偽りの現実を終わらせるために43コメント

1 美冬 id:sdPmh6/.

2011-11-30(水) 13:21:23 [削除依頼]
現実逃避もいい加減此処まで来ると甚だしかった。
だから、俺は終わらせる事にした。

「なあ、ななせ」

偽りの笑みを浮かべて、俺は何時もの様に話し掛ける。
全てを知った彼女はどんな反応をするのだろうか。
怒るのか、
哀しむのか、
狂ってしまうのか、
それは俺にも分からない。
  • 24 美冬 id:0plzEcT/

    2011-12-03(土) 10:12:25 [削除依頼]
    俺はドアを閉めて、凭れ掛かる。

    「あれ、行かないの?」

    「じゃ、お前の質問。言ったら、ななせは何をすると思う?」

    「……何?あたしの意見を参考にしてくれるの?」

    「一部、な」

    「ふーん。なら、言おうかな」

    姉はソファーから立ち上がり、大きく伸びをした。

    「二つのパターンがあると思うのよね。一つ目はななせちゃんが杏子ちゃんや三咲君に襲い掛かる的な感じで」

    「……二つ目は?」

    「ななせちゃんが自ら消えちゃう、とか。ほら、罪悪感に苛まれて〜みたいな展開、良く小説とかであるでしょう?」

    コイツの思考は全て小説が中心なのかよ。
    まともな意見を期待した俺がバ.カだった。

    「だが、ななせの自.殺は有り得ないだろ」

    「分からないよ?何だかんだ言って、普通のななせちゃんは優しい子じゃん。だから、どうなるかは分からない」

    「それはそうだが」

    「ななせちゃんには悪いけど、あたしは二つ目のパターンを望むかな。流石に三咲君達に危害が及ぶ様な事があったら嫌だし。あ、退いてくれる?」

    言われるままに俺はドアから退く。
    出て行くのか。

    「さてさて、すっごく役に立つアドバイスをした事だし、優しくて可愛いお姉ちゃんは帰ろうかな」

    「早く帰れよっ」

    「はいはい。じゃ、三咲君、頑張ってよね。ななせちゃんや杏子ちゃんの未来はあんたに掛かってるんだから」

    「ちょ……俺、そんな重要なわけ?」

    「そうよ。ま、夏休みになったら、また帰って来るし。お母さんに伝えといて。じゃっ」

    姉は軽く手を振って笑い、家から出て行った。
  • 25 美冬 id:0plzEcT/

    2011-12-03(土) 10:14:33 [削除依頼]

    茅野いのり(kayano-)
    大学三年生。
    自由気侭な性格。
    三咲と礼奈の姉。
  • 26 美冬 id:0plzEcT/

    2011-12-03(土) 10:31:38 [削除依頼]
    次の日。

    「へえ。いのりさんが来たんだぁ。ちょーと、会いたかったかも」

    いのりが来た事を言うと、杏子は大いに残念がった。
    そういや、コイツだけだったか。
    いのりと意気投合してたのは。

    「それにしても、天気悪いねぇ。多分、午後から雨だな」

    空を見上げると、綺麗な青空が広がっていた。
    別に天気が悪いとは言えない。

    「そうか?晴れてるじゃねえか」

    「ん、雲行きが怪しいんだよ。あ、ななせ先輩、おはようございます」

    杏子が向こうの方で立っているななせの元へ歩いて行く。

    「おはよ。今日は杏子ちゃんと偶々会ったんだね」

    「ああ」

    偶々、ではないが。

    「何か三人で会うのは久し振りだよね」

    歩きながら、ななせが言った。

    「そうですね。ところで、ななせ先輩、生徒会の方は如何なんですか?」

    「意外に上手くやってるよ。皆、優しいし」

    「書記って、何やるんだ?」

    俺が聞くと、ななせの笑みが若干引き攣った。
    勿論、聞いたらダメだったと分かって聞いている。

    「え、書記は書記だよ」

    「記述するんですか?」

    「そ、そう。そうなのっ」

    杏子の問いに大きく賛同した。
    何でコイツ、ななせにフォローなんかしてるんだ?
    俺の右横を見ると、杏子は妙に複雑そうな顔をしていた。
    何なんだか。

