Suicidal War.2170コメント

1 缶 id:bUU.rGM.

2016-05-08(日) 14:17:44 [削除依頼]
10年ほど前に現れ、人々を脅かしてきた怪物、"ファイント"――
そして同時期頃に対抗馬かのように現れ始めた能力者。
それを総括し、防衛軍として強化していく組織、
「クリーガー」に今年より入隊したソラ=シリカン。

彼の能力は、この世界ではとても異質で異端とされるものだった――
その能力を強奪すべくファイント陣営が総力をあげ、
クリーガーに攻撃を嗾け始める――。
  • 151 缶 id:sRKEmUS.

    2016-11-15(火) 17:52:02 [削除依頼]
     ■   ■
  • 152 缶 id:sRKEmUS.

    2016-11-15(火) 17:52:22 [削除依頼]

    会議室前。
    「レヴァン=ロジリアです。アスタ=ユークリッドを連れてきました」
    その言葉と共に彼は扉を開けた。
    二度ほど見た記憶のあるコの字に並んだ机と椅子の部屋。
    前の、隊毎4人を選定していた討伐演習の時とは違い
    やはり訓練時がゆえにそこにいる人の数は多くなかった。
    それでもやはりというべきか、総大将である
    ベル=ジンクルスの姿だけはしっかりとそこにあった。

    「失礼します」
    アスタがあいた扉のその会議室の前で真っ先に言った。

    「ああ、取りあえず座ってくれよ」
    「はい」
    椅子をひいて、座った。

    ちらりと誰にも気づかれない程度に
    横に座るレヴァンをアスタは見た。
    相変わらず体躯が凄まじく大きい。
    隣という事もあってその圧迫感だとかの感覚が
    一層彼には伝わっていた。
    若しくはそんな感覚を覚えた。

    「さて、まずはアスタ=ユークリッド、
    此度の大規模な戦争においての功績と栄誉を讃えよう」
    アスタから見て左側、
    つまりはコの字の真ん中に位置するベル=ジンクルスが
    開口一番にそう言ってきた。

    それに対してアスタは言葉は発さずにお辞儀だけをした。
    「先述したように、大規模であったあの戦況、
    そして幾人の遠征兵の投入。
    その中の一人を倒してくれたと聞いている」
    「そうですか。しかし……敵の目的自体は果たされています。
    それを阻止できなかったというのは
    自分にとっては失念した部分です。
    優先順位を見誤った……のかもしれません」

    「悲観することはない。君がいなければ街の被害も、
    被害者の数ももっと増えていただろう。
    さて……そこで君に一つ、提案がある……
    提案と言うよりは報告かもしれないが」
    「……」
  • 153 缶 id:sRKEmUS.

    2016-11-15(火) 17:52:42 [削除依頼]

    彼には、アスタには何となく察しがついていた。
    新兵である自分がわざわざ訓練を休んでまで呼ばれたのだから。
    「それは偏にアスタ=ユークリッド……
    君に軍階級を与えるというものだ」
    「なぜ、僕なんですか」
    「先程述べただろう?遠征兵を一人倒したという事。
    そだけでも充分過ぎる要素だと思うが?」
    「それであれば第四隊の中でも僕以外にだっているでしょう?」
    「ああ、そうだな。確かに他にも二名。
    二人でで、あるがもう一人、遠征兵を倒した者たちがいる」
    「その通りですね。彼らでは力不足と言うのでしょうか」

    「確かに新兵がたった二人で向こうの世界の精鋭を倒したというのは
    稀有な事ではある。力不足と言いたい訳ではない。
    様子見……とでも言うべきかな。
    君ならば恐らく既知であろうが、
    本来であれば軍階級と言うのは幾度もの経験を積んだうえで
    与えられる可能性を持つ」
    「だからと言って例外は数多とあるでしょう?」

    「その通り。だからと言って六月前のこの時期に、
    新たに軍階級としての昇格を新兵に持ち掛ける
    という事は今まで先例が無い。
    それだけに今の時期に3人も昇格させる事に関してはリスクを
    考えないわけにはいかないんだ」
    「……成程……リスク……ですか」
    「2か月という短い期間だけで軍階級を持つ、と言うのは
    異例であるといったが当然それが行われるのであれば、
    それだけの理由付けがいる」

