Suicidal War.2245コメント

1 缶 id:bUU.rGM.

2016-05-08(日) 14:17:44 [削除依頼]
10年ほど前に現れ、人々を脅かしてきた怪物、"ファイント"――
そして同時期頃に対抗馬かのように現れ始めた能力者。
それを総括し、防衛軍として強化していく組織、
「クリーガー」に今年より入隊したソラ=シリカン。

彼の能力は、この世界ではとても異質で異端とされるものだった――
その能力を強奪すべくファイント陣営が総力をあげ、
クリーガーに攻撃を嗾け始める――。
  • 226 缶 id:tCK4gaI3

    2017-04-22(土) 18:04:16 [削除依頼]

    フェルゼン=ノームの能力である
    地亀(アンデッドノーム)はその杖の先に触れた物を破壊する。
    地面に当てれば周辺の地面が地割れを起こすし
    建物に当てれば壊滅する。
    人に当てれば、人でなくなる。生命でなくなる。
    生物でなくなる。命はなくなる。
    つまりいまフェルゼンがヴォルケに対して行おうとしたのは、
    もしくは行いかねないものは、
    その生物を生物でなくすことである。

    彼は――ヴォルケはそういう人間ではない。
    フェルゼンはそう思っていた。
    いや、そうだった。筈だ。
    確信にも似た核心であった。

    (罠……いや……?)

    誘いでもかけるかのように、
    ヴォルケは左手で平然とその杖を掴んできた。
    そして競り合っていた剣を一度引くと、向きをかえ、
    速度を変えて自身の右側から振りかぶった。

    キンッ。

    「ッ……!!!」
    流石に反応速度ではフェルゼンが断然上であった。
    「ふっ」
    ズオォォッ!!!
    突風、強風、暴風。
    兎に角強い風がフェルゼンの眼前から襲いかかった。
    「しまっ……」
    その風にフェルゼンは飛ばされるとともに、
    左手からその杖を放してしまっていた。

    「不可思議な武具なぞ捨ててしまえ。
    武力を誇るのならば、剣をとれ」
    とばされ、彼は岩場にたたきつけられた。
    大きな音と共にそこ一帯の岩山が崩れて
    フェルゼンが下敷きになるような状態であった。

    「呆れた……と言わせるなよ、イストモスの将。
    ここでくたばって貰っては此方とて恥だ」
    言葉とともにぽい、とその辺りにヴォルケは杖を投げ捨てた。
  • 227 缶 id:tCK4gaI3

    2017-04-22(土) 18:04:40 [削除依頼]

    ぼこ、と瓦礫の山……もしくは山の瓦礫から音がすると
    ガラガラと一部が雪崩のようにくずれ、中から人影を現した。
    「はっ……はっ……」
    「流石に一芸という事はなかったか。
    しかし可笑しいな、こうも弱弱しい存在だったか?」
    「手の内どころか……正体すら隠してる奴が言うかよ。
    肝座ってるなら早く本性をみせろってーのっ……」
    「本性も何も……ヴォルケ=ルフトに相違ないし間違いない。
    まごうことなき存在であるが?」
    「あぁ、そうだな。土台から顔から体躯から……
    何から何まで……そっっっくりつーかヴォルケだよな。
    だけどあからさまに戦い方がらしくねぇんだよ」
    「……」

    奥まで――深くまで――真底まで言葉を突っ込むと
    毎度この調子で、否定するわけでもなければ
    その逆に肯定するわけでもなく
    更にははぐらかすわけでもなくヴォルケのその口は閉じる。

    「答えたくないのか?」
    「……必要がないだけであるさ。
    眼前に広がる戦士を凝視せよ、見目ヴォルケにこそ違いがないのだ。
    貴様が対峙しているのはヴォルケだ、と……
    間違ってなぞいないのだ。もっと誇れ、覚えを頼れ」
    「それから、その口調だよ。
    胡散臭さを跳ね上がらせている。詐欺師でもスパイでも
    相手をハメるための交渉だとしても
    もっと真面な口調と口上が用意されているもんだってーの」
    「なるほど、なるほど」
    「その胡散臭さで答えてもらえるとは思えないが……
    お前の外見のソレは……ヴォルケそのものなのか?
    ただの変装めいた能力か?」
    「そうさな、答えるとすれば私はヴォルケであるし
    ヴォルケ以外の何者でもないという事さな」
    (やはり話にならない……か、殺したくないのだけどな……)

