嘘吐き彼女とズレた日常、19コメント

1 夕梨 id:eRCdv3B1

2011-12-12(月) 15:13:42 [削除依頼]
「信じる方が悪いんですよ」

俺はそれでも、彼女を信じたかった。
  • 2 夕梨 id:eRCdv3B1

    2011-12-12(月) 15:20:50 [削除依頼]

    ♯01

    「あの、ちょっと良いでしょうか?」

    とある春の昼休み。
    俺はパンを買おうと売店へ向かっていると、話し掛けて来る女子生徒がいた。
    敬語を使う所から、下級生かと思ったが、制服の校章の色が同じだから、同学年だった。

    「わ、私は七條唯と言います。すっごく、初対面で申し訳ないのですけど、私、一度気になると、それが仕方なく気になってしまうので……聞いて良いですか?」

    何を?と、聞きたかったが、向こうは俺が口を挟む隙を作らせず、一拍空いて、直ぐに言う。

    「攻め、ですよね?」
  • 3 夕梨 id:eRCdv3B1

    2011-12-12(月) 15:36:14 [削除依頼]

    あまりに唐突な質問に俺は焦った。
    こんなに焦ったのは数学のテストで赤点ギリギリと取った事以来だろう。

    「違うんですか?」

    きょとんとした目で彼女は尚更聞いて来る

    「ちょっと確認させてくれないか?」

    「え、あ、はい」

    「お前の言う攻めは何を指しているんだ?」

    「それは決まってるじゃないですか。嫌、何でそんな事を思ったのかと言うと、実はあなたは物凄くこの小説に出て来る主人公に似てるんですよ」

    そう言って、彼女は俺に手軽なサイズの本を見せて来る。
    ライトノベルか?

    「どんな話なんだ?」

    「はい。BLです」

    あっさりと答えやがった。

    「へ、へえ」

    俺は物凄くこの初対面の女子生徒に引いた。
    人に対してこんなに引いたのは初めてかも知れない。
    確かに腐女子と言う言葉は薄っすらと知ってはいた。
    だが、まさかこんな身近にいるとは思いもしなかった。

    「で、如何なんですか?」

    「頼むから、俺の前から消えてくれ」

    「え、嫌、答えてくれるまでは消えられません。答えてくれないと気になって夜も眠れないじゃないですかっ」

    「そんなの知らねえよっ」

    「その言い草は酷いです。如何してくれるんですかっ」

    「嫌、俺、何かした?」

    「この上野さんに似ているのが悪いですっ!!」

    彼女は本を捲って、間にある挿絵を俺に見せた。
    そのページには黒髪で学ランの高校生ぐらいの男が描かれていた。

    「これが俺に似ていると?」

    「はい」

    「嫌、似てないと思うが。つーか、これ、黒髪でさえあれば、誰だって似てるって言えると思うが」

    「た、確かにそうですけど、あなたはその荒れている感じが上野さんとシンクロしてるんですよ」

    興奮しているのか、彼女の頬は赤くなっていた。
    どれだけ、好きなんだよ。

    「七條、とか言ったか?」

    「はい、そうです」

    「そこ、退いてくれないか?パン、買いに行けねえんだけど」

    別に彼女を押し退ければ行けるのだが、流石に女子にそんな事は出来ない。

    「嫌です。答えて下さい」

    鬱陶しい奴だ。
    仕方ない。

    「あっ、あそこの上野さんに似てる人がいる」

    俺は振り返って、適当にいた男子を指差した。

    「えっ、何処ですか?」

    予想通り、七條は食い付き、俺が指差した男子の元へ言った。
    アイツ、騙され易いな。
    そう思いながら、俺は売店へ向かった。
  • 4 夕梨 id:eRCdv3B1

    2011-12-12(月) 15:54:28 [削除依頼]