    「先程言っていた物では足りない……という事はないですよね?
    でなければそもそもが持ち掛けるはずがないですし……」
    「充分素質足り得るものだ。だがその実績を幾ら持っていたとしても、
    幾らこちら側が認めた、という事を言ったとしても
    不平不満は大小なりとも現れる。
    ……周りに合わせると言うのはここにおいては皮肉な物ではあるがな」
    「そうであれば僕にしたって起こり得る……と」

    「まぁ……そうなるかもしれない。
    先に言っておくが、スケープゴートにしようとしているわけではなく、
    戦力の増強を第一に考えている。
    いうなれば折り合いをつけるという事だな。
    1人目の軍階級保持者を成立させ、様子を見たうえで
    可能であれば再検討する」
    「なる……ほど……」
    少し悩むしぐさをアスタはした。
  • 154 缶 id:2TDqWQb.

    2016-11-18(金) 18:20:59 [削除依頼]


    「軍階級を持つという事が、戦力増強に繋がる……。
    それはつまり、どういう点なのですか」
    「軍階級と言うのはそもそもとして、実力者……
    若しくは戦歴として長い者達に与えられるもの。
    軍階級を持てば、隊編成の権限を獲得できるのだ。
    そして警報が発令されれば、隊長……つまりは
    君で言うところのレヴァン=ロジリアによっての先導を必要とせず
    自らの意志と決定のみでの行動も可能となる。
    尤も、討伐するという事は大前提としてな」

    「……行動範囲は兎も角として、その……隊編成の権限と言うのは
    どこまで及ぶ物なのですか?
    新兵である、だとかの決まりは?」
    「新兵等は除いた編成された隊員は不可能だ。
    但し、本人とそこの隊長が認めれば転属することは可能だがな。
    しかし新兵であれば
    ある程度のボーダーラインに満たしていなければならない」
    「少なくとも……
    言い方が幾らか悪いかもしれませんが、
    僕の場合は隊員は殆どが、若しくはすべてが新兵からになるんでしょうね」

    途端にベルの表情が変わった。
    まっすぐ、と言ったような表情であったのが
    疑義を抱くような表情に変わり、言葉を返した。

    「何故だ……?」
    「先程の周りに合わせる話ではないですけれど、
    僕が軍階級を持つだけで不平を口にする人間が出ると言うのであれば、
    隊員として駒となる、なんていうのはもっと嫌に思う人間が
    出るのでは……と思いまして……それに
    僕が知る新兵以外の隊員が多いわけではないですから……」

    「成程、確かに在り得る事だな」
    「所で……僕が軍階級を持った場合、
    今の新兵第四隊に所属しているというのはどうなるのですか」
    「それは君の判断に任せる。
    過大評価かもしれないが、アスタ=ユークリッド。
    君のその知力をもってすれば戦略であろうと
    武具の扱いであろうと無駄に教えられなくても可能なのだろう?」
    「……さぁ、どうなんでしょうね」
    他人事みたいな口ぶりだった。
  • 155 缶 id:LgF6X9h.

    2016-11-22(火) 18:04:29 [削除依頼]

    「さて、他に質問が無いのであれば答えを聞かせてほしいところだが……」
    「……軍階級は……貰い受けます……が、一つ条件と言うか
    その……相談と言うか」
    アスタの答えに少しベルの目元が和らいだようだった。
    この二人以外に何かを言おうとする者は一人もいない。

    「言ってみろ」
    「ソラ=シリカンに関して、彼を僕は取り戻しに行きたいのです」
    ベルの顔が変わった。
    いや、ベルだけではなく隣にいたレヴァンも同じように
    驚嘆の表情に変わっていた。

    「おまっ……アスタッ……!!」
    「いや、構わん」
    レヴァンがここで漸く口を開き、止めに入ろうとした。
    が、それをベルが止めた。

    「……友人として、か?」
    「……僕だけ、ではないです。だとしても僕のせいではない、
    という事はない」
    「……それは、認めることは難しい。
    勿論向こう側の世界に行ったことは幾度とある。
    だがそこに新兵が伴っていたことはない」
    「……でしょうね。リスクが大きすぎるから、ということでしょう。
    そして、そこまですべきである新兵がいなかったから」

    「そういう事になる。兎にも角にも、新兵にそこまでの無茶を
    させる必要はないと判断しているから今までそうしてきたのだ」
    「今は、その必要が無い……と?」
    「さぁ……どうだろうか。おいおい会議を繰り返して、
    どうするか、を決めていくのだから今の時点で断定できることはない」

    「ソラ=シリカンの能力は既知の事であるとして言わせてもらいますが、
    長く時間を空けすぎると此方が不利になる……かと」
    「……彼の能力を研究され、量産される、と」
    「そういう事です」

    アスタはベルに、総大将の言葉に対して全くもって退こうとしなかった。
    自分が責任のあるものとして加わっている筈だ、と信じていた。
    つまりは原因の種のつもりでいた。
    実際その認識自体は間違っていない。
    だが彼が出向く事柄ではなかった。
    彼と言うよりは新兵が出向く事ではない。
  • 156 缶 id:LgF6X9h.