    目を一度つむり、深呼吸をした。
    それから瞼を開きその先をよく見つめる。
    その世界をよく見つめる。

    (最優先事項としては、杖を握る事。
    その次にヴォルケを行動不能にすること。
    それだけだ)
    距離と、足場を足裏から確認して
    ジリジリと滑らせるように半歩進んだ。
    小石がぱら、と瓦礫から少しばかり崩れ落ちる。
    そして――

    ダッ。

    一気に間合いを詰めていく。

  • 228 缶 id:IuABtJ0Z

    2017-04-23(日) 13:48:13 [削除依頼]

    (単調だな……?)
    フェルゼンの駆け方はただまっすぐであり、
    愚直なる正面突破だった。
    だからこそヴォルケは真正面に息を吐いた。
    「……っつぇえいっ!!!」
    彼のその行為が始まるよりも先に、フェルゼンは身をかがめ
    更に横に体をずらしていた。
    忽ちのうちにヴォルケの横をすり抜けて、
    放られた杖を手に握った。

    「っ……はっ……はっ……」
    「……」
    無言でヴォルケが通り過ぎたそのフェルゼンの方を向く。
    それとほぼ同時にフェルゼンは杖を
    老輩の杖であるかのようにその先端が地につく形で
    手を重ねて構えた。
    こつん、という音と共に彼の眼が鋭くなる。
    「息を吐くよりも先に、ヴォルケ。手前の足場は崩れるぞ」
    「壊したくない……と言ってた気がするのだがな……?」
    「この際仕方がないというやつだよ。
    根城の再建に関してはイストモス側で進めさせてもらうよ」
    「だったら……今そうして話している内に
    行えばよかろうものを何故しない?」
    「てめぇがてめぇでないと断言しきれないからに決まってる」

    静かに呟いた。

    「敵方に情けをそこまで掛けられるのは不可思議な物だな」
    ジャキ、と剣先をフェルゼンの方に向けると
    すう、とヴォルケは息を吸い込んだ。
    剣をゆっくりと矛先は変えぬままに
    上へ上へともっていく。
    彼の口元とフェルゼンを捉える剣先とが合致したあたりで
    ヴォルケが息を大きく吐いた。
    「ふうっ」
    ブンッッッ!!!
    まるで弓を射ったかのように剣はまっすぐに、
    且つ高速に飛んでいく。
    そして、フェルゼンの頭直上をかすめて行った。
    「!?」

    唖然としたヴォルケの表情。
    狂いが起こったことに対する、懐疑の顔であった。
    バっと彼はフェルゼンの足元を見た。
    その足は岩場に隠れて、見えなくなっていた。
    先ほどまでは足の動きが如実にわかるほどに、
    そこは鮮明に映っていたと思っていたのに。

    「いやぁ……微調整が難しい……」
    ニヒルな笑みを浮かべたフェルゼンがそこにはいた。
    「自らの……足場を崩した……ということか」
    「ご明察だ。まぁヴォルケ自体バカではないし
    ヴォルケでなくともこんなことを画策するだけの智慧を持つだけある」
    「貴様こそ斯様な策を講ずる脳があったわけか」
    「知った風な口ぶりだな」
    「無論だとも。ヴォルケ=シルフであるからな」

    彼の否定であり肯定はまったくもってやまない。
    少なくとも偽物であることは一向に認めようとはしなかった。
  • 229 缶 id:nqhpD50J

    2017-04-28(金) 20:49:38 [削除依頼]

    「ま、操りの類なら脳みそつーか海馬か。
    ん中まで見れるとしても不思議じゃねぇか」
    「しつこいな、逆に問うとして
    如何様にすれば偽物でない、と。本物であると認めるのだ?」
    「降参したら、かな」
    「どちらの手立ても捻じ伏せるのみということか」
    すっとヴォルケは頭を垂れるように下げると
    ふう、と息を軽く吐いた。
    途端に彼の体は重力を失ったかのように上へと飛び上がった。

    「ジャンプすりゃあ俺の能力が意味ないってか」
    (あ――いや――)
    フェルゼンは右の足の裏に力をためて、
    何時でも蹴りだせるように構えた。
    じり、と左足をわざとらしく右足より後ろにやった。
    (息による範囲攻撃――か)
    フェルゼンのいる場を見つめ、
    「ふっ!!」
    息を大きく吐いた。

    ダッ!!!

