを増した殺気。

    互いのそれらがぶつかり合う。

    大きくなっていく刃と刃の当たる音。

    多くなるキュッと床を蹴る音。

    次第に荒くなる互いの息づかい。

    それらの音が、ここでどれだけ激しい争いが繰り広げられているかを物語っている。
  • 201 RIN id:JWRGSPA8

    2017-05-02(火) 14:45:59 [削除依頼]
    互いに一歩も譲らず、時間だけが過ぎていく。

    そうして20分が過ぎた頃、さらに高くなった刃と刃の当たる音の中に、明らかに違う音が混ざるようになった。

    そして、それに比例するように、少しずつ、けれど確実にお互いの赤の面積が増えていく。

    しかし、致命傷になりうるほどの傷はまだどちらにもない。

    刃がかする程度で、それも腕や足など命を左右するような所ではなかった。

    痛みは感じない。

    それどころか、体が軽くて仕方ない。

    全神経が極限まで張り詰めている感覚。

    いわゆる“ゾーン”に入ったのだ。

    超集中状態と言われるゾーン。

    そう簡単に何度も入れるものではない。

    8年のキャリアがある私でも、片手で足りるほどしか経験が無い。

    ゾーンに入れば、潜在能力以上のパフォーマンスになることもある。

    最高ランクの殺し屋同士の、最強の状態での殺し合い。それが今この場で繰り広げられているのだ。
  • 202 RIN id:JWRGSPA8

    2017-05-13(土) 23:58:53 [削除依頼]
    Xは楽しくて仕方がないとでも言うように口角を上げ、ナイフを振るう。

    最近はX自身が手を汚すことは少なくなっていたようだか、こいつは間違いなく、生粋の殺し屋だ。

    何人をも殺め、手を赤く染めてきた殺し屋。

    「ガキの頃から俺が仕込んできたとはいえ、お前はやっぱり根っからの殺し屋だな」

    楽しそうに、嬉しそうに、けれど動きは一瞬たりとも止めずにXが言う。

    今自分が殺し屋の顔をしていることは分かっている。

    同じ顔をした殺し屋が、目の前にいるのだから。

    私自身も、今この瞬間が楽しくて楽しくてしょうがない。

    私たちの真後ろは死という断崖絶壁。

    一歩間違えば、死へと落ちていく。

    けれど、この崖の淵にいるこの時が一番“生”を感じる瞬間。

    一番ワクワクする瞬間。
  • 203 RIN id:JWRGSPA8

    2017-05-14(日) 21:36:33 [削除依頼]
    「お前、自分が笑いながらナイフ振ってる自覚あるか。

    楽しくてしょうがねえだろ。

    ゾクゾクしてしょうがねえだろ。

    俺とお前は似ているよ。

    まあ、俺の一番弟子なんだから当然だけどな。

    お前は俺なんだ。

    こっち側に戻ってこいよ」

    「あんたのことは師匠だと思ってる。

    だけど、今のあんたには加担できない。

    あんたこそ、いい加減目を覚まして、自分のいるべき世界に戻ってきてよ」

    一瞬だった。

    その瞬間、私は腹になにか熱いものを感じた。

    燃えるような熱さの後、急激に襲ってくる激痛。

    あっという間に赤く染まり出すそこ。

    すぐに上から降ってくるナイフ。

    間一髪でそれを受け止め、ありったけの力を込めてその力を流す。

    数歩下がり、Xとの間を開ける。

    またすぐに次の一手を投じてくるかと思い身構えたが、間を縮める素振りは見せない。

    そこを見ると、既に真っ赤に染まっていた。

    燃えるように痛むそこを無視しようと務めるが、そうはさせてはくれない。

    この一手はかなりの痛手だ。

    休みのない攻防で息は上がり、体力の消耗も激しかった。
  • 204 RIN id:JWRGSPA8

    2017-05-14(日) 23:42:48 [削除依頼]
    私に多少の時間を与えても勝利は揺るがない、そうとでも思っているのだろうか。

    Xが攻め込んでくる様子は一向にない。

    随分と舐められたものだ。

    私の攻撃を、全ては避けきれていないくせに。

    癪には触るが、呼吸を整えられるのはありがたかった。

    気を抜くことは出来ないため、構えを崩すことなく呼吸をコントロールしていく。

    優勢に見えていたXも、さすがに肩で息をしている。

    「おまえ、強くなったな。

    ここまでだとは、思わなかった」

    「私は、クリムゾン。

    あんたの、最高傑作よ。

    なめてもらっちゃ、困るわね」

    「なんで、拳銃使わない。

    お前、銃の扱いは、下手じゃねえだろ」

    「あんたが、拳銃を使わないからでしょうが」

    ナイフ対拳銃なんて、つまらない。

    近距離型のナイフに中・長距離型の拳銃では、張り合いというものがない。

    簡単に言ってしまえば“スリル”だ。

    これを欠いてしまったら、はたして何が残るのか。

    生きるため、死なないために殺すのではない。

    私たちは、もうそんな所にはいない。

    この感覚は、裏の世界の人間でもひと握りしか理解できないだろうが。

    私たちにとっては、生きてること全てなのだ。

    私たちから殺しを奪えば、生きている意味など何もない。

    それなら、喜んで死への道を選択するだろう。
  • 205 RIN id:JWRGSPA8

    2017-05-15(月) 20:27:28 [削除依頼]
    「もし今お前が拳銃を使っていたら、俺も興醒めだっただろうな。

    やっぱり、お前は俺だよ。

    殺すのは惜しすぎる……」

    「だったら、あんたが死ねばいいだけの話」

    「悪いが、それはできねえ話だな」

    憐れむような、蔑むような、そんな視線が向けられる。

    「……なぜそこまで表裏同化にこだわるの。

    そこまで執着する意味がわからない」

    「お前にはわからないだろうな」

    「隼さんを殺してまで貫かなければいけない理由なんて、わかりたくもない」

    「俺は、目的のためなら何だってするさ。

    お前だって殺す」

    「……だから、自分を捨てた九条家にも取り入ったって?

    プライドの欠片もないわね」

    吐き捨てるように言うと、明らかにXの顔色が変わった。

    余裕がありそうだった顔から、今まで一度も見たことのないような形相へと一変したのだ。

    それはまさしく鬼の形相。

    「おまえごときに何がわかる!

