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1   CAS-AIDE★  [id : nYjhOvj.] [2007-06-15(金) 00:57:32] 削除依頼

SS投稿板は、小説投稿板では書きにくい
単発読みきりのストーリーを投稿できます。
1人何個でも気軽に投稿して問題ありません。

内容は全てオリジナルであるようにしてください。
(盗作や二次創作はご遠慮ください。)

*自分の投稿はまず先に手元に保存をお願いします。
 投稿データが消えても手元にあれば安心です。

*自粛のお願い
 18歳未満のユーザーが大半を占める掲示板のため、
 アダルト系の内容を投稿するのはご遠慮ください。

その他諸々は掲示板ガイドラインに準じます。
みんなが気持ちよく利用できるように、ルールを守って投稿しましょう。



1   叶奏@かなた  [id : wA9XQ8C/] [2015-10-10(土) 11:20:27] 削除依頼



`


夢をみたい僕は、いくつもいくつも生きていく。


「 はじめまして、かなたと申します。
  拙い言葉ですが、ふわふわと綴っていきます。 」

107   叶奏  [id : MB.8J3W1] [2016-08-14(日) 13:42:33] 削除依頼




 きみの細い指先がわたしの背中をなぞる。背骨の奥を脊髄を壊されていくような気がするのに、どうしてきみはそんなに優しく耳下で笑うの。ものたりないようなもどかしい寂しさが、はだけたブラウスの隙間から落ちていく。水気のない唇が肌に触れて、頬、首、鎖骨、胸へと移動していく。
 わたしだけが好きなんじゃないでしょきみは。わたし以外にたくさん好きな人がいるんでしょ。だれでもいいなら、わたしを選んで。だれでもいいなら、その中にわたしを入れて。わたしを。わたしを。

「なに、寂しい顔してんの、ばっかじゃねえの」

 心臓をぎゅうっとつかまれてああもうここじゃないよとまただらしなく開いた口から声が漏れる。まって、まって。この寂しさはきみの体で埋めちゃだめなの。ちゃんとわたしが、わたしがひとりきりで苦しんで、苦しんで後悔しなきゃいけない寂しさなの。お願い、まって、まって。
 生理的にあふれる涙できみの顔がもう見えない。
 きみにわかるわけないよ。わかってもらおうなんて思ってないよ。

 体がはじける。一番いいところ、腰が無意識に浮き上がる。
 寂しさがもう頭の端に追いやられてしまう。だめだよ。ちゃんと、咀嚼して飲み込んで体のなかでいっぱいっぱいに暴れて苦しんで吐いて吐いてもがいて泣いて、それでもずっと付きまとうはずのわたしの寂しさ。きみの体で、愛のないそのキスで、埋めたりしないで。


(題名なんてないよ)

108   叶奏  [id : I.Ev33V.] [2016-09-02(金) 18:03:43] 削除依頼




 梅雨が明けましたね、雨の日は嫌いです。
 きみの髪、匂い、透いた白のワイシャツ、伏せた時の睫毛、ネクタイを締めるときの仕草、手の平の厚み、すべてをもう一度、あのときのようにはっきりと思い出してしまうから。
 あの公園のシーソーが撤去され、ボール遊びさえ禁止になって、裏路地に住んでいた猫も、少し前トラックにのせられてどこか遠くへ行ってしまいました。コンクリートも塗り替えられて、自転車で下っていてもちっともお尻は痛くなりませんから、またふたりのりしようね。そういえば、冷蔵庫も寿命がきてしまって、新しいのに買い換えました。銀色が目につくこともなく、濁った白が部屋によくなじんでいます。

 どうしてあのとき、わたしを置いて行ってしまったの。一緒にいなくなろうって、あの前の夜ベットの中で約束したのに。わたしのすべてにキスをしたくせに。ブラウスを脱がせたくせに。どうして、いなくなったりしたの。
 ねえきみ、わたしはあの時と同じように、また明日を迎えてきみのいない時間の中で呼吸をします。どうか、どうかもう一度だけきみの胸の中で、眠らせて。


/ いつだって、いつだって連絡待ってるからね


手紙かきたいなみたいな

109   叶奏  [id : hjhfNI7/] [2016-09-03(土) 22:20:00] 削除依頼




 快楽がそのまま恋に結びついてくれたらいいのになあ、そしたらわかりやすいし少子化だって改善されるんじゃない? 知らんけど。

 外は暑い。だけどそのぶん冷房が稼働して部屋のなかはとても涼しい。そういうことはわたしにとって良いこと。苦しい悲しい寂しいことはきっとこれからもたくさん起こるし、今も起こっているんだろうけど、テレビ一枚挟むだけでとても簡単に無機質な情報一つになってしまうこの世界が、わたしの中では結構好きだし、キテるよ。アイシテルって感じ。
 都会嫌いがなおらないのは否定されたくないからだよってそんな笑顔で言われても困るよ。今更どうしろっていうんだよ。でもわたしはどちらかというと自然は嫌いだよ。写真にさえなれない植物、わたしみたいだ。

 どんな曲聴くのって聴かれたらとりあえずスピッツって答えておこうみたいなソレ。交わらないとわかっているし、交わったところですぐにいなくなってしまうきみ。誰とも共有できないって気持ちを誰かと共有してる矛盾。そういうのさえ全部気持ちいい。きみならわかってくれるよね、大丈夫だよね。わたしたち、生きていけるよね。


「結局オリコン一位の恋愛ソングとかわらなくね?(笑)」

110   叶奏  [id : bwFSSt91] [2016-09-25(日) 20:35:40] 削除依頼




「大人になってみて思うけど、やっぱり人生ってどうでもいいなって思うわけよ」

 あの子がそう言って、鼻で薄く笑った。
 金色のショートカットが夜の街に良く似合ってる。小さな光さえも吸収して、自分のものにしている感じ。右手の人差し指と中指の間に挟まったままのたばこの先から、行く当てもなくゆらゆらと煙がたっている。どこかでみたことあるような制服。どこだっけ。偏差値24くらいのところ。胸元で金色のペンダントが光った。

「まああたしもさ、色々あったしさ、大変だったけど」

 その子の隣にいた男の携帯の青白い光。男の携帯のスピーカーから漏れる音楽は安っぽくて、だけどどこか安心した。どうしたって優しくなれる気がした。聞き取れない歌詞。ぐちゃぐちゃのリズム。わたしの体の中が揺れて、少し重たいべたつく空気さえも柔らかく振動していた。

「あたしらは子どもだったわけじゃん? まあほら、色々」

 含んだ笑み。ずっと昔にいた近所の女の子の笑顔に似てる。いたずらっこのような、だけどどこにだって、悪意のひとつもみえないような。
 その子の声だけが浮いてるわけじゃない。男のスピーカーからきこえる音、人の声があつまってかたまって、何も聞こえなくなったような音。全部がいっぱいにこの街にあふれてる。その中でわたしの目の前にいるこの子は、大人になったって、笑ってる。子どものころもあったって、笑ってる。

「やっぱり人生ってどうでもいいよ」

 だめだ、わたし。
 この子に勝てない。どうしたって勝てないんだ。大人になったって、お婆さんになったって。

「勝てないんだ」
 

/ 街角

111   叶奏  [id : Fpr7jLo0] [2016-10-19(水) 20:39:24] 削除依頼




 白いカーテンは病室みたいで居心地が悪かった。光をわたしたちに跳ね返してくる。目の中に入ってきたその光をわたしはまた受け止めてしまうのだから、体と心は全然一体化してないと思ってる。ねえだから白なんて嫌だって言ったじゃん。わたしは声に出さずにつぶやいた。口の中、喉をぎりぎり通り過ぎたあたりで、言った。

「どうしたのニナ、アイスでも食べたいの?」

 ちがうよ、全然違うよ。心臓の奥がきゅうっと痛くなるこの感じ。最近、よくあるね。伝わらないってわかっているし、伝える気さえないのに、わたしってどうしてこんなにわがままなんだろう。どうしてこんなに、すべてを望んでるんだろう。
 視線を上げると、その視線に気づいたきみがそっと笑った。目尻のしわが優しくて、下睫毛がながいのが、ちょっとうらやましくて。

「アイス、買いに行く?」

 ちがう、全然違うよ。

「ねえはるくん、違う、違うよ」

 わたしは見せつけるように泣いた。きみなんていないほうがよっぽど良かったよ。嘘を吐いてそれが嘘じゃなくなるまでずっと傍にいればいいって思ってる。あたりまえだと思ってる。なにも疑えない、なんにも変わらないって思ってる。ごめんね、ごめんね、わたしこれが本物だって思ってる。


/ 不正解

112   叶奏  [id : nDFQ1PuW] [2016-12-03(土) 17:59:37] 削除依頼

 


 不正解は不正解のままだった。きれいなものしか愛せないってきみは泣いていた。ならわたしは初めからきみに愛されていなかったのかな。汚れてしまった夢ばかり見る。朝、目をさますときに泣いていることに気が付くなんて遅すぎるよ。生理がこなくなってからわたしは何のために生きているのかわからなくなった。命が命を食いつぶしていく。生まれないで、わたしは生きていたい。