    しかし、その息の方向からは何も起こらない。
    ただの、ただの大きな息。
    風虎(シルフフォーラー)ではなく。

    同時に左足で最初に蹴り後ろへと飛んだ。
    それを見越していたかのように、
    ヴォルケの顔も少しばかり上へと向いた。
    そして、もう一度――
    「ふっ」
    彼はもう一度息を吐いた。

    フェルゼンはそれよりも先に、力をためていた右足で
    反対方向へとかけるべく――
    前方へと駆けるべく、地を蹴った。

    激しく勢いのましたヴォルケの息である
    風虎(シルフフォーラ―)が地へと落ち、
    砂埃を巻き上げると共に
    まるで巨大な岩が落ちたかのような程の轟音。
    それと衝撃波が襲った。

    「!」
    その暴風による直接的な衝撃こそ避けたものの、
    地に当たったことによる衝撃波に巻き込まれて
    ふわっと彼の体は地から離れて浮き上がった。

    一撃目の息はヴォルケによりフェイントであり、
    二発目こそが本当の攻撃……のつもりであった。

    「っと……杖ェッ!!」
    一瞬放れそうになった杖を強く握った。
    態勢悪く転がり、右腕を少々ばかり地面に強く打ったことで
    杖はなんとか離れずに済んだ。
  • 230 缶 id:x0EcWU3w

    2017-04-30(日) 15:14:54 [削除依頼]

    (記憶してる威力より少し及ぼされる範囲が広い……。
    息事態の出力を見誤ったのか……一番底を隠してたのか……
    それとも……)
    物憂いな表情をしつつ地面に着地するヴォルケを見ていた。
    フェルゼンの中ではいつまでも
    眼前で立つヴォルケが別人であるという認識ばかり過っている。
    だが確定的で確実的な確証は全く持って見えてこない。
    当然の言えば当然なのかもしれないが。

    (……ヴォルケであれば……まぁこんな策略も思いつくか……)
    「避けたか」
    「息の吸いが無駄に大きかったこともそうだし
    息はいて飛ぶ位置と目先が俺を狙ってるようにしか
    見えなかったからな。
    んで、俺もわざと左足に力を貯めてる風を装って、
    ただ後ろに避けるくらいの算段だと思わせてただけだよ」
    「流石に将を担うだけあるか。
    二激目で殆どを決すつもりだったのだがな」
    「これでも最強候補を叫ばれてる存在だからな」

    北地区、イストモス。
    そこを担う隊長であり将、フェルゼン=ノーム。
    そして彼が有する能力、地亀(アンデッド=ノーム)
    一言で言えば彼は、
    そしてその能力は向かう所敵なし、というものであった。
    地の力からして並外れたものであり
    加えて彼は若くして将となり、幾たびの戦線を駆け抜けた。
    ソレを通して培った経験則からなる技術。
    全てが規格外で、だからこそ神の力に選ばれた。

    とは言え最強を謳われている、という話であり
    本人自身は全くソレを鼻にかけていない……ということはないが、
    それでも本人にしてみても脅威なる存在はそれなりの数がいる。
    それこそ、東地区……
    ヴローシィとよばれる地区を治める者であるとかがそうである。

    (最強っても……此奴に苦戦してるんじゃ、全然なのかねぇ……)
    少し皮肉そうに笑ってみせた。
    「ふう……」
    息を整えるべくフェルゼンは大きく息を吐いた。
    それと共に杖を右手で持って、
    クルクルとバンドのように回してみせた。

    「そろそろ蹴りを付けたい所なのだがな」
    「俺も同意見だねぇ。
    ホンットに、手前を殺すほどの意気じゃないと無理なのかねぇ」
    「端からそうすればよい物を……」
    「そうかい。じゃあ、先に謝らせてくれよ、ヴォルケ=ルフト。
    それとアネモスの兵士と、お前にある筈の血縁と、この地自体に」

    杖を両手で構えて杖の先を地にカン、とつけた。
  • 231 缶 id:A6a7tdso

    2017-05-01(月) 18:31:58 [削除依頼]

    「さぁ――雌雄を決そうか、アネモスの将――」
    雰囲気が変わる。
    先ほどとは打って変わって、何事にも怯まず、動じず、
    尚且つ俯瞰ともいえるかのような佇まいと、
    殺気。

    「――地亀(アンデッドノーム)――」

    彼の――眼前に広がる全てが――
    捲れ上がる。隆起する。地割れを齎す。
    地を崩し、物事を無にするかのように帰す。
    0.1秒と経たぬ間にその地割れであり崩壊であり
    壊滅とも呼べる"ソレ"はヴォルケの足元に辿り着き、
    足場を無い物にした。

    「!!!?」

    出力が違う。
    威力が違う。
    予想と違う。

    息を吐いて宙に浮こうと試みたが、
    コレは何かもう次元が全くもって違っていた。
    彼が宙に浮くメカニズムはちゃんとした足場があるからこそ……
    つまりは空気の流れが作れるからこそである。
    だが――