    ♯02

    あまりこれ以上関わりたくないと思わされた腐女子と廊下で遭遇してから3日後。
    不幸な事に俺はまた彼女と廊下で会ってしまった……遭ってしまった。

    「わーい、久し振りですね。上野さんっ」

    俺を見るなり、七條は抱きつく様な勢いで走って来た。
    かなり、見た目は可愛いと分類される程なのだが、コイツの場合、せっかくの外見を性格で打っ壊しているから、恐らく、全くモテずにいるだろうな。
    しかも、俺は上野じゃねえし。

    「上野さん、どうかしました?」

    「七條、俺、なんて名前だと思う?」

    「上野さん」

    「嫌、上野じゃねえから。藤咲だから」

    「あ、藤咲さんですか。何か平凡な名前ですね」

    「お前も人の事、言えねえと思うが」

    「そうですか?七條って、結構、凄い名前ですよ。まあ、二次元の作品に七條ってキャラはいないんですけど」

    「お前の基準は二次元かよ」

    「そうですね」

    否定しないのか。

    「ところで、上野……じゃなくて、藤咲さん。藤咲さんって、何組何ですか?前に聞くの、忘れてまして」

    「3組だけど」

    「意外に隣のクラスだったんですね。私は4組ですよ。まあ、クラス同士の交流はないですし、知らなくて当然ですけど」

    「じゃあな、七條」

    「ちょ、ちょっと待って下さいよ。嫌々、何でそこで別れちゃうんですか?別れ方、おかしいですから」

    行こうとした俺の腕を七條は慌てて掴んだ。

    「用事は済んだだろ?」

    「す、済んで……ないですよ」

    「じゃあ、早くしてくれ」

    「えーと、その、藤咲さん、帰宅部だったりしませんか?だったら、部活に入りません?私、文芸部に入ってるんですけど、部員が少なくてですね……このままだと廃部何ですよ。何時かの軽音部みたいな感じで。だから、入ってくれませんか?」

    「何時かの軽音部って、此処、軽音部とかないだろ?吹奏楽部ならあるが」

    「分かってないですね、藤咲さん。軽音部と言えば、あの国民的な作品ですよっ」

    意味が分からない。

    「あの作品は廃部危機から始まったんですよね。文化祭の回は最高でした」

    「七條」

    「はい、何でしょう?あ、映画、見に行きました?」

    「だから、何言ってんのか分からねえんだよ。それに俺、もう、入ってるし」

    「何にですか?」

    「文芸部」

    「え?そうなんですか?」

    「まあ、幽霊部員だけど」

    「ご、ゴーストですか。嫌、ダメですよっ、ちゃんと来て下さい」

    キーンコーンカーンコーンッ

    休憩時間終了を告げるチャイムが鳴った。
    廊下にいる生徒は教室に入って行く。

    「お前、教室、入らないのか?」

    「え、あ、ちょっと、その、保健室に行こうと思いまして」

    「は?」

    「持病が再発しまして……じゃあ、藤咲さん、またっ」

    七條は廊下を走って行った。
    何なんだか。
  • 5 夕梨 id:eRCdv3B1

    2011-12-12(月) 15:56:20 [削除依頼]

    登場人物

    藤咲
    高校2年生。
    何事にもあまり興味を持たない文芸部。

    七條唯
    高校2年生。
    腐女子で、文芸部。
    よく慌てる。
  • 6 みかん id:MqvUcHy.

    2011-12-12(月) 16:00:49 [削除依頼]
    題名に引かれて来てみれば♪
    やっぱり、面白そう★
    更新頑張って下さいっ(>v<)

    私もそんな感じ(?)の話書いてるんで、
    ついつい気になってしまいます(−△−)

    またコメしまぁす★ミ
  • 7 夕梨 id:4GCGn6k0

    2011-12-12(月) 20:12:08 [削除依頼]
    >6 コメントありがとうございますっ 頑張ります^^
  • 8 夕梨 id:4GCGn6k0

    2011-12-12(月) 20:28:02 [削除依頼]