 きみがいなくなった。不器用な字がきみの心臓だと思った。合鍵がそえられていたメモはカレンダーの裏紙だった。
二人で暮らすにはこの部屋は少し狭かったね。明日も、明後日も、明々後日も、大の字で寝られるんだと思ったら涙が出た。どうしても止まらなかった。

 自分の体ではないような気がしている。体温が逃げていく音がきちんとするんだ、どうしようもなく。空気が抜けていくようなきみとのキスはホットケーキを焦がしたような味だったね。暗闇に投げ捨てられたわたしだって生きていくこともできるし、死ぬことだってできるよ。きみの涙がかたつむりと同じ速度で頬をつたっていくのをみた夜から、さよならを予感していた。二回折ったスカートのプリーツがゆれる。わたしが振り返ったとき、どうかきみがそこにいませんように。

113   宮村  [id : nDFQ1PuW] [2017-01-23(月) 17:58:36] 削除依頼







 吐息と混じった甘い音が耳をすべって、首筋をくすぐる。朝と夜の間みたいな不健康な時間にわたしときみ、あしたは仕事やすんで朝まで隣にいてねって言いたいのにのどの奥で音にならずに、その代わりにひゅ、と喉が何度も鳴る。わたしきみの指が好きなの。優しい顔をしているのに、その指だけが別の生き物みたいにわたしの体の奥底を探している。目をつむってなんども想像した。きみの指が動くその様が見えないのが、とても哀しかった。

 大人になれ、わたし。

 きみとわたしの生きてきた数をどうかしても埋めなければならない。世界が終わるのを待ちながら気持ちの悪い音楽を聴いて夜を、死んでいった蝉の数を数えて夏を、きみより密度の濃い一年を、一日を、一分を、一秒を。重ねて重なって追いついて追い越して行きたいと思うその気持ちは、小さすぎる手の隙間からぽろぽろとこぼれていく。

「おねがいします、置いてかないで、どうしても私」

 ひゅ、と喉が幾度も鳴る。
 きみの細い指がわたしの首にかけれて、一番苦しいところを探していく。きみの口角が上がっていくのが涙でぼやけた視界にうつる。きみの存在が、視神経を通っていくことが快感だと心の底から思う。あいしてるの、だいすき。


/ 頭の悪いわたし


名前:

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1   芽衣奈  [id : dbciZgN3] [2017-01-16(月) 17:38:10] 削除依頼

こんにちは〜
毎週月曜日、火曜日に書きます☆
良かったら読んでください!


淵原優衣(ふちはらゆい)
高校一年のオタク。恋愛経験あるけど実った恋は1つもない!
「世界教室」が大ブーム!グッズがやばいほどあるとか…。

花崎慎二(はなざきしんじ)
優衣のクラスメート。少しクールで優しい男子。優衣とは高校で初めて会った。

3   芽衣奈  [id : dbciZgN3] [2017-01-16(月) 20:00:20] 削除依頼

少し家を早めに出て来たのが正解だったな〜
高校生活初日。
不安とワクワク感がやばい!
「世界教室」のグッズと共に学校へ向かう。

私は思いっきりドアを開けた。
「おはよー!」
今日は気持ちがいい。

4   芽衣奈  [id : dbciZgN3] [2017-01-17(火) 16:52:21] 削除依頼

席に着いた私はあるグループの話を聞いてた。
「ねーねー「世界教室」の隼也かっこよくない!?」
「あーね!わかるそれ!」
「隼也サイコー!」
「でもさー夏樹と聖也もいいよね!」
「あそこカップルになればいいのにね〜」
「ね〜」

え、世界教室の話!?
「ね、ねぇ世界教室好きなの?」
勇気を出して聞いてみた。
「うんすごく大好き!」
「うちも!」
それから私は世界教室グループに参加したのだ。



教室移動中、私はグループでたくさん世界教室のいいところを話し合っていた。その時。
ドンッ!人か何かにぶつかった。
「悪い!立てるか?」
「え、あっ…はい」
そこには同じクラスの花崎慎二が手を差し伸べて立っていた。
「ありがと」
ボソッとお礼を言ったが、彼は
「俺が悪いんだから助けるのは当たり前だろ?」
シシッって白い歯を見せて笑った。
私も素直に笑い返すことができた。

5   芽衣奈  [id : dbciZgN3] [2017-01-17(火) 17:09:43] 削除依頼

それから毎日慎二と絡むことが多くなった。
オタクなのに、実った恋なんてないのにどうしてこんなに優しいのだろうか。
「お前って「世界教室」好きだよな〜」
「まぁ〜ね〜この「世界教室」への愛は誰にも負けないんだから!」
「プッ!」
「ちょっ!笑わないでよー!こっちは真剣なんだから〜!」
「あーわりーわりー」
こんな日々が続いた。

「宿泊防災訓練?なにそれ?」
「知らないのー?学校にお泊まりするんだよー」
「なんか防災の話を聞いてそれを実際にやるんだって〜」
「へ〜」
宿泊防災訓練かぁ〜。
夜女子は恋バナなんだろうなー。きっと。
私にも恋愛が出来たらな…。

6   芽衣奈  [id : dbciZgN3] [2017-01-17(火) 18:53:41] 削除依頼

宿泊防災訓練当日。
予想通り女子はほとんどが恋バナをしていた。
「ねーねー優衣ちゃんて好きな人いるの?」
同じグループの花香ちゃんが話しかけてきた。
そのあとぞろぞろと「うちも知りたい!」「優衣ちゃん美人だもんね!」「彼氏いる?」って色々聞かれた。
「好きな人はいないよ〜」
「え〜嘘〜絶対いるでしょ!?」
「いやいやいないって!」
私が恋愛なんて……。
「ありえないから……」
「え」
「何かあったの?」
1、2時間くらい本当のことを明かした。

7   芽衣奈  [id : dbciZgN3] [2017-01-17(火) 20:20:40] 削除依頼

来週の月曜日に書きます
お楽しみに!

8   芽衣奈  [id : dbciZgN3] [2017-01-23(月) 17:39:55] 削除依頼

あれは中学一年生の時。
「わぁ〜!桜キレー!ねぇ見て見て!俊哉」
「うるせーよ優衣。俺らまた同クラだな〜」
「だねっ!これからよろしく〜」
小学校6年間同クラだった俊哉は今年も同クラ。
私の元好きな人だった。

「私……俊哉君が好き…付き合ってください!」
え………。
俊哉が告白されているところを目撃してしまった。
あ、もっと早くこの気持ちが恋って気付けば!
誰のものにもならなかったのに…。
「俺も好き……こんな俺でよければ……」
……!
そんな……そんな事って!ありえない……。
赤く頬を染めて俊哉は答えた。

中学二年生の時。
俊哉の親友、晴人に恋をした。
でもなかなか話せず、アピールも出来ない。
でも諦めなかった。クリスマスにお菓子あげる約束をして、告白もした。
「ごめん。俺好きな人がいるから」
もちろん泣いて泣いて泣きまくった。
でも、自分がもっとアピールとか話したりとかしなかったのも悪い。

中学三年生の時にはもう恋なんてしなくなった。
私は本当の自分の気持ちに気づいてしまった。
恋愛に憧れを持っていても、私には向いていない。
だって……。




私は恋愛に鈍感なんだ。

9   芽衣奈  [id : dbciZgN3] [2017-01-23(月) 17:48:29] 削除依頼

「だから私は恋愛なんてしない」
「そ……っか…」
「ごめんね湿っぽい話しちゃって」
「や、ヘーキヘーキ」
「ちょっと飲み物買ってくるね」
「うん」

そう、私は恋愛に鈍感。何しても失敗ばかりで本当の恋愛なんて分からない。あの時の恋は全部本当の恋愛じゃない。
「きゃぁっ!」
ドサッ!
なんかにつまづいた〜。いた〜い!
「大丈夫?」
……。な、なんだ?
「ハイ大丈夫です」
先輩?年上だよね?多分。
「君一年?」
「そうです」
「かわいいね君。俺池谷達也。よろしくね〜」
「淵原優衣です」

一個上の先輩。ドジっ子とか天然ちゃん好きらしい。

宿泊防災訓練終了!
終わったぁ〜!きたー!
運動会!

私は運動会に期待を膨らませていた。


名前:

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1   白加賀  [id : iVsqaNRd] [2017-01-10(火) 20:50:55] 削除依頼

冬のSSコンテストの作品投稿スレです。



【注意】

・準備板にて参加表明してくださった方のみ、作品を書き込めます。
(参加したい方は 1/31までに準備板へ!)

・感想コメントはお控えください。
(準備板にて 2/19から感想会を行いますので、そのときにお願いします)
※感想会はコンテストに参加していない方でも大丈夫です。


【作品を書き込む参加者さまへ】

・作品は完成させてから一気に投稿してください。

・投稿し終わったら、最後にアンカーでレスをまとめてください。
(アンカーの方法がわからない方は準備板にて質問していただければOK)

・投稿中に他の方とレスが混ざってしまっても大丈夫です。


【ルール】

・字数は500字~8000字
・冬をテーマにしたオリジナル作品
・携帯小説 / 台本書き小説は不可

<投稿〆切>
2月18日23:59まで



その他ご質問等ある方は準備板にてお願いします!