    瓦礫のようになったと思った次の瞬間には、
    その足場は砂粒のようになっていた。

    (……っ!ま……前に息をッ……)
    足を地につかせようとヴォルケは焦りながら下に向けていた
    首および顔を前に向かせた。
    そこで見えた光景は、真っ暗だった――

    「地亀(アンデッドノーム)」

    知らぬ間によって来ていたフェルゼンが、
    その自らでもっていた杖先をヴォルケの額に当てていた。

    ピシ。

    ヴォルケが――生命が生命でなくなっていく。
    人間が人間でなくなっていく。
    兵士が兵士でなくなっていく。
    ヴォルケ=シルフがヴォルケ=シルフでなくなっていく。
    頭が粉になる。
    口が粉になる。
    全身が灰になっていく。
    何もなかったかのようになっていく。
    空虚になっていく。
  • 232 缶 id:UHZDW9tm

    2017-05-05(金) 14:54:49 [削除依頼]
    フェルゼンは彼の全身が朽ち果てるよりも先に、
    腹の辺りに足裏をあてて、押し返し
    その反動で自身がいた位置あたりにまで跳んで戻った。

    「すまねぇな、ヴォルケ。
    若しくはヴォルケの猿真似。
    舐.めてかかってたわけじゃないがよ、
    抑えるのが下手糞でな」

    崩れて深い深い土の穴となったそこに、彼は静かに呟いた。
    彼が手を抜いていた訳ではない。
    ただあくまで、制限を食らっていただけである。
    ヴォルケを殺さない、と。
    だからこそ殺さないように力を適正なレベルにして戦っていた。
    舐.めていた、どころか煩わしいほどに手古摺っていた、
    と言った方が正しいほどである。

    「さて、此奴がこうなった原因を探り当てなきゃならないな」

    ずっと彼が感じていたヴォルケ=シルフへの違和感。
    結局最後まで認めこそしなかったが
    言動が殆ど偽物だと――そうでなくとも
    別の誰かが一枚かんでいるというのを表していた。
    だが、いや、だからこそというべきなのであろうか、
    その正体自体は全く持ってヒントすら与えることはなかった。
    強いて言えば、途轍もなく胡散臭い喋りをするということ。
    しかし、そんな口調に彼は心当たりなど無かった。

    (語彙力はまぁ……ある雰囲気だが……
    ヴローシィの将……ってことはねぇだろうしな。
    アイツはこんな類の能力でもないし……)

    ヴローシィ……即ち東地区。
    そこの長となり地を治める、神の力に選ばれた者は偶然か必然か
    知将の役を担うものばかりであった。
    そうであるから、フェルゼンは幾度となく彼を――
    ヴローシィの兵士を警戒していた。
  • 233 缶 id:TkFj07hU

    2017-05-06(土) 20:06:11 [削除依頼]

    とは言え今回のこの戦いにそこの兵士が絡んでいるとは
    フェルゼンには考えにくかった。
    理由としては単純明快で、
    一枚かんでいるのだとしたら、あまりにも稚拙で粗雑な計画だと、
    謀略だと感じたからである。
    その雑味こそが意図である――と
    考えなくもなかったがしかしそうだとしたらメリットがない。
    フェルゼンとヴォルケは確かに二人で戦っている訳で、
    簡単に言えばイストモスの地区自体は蛻の殻……
    という程ではないにせよ戦力は現在落ちているといえる。
    だがそれ自体は元々の戦い……即ち
    イストモスとアネモス、その二つの戦いが起これば必然的な物で
    ヴローシィという第三勢力の有無などは関係ない。

    少なくとも、彼を――ヴォルケ=ルフトを操るか
    若しくはなりすますか、どちらにせよそのような必要はないのだ。
    ただ傍観して、静観して、フェルゼンが攻め入った所で
    北を攻め入ればいいだけなのだ。
    尤もその程度でイストモスの支配などは不可能な訳だが。

    なんにせよ、こういった形の参戦はメリットはない。
    フェルゼンの経験則としても、
    そのような行動をとる将だとは彼は思いにくかった。

    「だとしたら、南?」
    南地区――プロクスという名のその地にも当然
    神の力に選ばれた者が存在している。
    が。
    「アイツにそんな考えないだろうし、
    ソレにもっと真っ向からくるか」
    やはり違うと彼は判断した。
    「勢力の外側……?もしくは……」
    考えながらフェルゼンはヴォルケが根城にしていた
    基地の前に辿り着いた。