    2016-11-22(火) 18:05:05 [削除依頼]

    「だからと言ってアスタが必要な存在である、
    という事には一切繋がらない。
    君は君自身の考えすぎな責任とやらに囚われきっている。
    自分の所為だと考えすぎているんだ。
    ……君はあの盤上の中で頭を働かしただけだ」

    新兵の眉が微かに動いた。

    「君は貢献以外は何もしていない」
    「そんなことは――」
    「あるよ」
    言い切った。言い切ってみせた。

    「認めないというならば、レヴァン少将。
    君の目から見てアスタ=ユークリッドはどうだった?」
    今度はベルが敢えてレヴァンに尋ねた。
    当然わざとであって、そこから言葉を引き出すつもりでいた。

    「……俺は……コイツに……アスタに大量に助けられました。
    アスタがいなきゃ恐らくもっと後手後手になっていた。
    アイツの責任だなんてとんでもない。とるべきは俺であるべきですし
    遠征兵まで倒しておいて更に
    ソラ=シリカンの責任をとる……つーのは物言いが過ぎる……」
    「だ、そうだ。
    ……此方としても君を高く評価している……だからこそ
    君の不手際だとソラ=シリカンの一件を問い質す気は全くもって無い、
    という意図は察しがつく筈だろう?君が無理して出張らなくていい」
    「そうですね」
    「……随分口ぶりが変わったな」

    アスタの顔は知らぬ間にもとに……若干の険しさが消えていた。

    「いえ……普通に考えて囮にしたレベルでもない限り
    向こうの世界に連れて行って貰えないでしょうからね。
    必要な存在と言うのを責任ではなくて、有能性から示していこうか、と。
    "遠征兵を一人で倒したという事""混乱する戦場でそれだけ動けた事"
    ……レヴァン隊長、ベル=ジンクルス総大将……
    御両名が散々述べた僕の要素です」

    「……なんだと?」
    「ですから、あなた方が僕に下した評価ですよ。
    責任だなんてまどろっこしい事を言うよりも
    自分が自分で望んでいる上で選択しているとしたら
    能力値としては問題ないと推測できますし、
    僕が参加しても大丈夫なのではないですか?」

    「……ではなぜ……君はそこまでして向こうの世界に行きたがる?
    下手に言い過ぎれば、下手に望み過ぎれば、
    向こうの人間だと疑われるかもしれないんだぞ?」
    「ソラ=シリカンをまずは奪還したいという事。
    そして向こうの世界を知りたいんです。真実を」

    真実。
    アスタはそう口にした。
    まるで何かが間違っている、と言いたげであった。
    彼のその言葉の二文字、それをベルは聞き返した。

    「今の我々の現状は、敵が攻めてきたから防衛しているというだけです。
    そこにそもそもの原因だとか発端だとか、
    向こう側の理由を教えられたことが全くなかったので……
    今の授業でも行われるのは歴史だとかだけですから……」
    アスタの言葉は止まない。
  • 157 缶 id:Hatc9/U/

    2016-11-25(金) 18:44:02 [削除依頼]

    「今までにも"何度か"遠征をしている……という事であれば
    向こうの世界で事情だとか技術だとかが分かるはずでしょう……?
    それが無いのであれば僕は今の時点では
    技術革新しか行えなかったと判断しています。
    案外、向こうの事情を知れば何かもっと根本が変わるかもしれない」

    「……君の夢は……遠大だな」
    「遠大ではなくて、平和主義であるだけです」
    「……正式決定とは言い切れないが……いいだろう、
    君のその願いは極力受け入れよう。
    その代わり君は正式に少尉だ」
    ありがとうございます、とアスタはベルにお辞儀をした。