3   白米ラブ  [id : MUvzjkuI] [2017-01-14(土) 19:25:34] 削除依頼

.
 パリに来て、大体五か月ほどが経っていた。別に大した苦労もなく、大した喜びもなく、四月になったら日本に帰って、まずはノドグロ食べたいなあと思っていた。パリのアパートはボロボロだけど植物置いたら格好いい、パリの女は何かと口うるさいけど髪の匂いは日本人の三倍良い、パリのタクの運ちゃんはしょっちゅう道間違えるけど煙草をくれるので許してしまう。それがパリ。華やかな生活を想像していたって言うと、それはほんまであるが、これはこれでええやんと、でも日本に帰って早くノドグロが食べたかった。そして、パリの冬をなめていた。観光気分の最初の一か月。ええ感じの気候で、ま、ちょっと肌寒なってきたけど、パリやしええか、と思っていた先月。今月に入って雪は降る、雹は降る、ぜんぜん人も歩かない。アパートの通路で死んでいた鳩。パリの寒さもええ感じ、なのは確かだが、確かだが……。南仏に行ってみようかなとも思うのだった。

 オニオンスープの熱さのせいか、スープカップの中でみじん切りのにんじんやらたまねぎが対流している。ふと我に返り、財布の中身を見ると、店主が、
「はよ飲まんと冷めるで」
 と囃し立てた。パリジェンヌがオーブンで焼いたフランスパン二切れをカップ横に添えた。多分、スープに浮かべたり浸したりして味わう用のパンである。大麦の普通のパンであるが、これがまた絶妙な塩気でめちゃくちゃ美味く、もはやこれがメインであっても僕は文句ないよ。そそ、ビールも飲まんとね。
 壁にかかった絵画が気になった。気になったというか、何となく見覚えがあったので、誰の作品か尋ねてみた。
「あ、それ、あれやで、日本のな、アンダレイ安藤描いたやつやった思うわ。お母さん、せやったやんなあ?」
 店主はせやで、とだけ返した。テーブル席の老夫婦が注文したフォンドヴォーの仔牛煮込み、それとペスカトーレをせっせと作っていた。フランスでペスカトーレ、まあいい。
「アンダレイ安藤いうのは、知ってる? 今は、結構有名人らしくて、うちに来た時に、『いつか有名になったら、絵、送るから、飾ってね』言うてね、そんでほんまに何年かしてからな、送られてきてな、せやったやんなあ、お母さん?」
 店主はせやで、とだけ返した。かちゃかちゃとコンロとフライパンがヒットする音。
「うち、まだ生まれてへんころやわ、結構前の話。やし、結構前の画家なんちゃうかな」
 アンダレイ安藤、全く聞き覚えがない画家の名前で僕は当惑した。とりあえず、ビールを一口飲んだ。アンダレイは下の名前、やったらハーフ系の画家で、フランスで画家修業、いや、ここはベルギーにでも留学したんやろか。ぜんぜん知らん。
「アンダレイはここ来たときはな、ほんま貧乏やってんか。もう超金ない言うてね、あんたとおんなじで、ビールとパテ二分の一食べてね、そんで後は雑草食うて帰るわあとか言うて笑かしてね」
 店主は昔を懐かしんでます、という風に、途切れ途切れに話した。トマトの香りがすっと鼻に香った。

4   白米ラブ  [id : MUvzjkuI] [2017-01-14(土) 19:27:11] 削除依頼

.
 アンダレイ安藤も昔、僕と同じでフランスに留学に来ていた。僕のように無為な留学ではなく、絵画への激情によるものである。彼は古ぼけた骨董屋のバイトと大学に通う以外の時間をすべて絵に注いだ。小指にきらりと光った指輪、赤いパラプリュイ(*注 雨傘)、ポンヌフ橋から覗き込む川面、甘美なパルファン(*注 香水)香る首筋。そんなもんは彼にとっちゃすべて邪念であった。
アンダレイは給料が入るとボンドボンを訪れた。月に一度、ちょっとした贅沢である。普段雑草を食うて過ごしている者からすれば宙に浮くほどの背伸びやったに違いない。
 その日の夜は今日よりも雪が降っていた。ガス灯が雪面に反射し、やけに明るく感じるパリ郊外。アンダレイは店主にこう言った。
「明日、日本に帰る。このお店とももうお別れになるね。ジュテーム」
 なみなみと注がれたオニオンスープがアンダレイの目の前に置かれた。
「ママン、こんなの頼んでないよ」
「雪降っとるときはな、スープ飲まなあかんねん。体冷やしたらあかんねん」
「でも、俺、お金もないし、これ頼んじゃ飛行機に乗れないよ」
「ええねん、作りすぎてん、それ、やし、飲んで。はよ飲まな冷めるやん、はよ」
 アンダレイはそのスープが冷め切ってしまうまでじっくりと時間をかけて飲んだ。涙が溢れ、スープにこぼれた。

 アンダレイ安藤の描いた絵はまだボンドボンの壁に飾られている。店主は毎日、額縁にかかった埃を拭き取っているらしい。あの日から時はちょっとばかし経ってたが、その絵は美しいままだった。そして、僕のフランス語は相変わらず拙いままであった。
「ママン、必要以上にあっついあっついオニオンスープ、ちょうだい」
 窓を見ると雪が降りだしていた。パリの雪はなっかなか止まへん。明け方まで降り続き、この石畳を白くしてまうやろう。ええ感じや。


追記 二〇一五年 パリ15区のアパルトマンにて
 アンダレイ安藤は二〇〇九年に夭逝した。でも、ママンは「アンダレイは元気なん?」と僕に訊いてくる。友達でもないのに、知ってるわけないやん、と返すとママンは少し間を空けてから、「せやな」とだけ返した。

(終わり)

「パリのスープ」白米ラブ >>2 >>2 >>2
よろしくおねがいしまーす!

5   真理  [id : wXK0oOWa] [2017-01-17(火) 17:37:17] 削除依頼

どこかで聞いた話だが、人は強烈な酸性に長く触れていると皮膚が溶けてボロボロになり、血管が破れ出血多量で死んでしまうらしい。では俺は、これから死ぬのだろうか。

俺は今、巨神の胃の中にいる。いや、ただの巨人なのかもしれないが、もう俺の知るところではない。戦場や俺の病院は恐ろしく寒かったのに、今はとても暑い。皮膚が焼けるように痛い。溶ける。溶けてしまう。恐る恐る腕を持ち上げてみれば、もうそこには軍服の袖はなく、剥がれ落ちた皮膚が垂れ下がりその下の肉質が見えているだけだった。巨神の体内は案外明るく、見たくもないようなものが見えてしまって、それが溶けた腕以上に、残酷だった。肩までどっぷりと胃液に使っているのだから、内腿や脇の血管に酸が到達して破れるのは時間の問題だろう。やはり、俺は死ぬのだ。それならば、細胞一つ一つを熱した針で突き刺されるような痛みの中、俺は何を遺すことができるのだろうか。そんなことを考えていたら、最後の外界の景色と、よく俺を慕ってくれた若い看護婦の顔が脳裏をよぎった。

* * *


人類は順調に進歩してきた。東の果ての『神』来るまでは。
西暦1823年、突如として奴らはこのヨーロッパにやって来た。黒い髪に黒い目の、黄色い肌のそいつらは自らを神と称し、巨神と呼ぶ巨大な人型の怪物を俺達に向けて放った。巨神は5体しかいなかったが、何しろ普通の人間の6、7倍の大きさだったため、勝ち目はない。王都はあえなく破壊され、地方に退いた軍は戦場となった小さな村の山際に陣を構え、軍事病院を作った。俺はそこの軍医だった。
戦は長引き、俺は負傷者の手当てに追われた。報酬は良かったが、せっかく治しても直ぐに戦場に戻されて死んでしまうのが虚しい仕事だった。そして、死者や負傷者は増え続け、ついに今日、陣の中にも一体の巨神が攻め込んできた。
俺は知らなかった。巨神が人を喰らうことを。巨神の目的は殺戮のほかにもあったのだ。巨神とて生き物だ。腹が減れば、食べるだろう。分かっていた。分かっていたが、わずかに信じがたく、恐ろしかった。
巨神はまず歯向かった将軍を踏みつぶし、逃げられない俺の患者たちを飲み込んだ。立ち竦む俺には目もくれず、陣の奥に進んだ。その間にも腰を抜かした看護婦を食べた。抵抗する者は殺し、無抵抗な者は喰らう——