    「嘘吐くなよ。どうせ、お茶煎れたりしてるんだろ?」

    「見てたの?」

    「嫌、風の噂」

    「うう、仕方ないじゃん。わたし、何も出来ないし」

    ななせは俯いて、物々と何かを言い出す。
    こう言う所は昔から変わってない。

    「はあ」

    微かに杏子から溜め息が聞こえた。

    「どうかしたのか?」

    「ストーカー」

    「は?」

    「嫌、何でもない、です」

    ストーカーだとか言ってた気がするが。
    俺の聞き間違いだったのだろうか。
  • 27 美冬 id:0plzEcT/

    2011-12-03(土) 10:42:25 [削除依頼]
    五時間目の授業中。
    晴天だった空に雨雲が突如現れ、直ぐに大雨となった。
    杏子の言う通り、だ。
    アイツ、予言者かよ。

    「うわ、雨、降って来たわね。皆、傘持って来てる?」

    丁度、数学の授業で、このクラスの担任でもある北見理科が生徒達に聞いていた。

    「茅野君、持って来た?」

    何で俺に聞くのか気になったが。

    「はい。持って来ています」

    偶然、折り畳み傘が机の中に入っていたのだ。
    何時持って来たのか、全く覚えていないが。

    「そう。って、水野さん、どうかしたの?」

    「い、いえ、わたしは傘、忘れてしまって」

    「なら、茅野君の傘に入れて貰えば良いじゃない」

    「生徒会の仕事があるので。流石に三咲を待たせちゃうわけには」

    「茅野君」

    「な、何ですか?」

    「あなた、水野さんが帰るまで待ってなさい」

    別に傘を二本持ってる奴を聞いたら良かったんじゃないかと思う。
    ま、どうせ、逆らうと呼び出されたりしてややこしくなるので仕方なく、

    「はい。分かりました」

    と、返事をして置く。
  • 28 美冬 id:0plzEcT/

    2011-12-03(土) 10:46:01 [削除依頼]
    六時間目が終わり、放課後となる。
    ……これから、ななせを待つのかよ。
    げんなりとしていると、ななせが俺の席までやって来た。

    「あ、三咲、先帰ってて良いよ」

    「え、傘は?」

    「ん、何とかする。と、言うより、生徒会室に予備の傘があったと思うんだよね」

    「そうか。じゃあ、帰るわ。仕事、頑張れよ」

    「うん。ありがとう」

    俺は教室を出た。

    ガラガラッ
    バタンッ

    「……なんて。嘘何だけどさ」
  • 29 美冬 id:c.IEkai/

    2011-12-03(土) 15:37:08 [削除依頼]
    訂正 >26 ×勿論、聞いたらダメだったと分かって聞いている。 ○勿論、聞いたらダメだと分かって聞いている。
  • 30 美冬 id:tLBj43H.

    2011-12-03(土) 18:57:33 [削除依頼]
    折り畳み傘を差し、歩いていると、前方に杏子らしい姿が見えた。
    ソイツは傘を差さずによろめきながら歩いていた。

    「杏子」

    呼んで見ると、向こうは振り返る。

    「あ、三咲……今、帰り?」

    「雨降りそうだとか言ってて、傘忘れるとか」

    「ホント、バ.カじゃねえの、って?確かに私らしくなかったよ。やっぱ、ストーカーのせいなのかも、ね」

    「ストーカー?」

    「そ。今もずっと着いて来ている。最近、私をずっと付け回してるんだよ。ほら」

    上着のポケットから取り出したケータイを杏子は操作し、俺に見せた。
    画面に表示されているのは受信メール一覧で、此処最近の日にちと、あるメールアドレスがズラリと並んでいた。
    それも、全て同じアドレスだった。

    「何処でアドレスを知ったのかはそれはそれで気になるんだけど。それよりも、家のインターホンまで鳴らすんだよ」

    「お、お前の家って」

    「そう。親が仕事で留守ってるから。色々、大変だったよ。戸締りとかさ」

    「警察に」

    「言えば良いんだろうねぇ。だけど、ストーカー被害なんて、ほぼ解決出来ないでしょ?はっきり言って」

    サラサラと、ストーカーされているのはコイツの癖に他人事の様に杏子は話し続ける。

    「少なからず、私の生活に支障が起き始めてるのは事実だからね。ねえ、三咲」

    何を言い出すのかは薄々分かった。

    「一緒に犯人捕まえてくれる?って?」

    「くす、分かってるじゃん」
  • 31 美冬 id:tLBj43H.