    山城から何を聞かされてるのかは知らねえが、俺は九条なんか知らねえよ!」

    高い天井を突き抜けるような怒鳴り声。

    顔を真っ赤に染め上げ、額には青筋が浮かんでいる。

    そして、ありえないほど大きな殺気の波が津波のように押し寄せてくる。

    気を抜けば全て持っていかれそうになる程の殺気の波。

    どうやら地雷を踏んだようだ。

    「九条誠、これがあんたの名前なんでしょう。

    祖父が九条源次郎、父が九条正夫、兄が九条和彦。

    最も有力な政治家一家。

    そこに愛人との子供として生まれてきたあんたは、九条家には邪魔な存在でしかなかった。

    だから裏に売り飛ばされ、Xとして生きてきた。

    九条誠という存在を殺して。

    そうでしょう」

    「黙れ!! このクソガキが!!」

    そのままの殺気で突っ込んでくるX。

    私はその場から一歩も動かない。

    空いていた距離が一気に縮まる。

    構えられたナイフが一気に振り下ろされた。

    「ぅぐっ――」

    美しい鮮血が宙を舞い、舞った赤がはたはたとタイル張りの床に落ちていく。

    赤い噴水――。
  • 206 RIN id:JWRGSPA8

    2017-05-15(月) 20:32:08 [削除依頼]
    先に体を引いたのはXだった。

    「てめえ……」

    そう吐き出したXの腹部は真っ赤に染まった。

    赤く染まった白シャツを手で押さえ、私を睨みつけながらもその顔は歪み、呼吸はひどく乱れている。

    けれど、私を捉えている瞳が妖しく揺れた。

    私の左肩から胸元にかけては、さっきのXの一撃で大きく切りつけられていたのだ。

    「おまえ……わざと避けなかったな」

    あのXの構えは隙だらけだった。

    あんな感情に身を任せた動きで攻め込まれたのだから、避けることなんて難しくない。

    ただ、私はあえてそれを避けなかった。

    自らあの状況を作り出したのだから。

    1度目に九条家に触れたとき、Xは明らかな動揺を見せた。

    だから私は、そこに賭けた。

    あえて九条の名を出し、Xが勝手に逆上してくれることに。

    正直なところ、かなり危険な賭けだったと思う。

    もしXが逆上し、ゾーンに拍車がかかってしまえばひとたまりもなかった。

    一か八かだった。

    けれど、賭けは私の勝ちだろう。

    私にもダメージはあったが、それは想定内。

    Xをギリギリまで引き付けたところで腹にナイフを突き立て、最大限のダメージになるようにナイフをひねり上げた。

    自分自身へのダメージは最小限に留めたつもりだ。

    ギリギリで体を引いた分、傷は浅い。

    まだ、動ける。

    「“どんな手を使ってでも生き延びる覚悟を持て”。

    隼さんが教えてくれた、一番大切なこと。

    だから今回、私は完璧な勝ち方を捨てた。

    全てを終わらせることだけが、私の考える勝ち。

    手段は問わない」

    「おまえ、本物のアホだな」

    Xはこの言葉の意味、覚悟を察したのだろう。

    心底呆れたように笑っている。
  • 207 RIN id:JWRGSPA8

    2017-05-15(月) 20:35:40 [削除依頼]