知っている。

俺はこれを知っている。この国は同じことをやっていたのだ。国王は同じことをやっていたのだ。だからこれは、その報いだ。
陣の奥で、悲鳴が聞こえた。王のものだと、すぐに分かった。残虐で無慈悲で、その報いを受けた王の声だと。
終わりだな。この国は終わりだ。こうして国軍が巨神とじゃれている間に、東の果ての彼らは地方の主要な都市や町村を征服しているんだろう。巨神を片付けた時にはもう、この国は俺たちの国ではなくなっている。王も死に、軍も使い物にならなくなった。これを滅びと呼ばずして、何と呼ぶだろう。巨神とこの国は同じだ。ただ、巨神が極端なだけ。抗うものは潰し、従うものは支配する。ずっと、そうだったじゃないか。
巨神は王達を食い終わったらしく、踵を返して俺の方にやって来た。
当然の報いだ。俺も科学者として、火薬を作り毒薬を作り、王の、この国の悪に加担してきたのだから。
「食えよ」
両手を広げて静かにそう言ったのが通じたのかどうか分からないが、巨神は俺の腕を掴むと、大きな口を開けて俺を落とした。巨神の臭い口に落ちるとき、俺を慕ってくれていた若い看護婦が、俺の名前を呼びながら駆け寄って来た。空を見上げると、雪が舞っていた。どうせこんな風に死ぬなら、夏の青空を見ながら死にたかった。でもまあ、これはこれで風流か。妙にはっきりと落ちてきた雪が見えたのを最後に、俺は外界との接触を完全に断たれた。

6   真理  [id : wXK0oOWa] [2017-01-17(火) 17:44:53] 削除依頼

* * *

 俺ごときが遺すものなど大したものではなさそうなので、今日のことを、幸いにも溶けなかった手帳に記しておいた。最後まで俺を慕って駆けてきたくれたあの看護婦の名前は、何故か思い出せない。まあ、いい。どうせ死.ぬのだから……

 ドオォォン、という音で、俺は顔を上げた。外からの何かの爆発音のようだ。この腹に響く不愉快な音は、無くなってきていた俺の全身の感覚を呼び起こした。
「なんだよ……痛てぇな」
次いで、俺の顔にぽたぽたと何か水っぽいものが落ちてきた。拭ってみると、血だった。
「え?」
見上げると光が見えた。なんと、直径30センチほどの穴が開いているではないか。その穴から胃壁を生き物のように素早くつたっていく血が、俺の顔に落ちたのか。振り返れば、反対側にも同じようなものが見受けられる。外の冷たい、清潔な空気が頬を撫でていく。
大砲だ。あの爆発音といい、この破壊力といい、大砲のそれ以外何があるというのだろう。
そして、ぐらり、と巨神が動いたのが分かった。これだけの大穴を体に開けられたのだ、いくら大きくてもたまらないだろう。巨神は倒れた。胃液が開いた穴から漏れ出す。
「おい、中に人間を助け出せ!」
誰かがそう言った。
助かる。俺は助かる。腕を見てみる。それほど損傷はひどくなさそうだ。助かる。死.ななくていいのだ。

——助けを求めて声を出そうとした、その刹那。

ふっとめまいがした。
脇の大動脈がついに破れたらしい。そこだけ妙に溶けるのが早かったようだった。
どくどく、どくどくと赤い血液が横たわった顔の方まで流れてきた。すごい出血だ。
意識が遠くなる。巨神の体に空いた穴から、中を覗き込む兵士の顔が見えたが、もう何も言えなかった。
流れていく血の量と反比例して、視界はどんどん狭くなる。
これが死.ぬってことか。なんだか少し、甘く見ていたようだ。何も知らないで、人殺しをしていたようだ。静かに死.ねる薬、大きな爆発を引き起こす火薬、苦しみぬいて殺す毒薬……どれもしを甘く見て、作っていた。やはり、当然の報いだ。俺は罪深かった。王よりも、巨神よりも、東方の彼らよりも。一番関係ないような顔をして、一番関係があったのだ。
罪深い。しかし、俺はそれでも死.にたくなかった。生きていたい。
手遅れだ。
もう何も見えない。
もう死.ぬのだ。
もう——

* * *

 なあ、オリヴィア。俺は卑怯だった。臆病だった。覚えているか?一緒に月を眺めた日を。その日はやけに負傷者が少なくて、あれって、なんでだったんだろう。オリヴィア、俺はもう死.ぬ。君は生きているか? 生きていてほしい。なんだかもう、何も見えないし聞こえないし、何の感覚もない。血を流しすぎたからか何なのかは分からない。だけど最後に、忘れかけていた君の名前を思い出した。またどこかで逢えたらいい。幸せな時代に生まれようと思うんだ。俺はその時、正しく生きる。時代のせいにするのは癪だが、このご時勢、俺は君のように真っすぐにいられなかったから、その時くらいは頑張るよ。

それでは、またいつか。

7   真理  [id : wXK0oOWa] [2017-01-17(火) 17:55:37] 削除依頼

【ある冬の巨神伝説】 >5+6
5は文頭のスペースを開けるのを失敗しました。6は規約に引っかからないように漢字変換していなかったり.が入っていたりしますがお気になさらず。
よろしくお願いいたします。

8   文乃/ayano  [id : YViA56sm] [2017-01-22(日) 15:53:23] 削除依頼

私――――――三崎結愛(みさきゆうあ)には、双子の妹、名前は結心(ゆうこ)という――――がいるはずだった。
でも、私が生まれたのと同時に、死んでしまった。
その事実を一年前に母から聞かされたときは、部屋に篭って大泣きしてしまった。
でも、その時に一緒に思った。
だったら、私が妹の分まで幸せに生きないと・・・・と思った。
だから私は今まで、自分の中では誠実に生きてきたと思う。
それを家族や友人も応援してくれたし、褒められることも多かった。
でも、現実はそんなに甘くない。
そのうち、一部の女子グループから嫌がらせを受けるようになった。
物を隠されたり、陰口を叩かれたり。
それは次第にエスカレートし、遂には金銭を要求されるまでになった。
そして今日も、昼休みに学校の屋上に、呼び出されるのであった―――――

寒い。
今日の天気は一日中曇り。
屋上のコンクリートは凍ってる。
私がいるのはフェンスのすぐ前。
私の周りを4人のリア充女子が囲んでる。
「で?今日は何円なんですか?」
そんな状況で、私は口を開いた。

9   文乃/ayano  [id : YViA56sm] [2017-01-22(日) 15:55:11] 削除依頼

「んーとね、二千円でいいや、貸して?」
無邪気な笑顔でそういうリーダーの真智子(まちこ)。
財布の中を覗く。生憎千円しか入っていなかった。
そのことを伝えると、真智子は突然キレ始めた。
「アンタどうせうちらに盗られるからわざと少なく持ってきたんでしょう!」
「ち、ちが・・・」
「嘘つき!ズルイ!このクズ!」
「あっ・・・?」

それだけなら良かった。
でも、フェンスが老朽化していた。
だから、その弾みでフェンスが壊れ、私の体は、
フェンスと一緒に投げ出された。

目が覚めた。
白い天井が見える。
どうやらここは、病院のようだ。
それで私の体には、色々なものが巻きついていた。
「結愛!」
横にいたらしいお母さんが、覆いかぶさる。
「屋上から落ちたって聞いたときは驚いたわよ・・・
 でも植え込みに落ちて、打ち身で済んだのよ!
 奇跡としか言いようがないって、お医者さんも言ってたわ!」
そうまくし立てるお母さん。
もしかして、結心が守ってくれたのかな―――――――
そう思いながら、窓から空を見上げた。
ふと曇りひとつない空の彼方に、結心の笑顔が見えたような気がした―――――――

【不思議な冬の日】 >>8+9
短い気がするしダメダメですがよろしくお願いします。
後冬要素が少ないです・・・


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1   詩花  [id : RC3BzPDp] [2017-01-21(土) 15:52:20] 削除依頼

SSをたまーに投稿します。
よかったらどうぞ( ˙ ꒳ ˙三 ˙ ꒳ ˙ )


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1   座間犬  [id : AO9lFtbT] [2017-01-19(木) 17:54:09] 削除依頼

六実っ子は幼少期、髪で三つ編みを作るのが苦手だった。

2   座間犬  [id : AO9lFtbT] [2017-01-19(木) 18:39:50] 削除依頼

第一話~恋を知らない娘~

新名六実(にいなむつみ)は千葉県に住む中学一年生。おっちょこちょいだが性格は前向きで、学校の成績はトップ。部活の先輩には「六実ちゃん」と呼ばれ親しまれている。

部活では新体操をやっている。中学に入るまではこのスポーツのことはほとんど知らなかった。しかし今ではルールも分かるようになったし楽しいと思えるようになった。

「六実ちゃん?元気無いね」
「そ、そうですか?」
「顔が青ざめてるし、唇が紫だよ」
長谷川先輩に言われた通り、手鏡で確認した。
「こんな酷いなんて」
「休んだ方がいいよ」
金曜日の部活動は見学になった。

「おい、こら。いい加減にしろ七実」
「あなたが悪いのよ」
そういえば。昨日から家族の争いが絶えないのだった。
だから自分に不調が起きたのだ。
元々は仲の良い夫婦だったのに。
「早く寝なさい」
母は命令した。
「晩御飯は?」
返事は無かった。

六実は自室の地下室へ降りていった。

この家の元持ち主がワインが趣味でそこで保管していた。
家を買った時点で母の七実や父の国雄は子供を作る気は無かった。だから六実が生まれたときは新たに部屋を作る必要があった。