    「話は以上だ。質問はないか?」
    「出来た時にでも、また」
    「そうか、時間を取らせたな」
    「いえ……有難うございます」
    そうしてアスタはもう一度礼をしてから
    レヴァン=ロジリアと共に会議室を出た。
  • 158 缶 id:Hatc9/U/

    2016-11-25(金) 18:44:28 [削除依頼]

    その道中。
    アスタがレヴァンに対して軽く笑いながら話しかけた。

    「レヴァン隊長、丸くなりましたね。敬語を使いすぎておられますよ」
    「はぁ?」
    「前……通信室での時は
    そこまでしっかりとした言葉遣いではなかったですから」
    「丸くなったんじゃねーよ、学んだだけだ」
    「そうですか」
    「それよりも、だ」
    レヴァンがアスタの頭を掴んだ。

    「手前に限ってありゃしねーだろうが、
    軍階級を持ったからって浮かれすぎんなよ。
    まだ少尉だ。少尉はスタートラインだ」
    「そうですね。じゃなきゃ軍寮長からの繰り上がりなんて
    可笑しな規則は出来るはずがない……」
    「それと、第四隊にまだ残るっつーなら人一倍シゴかれるぞ」
    でしょうね、とアスタは返事をした。

    「自覚がアンなら良いけどな」

    レヴァンもかすかに笑った。
    多少なりとも和らいだような雰囲気と言えど、
    全てが全て和らいでいるという訳ではないけれど。

    当然問題は山積みのままな訳で、
    それこそ先刻のソラ=シリカンの問題にしたってそうであるし
    アスタが勝手に進めている
    ムーリベ=トレイヤル関連の事にしたってそうである。

    「……」
  • 159 缶 id:Hatc9/U/

    2016-11-25(金) 18:44:41 [削除依頼]
       ■   ■
  • 160 缶 id:rdLPEJql

    2016-12-02(金) 21:09:19 [削除依頼]


    「う……ん」

    少年は言葉を漏らした。

    ゆっくりと開けた眼の先に見える景色を確かめようとしたが、

    彼は先程まで眠っていたようで光景は全てぼやけて見えた。

    そう理解してから次に少年は自分の名前を確認した。



    「ソラ……シリカン……だ……よな」



    名前を呟くとようやく目が改善されて、

    幾らか景色も見えるようになっていた。

    そして今いる状況を確認する。



    (……天井は見た事ない……気がする……

    照明……かなんかの明かりか……?眩しいな)

    目を細めた。

    今までの視界の不鮮明さにはこれも関わっているのだとここで理解した。

  • 161 缶 id:rdLPEJql

    2016-12-02(金) 21:10:20 [削除依頼]


    (……えっと……敵がやってきて……それで……どうなったんだ……?)

    自分の最後の記憶は

    同じクリーガーの新兵第四隊であるレントと多少話しながら

    帰還を急いでいたというもの。

    それから今の今までの記憶が無い。

    光こそ見えるがそれは人工の光であって外からではない。

    時間もわからなかった。



    動きたい、と次に思った。

    しかし動かなかった。腕も、足も。

    だが首だけは動くらしく彼はゆっくり左右を見た。

    (どこ……ここ)

    両手がよく分からないものでそれぞれ繋がれていた。

    (台……か何かにいるのか……?

    あぁ、アスタくらい頭良ければ抜け出せたのかな……)

  • 162 缶 id:rdLPEJql

    2016-12-02(金) 21:10:59 [削除依頼]


    クリーガーの人間の顔がチラついた。

    (イブク、アスタ、レント、ファイ……

    あぁダメだなんか憂鬱になりそうだ)



    改めて彼は見える限りの景色を見た。

    ぐるりと首を左右百八十度に回転させてみると、

    窓の一つもない鉄らしきものに囲まれた場所だった。

    己の角度の問題かもしれないけれどそうだとしても

    少なからず今言えるだけのことではそうである。

  • 163 缶 id:Q5fsl2SV

    2016-12-17(土) 20:55:35 [削除依頼]


    「……流石に手は引きちぎれない……よな……」

    ソラ=シリカンの能力は、体の欠損を生み出すことで、

    在り得ない位のパワーを一時的に手にするというもので、

    その力一つで戦力を簡単にひっくり返せる。

    但し勿論欠落しない限り彼は弱い。とても弱い。



    プツン。



    電気的な音がした。

    何かの電源が入ったかのような。

    「……!?」



    『やあ』

    「だ……だれ……」

    ソラは小声でそう呟いた。

    しかし小さすぎて相手には届いていないのか、

    はたまた一方通行の伝達なのか相手の反応は特になかった。



    『まずは問わせて貰おう。君はソラ=シリカンで間違いないか?