    (ヴォルケが最初飛び出してきたとき、
    特に物音らしき音はしなかった……。
    動く気配だったりもしなかった……)
    偶然だとか気のせいだとかでは腑に落ちない何かが
    フェルゼンの脳裏にはあった。
    具体的に何か、と言えるものではないが不思議な確証ではあった。

    「少し見回ってみて……誰もいなかったら向こうに戻るか。
    話の断片くらいでも知ってる人間はいるだろう」
    そうして彼は動き始める。
  • 234 缶 id:KUAIuiW4

    2017-05-11(木) 21:13:23 [削除依頼]
     ■   ■
  • 235 缶 id:KUAIuiW4

    2017-05-11(木) 21:13:48 [削除依頼]

    結局、彼が得られた情報は少なく、強いていえば
    この場……即ちこの拠点には誰一人としていない事。
    いや――いなくなった、というべきだろう。
    蛻の殻に"されていた"――。

    見て回って、見張りの姿はなかった。
    実際に中に入ろうとしたが止める者……
    門番だとか監視とかそういった類はやはりいなかった。
    中には誰もいなかった。

    だからこそ、というべきか当然というべきか
    フェルゼンは腑に落ちないし違和感を覚えている。
    "おかしい"
    "基地を見捨てる――という人のいなくなり方ではない"
    "――外に出る事すら能わなかったという方が正しい――"
    別段内壁に血が付いてるわけでもない。
    人の残り香があるわけでもない。
    勿論、人の亡くなった跡が無惨に放置されていることもない。
    寧ろ彼としてはその方が原因を探りやすくて助かった、
    という程である。

    (逃げる、という選択肢であれば――
    ここまで物を残す行為は果たして正しい選択か……?)
    人が出払ったはずであるこの場には依然と
    武具に資金に資料に、と物が放置されていた。
    つまりは誰も何も持ち出したという後には見えなかったのだ。
    (資料……連絡事項から作戦事項から……武具に関するモン……
    筒抜け状態にする意味は……まぁ無くもない?)
    言うなれば、目に付くところに置いて
    敵方に見つかればその情報は敵方の軍で共有される。
    例えば布陣であればその布陣がそのままばれるわけだ。

    即ち、騙すことも可能ということにはなる――
    なるが――
    (ヴォルケを倒さなければ此奴は見ることができない……
    しかし基本的にヴォルケが倒れたら
    アネモスは一時的にしろ永続的にしろ壊滅となる……
    だとすればこうして騙す意味はなくなる――)

    やはり。
    彼の中は再び確信に満ちた。
    (だが――)
    東でも勿論南でもないという事実自体には
    確証がついた。が、
    それでもというべきか肝心のヴォルケを誑かしたのか
    操ったのかというソレの正体は依然と分からないままであった。
    「北西は……まだ戦闘中かねぇ?」
    (いや……まぁどの道ヴォルケを俺が倒したのであるから、
    長引くこともそう……ないか)

    杖を強く握り、フェルゼンは元の場所へと駆けだした。
  • 236 缶 id:vqXAVKJ9

    2017-05-12(金) 19:15:55 [削除依頼]

    それからは早いもので、
    ヴォルケという大将を――隊長を失ったとしった
    アネモスの兵士はすぐに抵抗をやめた。
    元よりジリ貧ともいえる抗戦であり彼らの戦闘への意思は
    殆どがヴォルケという隊長からなる者だったらしい。
    武具をすぐに放棄し、手を上にあげた。
    「あぁ……いや……別に何かするつもりはねぇよ、すまねぇな。
    ヴォルケとはもっと別の形で決着を付けたかったんだが……」
    「我々は……敗走の身ですから……別にそのようなお言葉は……」
    「そんでさ。聞きたいんだが……」
    ヴォルケ自身は何も答えなかった。
    だが彼の振る舞いと彼が残したアネモスの拠点は
    語らずとも多くを知らせている。
  • 237 缶 id:vqXAVKJ9

    2017-05-12(金) 19:46:09 [削除依頼]

    一度ほぼ無傷な状態の北西の根城へと案内させ、そこに
    残った兵士を集めた。
    対峙するイストモスの軍はフェルゼン一人だけで、
    右手には杖が構えられている。
    別段深い意味はないが、フェルゼン一人でも
    ただの兵士であれば対処できるという事と、
    逆にアネモスの側からしても敵陣が、大将でさらに
    一人悠然としていれば何かしらの意味合いを感じ取るというものだ。
  • 238 缶 id:vqXAVKJ9

    2017-05-12(金) 19:46:28 [削除依頼]