地下室は暖房があり、空調設備もあったので快適だった。

両親は六実に対し過干渉せず優しかった。そのおかげか六実は情緒の安定した思いやりのある子に育った。

3   座間犬  [id : AO9lFtbT] [2017-01-19(木) 19:08:26] 削除依頼

第二話~地上の不穏分子~
物を落とす音がした後、母が六実の部屋に降りてきた。
「あなたは家を出るか出ないか選択しなさい」
首を横に振った。
すると母は諦め部屋を出ていった。

六実が台所に行くとアップルパイと牛乳が一食分用意してあった。あまり朝食らしくない。それを腹に押し込み服を着替え投稿した。

汗が吹き出す。夏が近づきつつあった。

先輩の長谷川が声をかけた。
「体は大丈夫か?」
「今は平気」
家庭のゴタゴタは言えなかった。

朝練が終わり席に着くと先生がせかせか入ってきた。
「緊急の連絡があります!年齢は30代およそ100キロの肥満体の男が昼や夜に侵入しているとのことです」
「学校に入るのはいけないことなのですか」
六実は質問した。
「入るには許可がいるのです。その男は許可も取らず校内を散策していました。このことが禁止されているというのに」

朝の会が終わると机を整理した。
国語の教科書の一ページ目を捲った。
『いちゃいちゃしたいですを』
右下に小さく落書きがあった。
六実は震える人指しで閉じた。

4   座間犬  [id : AO9lFtbT] [2017-01-21(土) 10:23:57] 削除依頼

5月の最終日。遠足に行くことになった。
六実にはまだ友達が居なかった。
仲のいいのは年上の先輩の中2の長谷川くんだけ。
もちろんグループを組めない。

「おやつは持っていってかまいません」
「では班長を決め…」
す、すいません。手を挙げた。
「私まだ、グループに入れてなくて」
先生は見回した。後列の廊下側の席の子を指差した。
髪は腰にかかるほど長く、目は細長かった。
美人ではないが不思議な雰囲気があった。

総合の時間が終わった。六実はさっそくクラスメートに厚子について訊いてみた。しかしそれは気味の悪いものだった。
「厚子って頭おかしいんじゃない」
「そうだね…」
「なんか幽霊が見えるって」
「幼稚園の時からああらしいよ」

「なんの部活にも入ってないの?厚子」
六実は驚いた。
「だって体が強くは…。それに興味がないから」
笑いの一つも見せずに答えた。
「ね、一緒に帰ろう」
六実は彼女の手を握った。
「憑いてるよ?」
一瞬細い目が大きく見開かれた。
六実は立ち止まった。

その後二人は何も考えず下校した。
夕焼け雲はいつもより赤赤としていた。


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1   真理  [id : MQStpbT7] [2017-01-04(水) 08:09:21] 削除依頼

今日の変身・変体。
異世界だったり、過去だったり、今だったり。
今日も誰かやどこかが変わります。

7   真理  [id : wXK0oOWa] [2017-01-05(木) 15:14:48] 削除依頼

 サナギがチョウに変わる時、僕はもうこの世にはいない——

* * *

 鍛冶屋のシェーマスは相変わらず無口で、カンカンカンカン鉄を打っている。
「なあ、シェーマスぅ」
 話し掛けても返事はない。ので、構わず続ける。
「これから、イングランドはどうするんだろうねぇ」
「……」
「まぁた無視して」
 面白くないので、私はシェーマスの店から出ようとした。
「おい」
 不意に、シェーマスが声を発した。
「なに」
「夕方には取りに来いよ」
「わかってらぁ」
 大切な剣を預けっぱなしにするほど馬鹿じゃない。
 外に出ると、新聞屋が号外を配っていた。
「フランスの魔女、ジャンヌダルクが捕まったぞぉ」
 少年の高い声で、物凄いことが告げられた。
 なんだって、と道行く人々が振り向く。私も振り向く。
「ジャンヌダルクが捕まったってぇ⁉」
 号外だよ、号外だよと触れ回る少年の周りにできた人だかりを押しのけて、私は新聞を一部貰った。
「ジャンヌダルク、とらえられる……」
 大きな太字で書かれた文字。フランスの魔女、ジャンヌダルクが捕まった。百年戦争もこれで終わりか。
「シェーマス!」
 店の軒先で、私は鍛冶屋の無口な青年を呼ぶ。
「乾杯しようぜ、イングランドの勝利に」
「……まだ勝ってはいないだろう」
「魔女が捕まりゃこっちのもんさ」
 ウイスキーを掲げると、シェーマスは立ち上がって、私の鼻先でバタンと店の戸を閉めた。

* * *

 いつまで続くか、途方も無い戦いだった百年戦争も、ようやく下火になってきていた。それもこれも、ジャンヌダルクが捕まったからだ。何でも、不利だったフランスがここまでのもち返してきたのも、その小娘のおかげだとか。それで、オルレアンは手に入らなくなって、王太子シャルル7世とやらは戴冠させられて国王になった。特にオルレアンなんかは、我がイングランド軍が包囲してあって、勝利は目前だったにもかかわらず、オルレアンは向こうに奪還されちまった。私たちにとってはいあわば、ジャンヌダルクは憎い敵なのだ。近いうちにそいつは火あぶりの刑に処されるらしい。神のお言葉とやらが聞こえるようだが、こうして捕まって、イングランド中で晒し者にされているような奴が、本当に神の御言葉が聞けるのか不思議だ。
「今回の戦は、どっちが勝ったか甲乙つけがたいな」
「まあ、アキテーヌが奪われちまったからなぁ」
 アキテーヌはイングランドがフランスに持っていた領地だ。
「まあ……俺達には関係ないだろ」
 ジーンが言った。
 シェーマスと飲むつもりだったウイスキーをコップにとぷとぷと注いで、一気に飲み干した。
「さすがフィ」
 だいぶ赤くなった顔で、ジーンは笑った。
「俺のガールフレンドとしては文句なしにクールだぜ」
「ふざけんな、阿呆」
 何だか知らないけど嬉しそうに微笑んで、ジーンはウイスキーをボトル後と持ち上げて飲み干してしまった。

8   真理  [id : NE1GrTvt] [2017-01-08(日) 16:51:09] 削除依頼

 高かったのに。
 酒屋のカウンターで酔いつぶれたジーンは空のボトルを握りしめたままだ。
「高かったのに……」
 長い焦げ茶の髪が、だらしなくジーンの頬にかかっている。子供のような無邪気な顔で眠り呆けるジーンとは、幼い頃からの知り合いだった。私たちはふたりとも、この町で生まれ、この町で育った。
 昔の私は少し気性は荒かったものの、普通の町娘だった。ジーンもそれは同じで、通り気が強いだけの、気のいい奴だった。町民たちとも仲が良かったし、ジーンの家も私の家も、そこそこの金持ちだったから、暮らしには困らなかった。

 そんな私たちが、今のような、いつも帯刀している軍人紛いの人間になったのは、百年戦争のせいだ。
 それまでさほど影響を及ぼさなかった戦争が、ついにこの町に入ってきたのだ。
 と言うのも、戦火を逃れてきた難民たちが、この町に来たせいだった。難民たちは疲れのためか、荒んでいた。時には町の民を襲って金を盗んでいったこともあった。それから、私たちが武装する直接の原因になった出来事ーージーンと私の両親や兄弟姉妹が殺されるなんてこともあった。

 今でこそ淡々と語れることだが、当時ーー私たちが15だったかの頃は、ひどく絶望していた。ジーンがいなければそれこそ私は死んでいた……

 同じ頃、シェーマスはフランス兵の捕虜として、この町長のところで奴隷になっていた。そんな中でも、無口だが親切だったシェーマスは、徐々に町民たちから認められていき、今では一介の立派な鍛冶屋である。さっきも、私の剣をシェーマスに修理してもらった。よく考えれば可笑しな話だが、シェーマスは信頼に足る青年なので、まあ良いだろう。……今までは。

「シェーマス……かぁ…………」
 ぽつりと呟いた。
 初めて会ったとき、彼は私を見て、ひどく驚いていたっけ。イングランドでは、女も武装するのか、と。
 私のはあくまで護身用で、と言って、こうなった経緯を話した時、シェーマスはなんだかとても悲しそうな顔をしていた。
「大変だったな」
 そのシェーマスの声を、私は三年経った今でも覚えている。きっと、シェーマス自身、今は辛いのに。
 とにかく、シェーマスはそんな奴だった。最初は警戒している者もいたが、今はもういない。シェーマスは潔白だった。そう、今まではーー

 最近、シェーマスは怪しい。夜中に歩いていたり、ジャンヌの話が出ると焦ったようにしている。怪しい。ジャンヌダルクが捕まった。フランスの何かが変わる。シェーマスは、何をするつもりだーー

「フィ、何か飲むかい?」
 酒屋の主人が、いつの間にか私たちの前に来て言った。
「じゃあ、こいつが飲み干しちまったウイスキーを」
 注文してみて、よく考えれば、酒屋に酒を持ち込んではいけなかったことに今気が付いた。
「はいよ」
 気のいい酒屋の主人は、私の前にどんっとウイスキーのボトルを置いた。