    教室に入り、席に着くと、すぐさま前の席の夏野が後ろを向いて来た。

    「さっき話してたのって、七條さんだよな?」

    「へえ、お前、知ってるのか?」

    「ああ。中学一緒何だよ。まあ、結構、クラスでも浮いてたから覚えてるわ」

    「だろうな」

    「腐女子だろ?あの顔なのに勿体ないよな。あ、でも、中3の時に七條さん、劇でヒロインやってたな」

    「ヒロイン?アイツが?」

    「そりゃあ、クラスで一番顔が良いからな。確か、シンデレラだったか」

    黒髪なのが妙に引っ掛かるが、まあ、選ばれてもおかしくない。

    「そう言えば、七條さん、演技上手かったな。演劇部並みだったし……で?お前は何でそんな七條さんと喋ってたんだ?」

    「前に向こうがいきなり、攻めですか?とか、聞いて来たんだよ。それで知り合って、さっきは偶然会っただけだ」

    「初対面で言うセリフじゃねえよ、それ」

    夏野は大声で笑う。
    別に休憩時間だったら良いのだが、思い切り授業中だ。
    数学担当の教師が夏野に冷たい視線を向ける。
    完璧に今ので授業態度が悪くなった。

    「なあ、七條って、持病あるのか?」

    「はあ?持病?ねえよ、そんなもん……多分」

    「多分って、何だよ?」

    「嫌、去年、偶々見たんだよな。凄い七條さんらしくない所」

    「らしくない?」

    「廊下歩いてたらさ、ほら、アイツ、メガネ掛けてるじゃん?なのにメガネ外して、髪が乱れて、ネクタイもぐちゃぐちゃでしんどそうに歩いてる七條さんと擦れ違った事がある」

    「それはただ、しんどかっただけじゃねえか?」

    「そうだろうけど。でも、妙に何時もの七條さんらしくなかったんだよな。しかも、メガネ外した七條さん、めちゃ可愛かったし」

    「あっそ」

    如何でも良い事だ。
    嫌、俺から聞いたんだが。
  • 9 夕梨 id:4GCGn6k0

    2011-12-12(月) 20:34:13 [削除依頼]

    放課後。
    俺は文芸部部室に行かず、下駄箱へ直行していた。

    「藤咲さーんっ」

    後ろから声がした。
    誰の声か、直ぐに分かったが、スルーして置く。

    「無視しないで下さいよ。私、泣いちゃいますよっ」

    声から、泣く気、全然ないんだが。

    「返事してくれないと、藤咲さんの秘密、校内放送でバラしちゃいますよ」

    無意識に俺は振り返っていた。

    「へえ、藤咲さん、秘密があるんですか。まあ、誰だって秘密、ありますよね」

    「何だよ。騙してまで俺に何の用だ?」

    「部活の時間ですよ」

    「幽霊部員兼帰宅のエースの俺には関係ない」

    「エースって……まあ、行きましょうよ。部室にっ」

    七條は俺の腕を掴んで、走り出した。

    「お、おい、廊下は走ったらダメ何だぞ」

    何故かこう言う時だけ、俺はまともな事を言う。
    まあ、普段、普通に走っているんだが。

    「別に誰も見てないですし、良いですよ。私が許します」

    「お前、誰だよ」

    「七條唯です」

    「知ってるっ」

    「でしょうね」

    くすくすと、七條は笑った。
  • 10 夕梨 id:4GCGn6k0

    2011-12-12(月) 20:53:42 [削除依頼]

    文芸部に入部して1年経っているが、俺は1回も、部室に行った事がない。
    だから、俺が放課後してる事は帰宅部の奴等と変わりない。

    「こんにちはー」

    七條はハイテンションで、部室の中へ入って行く。
    直ぐに俺は帰りたかったが、七條が俺を掴む手を離さない為、逃げられない。

    「なあ、帰りたいんだが」

    「まあまあ。あっ、先輩、入部したい人じゃなくて、幽霊部員を連れて来ましたよ」

    部室は自分等が授業を受けている教室と対して変わりなかった。
    中には5個程の机の椅子があって、見知らぬ3年生の女子生徒が何故か机に座っていた。逆に椅子は荷物置きとされていて、この先輩の物らしい鞄が置かれていた。
    嫌、机の椅子の使い方、逆だろう。

    「へえ。結構、良いじゃない」

    女子生徒はくすりと笑った。
    何が良いんだ?