    声ははっきりと頼むぞ』

    「え……」

    一方通行の伝達ではないらしい。がしかし、

    これは答えていいものなのか、とソラの中で思考させている。

    そして数秒と経たぬうちに答えるべきではないと彼はそう判断した。



    『……黙秘か……流石にただの凡常の兵とはいえ分かっているようだな。

    ならばもしここで我々の質問に答えたならば、

    元の世界に帰すとすれば……君はどうでるかね』

    「……」

    『更に言えば君に関することのみの……

    つまりクリーガー全体の事ではないものだとしても……か?』

    「それだったら……」

    『まぁ……そんな都合のいい話ではないのだがね。

    君が黙秘を続けるのであれば、

    此方としても幾つか手段を講じねばならんから面倒だったのだがな』

  • 164 缶 id:ED0Lngrx

    2016-12-24(土) 15:58:10 [削除依頼]


    ソラははっとした。

    途端に思い出したのだ。

    (……レヴァン隊長が……ずっと前に言ってた……

    蜂……のファイント……)



    レヴァン曰く戦闘能力は極めて低い代わりに

    相手の情報を幾らか盗み取る小さな蜂の形をファイント。

    (もう……遅いのか……?)

    相手の声は少しの間止んでいた。

    そして再び何か聞こえた時には若干ノイズのような、

    雑音交じりの音だった。



    『君がソラ=シリカンであれば知っているだろうが

    我々には蜂を模したファイント……ビーネがある……

    コイツにはさした人間の情報を抜き取る性能があり、

    君らの情報も一部とってある……そして今から

    違うものを放って照らし合わせればすべてがすむことだ』

    「…………」



    嘘をつけばいいだけじゃないのか、とソラは思った。

    照らし合わせがどうのこうのとファイント陣営は言っていた。

    しかし彼らはソラがソラであるか否かを問い尋ねてきた。

    (僕の顔までは読み取られていない……のか?

    しかし……)



    「照らし合わせ……って……そもそもが僕が

    ソラ=シリカンっていう大前提の下……の話……?」

    敬語をつけるべきが一瞬迷ったが結局覚束ない口調で終わった。

    『君の腕をもげばいいだけの話だろう?』

    「……」

    ソラの疑いがさらに深まった。

    恐怖はもちろんある筈なのだがそれ以上に今の、

    この現状のどうにも穴が多そうな敵方の言葉に

    どうするべきか、という事ばかりに意識を注いでいた。

  • 165 缶 id:svdZMNml

    2016-12-28(水) 14:55:01 [削除依頼]


    「復活すれば事は全て済む。

    君がソラでなければそれでついでに殺処分してしまうだけである」

    1人の人間がそう言って笑っていた。

    ソラ=シリカンに話しかけていた人間だった。



    「……シュヴァハさん……語りすぎるのは愚策か……と」

    老齢の兵士にしてファイント陣営随一の戦士の

    フェルゼン=ノームがそう提言した。

    フェルゼン等は基本的に兵士としての仕事ばかりを

    任されるのだが、こうして何かしら有能な敵側の人間をとらえた時に

    対応……つまり今のシュヴァハと呼ばれた人間が行っている

    事を本来はしている。



    「フェルゼン=ノーム殿、御安心ください下手な真似はしませんから」

    (現にもうしていますが……)

    「……一先ずはシャオム隊長の回復を待つべきかと。

    そういう経験に関してはシュヴァハさんは低いでしょうから……」

    出来るだけ波が立たないように言った。

    つもりだったというだけなのだがしかし、

    当のシュヴァハ……シュヴァハ=シュターツマン

    はその意味が通じていなかったようで

    言葉を突っぱねて返事をした。



    「侮らないで頂きたい!私とて文官ですが故、

    こうした経験が無いわけではないのですぞ!」

    (……だからと言ってシャオム隊長には遠く及ばないと

    いう事なのですが……老齢とて、

    私も交渉術が下手ですねぇ……)