9   真理  [id : 2IHhXu8E] [2017-01-08(日) 22:26:48] 削除依頼

* * *

「やっぱり、な」
 剣を直してもらった数日後、シェーマスは忽然と姿を消した。
「え、何がやっぱりなんだ?」
「シェーマスが居なくなったこと。あいつ、最近変だったんだ」
 新調したばかりのナイフを眺めながら、私は言った。
 ジーンとふたりで、シェーマスのいた鍛冶屋の前にいる。
「捕まったジャンヌ姫を助け……るんだろ。きっと……何か関わりがあったんだ、あの小娘と……」
 私が、ぼそぼそと歯切れ悪く言ったのは、何だかとてつもなく悲しかったからだ。シェーマスは、確かに怪しかった。だが、失ってみてはじめて気づいた。なんだかんだ言って、シェーマスと過ごした時間は大切だった。いつもは全く笑わないのに、たまにすごくいい笑顔を見せる。本が好きで、そのことに関しては、私たちはいつまでも話せた。

 恋、とは違った。恋は、私が……私が恋しているのは、ジーンだから。だから、シェーマスとの間にあった想いは、友情だろうか。ジャンヌが捕まった日、誘う理由が無くてあんなことを言った。本当はただ、シェーマスと話したかっただけなのに。素直に言わなかったから、シェーマスに戸を閉められて、それでそのまま別れだった。

 シェーマスは、私のことをなんとも思ってなかったかもしれない。だけどあの時は本当のことで、私とシェーマスで語り合ったことも、本当のことだった。
 それだけで良かった。
 これを友情と呼ぶなら、この友情を作った百年戦争に、感謝しなければならないな、なんて思った。

「フィ、中を覗いてみようぜ」
「ん?あ、ああ……」
 ジーンが何故かにっと笑う。
「シェーマスの奴、もしかしたらジャンヌとできてたのかも知れないぞ」
 何かその手の手掛かりがあるかも、とジーンは嬉しそうに、シェーマスの鍛冶屋の中に入っていった。
「馬鹿には付き合ってられねぇなぁ……」
 呟きはジーンの耳に届くことなく、虚空に消えるーー

 結果、から言えば、ジーンが期待していた下世話なものは見つからなかった。代わりに、一通の手紙が見つかった。シェーマスの、私宛ての手紙だった。
「なぁんだ、フィ、お前シェーマスとできてたのかよ」
「うるさい」
 丁寧に封を切って、私は何枚かの便箋を取り出した。
 そこには、シェーマスの汚い英語で綴られた文字があった。黒いインクは若干青みを帯びていて、以前私がロンドンに行ったときの土産だと、すぐに分かった。
 ゆっくりと文面を追って、私は手紙を読み始めた。

10   真理  [id : wXK0oOWa] [2017-01-09(月) 15:00:45] 削除依頼

* * *

 ありがとう。
 さようなら。
 僕はジャンヌを助ける。身勝手で、悪いことをした。だけど、ジャンヌは僕の妹で、大切な身内だ。
 イングランドが好きだ。
 この町が好きだ。
 君のことも好きだ。
 だけど、家族も大切だ。
 僕の裏切りを、どうか許してくれ。
 もし……いや、君はジーンが好きだから、僕なんかに目もくれなかった。僕は君が好きだったけれど。
 それでも、君と僕の間にあったのが、友情だとしたら、僕は幸せに死.ねる。
 サナギがチョウに変わる時、僕はもうこの世にいない。それは悲しいことだし、今からでも僕は恐ろしく思っている。だけど、君が僕が死ぬまで友人でいてくれるのなら、もう怖くないだろう。
 君を信じる。君がこの手紙を読んでくれたら、僕はきっと、信念を貫くことができるだろう。
 夏が来て、秋が過ぎ、冬が終わればまた、春が来るだろう。その時僕はいないけれど、僕のことを思い出してくれたら嬉しい。
 ありがとう。
 それでは、フィ、元気で。

* * *

 ジーンの腕の中で、ひたすらに泣いた。それでも、もうシェーマスはいない。

* * *

 ジャンヌが逃げて、シェーマスが死んだことは、翌日の新聞で知った。
 フランスは勢いを巻き返して、戦争は長引いた。
 私たちの町には難民が増えて、事件も多くなった。終わりは見えない。ただ、終わるはずだった戦争は、終わりの見えない戦争になった。
 私とジーンは武装したまま、町に住んだ。やがてイングランドにもフランス軍は進軍してきて、イングランドは降伏した。イングランドはフランスの植民地になった。

* * *

 イングランドがフランスの植民地になったあと、フィ・ダリはジーン・リプトンと結婚した。子供は生涯持たなかったが、幸せに暮らした。
 それでも、彼女は忘れなかった。フランスを変えた、イングランドを変えた、彼のことを。サナギがチョウに変わる時、散ってしまった命のことを。


//百年戦争

11   真理  [id : 2IHhXu8E] [2017-01-09(月) 17:26:54] 削除依頼

上記の【百年戦争】は史実とことなる部分がかりますので、ご了承ください。

12   真理  [id : uOU2BfhW] [2017-01-12(木) 20:29:51] 削除依頼

 いずれ見せようと思っていた。
 でもそれはいずれ、であって、今、ではない。
 ああ……私は、私は……

* * *

「姉様、姉様?」
 僕は縁側で膝を抱えて座り込んでいる姉を呼んだ。
「なんだ、雪平」
 らしくないぼそぼそした返答で、姉は振り向く。
「霧丸様が呼んでおられます」
 僕の顔をじっと見て、姉は首を振って前を見た。
「……知ったことか」
 知ったことか、は姉の口癖だった。……にしても、頑固なものだ。
「波奈姉様、いい加減にしてください。霧丸様だって、かわいそうでしょう?」
 姉の名は、波奈と言う。なよなよしてて、好きじゃないと姉は言うから、家族も誰も、ほとんどその名を呼ぶことはない。
「知ったことか」
 今度も姉は、そう言った。ただ、今のには強い意思が感じられたため、僕は何も口をはさまないことにした。姉を怒らせたら大変だ。なんたって姉・佐藤波奈は、新陰流の武士で、戦場に名を轟かす剣豪なのだから。

13   真理  [id : chTBD2pW] [2017-01-18(水) 17:07:33] 削除依頼

* * *
「やあ、霧丸」
 木の上で何かを見ている幼馴染みに声をかけると、彼は嬉しそうに私の方を見た。
「姫御前(ひめごぜ)、久しいな」
 身軽に降りてきた霧丸は、私に向かって拳をつき出した。私はそれを拳で軽く小突く。それがいつものことで、幼い頃からの私達の決まりだった。
 そう、私達は幼馴染みであり、戦友でもある。これまではーー
 これからは、幼馴染みであり、戦友であり、夫婦でもあるのだ。父上が結んでしまった、馬鹿なお約束とやらのせいで。


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泥に棲む (118)

1   yr  [id : 1cSvqFn/] [2013-04-02(火) 23:23:54] 削除依頼

眠りたければ
海の砂


君の声は届かない。

112   イノウエユル  [id : v/hOpvI1] [2014-01-23(木) 17:07:59] 削除依頼

てすと。

113   イノウエユル  [id : IKej1lI1] [2014-01-27(月) 22:12:47] 削除依頼

°ダンダラ

フェイスブックに写真を載せて阿婆擦れの過密化ニンゲンの落とし穴細雪谷崎大坂乞食が屯する小指のない能面の咳知らず知らず明るみにしか目を向けずサークルの中心が如何なる価値か門前払い誰も分かっちゃいないと孤独の城積んだ石は黒黒何も塗れやしないでも濡れる肢体矛盾すら自己完結抉られるグレィプフルゥツの如く腐れば臭い鼻抓み抓り千切れば手と手を繋げば家畜と杭を繋ぐ絆になれば涙も分かち合える哀しみを持ち寄れるそんな自分に最高に酔えるウォッカテキーラジンラムマラドーナ何れも洒落たコスチュームだが中身はネズミ色したフードだけの模様だ。

114   yr  [id : 4shBC2Y1] [2014-01-29(水) 23:02:50] 削除依頼

°底のない

 美談がお好きな少女ファンデーション基礎からね底のない理想は現実剥離止め処ない痛苦をシーク。
 奇譚がお好きな少年アバンギャルド破壊が信条ね底のない電飾は通電有りき溝だらけの頭の中をクリック。
 完璧主義者は腐った豆を喰い電波塔の角度を計算している。パイプが、ありゃ折れてるな。虫の涌いた蟷螂の腹を舐.めて底のない愉楽と思えば宜し。
 普段がお好きな貴方アブノーマル理性は近寄らないね底のない介在はピ.ルの居場所と作り笑いでストック。
 脇から臍は赤くして何となく神聖な肢体を傾けて。バ.イブが、ありゃ似合うな。乱雑に散らばった下着を猿が持ち去って底のない夜の闇に葬られれば宜し。