    「アネモスのあの拠点、あそこに誰か来たかしらねぇか?」
    「我々は……暫くはこの北西に拠点を構えておりましたので……
    少なくとも我々があの地を出た時には十二分に人はおりましたが……」
    「何時ぐらいの話だ?それ」
    「2週間程前……です」
  • 239 缶 id:vqXAVKJ9

    2017-05-12(金) 19:53:35 [削除依頼]

    然らば原因は探りにくいか。
    彼はひとり悩んだ。

    「ヴォルケがあからさまに普段と違う動きをしてた。言動もな
    ……誰かしらねーか……と言いたいが、まぁ知らんだろうな」
    「あの方は基本的に闘いであそこから動く事はない方でしたので……」
    「そうなんだよ」
    やけに、自棄に積極的であったのだ。
    誰も彼も見慣れない、接近戦であったのだ。
    勿論そのこともフェルゼンはアネモスの残兵に話した。
    戦った様子から――口調、態度、そして
    己の……フェルゼンの杖に対する警戒のなさと
    リングに対する疑念を、余すところなく全て。統べて。

    兵士たちの反応もやはりフェルゼンと同じように疑問のある顔だった。

    「本当に……それはヴォルケ隊長だったのですか?」

    そんな言葉が返ってきてしまう程であった。
    幸か不幸かヴォルケのあの勇猛果敢なのか怖いもの知らずなのか、
    という行動は誰もが目にしたことがなかったものらしい。
    それを理解したうえで、再びフェルゼンは問いただした。

    「――だから、俺はアレがヴォルケ単体で起こしたことじゃねェ
    って睨んでるんだよ。
    俺が信じられないなら拠点に帰ってでも確かめてくれ。
    先に言っとくが、俺が殺せば大概死体が綺麗に残らんからな」
    しかしアネモスの兵の中に疑う者がいなかった。
    素直なのか、興味がないのか、なんなのか。
    疑ってほしかったわけではないが、こうも簡単に信用するのか――
    とフェルゼンは若干ながら複雑な心境になった。

    「信じるんだな――ま、話が早くていいが……
    で、可能性としては大凡二つ……
    "操っている""成りすましている"」
    人差し指と親指を立てながらそう言った。
    だが兵士の中にそれらしい心当たりがある人間はいなかった。
    (もちっと手加減すれば……あぁいや、
    それだとジリ貧になってた可能性があるしなぁ……)
    少しばかりの後悔。

    とは言えそれをしていても埒が開くわけではなく、
    意味もなく時間が過ぎるだけになる。
  • 240 缶 id:9xV5WrAJ

    2017-05-14(日) 13:35:25 [削除依頼]

    「あの……」
    一人のアネモスの兵士が恐る恐る、という雰囲気で
    フェルゼンに発言した。
    「カメラが……確かあそこに在る筈ですが……
    幾ら警戒態勢を敷いたって……例えばワープとか、
    能力次第では掻い潜れてしまいますし……」
    「もしもそうだとしたら
    そもそも基地内の人が全て死んだことにはならん。
    監視カメラがあればそれを監視する人間が必要だろうが。
    人は、すべて死んだ。て言うかそもそも確認済なんだ」

    フェルゼンはヴォルケが構える基地のほぼ全てを――
    端的に言えば独りで、しかもアネモスの敵勢力として
    入れる部屋は全て入ったし全て確認をした。
    監視カメラも当然廊下を通る度位置を確認していた。
    その結果として――蛻の殻であったのだ。

    「まぁそういうことだ。
    とは言え壊されていた所とそうでないところがあった。
    恐らく当人が通った道を示すものの手掛かり成りうるし、
    更に言えばコレでワープ系という線は薄くなる」
    「薄く……?」
    「そもそもワープは座標上を瞬間的に移動するものだ。
    とすればそもそもカメラを壊していく必要はない」
    「だからワープ系能力ではない……と」
    いや、
    とフェルゼンは否定した。
    勿論今言ったことが嘘ということはないし当たり前の事である。
    懐疑を抱いている兵士に彼は説明した。

    「ワープの仕組み次第だ。
    例えば、時間を停止させる能力とすればワープ染みた事は可能だが……
    カメラにまで及ぶものが否か、ということ。
    他だとそうだな。座標位置の確定方法との兼ね合いだな」
    まだ疑問が残っている風な顔つきの者がちらほらと
    伺えたのが分かると彼は立ち上がって説明してみせた。