    呆れ軽く笑った。



    シュヴァハ=シュターツマンはファイント陣営の文官である。

    簡単に言えば国の運営……政治関連を担当する役職である。

    その中で、ではあるがシュヴァハは地位は低い。

    シャオム=ウンディーネはそれに対して武官であり、

    基本的に数日前程の規模ではないにしろ

    侵略における総指揮と、こうした……

    今シュヴァハが行っているようなことを本来であれば請け負っている。

    但し彼はアスタとの傷がまだ癒えておらずずっと病院にいた。

    どころか意識を失ったままで起きていない。

  • 166 缶 id:gR6YUqC9

    2017-01-07(土) 10:11:39 [削除依頼]


    (こうして見ると……シャオムさんは相当に

    知力だったようですね……彼が負ける姿は……

    いままで見たでしょうか……。

    相手が如何様な者なのか……残念ながら彼にしか分かりませんが

    それ程の手練れがいるとは……)



    眉雪の兵士は口元を手で押さえて考えていた。

    今の状況の事を。

    つまりは眼前に広がるソラ=シリカンに関することと

    意識を失ったままのシャオム=ウンディーネに関することである。

    (まずは……このシュヴァハさんがこのまま対応していては……

    孺子とは言え侮ってかかるべきではありません……)



    「どうした、ソラ=シリカン。大人しく答えろ」

    シュヴァハは依然として自分の失態というものに気づかず

    ソラ相手に語り掛けている。

    (私がいるとはいえ……

    ソラ=シリカンの能力の底を除けている訳ではありません……)



    「シュヴァハさん……下手に、ソラ=シリカンの

    能力を発動させてしまうと形成がどうなるかは分かりませんよ」

    「そうはいっても、フェルゼン殿が居られるではないですか」

    その本人が苦言を呈しているというのに、と再び呆れた。

    (シャオムさんの回復を待つしかないのでしょうかねぇ……

    この方の意識を気絶させようにも……加減が難しいところですねぇ……)



    前述したようにシュヴァハ=シュターツマンは文官である。

    つまりはフェルゼン等のように戦闘にたけているということは

    全くもって無いし寧ろ専門外であり、当然能力を持っている訳でもない。

    対してフェルゼンは老輩にして戦闘能力としても

    経験値としてもファイント陣営において1、2位を争う。

    偏に彼の能力が協力過ぎるからであり

    逆に彼は手加減することは苦手であった。



    能力がないままでは流石に気絶させるに至れない。

    が地亀(アンデッドノーム)を使用してしまえば死ぬことは間違いない。

    元より破壊がメインの能力である。

    流石に彼としても死をもってしてまで事態を防ごうとは思わなかった。

    と言うかむしろ肥大化してしまう。

  • 167 缶 id:6iCbtSgM

    2017-02-25(土) 16:57:29 [削除依頼]

    「私で対処できるとは限りませんが……」
    「フェルゼン殿でどうしようもないのなら
    それこそファイント陣営そのものが終わるでしょう」
    確かに正しいとフェルゼンは思った。
    それだけは言える事である。

    力量の差にもよるがしかしフェルゼン=ノーム
    という前述したトップクラスの強さを誇る老兵でさえ
    よもや"倒せない"となるととうとう手が付けられない逸物……
    基、逸者だった場合対処できる相手がほぼいない。

    (……そういえば……ルフトさんも確か……)
  • 168 缶 id:6iCbtSgM

    2017-02-25(土) 16:58:15 [削除依頼]

    「たいちょーさん!!!」
    病院の中で常識知らずにも泣きわめく甲高い声があった。
    「お嬢ちゃん、患者さんに下手にふれちゃだめだよ!」
    その声の主を医師が止めようとするが一向にやめない。

    声の主、ルフト=シルフは病院にいた。
    理由は彼女の隊長であるシャオム=ウンディーネのお見舞い。
    そして意識を取り戻さないという事実に声を荒げていた。
    子供故なのか取り乱しまくっていた。
    「先生、下がっていた方がいいですよ。
    この娘はちょっと危ない娘なので……」
    「いえ……しかし」
    「この娘の事は僕が対処しますので」

    ルフトを止めようとする医師に優しく語り掛ける者がいた。
    すらっとした体系と白い肌。そして爽やかすぎる笑顔の青年だった。
    すっと前に出てルフトの服の後ろ首あたりを掴むと
    サッと抱えて外に出て行った。
    「あっ……おい!コラ!!!放せ!!!変人!蛮人!」
    「蛮人は意味が違いますよ」
    ぺこり。
    「ご迷惑をおかけしました」
    そういって青年はルフトを抱えて出て行った。
    属にいうお姫様抱っこの状態で
    ルフトとは違う風を吹かせて。