    「ああ、ごめんなさいね。私は3年の秋山梨花。良いって言うのはあなたの顔って意味だから。決して、あなたの性格が良いとは言ってないわよ」

    褒めてるのか、貶してるのか、分からない。
    此処は素直に喜んでいた方が良いのか。

    「あなたは?」

    「2年の藤咲ですけど」

    「そう。藤咲君。あなたが藤咲君か」

    「あれ、先輩、知ってるんですか?」

    七條は鞄を椅子に置きながら、秋山とか言う先輩に聞いた。

    「ええ。入部してるのに1回も来なかった薄情者よ。聞きたかったんだけど、如何して、文芸部に入部したのかしら?」

    「嫌、何となく、ですけど」

    「へえ。何となく、ね。まあ、何となくで済めば良いのだけど。あなた、後1ヶ月、部活に来なかったら、生徒会から懲罰を受ける所だったのよ」

    「そ、そうだったんですか。って、何でそれを俺に知らせてくれなかったんですか?」

    「良いじゃない。ざまあみろと私が笑うだけ」

    この先輩、かなり性格が悪い。

    「自己紹介が終わった事だし、本題に移りましょうか。ねえ、七條さん、太陽の光が眩しいから、カーテン閉めて」

    自分で閉めようと思わないのか。

    「すみません。今、私はBL小説を読んでいる途中なので、藤咲さんにやらせて下さい」

    「そう、それは悪かったわ。じゃ、藤咲君、閉めて」

    「完璧に先輩の方が窓に近いんですけど。机から降りて、自分で閉めようとは思わないんですか?」

    「思わないわよ。それに先輩と呼ぶのは止めて」

    「如何呼べと?」

    「部長よ、部長」

    部長だったのか。
  • 11 夕梨 id:4GCGn6k0

    2011-12-12(月) 20:54:23 [削除依頼]
    >10 机と椅子の使い方、ですね。 すみません。
  • 12 夕梨 id:4GCGn6k0

    2011-12-12(月) 21:04:00 [削除依頼]

    結局、カーテンは俺が閉めた。
    そして、先輩……部長は嬉しそうにカーテンを閉める俺の姿を見て、足を組んだ。

    「藤咲君、立っているのも何だから、その辺の机に座って」

    俺は部長の座っている机の向かいにある椅子に座った。
    隣には七條が意味分からない小説を熱心に呼んでいる。

    「如何して、机に座らないの?」

    「部長の考え方、おかしくないですか?」

    「そうかしら?」

    この人に常識はあるのだろうか。

    「あの、先輩。先輩は勿論、上野さんが好きですよね?」

    「ええ。上野さんが好きよ。あんな人と付き合ってみたいわ」

    唐突な七條の問いに、部長はサラリと答える。
    俺には部長と呼べと言ったくせに七条が先輩と呼ぶ事は良いのかよ。
    何か色々矛盾している奴だ。
    それに上野さんとか言ってる時点で、BL小説を呼んでるし。