    「ワープつってもさっき言った疑似ワープ以外にも
    考えられる種類があるだろう?
    この能力つーのは依然と謎が多いからな」
    「謎……」
    指を動かしてそれらしく説明する。
    「可能性の一つとして座標の周辺に移動するタイプだとか、
    高さの固定が出来ないタイプだとかな。
    その辺だとカメラに映るということを危惧するだろう。
    まぁ個人的にはワープの能力ということはない。
    カメラが壊されていた道、というものが門から続いていたからな」

    皆、得心がいった顔に変った。
    「さて、ワープ系に関しては可能性が薄くなった。
    じゃあ何ならば可能性足りうるのかという話をさせてくれ」
    深く彼は腰かけた。
    そして思い出したように言う。
    「て言うかそうさ。ヴォルケの行動、動作からして
    十中八九まぁ個人的だが"洗脳"若しくは"擬態"
    だと思ってる。その二つの内であれば
    洗脳系統の能力である確率が高い――」
    話を続けた。

    「そもそも擬態であればカメラを壊す必要はない」
    「でも……」
    何かを言いかけた兵士がいた。
    彼はその方を向いて話を聞いた。
    「洗脳だとして……基地を壊さず、人だけを殺した理由は……?」
    「それこそ能力が及ぶ範囲だろうさ。
    一定距離を置くと洗脳が解けるだとか……まぁ
    そこも追々探るとして……」

    彼はアネモスの兵士と長時間の議論と質疑応答を重ねた。
    フェルゼンが覚えた違和感と共に憶測を上げつつ、
    アネモスの兵士が該当しそうな心当たりを各々が言っていった。
    だがそれらしき人物は見つからなかった。

    「やっぱりヴォルケは殺さないべきだったか……」
    彼の後悔は尽きなかった。
    不可思議な正体の実体に気付かぬまま――。
  • 241 缶 id:9xV5WrAJ

    2017-05-14(日) 13:35:46 [削除依頼]
       ■   ■
  • 242 缶 id:8vOQNZDf

    2017-05-18(木) 11:46:46 [削除依頼]

    地を統べる隊長を失ったアネモスはすぐにフェルゼン等、
    イストモスの軍が管理することにこそなったが、
    フェルゼン自身の意向によって支配自体はとても緩い物になった。
    統治期間は勿論、軍部にしても基本的には
    アネモスの人間が勤める形で、ソレ等を監視する機関に
    イストモスの人間を幾人か登用した。
    勿論監視にしてもイストモスばかりにはせず、
    北と西で半々という形になっている。
    簡素に言えば殆ど形は変わらず、
    名ばかりの支配ともいえる状況になっている。
    勿論フェルゼンが幾度かその監視役であるイストモスの兵を
    監視と称して見に来ることも勿論ある。
    故にこの地は平和そのものだった。
    戦、という大きな障壁の一部が取り除かれたとはいえ
    アネモスとイストモス、両方の監視を行っているともいえる
    立場になってしまったフェルゼンはまぁ多忙を極めることにはなった。

    当然彼自身の戦はまだ残っている訳で
    鍛錬を怠ることは出来ないのだ。

    「フェルゼン隊長、そろそろアネモスの方に
    向かわなくては間に合いませんが……」
    「そんな時間か……すぐに向かう……」

    週に一度以上はアネモスに訪れることになっている。
    紆余曲折を経た行為で、フェルゼン自身も致し方ないことだと
    思ってはいる……が、今日はそれを終わりにすべく向かう
    心持であり心意気であった。
    つまりは――
  • 243 缶 id:CUk35XB2

    2017-05-19(金) 19:46:51 [削除依頼]

    現在仮、という形で……当然ながら神の力に選ばれてなどいない
    ただの文官が一番の権力基地位を有している形になっている。
    「新しく……隊長を……?」
    「そろそろ神の選定者くらい出てくる頃合だろう?」
    「あの……それが……そのリングが無く……」
    かのリング……フェルゼンもつけているソレは
    神の力に相応しい者を自ら意思を持つ生命体であるかのように
    不可思議にも選ぶものだ。
    原理は謎であり現在の能力を持つ兵士が増えたことも相まって
    その存在理由と仕組みは不明なままでも受け入れられていた。
    若しくはそれが当然という考えをもつものすらいた。
    フェルゼンにしたってヴォルケにしたって他の兵士にしたって。
    どころか兵士でない物にしたって
    その在り方、有り方に苦言を呈すどころか
    疑問を持つ者の一人もいなかった。

    能力を一切持たない者がリングを嵌めても何も起きないが、
    なまじ能力持ちであると手首が締め付けられるような痛みに
    忽ちの内に襲われてしまう。
    それがリングが能力者を選ぶ、という行為であり拒絶反応である。