    2011-12-03(土) 18:59:27 [削除依頼]
    取り合えず、ずぶ濡れの杏子をそのまま濡らしておくわけにも行かないので、傘に入れる。
    一応、折り畳み傘だから、お互い、肩が多少濡れるが仕方ない。

    「あーあ、三咲、肩、濡れてるよ?もっと寄ったら?」

    「寄ったって濡れるだろ」

    「じゃあ、寄っちゃえ」

    「……物凄く無駄な会話してる気がするんだが」

    「くすくす、じゃ、無駄じゃない会話しよっか。さっきの続き何だけど。まあ、多分、同じ学校の生徒何だと思うんだよね」

    「普通に考えたらそうだな。お前、塾とか行ってねえし」

    「でしょ?それに、学校でも、視線を感じるし」

    杏子は俯く。

    「男子、だよね。女子がストーカーしてたら、それこそ百合だし」

    「お前、顔だけは良いもんな」

    「くす、失礼な。そんな事言ったら、三咲も同じだって。性格悪過ぎでしょ。って、話ズレちゃったけど、三咲なら、どうやって捕まえる?」

    「お前と違ってストーカーとか今までされた事ないからな」

    嫌、これから先もストーカーをされる事はないだろうけど。
    妹のあれは尾行だから、まだストーカーとは言えないが、ななせ辺りは本当にやりそうで怖い。

    「いっそ、噂流そうかな」

    わざと水溜りを踏みながら、杏子は言った。

    「噂?」

    「浅間杏子は二年の茅野と付き合ってるって」

    「余計に悪化するだろ」

    「それは最終的な手段としておいておくよ」

    その時、微かに背中に視線を感じた。
    俺は振り返る。

    「あ、ついに三咲も分かっちゃった?」

    嬉しそうに杏子が聞いて来る。

    「ああ。気配はさっぱりだが、視線は感じたな」

    いるのか、本当に。

    「ん、あ、もう私の家じゃん」

    気付けば、杏子の家に着いていた。

    「じゃ、三咲、また明日ね」

    杏子は微笑んで、家の中に入って行った。
  • 32 美冬 id:YhFjkiC1

    2011-12-04(日) 10:58:01 [削除依頼]
    結局、ストーカー対策も出来ず、そのままテスト期間になった。
    意外にも、テスト期間に入ってからはストーカーされなくなったらしい。
    益々、同じ学校の生徒だと分かる。

    「犯人は真面目何だろうねぇ」

    テスト一日目の放課後。
    杏子は笑った。

    「で、お前は?テスト、ちゃんと出来たのか?」

    「そりゃあ、出来たよ。三咲は良いよねぇ。勉強しなくても、良い点数で」

    「してるからな」

    「授業をボーと聞いてるだけで、学年八位の成績取れてたら、どれだけ良いか……」

    「四月のテスト、何位だったんだ?」

    「二十位ぐらいだったんじゃないかなぁ。文系がしくじったから、悪かったんだけど」

    二十位でも、十分、優秀だと思うんだが。

    「そういや、ななせはバ.カだったよね?だって、中学の時、一つ下の私がななせに因数分解教えてたぐらいだし。よくこの学校に受かったよねぇ」

    「多分だが、ギリギリで受かったんじゃねえの?成績も、赤点ギリギリだとか言ってたし……って、前方」

    「え?」

    「前方、見て」

    言われる通り、前を見ると、ななせらしい後ろ姿があった。
    茶色の長い髪が綺麗に太陽の光で輝いていた。
    ななせ、だろうな。

    「如何する?声、掛ける?」

    「嫌、掛けない」

    「酷いねぇ」

    くすくすと杏子は笑った。
  • 33 美冬 id:YhFjkiC1

    2011-12-04(日) 11:00:08 [削除依頼]
    結局、ストーカー対策も出来ず、そのままテスト期間になった。
    意外にも、テスト期間に入ってからはストーカーされなくなったらしい。
    益々、同じ学校の生徒だと分かる。