115   yr  [id : Tq2hmKC.] [2014-02-02(日) 17:37:59] 削除依頼

°国境へ

 トヨタクラウンが金城ビルディングの前に着いた。
 関西支部では十五人の事務員が勤務していて、その中にユンホの父、ソンギがいる。ソンギは支部長だった。彼は社会主義者で、金日成のバッヂを必ず胸元につけている。戦後間もなくして朝鮮への帰国者は何万と数えたが、ソンギは右半身が不自由であったため、日本に残り、同じく帰国しなかったヨンヒと日本で結婚し、二人の子どもを授かった。長男のユンホとその妹エイミである。ソンギの意向から二人は高校まで朝鮮学校へ通った。そしてエイミが高校を卒業したのが去年のことである。

*****
続きを断念したもの。

116   yr  [id : Tq2hmKC.] [2014-02-02(日) 17:39:18] 削除依頼

°口の大きな女

 寝顔を見るとかばみたいで笑ってしまった。大きな口だなとは思っていたけれどこれほどまでとは思わなかった。ベッドから右脚がはみ出ている。タイツの擦れた赤い痕。着飾っていたドレスワンピースはソファでしわくちゃだ。優しい指が素敵で、長い髪はシャンプーのいい匂いがした。ポカリスエットを飲んで「甘い」と言う彼女の名前を、僕は知らない。浴室に彼女の毛が落ちていた。シャワーで慎重に流してしまう。
 口の大きな彼女は小さな砂時計を持っていて、「これがわたしときみの時間」と言った。僕にじっくり見せてからひっくり返してテレビボードの上に置いた。「あれが落ちてしまう前に、わたしをかなしい気持ちにさせて」。僕はときどきその砂時計を見た。さらさらと落ちる砂が彼女の時間だ。
 終わってからシャワーを浴びて眠った。もちろん砂時計は落ちてしまっていた。「かなしい気持ちになれた」と言う彼女はかなしそうにも見えたし、うれしそうにも見えた。
 ベッドに戻ると彼女の大きな口は塞がっていた。時計は午前八時を指していた。外が騒がしくなる。市バスが動いている。チェックアウトまではあと二時間あった。僕は手持ち無沙汰で携帯電話を弄るしかすることがなかった。
 口の大きな彼女の名前は聞けずに終わった。僕の名前も彼女は知らない。そういう関係に名前なんて必要ないことを僕は大学一年のときからわかっていた。確信に近いものだった。
 三条京阪前のタクシー乗り場で別れた。「昨日はかなしい気持ちになった?」と最後に彼女は尋ねた。僕は頷いて手を振った。タクシーは川端通りを南に走っていった。
 その大きな口で何を飲みこむつもりなんだ?

117   yr  [id : Ki8biCe/] [2014-03-12(水) 22:50:31] 削除依頼

°百万地蔵

 百万地蔵には週末数組のバスツアー客が訪れるが、それほどメジャーな社ではないし、大河ドラマの撮影地にでもなればいいもののそんな話は一縷もない。駅からは少し離れすぎているのだ。しかし、やはりこの周辺に住む者にとって百万地蔵は大切な存在というか、彼らは何かしらの恩義を感じていると思う。それに、境内に無数ある梅の花は毎年三月の半ばになると満開になり、地元の花見客で溢れる。百万地蔵の数に負けず劣らずの梅である。酒を飲み、百万地蔵にお参りをする。

 百万地蔵の社を見ていた。梅が少し咲いていた。満開とまでは言えないがほんのりと梅の香りがしている。なぜここに来たかはっきりとしないが僕は突っ立っている。
 足元には椿が落ちていた。
 まだ寒い三月の始まりだった。魚屋の社長が死んで、次はクリーニング屋の爺が倒れた。危篤状態で、いつ息を引き取ってもおかしくないと言う。関係のない話だけれど、もう少しゆっくりしていけばいいのにと思う。せめてこの梅が満開になるまで。
 幼い頃は父親から死んだ人が地蔵になるんだと聞いた。ならば死んでもこの梅が見れる、なんて石になった彼らは考えているのだろうか。僕にはそれが嘘だとわかっていても、そうだと言い聞かすことができた。彼も梅を見るだろう。
 梅の木一本一本に別れを告げることができるなら僕はそうしたいと思う。四月から町を出たって百万地蔵の一つ一つの顔を思い出すだろう。そして煙草を吸いながら彼にも一本渡すだろう。

 葦が好き放題に伸びて、川面は薄く、どちらに流れているかもわからない。まだ冬の形がそこには留まっている。白く霞んでいる。
 煙草を吸いながら川の行方を辿る。細々と、掌の皺のように。百万地蔵の社がある小山へ伸びている。牛乳の空き瓶が捨てられている。僕の記憶によれば、それは七年前から同じ場所にある。陽の光を浴びてもくすんで反射しない。川は町を抜けて、瀬戸内海の直前に溜池へ落ちる。

 社の角の柱に僕の記憶は刻まれている。僕の名前だ。日付も彫ってある。度が過ぎた悪戯だが、僕はあの日を忘れることがない。梅の花が少し散って、次は桜の出番だった。数少ない桜が蕾を目一杯に膨らませて呼吸している。僕にとってはもう七年も前のことでも彼にとってはほんの数日前だ。
 僕は時計の針が音を鳴らして動いているところを想像した。正しい時間の進み方で、正しい方向だった。
 百万地蔵は礼儀正しく直立している。どれも同じような顔をしているがそれぞれの時間が進んでいる。梅の花は来週には満開になるだろう。一つ一つの花が咲く。
 僕はなぜここに来たのだろうか。まだ蕾にならない桜に緩い陽が射している。カエルの鳴き声は気の所為か。
 百万地蔵に会釈して梅を縫うように、いずれにしても秒針は止まらない。

118   inoue  [id : MUvzjkuI] [2017-01-14(土) 19:21:39] 削除依頼

テストです。

>>1-3
>>1+3+5

テストでした。


名前:

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1   坂口  [id : .hVf/eS/] [2016-11-13(日) 19:09:01] 削除依頼

僕は、小学一年生。今、学校の帰り道を石をけりながら
帰っている。僕がたいてい石をけりしながら帰るときは
何か考えてる時だ。今は、僕の街にある、あの
公園のことを考えていた。第一号公園。
ごく普通の公園だ。僕はよくそこに遊びに行くし、みんな
暇つぶしにそこへ行く。
だけどね、そこはただのごく普通の公園じゃなかったんだ。
そこは宇宙とつながっててカフェにたどり着く。
カフェの名前は「くるみ割り人間」。

17   坂口  [id : AayYPV5H] [2016-12-07(水) 23:38:15] 削除依頼

「よかったね。味方がいたじゃない。」
僕は、うなずいた。
「坊や、それで、私に何を聞いてほしい?」
お姉さんは僕を見つめた。僕もその大きくて真っ黒で
宇宙のような瞳を見つめた。

「本当に美しいとは、どういうことなのでしょうか。」

今日、僕が疑問に思ったこと。いや、今日だけじゃない。
僕はぶすと呼ばれてから本当に美しいということが
わからないことに気づいていた。
それは、僕の中で革命的な疑問であり、ヒジリ君たちが
間違っていると気づいた。



18   坂口  [id : AayYPV5H] [2016-12-18(日) 23:31:17] 削除依頼

「坊や。」
僕はお姉さんの顔を見た。なんだかもうこれでお姉さんに
会えるのもここに来られるのも最後のような気がして
悲しくなる。でも、お姉さんの言葉を待った。


「本当に美しいということはね…。」

僕はお姉さんの言葉に納得して、
「くるみ割り人間」にもおいしいホットケーキにもお姉さんにも
別れを告げた。

19   坂口  [id : AayYPV5H] [2016-12-25(日) 00:01:31] 削除依頼

僕は、すっかり暗くなった帰り道を人いで歩く。
心はとっても明るかった。
だけど、お母さんの雷はそんなことも知らずに落雷した。
翌日、僕は平気な心を持って学校へ行った。
「ぶす!これを見ろよ!」
ヒジリ君たちだ。ヒジリ君は僕の体育館シューズをどろどろに
していた。
僕は、それを分析した。まず、土の色湿度から見て砂場から
持ってきたものだと考えた。
あとは、土が乾いている跡があることから雨の中(昨日は雨が
降っていた)汚したものだということも明確になった。
冷静に分析する僕を見てヒジリ君たちが慌てふためく。

20   坂口  [id : AayYPV5H] [2016-12-25(日) 00:08:51] 削除依頼

「ヒジリ君。」僕は、悲しくなってきた。
「なっ、なんだよ…!」
「これをするのに、君たちは約二十分くらい雨の中
 努力したんじゃないだろうか?」
教室がざわめく。みんなヒジリ君たちの僕に対する
労働時間の長さに驚いているのだ。
「それが、どうしたんだよ!」ヒジリ君が叫ぶ。
「僕は、大変残念に思っている。なんでかって言うと君たちが
 僕のためにこんなに長い労働時間を使ってしまったことだよ。」
「はぁ?」
「まあ、悲しがるのも無理はない。だけど、君たちは頑張った。
 だから、簡単に体育館シューズを汚くする方法を教えて
 あげよう。特別だよ。よく覚えておくんだ。」