    「上司めいれーだッ!!もどれ!!」
    「まずはマナーから守ってください。ほら、戻りますよ。
    怒りを爆発させるのはせめて外出てからにしてくださいね」
    「もどれって!!!」
    ダメです、と言うと青年は依然としてルフトを抱きかかえたままだった。

    「クリーマは私の部下だろー!!?」
    「そうですね。クリーマ=アインスは貴方の部下です。
    そしてあなたの上司はシャオム隊長でしょう?
    あの方からすれば騒がないでほしいと思ってますよ」
    「うっ……」

    そこでルフトは黙った。
    (これで少しだけ落ち着きます……)
    クリーマはふう、とルフトに悟られぬ程度の声でため息をついた。
  • 169 缶 id:sICBnOQ9

    2017-02-26(日) 12:16:47 [削除依頼]

    「さてと、ルフト隊長我々にも仕事があるのですから、
    出来るだけ早く戻りますよ」
    「やだよメンドくさい」
    「はいはい」

    適当に受け流してルフトを抱っこしたまま彼は病院を出た。

    「そろそろ歩いてくださいね。
    ていうか隊長の方が移動速度早いんですから」
    「連れ出したのクリーマだろー!ずっとお前がつれてけ!」
    「全く、子供ですね」
    いやまぁ子供なんだけれど。
    とクリーマは心の中で思った。口にしたところで何も意味はない。

    帰り道の道中でふとクリーマはルフトに尋ねた。
    「……そういえばシャオムさんは何であんなに重症なんですか?」
    「私が知るか!」
    「でしょうねぇ……」
    苦笑いを青年は浮かべた。

    (シャオムさんに単純な力で勝てる人がいるもんなのか……?)
    「あ……そういえば例の異端者っていうのは捕らえたんですよね。
    凄い強いって噂されていたあの……」
    「そうだよ。ブレンネンがさっさと捕まえてこないから
    たいちょうもあんなんなった」
    「ルフト隊長も確か負けたんですよね……?」
    「違う!!!!!!」
    甲高い声でぐわっと起き上がると、彼の耳に大声でそういった。

    「両手があなたでふさがっているんですから大声はやめてください」
    「私は負けてないもん!!!
    相手の所為だ!相手が無駄におっぱ.いおーきかったから!!!」
    (変な理論だ……)

    とは言えルフトがそういう変な事で、子供らしいようなところで
    怒るのは流石にクリーマも心得ていた。
    だからこそ彼も変に反応するのをやめた。
  • 170 缶 id:fRM4mLd6

    2017-02-27(月) 16:22:19 [削除依頼]

    「さてと、つきましたよ」
    ファイント陣営、戦闘部隊における本拠地についた。
    直方体という何ともシンプルな外観をした建物で、
    全体的に殺風景めいた雰囲気のある場だった。

    入口は東西南北全てに一つずつ存在する。
    更にはある程度近くの違う場所から入れる簡易通路も備えてある。
    入口にはエレメンターのみにだけ反応する
    確認センサーが造られていて、自動ドアのごとく勝手にあく。
    「隊長、そろそろ降りません?」
    「分かったよ……っと」

    そうして二人して基地内に入っていった。

    真っ先に受付らしき所から声がして、
    クリーマは其方の方に歩み寄っていった。
    「あ、ルフト隊長とクリーマ=アインスさん」
    「ああ、どうもです。すいませんウチの隊長が無茶を言ってしまって」
    相変わらずの爽やかさを伴った笑顔で、
    彼の眼前にいたその女性も和んでいるような雰囲気だった。
    いや、ある種強張っているのかもしれないけれど。

    「い……いえ、お疲れさまです」
    「シャオム隊長の意識はまだでしたが……
    命に別状はこのままなら問題ないそうです」
    「分かりました」
    「それで……ええと、例の異端者の方は……?」
    「あ……今から繋ぎましょうか?」
    「でしたら隊長と一緒に向かいますよ。お気遣い有難うございます」

    そういってクリーマは笑顔と共に
    丁寧にぺこり、とおじぎをしてからルフトの姿を探しにいった。
    そう長く話していたわけではないのだけれど
    シャオムの現状が現状であるせいか、ルフトには
    いつも以上に落ち着きが無かった。
    そもそも子供であるからクリーマもそこまで
    ハードルを高く要求してはいなかったのだが。
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