    「そう言えば、上野さんに似てるわね。藤咲君」

    「あ、先輩もそう思いました?そうですよね。似てますよね。学ラン着せたいですよね」

    「残念ながら、今は学ランを持ち合わせていないわ。あ、でも、演劇部にあったと思うわよ。丁度、その小説に出てる制服に似たのが」

    「本当ですか?」

    「ええ。今度、藤咲君に着せましょう」

    何、2人で良からぬ事を言い合っているんだろうか。

    「あの、俺、帰って良いですか?」

    「ダメよ。私はもっと藤咲君と話したいんだから」

    「何を?」

    「今後の事について」

    「何の?」

    「私と藤咲君の」

    意味が分からなかった。
  • 13 夕梨 id:4GCGn6k0

    2011-12-12(月) 21:05:18 [削除依頼]
    >11 七條が七条になってますけど、七條です。 重ね重ねミスってます;;;
  • 14 夕梨 id:4GCGn6k0

    2011-12-12(月) 21:21:10 [削除依頼]

    「なら、さっさと話しましょう。で、何の話ですか?」

    「その、嫌な事はさっさと済ませようと言う考え方、私、嫌いよ。それに何よ、私の事、嫌いなの?」

    「初対面で人の事、嫌いになるのはあまりないかと」

    妙に隣が静かだ。
    気になって、横を見ると、七條は満面の笑みを浮かべて小説……嫌、マンガを読んでいた。
    うちの学校、マンガは禁止しているのだが。
    コイツ、BLの小説とマンガ、何冊くらい持って来ているんだろう。

    「ねえ、藤咲君は七條さんが好きなの?」

    「は?」

    「だって、今、七條さんを見てたじゃない。気があるの?」

    「よく近くに当人がいるのにそんな話が出来ますね」

    「大丈夫よ。聞こえてないから。あの子、読み出すと、当分は話し掛けても答えてくれないわよ」

    「そ、そうですか」

    「だから、悪口を言っても聞こえないわけ。私、マジ、腐女子なんて無理何ですけどぉー」

    いきなり軽い口調で、部長は七條に言った。
    だが、七條には聞こえていないらしく、普通にマンガを読み続けている。

    「ほらね。ま、別に私は腐女子だと言っても、引いたりはしないけどね。それで、好きなの?七條さんが」

    「いえ、好きじゃないですけど」

    「そうなの?でも、近くで見ると、七條さんって、可愛いと思うのよね。あのメガネが邪魔してるだけで」

    「目、悪いから、メガネ掛けてるんで、邪魔ではないかと」

    「そうかしら?この子の、度、入ってないわよ」

    伊達メガネなのか。
    俺は驚いて、七條の掛けているメガネを見る。

    「だったら、何で、掛けてるんですか?」

    「さあ?わざとじゃないの?」

    「わざと?」

    「わざと自分の可愛さを見えない様にしている。ぶっちゃけ、七條さんはそんな感じの子よ。何時もよく笑うけど、本心から笑っているのかは分からない。実際、BLモノが好きだと言うけど、本当に好きなのかは分からない。でも、藤咲君は良い生き方してるわよね。だーれも、信じないとか」

    「……如何言う意味ですか?」

    「分かってるくせに。あなたは誰も信用しない。そうでしょう?」
  • 15 夕梨 id:4GCGn6k0

    2011-12-12(月) 21:37:05 [削除依頼]