    「そろそろ決着付けましょう。

    こんな体、お互いもう長くは使い物にならない。

    勝つのはどっちの正義か、白黒つけようか――」

    「どっかの映画みてえなセリフだな。

    どれだけ映画のヒロイン気取ったって、結果は変わんねえよ」

    互いに目を合わせたままの一瞬の間。

    この一瞬に、私たちの全てが詰まっていた。

    私たちの12年が。


    まるで示し合わせたかのように同じタイミングで地を蹴った。

    そこからは一言も交わすことなく、ただひたすらにナイフを振る。

    刃には血がべっとりとついている。

    互いに動きは鈍くなっていく。

    床にはもうどちらのものかもわからない血が飛び散っている。

    体は真っ赤に染め上げられている。

    それでも尚、その皮膚を切り裂こうとナイフを構える。

    どちらももう焦点は合っていない。

    光を失った虚ろな目をしている。

    それでも殺し屋としての血が、膝をついてはいけないと訴え続ける。

    その鳴り止まない警鐘だけが、己を支えていると言っても過言ではないだろう。

    もう自分が何のためにナイフを向けているのか、何のために立っているのかもわからない。

    Xを生かしては死ねないという思いだけが、意識の一番奥深くに根を張っている。

    それはおそらくXも同じだろう。

    私を生かしてはおけない。

    ただそれだけ。

    しばらく斬り合いが続いたが、どちらからともなく体を引いた。

    焦点の合っていなかった瞳が、その時だけしっかりとそれぞれを写した。


    ――最後の一撃。


    この一撃で、終わる。

    きっと、どちらも感じたはずだ。

    そう思った理由なんてわからない。

    理性なんて、とっくにはたらいていないのだから。

    本能的にそう感じたとしか言えないが、次で、全てが終わる。

    これだけは確かだ。
  • 208 RIN id:JWRGSPA8

    2017-05-15(月) 20:39:46 [削除依頼]
    大きく一度息を吸い込み、そのまま目の前の標的へ向かう。

    ナイフを避けることはしない。

    もうそこまでの体力はない。

    より大きなダメージを与えた方に軍配が上がる。

    だから、私は左手のナイフを投げ捨てた。

    攻撃力は片手よりも両手の方が圧倒的に上だ。

    こんな状態なら尚更。

    右手で持っていたナイフを両手で持ち直し、真横に振り切る。

    確かな感覚があった。

    しかしそれと同時に、体中に強い衝撃が走った。

    雷が落ちたかと思うほどの衝撃。

    その衝撃の反動かはわからないが、互いの体が吹っ飛ばされた。

    ゆっくりと開けた視線の先には、真っ赤な海の中に倒れている姿がひとつ。

    ゆっくりと広がる赤の中心に、いた。

    その肩が微かにだけ動いていた。

    けれど、自力で動く気配は全くない。

    あれほどの殺気も、今はひとつも感じられない。

    ゆっくりと瞬きをする。

    鉛かと思うほどまぶたが重い。

    しだいに、視界が黒くなる時間が長くなる。

    そんな視界の隅に、信じられないほど美しい紅が現れた。

    この紅は何?