    「犯人は真面目何だろうねぇ」

    テスト一日目の放課後。
    杏子は笑った。

    「で、お前は?テスト、ちゃんと出来たのか?」

    「そりゃあ、出来たよ。三咲は良いよねぇ。勉強しなくても、良い点数で」

    「してるからな」

    「授業をボーと聞いてるだけで、学年八位の成績取れてたら、どれだけ良いか……」

    「四月のテスト、何位だったんだ?」

    「二十位ぐらいだったんじゃないかなぁ。文系がしくじったから、悪かったんだけど」

    二十位でも、十分、優秀だと思うんだが。

    「そういや、ななせはバ.カだったよね?だって、中学の時、一つ下の私がななせに因数分解教えてたぐらいだし。よくこの学校に受かったよねぇ」

    「多分だが、ギリギリで受かったんじゃねえの?成績も、赤点ギリギリだとか言ってたし……って、前方」

    「え?」

    「前方、見て」

    言われる通り、前を見ると、ななせらしい後ろ姿があった。
    茶色の長い髪が綺麗に太陽の光で輝いていた。
    ななせ、だろうな。

    「如何する?声、掛ける?」

    「嫌、掛けない」

    「酷いねぇ」

    くすくすと杏子は笑った。
  • 34 美冬 id:YhFjkiC1

    2011-12-04(日) 11:01:03 [削除依頼]
    訂正 >33 は、なしで。
  • 35 美冬 id:YhFjkiC1

    2011-12-04(日) 11:14:45 [削除依頼]
    何処となく、ななせは後ろ姿を見る限り、落ち込んでいる様だった。
    そんなにテストがボロボロな出来だったのか。
    毎回、クラスに何人かはこう言う奴がいるが、何で前日とかにテスト勉強をちゃんとしなかったのかと凄く思う。
    それとは対照的に杏子は嬉しそうだった。

    「ななせが元気ないと、私が元気出るよ」

    「何、その天秤みたいな関係」

    「……っ」

    杏子は振り返った。

    「お、おいっ」

    いきなり走り出す杏子を思わず俺も追い掛ける。
    先程曲がった角を杏子は曲がった。
    何なんだ?
    後から遅れて、俺は角を曲がると、視界に入ったのは杏子が見覚えのない男子生徒を打ん殴っていた。
    校章の色は俺と同じ二年生だ。