    「軽い付き合いが一番人との付き合い方で楽なのは分かるわよ。だけど、その代わりに本心から話し合える友達が誰一人いない。それは逆に寂しくないかしら?」

    見破られたのは初めてだった。
    親にも、バレてないのに。

    「それは人それぞれ何じゃないですか?俺はそうは思いませんけど」

    「じゃあ、聞くけど、あなた、生きてて楽しい?」

    「楽しい、ですけど」

    「へえ。そう」

    直ぐに帰りたかった。
    だが、此処で帰ると言えば、間違いなく、部長は逃げたとか言うだろう。

    「ふふ、逃げないのね。その辺は強いんだ。ま、予想通りの展開だけど」

    「……」

    「はあ、1巻、読み終わりました。面白かったですよ。って、あれ?藤咲さん、テンション凄い低いですね。どうかしたんですか?」

    「……そう言うお前はテンション高いな」

    「えへへ、そうですか?」

    「藤咲君」

    部長は机から降りて、椅子の上の鞄を手に取る。

    「意外に藤咲君と七條さんって、良い組み合わせだと思うわよ。お互いの欠点、治せ合えるだろうし」

    「先輩、意味が分からないですけど。欠点?」

    「七條さん、惚けるのもいい加減にした方が良いわよ。鬱陶しい時はとことん鬱陶しいから。じゃ、私、帰るわね」

    部長は部室から出て行った。

    バタンッ

    と、ドアが閉まる。

    「惚けるって、私、惚けてないんですけど、ね」

    「部長にはそう見えたって事だろ」

    「時々、先輩の言ってる事、分からないんですよね」

    「そうだろうな」

    この時の俺等はお互いに惚け合っている事しか出来なかった。
    それはただ、逃げている事と変わりなかったのに俺はこの先もずっとこのままで良いとそう思っていた。
  • 16 夕梨 id:2WSeAML0

    2011-12-13(火) 16:02:44 [削除依頼]

    ♯03

    1年前の12月20日――

    場所は廊下で、

    「……つっ」

    私、秋山梨花は、後輩、七條唯と出会った。
  • 17 夕梨 id:2WSeAML0

    2011-12-13(火) 16:09:01 [削除依頼]
    初めて会った時の七條さんは滑って転んで、痛そうにしていた。
    まあ、廊下だから、地面は外みたくアスファルトやコンクリートじゃないから、怪我はしてないのだけど。

    「大丈夫かしら?1年生」

    心配ではなく、冷やかしで、私は声を掛けた。

    「え……あ、はい。大丈夫、です」

    ぎこちなく、後輩は頷いて、立ち上がる。
    去年の事だから、あまりよく覚えていないのだけど、この時の私は七條さんの事をどんくさい奴だなと思っていたと思う。

    「あの、先輩、ですよね?」

    後輩の目線は私の制服の校章にあった。

    「ええ。そうだけど」

    「だ、だったら、その、保健室の場所、教えてくれませんか?」

    今思い出したけど、初対面の七條さんは終始無表情だった。
  • 18 夕梨 id:2WSeAML0

    2011-12-13(火) 16:11:48 [削除依頼]
    例え、1年生だったとしても、12月の今、校舎の構図を知らないのは明らかにおかしいと私は思った。

    「あなた、転校生か何か?」

    「方向音痴なので……」

    「そう。じゃ、案内してあげるわ。私は秋山梨花。先輩とでも呼んで」

    「分かりました」

    「あなたは?」

    「七條唯、です」

    「七條さん……何か親しみのない名前ね」

    「ありがとうございます」

    嫌、褒めていないのだけど。
    そして、私達は噛み合わない会話をしながら、保健室へ向かった。
  • 19 夕梨 id:2WSeAML0

    2011-12-13(火) 16:20:32 [削除依頼]
    保健室には誰もいなかった。
    この学校の保健医はいい加減だから、きっと職務放棄でもしているのだろう。
    そう、解釈して、私は適当に椅子に腰を掛ける。

    「で、何処を怪我したのよ?」

    「いえ、私は元々、保健室に行こうとしていたと言うか」

    「あ、そうなの。それで、途中でこけたって事ね」

    七條さんは頷く。

    「でも、如何して?サボりで保健室に来たの?」

    「サボりってわけではないです。ただ、1人になりたかっただけで」

    段々、声が小さくなって行く。

    「先輩、ありがとうございました。もうすぐ、授業なので、もう教室に行って頂いても結構です」

    お礼を言っているが、これは遠回しに早く出て行ってくれと言っているのと一緒だ。
    妙に私は昔から、そう言うのが分かってしまう。
    いっそ、何にも分からない天然な性格だったら良かったのに。

    「七條さんって、ずっと日頃からこうなの?」

    「何がですか?」

    「嫌、何でもないわ。お大事に」

    私は言われた通り、保健室を出た。
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