21   坂口  [id : AayYPV5H] [2016-12-25(日) 00:14:51] 削除依頼

僕は、担任の先生の大好きな目が飛び出るほどの濃くて
半分お砂糖が入った、ブラックコーヒーを手にもった。
そしてヒジリ君の体育館シューズを持ってきて、思い切り
かけた。
もう、手の施しようのないくらい黒色に染まった。
教室が、大笑いに包まれた。
「お前!何をするんだ!俺のままに言いつけるぞ!校長先生
 呼ぶぞ!」
「じゃあ、今、君が手に持っている僕の体育館シューズは
 どう説明するつもりだい?」
「そうだ!今まで、いじめたお返しだよ!!!」
ミナミ君が大声で叫んだ。こんなに大声が出せる人物だとは
思わなかったけれどさすが僕の親友だ。

22   坂口  [id : AayYPV5H] [2017-01-05(木) 23:11:06] 削除依頼

「ヒジリ君、僕はね思うんだ。本当に美しいとは決して
 外見のことだけじゃない。その人、そのものが美しいんだ。」
ヒジリ君はなぜか泣いている。
「僕はわかったんだよ。だから君もみんなも理解してほしい。
 僕は誰かにぶすって言われたって絶対に整形なんかしない。
 それは、なんでかって言うとね、僕の顔がぶすでもぶすのまま
 の方が美しいからなんだ。変わらないことが大切だよ。心もね。
 ねえ、ヒジリ君、君はせっかくきれいな顔立ちをしているのに
 今のままだと全く美しくない青い蛇だ。」
こんなに長々と話したのは初めてだった。だけど、今のヒジリ君に
僕の革命的な疑問とその答えを離さないわけにはいかなかった。
これは、くるみ割り人形のお姉さんが教えてくれたんだ。

23   坂口  [id : AayYPV5H] [2017-01-09(月) 14:43:35] 削除依頼

あれから、数日経ったけれど僕のスピーチがみんなに
届いたかどうかはわからない。
だけど、あの教室で「ぶす」という言葉を放つ人は
いなくなった。ヒジリ君たちは相変わらずにぎやかだけれど
いじめはしなくなった。人間痛い目に逢うと変わるもんだと
ミナミ君はいっていたけれどヒジリ君たちは痛い目に
逢っていたのかな?そんなことは僕に関係ないことである。
そして、カフェ「くるみ割り人間」について。
あれから、僕は普通にくるみ割り人間に行くことができた。
あの時僕がいだいた感動的な別れのきもちは無駄だったようだ。
しかも、ミナミ君だって連れてこれた。
話が違うとお姉さんに行ったら無視された。お姉さんは
その場の雰囲気に踊らされるのがうまいと脳内メモした。

以上、これが僕の救世主「くるみ割り人間」との思い出である。

一、「少年の革命」完


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1   芽衣奈  [id : dbciZgN3] [2017-01-04(水) 15:42:20] 削除依頼

もしあの時に戻れたら、救えたのかもしれない…。





「ほら!ぼーっとしないで!」
バコッ!
「ってーな!何すんだよ!」
「何って勉強しないから叩いてやったの!」
只今俺の家で勉強会中。
テストが近いから麗華と一緒に勉強している。
「言い出しっぺは哲也でしょ!ちゃんとやりなよ!」
「分かったよ…。」
おしとやかな人だけど勉強に関しては厳しいな…。

数時間後
「終わったー!」
「お疲れ〜」
終わった。終わったぞー!
よし!スケ「まさかこれからスケボーしようなんて思ってないでしょうね?」
ギクッ…。
「え?ナンデ?」
「まだ1時間しか経ってないのよ?」
うわーこの爽やか笑顔にやられる…。

11   芽衣奈  [id : dbciZgN3] [2017-01-05(木) 11:07:26] 削除依頼

そこで目にした光景は…。
麗華にプレゼントした雪の結晶型のヘアピン。
関原はそれをネックレスとして首から下げていた。
「関原…なんでそのヘアピン……持ってるんだ?」
「ごめんね…今まで黙ってて」
待って、頭が追いつかない…。整理出来ない。
「あのね、もう会えないって言うのはこれから本当のこと話して私は成仏するの」
「え?成仏?」
「関原凛菜は仮の名前…本名は関口麗華よ」
え……。麗……華……?
「嘘だろ……」
「本当」

青い空の下。少し暖かい風が麗華を包むようにして通り過ぎた。

12   芽衣奈  [id : dbciZgN3] [2017-01-05(木) 11:18:56] 削除依頼

麗華は俺に本当のことを話した。

「あれは私が死んだ後のこと。
後悔も悔いも残らなかった。
ただ…哲也の隣に居たかった事が心残りだった。
いつも哲也の隣で楽しく話したり、勉強したり、意外な一面が見られたり。私にとって哲也はかけがえのない人だった。天国の世界は広く、平和な場所だった。天国で一番信頼されている神様にお願いしたの。『哲也のそばに居たい、もっと一緒に居たい!』って言ったの。『事故現場にいた『志垣哲也』だけにはあなたの正体をバラしてはいけないよ』と言って、こっちに戻ってきたの。」
「正体バレたらどうなるのさ」
「バレた時点で私はもうこの世に戻ることは出来ない。死んだはずの人がこの世に生きていたらおかしいでしょう?」


俺が無意識で麗華に電話したのが間違いだった。
電話しなければもう少し一緒にいられたはずなのに…。

13   芽衣奈  [id : dbciZgN3] [2017-01-05(木) 11:21:26] 削除依頼

訂正

正体をバラしてはいけないよ』と言って
この言ってを言われてに訂正します。

14   芽衣奈  [id : dbciZgN3] [2017-01-05(木) 17:34:24] 削除依頼

「私っ……こんなつもりじゃなかったんだよ…」
うん知ってる。
「騙して馬鹿にしようなんて思ってないよ……」
分かってるよ。
「だからっ…こんな私を許してくれる?」
「許すよ。許すからもう泣くな」
麗華は俺を見守ってくれていた。
麗華は俺に勇気をくれた。
麗華は俺に自信をもたせてくれた。
麗華は………。
こんなヘタレな俺に色んなことを教えてくれた。

当たり前だと思っていた日々が終わり、新しい日々を過ごし俺は『関原凛菜』に惹かれていった。

でもこれでもう終わり。『関原凛菜』も『関口麗華』もこの世から去ってしまうのだから。

15   芽衣奈  [id : dbciZgN3] [2017-01-05(木) 17:49:21] 削除依頼

「もうそろそろ迎えが来る」
俺は悲しみと悔しさが混ざり複雑な気持ちになっていた。麗華は申し訳なさそうに、泣きそうな顔だった。
「あの…ね…哲也」
優しくて、でも少し泣きそうな声で名前を呼ばれた。
「私、哲也に会えてよかったよ。ずっと一緒に過ごせた日々は忘れない」
「俺だって……忘れない」
あの日々は絶対に忘れない。忘れたくない。勉強出来なくてバカにされた日々、一緒に好きなバスケやった日々、全部俺ら2人の思い出は心に残っている。

ふと顔を上げると麗華の体全身が光に包まれていた。
「もう迎えが来たみたい」
嘘だ……待ってよ。
「待ってよ!俺を置いていくな!戻ってこいよ!麗華!」
俺は泣きながら必死に麗華を呼んだ。
手を伸ばして麗華を掴もうとした。
届きそうで届かない。
「哲…「麗華!戻ってこい!俺を1人にするな!もっともっと一緒に居たい!」
もう必死過ぎて麗華しか見えない。

「俺はどんな事でもお前を必ず見つけてみせる!俺はお前の事が好きだ!だから何処にいてもすぐに見つけて駆け出して行くから!だから!だから……。もう一度戻って来てくれ……麗華…」
頼むよ……神様………麗華を…麗華を!

「私だって哲也の事好きだよ!でも!もうこの世に私はいないんだよ?ねぇ……私はもういないの!死んでしまったっていう現実を受け入れてよ!お願いだから……じゃないと何のためにここに戻ってきたのよ…。」

16   芽衣奈  [id : dbciZgN3] [2017-01-05(木) 18:02:19] 削除依頼

俺は1人で必死に麗華を呼んだ。
「頼むよ…麗華戻ってこい……行かないで!」
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
「哲也……………。だって………………。」
「え……。」
なんて言っていたのかはわからなかったが、麗華が俺に残した最後の言葉だった事はわかった。
静かな病室。必死に1人の少女をめがけて叫んでいた。
俺は…麗華の死をしっかりと受け入れることが出来た。それはあの言葉のおかげだった。


『哲也、いつか私がここに戻ってきた時、おソロのヘアピンを見せて。だって…このヘアピンは『恋人』の証なんだから』

17   芽衣奈  [id : dbciZgN3] [2017-01-05(木) 18:09:57] 削除依頼

俺はすっかり二十歳になった。
そして彼女もいる。それは麗奈。
麗華とは外見が少しだけ似ているが、考え方は全く同じ。
「哲也の彼女さん、元気かな?」
「俺二股かよ(笑)」
「いいじゃない。私は許すよ」
「なんで?」
「だって哲也の事すごく大切にしてたんでしょ?」
そうだ。麗華は俺の事1から全て大切にしてくれていた。

忘れないあの時の悲しみ。
俺は勇気の一歩を踏み出した。

END


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