    「杏子、誰、コイツ」

    「やっぱり、真白先輩だったんですね」

    杏子は俺に答える事なく、殴っていた奴を地面に叩き付けた。

    「ぐふっ、待ってくれ、浅間……ぼ、僕は、本当に君が」

    「もしかすると、ストーカーの犯人とか?」

    「そうです、茅野先輩。コイツが私をストーカーしてた人です」

    「ご、誤解だ。僕は純粋に君を愛していたからで」

    「真白……拓麻でしたっけ?茅野先輩、実はこの人、生徒会副会長何ですよ」

    「そ、そうなのか……」

    「ゆ、許してくれ。頼むから、学校の関係者にはくれぐれも言わない様にしてくれないか?」

    「私は大変、私生活に支障を来たしました。如何、責任を取ってくれるんですか?」

    「……!、そうだ。お金で」

    真白はズボンのポケットから、高そうな財布を取り出す。
    家が金持ちなのか。

    「お金で解決する人間は嫌いです。もう一生、私に関わらないと約束してくれますか?」

    「……それは出来ない」

    「なっ」

    「君には彼氏がいないじゃないか。如何しても、僕は諦めきれないんだ」

    「……っ」

    杏子は唇を噛んで、手を握り締めた。

    「真白先輩、私、この人と付き合ってるんです」

    そう言って、杏子は俺を指差した。
  • 36 美冬 id:YhFjkiC1

    2011-12-04(日) 11:22:48 [削除依頼]
    「ほ、本当なのか?」

    ボロボロになった真白が俺を見てくる。
    此処で、本当だと言えば、全てが解決するってわけか。

    「う、そ」

    とても聞き覚えのある声がした。
    振り返ると、

    「嘘でしょ、三咲。わ、わたし、知らなかったよ」

    ななせがいた。
    何でさっきまで俺等の前を歩いていたはずのコイツがいるのかが分からない。

    「ち……違う、けど」

    「え、だって、今、杏子ちゃんが」

    「そうですよ。ななせ先輩。私は茅野先輩と付き合っています。何か文句でもあるんですか?」

    表情で直ぐに分かった。
    何かコイツ、もうやけくそになってると。

    「真白先輩、そう言うわけで、もう絶対にストーカーなんてしないで下さい。ほら、茅野先輩、行きましょう」

    杏子は俺の腕を掴んで、歩き出す。

    「え、ちょ、ちょっと待ってよ。杏子ちゃん」

    残念な事にななせは納得出来ていないらしい。
    後を着いて来る。
    ……凄く面倒な事になってないだろうか。
  • 37 美冬 id:YhFjkiC1

    2011-12-04(日) 11:31:19 [削除依頼]
    交差点まで来て、杏子は立ち止まった。

    「ねえ、杏子ちゃん、その、さっきのは」

    「本当ですよ」

    別に今なら訂正が出来る。
    真白の為に嘘を吐いたと言えるのに。

    「三咲も、杏子ちゃんが好きなの?」

    あまり考えなかったが、如何だろうか。
    杏子とななせなら、杏子の方が好きだが、それに恋愛感情が含まれていると、考えた事は一回もなかった。

    「あ、そ、そうだな」

    「じゃあ、何でさっき、違うって言ったの?」

    「ななせ先輩が急に来て、驚いたんじゃないですか?」

    「だ、だって、声がすると思って振り返ったら、杏子ちゃんと三咲が走ってたから、何かなって後を追っただけで……」

    「そうですか」

    「……もう、手遅れなんだね」

    ななせは呟く様に言った。
    あまり最後が聞き取れなかったが。

    「今、何か言ったか?」

    「ううん。何かごめんね、二人の邪魔しちゃってさ。じゃ、後はごゆっくり。わたしは帰る、から」

    意外にあっさりとななせは引き下がり、走り去って行った。

    「これで、良かったのか?」

    俯いている杏子に聞くと、杏子は、

    「さぁ?良いんじゃないの?ななせも、これでやっと本当の“普通”になれるかも知れないし」

    軽く首を傾げてそう言った。
  • 38 美冬 id:YhFjkiC1

    2011-12-04(日) 11:32:43 [削除依頼]

    真白拓麻(masiro takuma)
    高校二年生。
    生徒会副会長。
  • 39 美冬 id:Nh0ZUBg1

    2011-12-04(日) 11:41:48 [削除依頼]
    第三章
    『何で、三咲は、杏子ちゃんばっか見るの?何で、わたしの事、全然見ないのっ』

    『そんなの、私は知りません。あなたの自業自得じゃありませんか?』

    『……もう、良いよ。杏子ちゃん』

    『あなた、邪魔だよ、って、言いたいんですか?』

    『うん。そうだよ』

    ジリリリリリリリリリッ

    「…………っ」

    嫌な、夢だった。
    あの時の夢を見るとか、何年振りなんだ。

    ガチャ

    「お兄ちゃん、おはよう」

    俺はあの時、何も出来なかった。
    何も言えず、
    止められず、
    ただただ、ななせの行動を見てただけで。

    「バ.カだったな、俺」

    「うん?お兄ちゃん、バ.カじゃないでしょ?聞いたよ。此間のテスト、五位だったって」

    「って、何でお前、ノックなしに入ってるんだよ」

    「……あ、ごめん。やり直すね」

    「もう良いって」

    「えへへ、お兄ちゃんは優しいね」

    優しい。
    そんな事ないだろう。
    本当は、俺は杏子を見殺.しにする所だったんだから。
  • 40 美冬 id:qxSZpE50

    2011-12-04(日) 14:10:54 [削除依頼]
    「らしくない」

    朝、桜の木の下で会ったななせが俺を見るなり言った。
    何がらしくないのかがさっぱりだった。

    「ななせ、おはよう」

    「何か今日の三咲、らしくないよ?わたし、ずっと幼馴染やって来たから分かるけど。雰囲気がおかしい」

    「嫌、意味分からねえよ」

    「うう、分かってよ」

    ななせは俯く。

    「も、もしかして、杏子ちゃんと上手く行ってないとか?」

    「……、」

    今の今まで忘れていた。
    コイツ、まだ俺と杏子が付き合ってると思ってるのか。
    今更、違うとも言えねえし。
    それに何でななせはちょっと嬉しそうなんだ?