    少し離れたところに広がる赤とは違う。

    もっと鮮やかで、妖しげで、煌めいていて、あたたかい。

    ああ、そうか。

    これが“クリムゾン”なのか。

    増えていくクリムゾン。

    今まで美しいと感じていた赤が霞んで見えるほどのクリムゾン。

    そのクリムゾンをも消し去る黒の世界へ、ゆっくり、ゆっくりと、いざなわれる――。




                     【了】
  • 209 RIN id:JWRGSPA8

    2017-05-15(月) 20:41:48 [削除依頼]
    【あとがき】

    『クリムゾン』ついに完結いたしました!長らくのご愛読、誠にありがとうございます。
    やっと完結できたという思いと、終わってしまったという思いとで非常に複雑な心境です。
    この話を思いついてプロットを作り出したのが高1の冬頃。実際に文章に起こし出したのが高2の春頃でした。そして完結が高校を卒業してからということで、プロットから考えると2年半程かけたお話です。よくまあここまで走りきったなと思います。
    久々に筆をとった話がクリムゾンでした。2年くらいのブランクがあったんですね。それがこれだけの長期戦になってしまったわけで、正直途中で何度か心が折れました。実は、ここまでの長編を書ききるのは初めてだったんです。久々で、しかも長編ということもあり、かなり練りに練ったと自分では思っています。いやー、頑張った(笑)
    そんなこんなで、かなり思い入れの深い作品になりました。

    とまあ、私の話はこれくらいにしておいて、本編の話を少しさせてください(確実に“少し”では無いですよ)。
    まずは、「これで終わり!?」と言う悲鳴が聞こえる気がします。はい、これで終わりです。この後紫蘭がどうなったのか、表裏同化がどうなったのか、私は知りません。一応作者ですので、こんな感じかな〜というのはありますが、それを公言するつもりはありませんし、今後書くつもりもありません。
    しかし、小説としてはここでendとさせてもらいますが、物語は終わっていないんですね。ここから先は、完結まで読んでくださった読者様の物語です。ハッピーエンドになるのかバッドエンド(この言い方はあまり好きではありませんが)になるのかは、皆様次第です。こうなるんじゃないかなー、こうなったらいいなーみたいな感想をくださる方がいらっしゃったら嬉しいですねえ。もしかしたら、自分では思いもしなかった物語が続いているのかも知れません。そう思うとワクワクします。だから、私はこういう、良い言い方をすれば余韻を感じられる終わり方、悪く言えば後味の悪い終わり方が好きなんです。読者様からしたら、スッキリさせてくれ!という感じかも知れませんが(笑)

    登場人物についても少し語らせてください。
    まずは灰原紫蘭ですね。はい、言わずもがな主人公です。
    彼女が女子高生という設定は、実はかなりあとになって付けたものです。国籍や年齢はあまり重要視していませんでした。最初、彼女には“クリムゾン”という名前しかなかったんですね。けれど、主人公なのでもう少しとっつきやすい方がいいかなと思って色々足していき、最終的に皆様の知っている灰原紫蘭となりました。殺し屋という未知の存在ですが、どことなく人間味が残っている、そんな人物像として伝わっていればいいなと思います。
    次はXですね。Xは、本当は悪役の予定ではなかったんですよ!悪役は別に誰かを置くはずだったんです。しかしまあ、Xが派手に動いてくれましたねえ。大暴れしてくれました。作者も驚きです。ここまで暴れてくれた子は初めてですよ。途中何度もこのままいって大丈夫か?と不安になりましたが、なんとか収まるべきところに収まってくれたかなと思っています。
    そして、この2人よりも書かなくてはいけないのが立花隼です。登場頻度はそれほど多くないのですが、間違いなくキーパーソンです。もしかしたら、Xや山城よりも。彼は、なぜか細々とした設定が多いんです。本編にはあまり書いていないのですが、紫蘭以上の情報量になってしまいました。何故かはわかりません(笑)けれど、私にとって大切なキャラクターにはなりました。
    紫蘭は、隼のことは純粋に師匠として慕っているんですね。Xも師匠ではありますが、どちらかと言うと上司という方がしっくりくる関係でした。そう考えると、紫蘭にとって隼は特別だったみたいです。
    実は、隼編を書いてみたいなーなんてひそかに思っています。隼に関してはサイドストーリーが多すぎるんですよ。すぐかどうかは分かりませんが、書けたらいいなあ。ざっくりとしたプロットは出来ているので、そのうち……。
  • 210 RIN id:JWRGSPA8

    2017-05-15(月) 20:45:01 [削除依頼]
    すみません、字数オーバーしました(笑)