    その神の力に相応しいか否かを判断するリングは……
    「――俺かッ!!!!」
    フェルゼンがヴォルケを倒す際に粉にしてしまっている。
    下手な能力では傷一つ付かない代物だが、
    フェルゼンのような化け物染みたレベルにまで達していたら
    そんな前提は簡単にひっくり返る。
    「そういう事です……ですから……
    選ぼうにも物がなく……」
    「いや……多分まだ手立てがある……と信じてる……」
    変であり不思議な存在であるからこそ
    例え壊れようとも、消えようとも
    概念的に不安定であるからこそ手立てがある、
    とフェルゼンは思ってた。
    当然ながらフェルゼンにしたってリングに疑問を持ったことはない。

    とは言え手立てが思いつくことはなかった。
    畢竟この時間に意味はなくなった。
  • 244 缶 id:7uGsyMfH

    2017-05-21(日) 20:18:13 [削除依頼]

    最終的には何か決まったわけでもなく
    その日の会合は終わってしまった。
    「……過去に……リングが壊れたという件は……
    何かないものか……」
    帰路の中でフェルゼンは独り頭を伏せて呟いた。
    (中央にしたって……)

    中央、東西南北ともう一つ存在する勢力とは若干異なる存在。
    不可侵であり、尚且つ中立である。
    ココに何かしら重大な機関が備わっている訳ではないが
    少なくともこの地に定住しているものは
    何かしら絶大な権力であったり名声であったり価値を持っていた。
    ソレは即ち、中央都市という存在は
    異国というよりも異次元であった。
    ほぼ完全に勢力争いとは無縁で切り離されていて、
    平和な地であった。

    誰も彼もがそこへ住むことは羨み、望み、
    試み、そして姿を消している。
    誰かが防衛を担っている話は誰も聞いたことはないし
    勿論見たこともないのだ。
    だからこそ異次元である――。

    その存在こそ耳にしていれど、リング同様に仕組みは
    フェルゼンにしたって知っている事柄ではなかった。

    「何か、お困りのようだねぇ?」
    ふと、彼の耳には一つの声が入り込んだ。
    雑音でもない、雑踏でもない、幻聴でもない。
    伏していた頭を上げると、そこには一人の男が見えた。
    背が高く見るからに年上――というわけではない。
    顔つきが老いているという訳でもない。
    かと言えばフェルゼンが知る人物でもない。

    だが、眼前の男は不可思議にもフェルゼンに平然と話しかけてきた。
    敬いの姿なぞ何も無くそこにあるのは誰彼をも
    同じ空の下の平等とでも言いたげな言葉だった。
    それは一種の見下しと取れなくもない口調であったのだ。

    「……誰だ……?」
    フェルゼン=ノームにそんな言葉を聞く人間だ。
    イストモスの、他者を平然と塵に出来る能力を持つ
    人間にそんな口調で話しかける人間だ。
    奇妙以外の何物でもない。
  • 245 缶 id:eTLH4PZi

    2017-05-22(月) 20:27:06 [削除依頼]

    フェルゼンを知らない者というのはは余程の幼子か
    常識知らずであって、眼前の男は少なくとも
    幼子という言葉は全く似合わなかった。
    では常識知らずなのだろうか――?
    フェルゼンに限らず少なくとも各勢力における隊長は
    各々の敵の将だけあって知名度が高い。
    勿論名前のみならず顔だって知れ渡っているわけで、
    凡人であればこのように話しかけることなど出来ない。
    こんな、気楽に、気安く――。

    「何処ぞの変な研究員だよ。
    何さフェルゼン=ノーム、そんな頓狂な顔をして……」
    彼の名は、知っていた。
    故にどういう立場かも知っていて然りな筈である。
    更にフェルゼンは訝しんだ。

    「だから名を名乗れ、と言っている……」
    手に杖をしっかりと握らせ、彼は返答した。
    「そうだねェ……強いて言えばどこの勢力にも
    属していない人――まぁ簡単に言えばやっぱ変な人かな」
    「名乗る名がないか……?名乗れない訳でもある……か?」
    「はいはい、まぁ名としてはトレイヤルとう名だよ。
    当然、聞き覚えなんてないだろう?
    知っている名な筈がないだろう?
    数多と人を見、知ってきた将とは言え
    全く持って覚えがない名に違いないだろう?」

    フェルゼンは胡散臭さを感じた。
    いや胡散臭さ以上に……不快感を覚えたし
    何より訳が分からない、とう感想しか彼は持てなかった。
    何が言いたいのか分からない。
    何がしたいのかわからない。
    何が目的が分からない。
    フェルゼンには全く持って意味が分からないのだ。
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