    「人の不幸が自分の幸せなのかよ」

    「え、何が?」

    「顔、笑ってる」

    「え、あ、わたし、笑ってる?」

    「ああ。俺から見れば、嫌がらせの様にしか見えない」

    「えっと、ごめん。別に笑いたくて笑ってるわけではないんだよっ」

    さほど、悪気はない様なので許す。

    「別に良いけど。それにお前の見当外れだからな、俺がらしくないとか言うの」

    「え?じゃ、じゃあ、上手く、行ってるんだ」

    否定も肯定もしないで置く。
    後々、ややこしいだろうし。

    「つーか、らしくないって何処が?」

    「ん、分からないけど、昨日の三咲とはちょっと違うなって。今日、何かあった?」

    今日と言って思い当たるのはあの夢を見た事ぐらいだ。

    「ないって」

    「そっか」

    それっきり、会話と言う会話は学校に着くまで一度もしなかった。
  • 41 美冬 id:qxSZpE50

    2011-12-04(日) 14:28:35 [削除依頼]
    教室の黒板に書いてある日付を見て初めて知った。
    今日、六月二十二日なのか。
    通りであの夢を見たわけだ。

    「あーあ、良いよな、お前は。彼女がいてさ」

    一ヶ月前に席替えがあったのだが、またもや、藤崎が隣の席だった。
    いい加減、変わりたかったが、下手してななせなんかとなったら大変なので止めて置いた。

    「一人身は寂しいわ」

    藤崎は物々と呟いて、机に突っ伏していた。
    何なんだ、コイツ。
    隣にいて、凄く鬱陶しい。

    「なあ、俺、お前と同じ小学校だって奴に聞いたんだけど」

    「な、何だよ、いきなり話し出すなよ」

    「お前と水野さんと浅間さんの三人さ、四年前の今ぐらいの時期に一ヶ月休んでたんだって?」

    「……それ、誰から聞いた?」

    「えーと、上野……愛理だったか。美化委員で一緒何だよ」

    上野愛理。
    全く聞いた事がない。

    「で、何で休んでたんだ?」

    「え、嫌、杏子が入院してて」

    「入院?」

    「ちょっとした事件でな。悪いが、あんま聞かないでくれ。つーか、その上野って奴、知ってるんじゃねえの?」

    「上野は言わなかったんだよ。本人に聞けばって」

    上野って奴が何者なのか、その時の俺は知らなかった。
  • 42 美冬 id:LUu7crl0

    2011-12-06(火) 19:40:41 [削除依頼]
    放課後。
    杏子は二年の下駄箱の所で俺を待っていた。

    「行こっか」

    靴を履き替えた俺に杏子は言った。

    「ああ」

    「ねえ、三咲」

    周りを歩く他の生徒達の服装でふと思った。
    コイツ、何で未だに上着を着ているんだ?

    「今日の昼休みね、ある人に呼ばれたんだ」

    もう直ぐ夏服で、どっちかと言って、今、ほとんどの生徒が白シャツ一枚になっているのに、コイツは真冬の時と格好が変わっていない。

    「二年の、上野愛理って人……って、ちょっと、三咲、聞いてるの?」

    「ああ、聞いてるって。で、何だって?」

    「ほら、聞いてないじゃんっ」

    「う、悪い」

    「良いよ。許してあげる。キスしてくれるなら」

    「は?」

    俺は思わず立ち止まる。

    「くすくす、嘘だよ。三咲って、何だかんだでななせと一緒くらい騙されやすいよねぇ」

    楽しそうに杏子は笑った。
  • 43 美冬 id:LUu7crl0

    2011-12-06(火) 19:50:46 [削除依頼]
    「だからね、今日、上野愛理って先輩に呼び出されたって話」

    「え」

    「その様子だと、上野愛理先輩、知ってるの?」

    「嫌、ダチがな、ほら、四年前、一ヶ月学校休んでただろ?」

    「うん。そうだったね」

    「その時の事をダチが何でか聞いて来て、何処で知ったって聞いたら」

    「上野愛理が言っていた、って?」

    「ああ」

    杏子から笑みが消えた。
    段々と心底嫌そうな顔になる。

    「それは厄介だなぁ。ソイツ、ななせに変な事、吹き込んだりしないかな。もう直ぐ、あの日何だし」

    「そうだな」

    「だって、上野愛理、私に言ったんだ」

    杏子は言い辛そうに、

    「如何して、水野ななせを憎まないの?」

    「……、」

    「って、言ったんだ。あーあ、面倒な事にならなきゃ良いけどねぇ」

    やっぱり、全てを知っているのか、上野愛理は。

    「でもさ、三咲、私、上野愛理って名前、今日知ったんだけど。三咲は前から知ってた?」

    「嫌、全く。同じクラスになった事すらないと思うが」

    「だろうね。ま、お互い、気を付けようよ」

    「ああ」

    「さて、気分転換にどっか行こうよ。私、駅前のクレープ屋行きたいし」

    そう言って、杏子は俺の腕を掴んで歩き出した。
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