    読み返してみると、あれだけ細心の注意を払っていたにも関わらず、ぽつぽつと誤字があります……。途中修正はほとんど入れていません。
    加えて漢数字、算用数字、半角、全角混ざっています。申し訳ありませんでした。さらに、この文章の前にこの一文入れればよかったなあ、なんてことも所々……。矛盾点もあったりします。突っ込まないであげてください(笑)別サイトでの投稿も考えているので、そういうものに関してはそちらで修正していければと思っています。もし読んでくださる方がいれば、探してみてください(まだほぼほぼ未定ですが)。

    さあ、案の定長くなってしまいましたね。それでは、このへんであとがきは終了しようかと思います。本当は次回作の告知とかできれば良かったんですけど、残念ながら未定です。プロットは既に何本かストックがあるのですが、どれも文章に起こしだしていません。新作を書くか隼編を書くか、はたまた同時進行で両方書くかも決めていません。というか、一応今年も受験生なので、書く時間があるかも不明です。なので、気長に待っていていただければ幸いです。
    最後になりましたが、長らくのお付き合い感謝致します。ここに頂けるコメントや準備板の方でクリムゾンの名前を上げてくださった方がいたりしたのが、本当に励みになりました。完結できたのは、読者の皆様がいたからです。
    重ねて御礼申し上げます。
    それでは、またお会いする日まで……。

    スレ番号:1469336272

                 2017.5.15 RIN
  • 211 前和田 id:V3n2wjqc

    2017-05-16(火) 19:43:44 [削除依頼]
    RIN様

     『クリムゾン』完結、おめでとうございます。私がこの掲示板に来てから、ずっと読ませて頂いていました。私にとってRIN様はとても尊敬する方で、勝手に参考にさせて頂いた部分もありました。すみません……。
     このお話は最初から最後まで、衝撃的な所が多く、驚きの連続でした。
     まず主人公が殺し屋で、しかもそれが女子高生で、更にそれとは思えない残酷さで、始めは思わずビビっていました(笑)時々、「あれ、紫蘭って本当に女子高生だっけ?」と思ってしまったほどでした。ですが段々お話が進むにつれて、紫蘭の人を思う気持ち(山城仁や立花隼とのやり取りなど)が滲み出て来ていたので、ああ、紫蘭もやっぱり普通の人間の感情があるんだよな……としみじみ思いました。少し白い部分が残っているからこそ、そのギャップは相当なもので……。
     それから、結末が自分の予想と全く違くてびっくりしました。私は、紫蘭がXこと九条誠を殺して、それから彼を取り巻く表裏同化の人達と、裏・世界規模の大戦争をするのかと思っていました。ですが、とても切ない終わり方で、
    「ええええ!?」これが直後の感想でした。
     紫蘭……死んでしまったんでしょうか。私はそう感じ取ってしまいました。彼女が最期に見た“クリムゾン”と言うのは、まさか自分の……。結局、二人は相討ちになってしまったのかな、と思います。地味ですが、あの後の神崎も気になります。紫蘭が帰ってくることを信じて、ずっとずっと待ち続ける場面を想像すると……うわああ、悲しいです! ですが、紫蘭はXとの戦いで初めて生きている感覚を噛み締めたんだし、彼女にとってはあれが一番幸せだったんでしょうかね……。
     すみません、表現足らずでよく分からない感想になってしまいましたが、このお話が完結したことを、私はとても嬉しく思います。二年半の執筆、本当にお疲れ様でした。私もRIN様のように、もっと豊富な知識と、色々な表現方法を蓄えられたらいいなと思います。
     最後に、こんなに長文乱文になってしまい、申し訳ありません。RIN様には準備板の方でもお世話になりましたし、感謝してもし切れません。
     本当にありがとうございました。
     
  • 212 RIN id:JWRGSPA8

    2017-05-17(水) 00:58:52 [削除依頼]
    前和田様

    最後までお付き合い頂き、さらに感想までありがとうございます。
    前和田さんにそのように言っていただけるなんて、嬉しい限りです。
    読み切った時の感想、作者としてはしてやったりです(笑)
    なるほど、前和田さんの物語はそのように続いているのですね。
    相打ちになったあと神崎がどうなったのか、表裏同化がどうなったのか、よければ色々妄想してみてください(笑)

    今後も前和田さんにはお世話になることと思います。
    どうぞ宜しくお願い致します。
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