生と死と その狭間で34コメント

1 ピエロ id:mreNgNz/

2011-11-25(金) 22:47:12 [削除依頼]
プロローグ

この世界には不死(しなず)と呼ばれる人がいる。
正直、それを本当に人と呼ぶのかも分からないが。
ただ彼らは人間と同じ姿をし、人間に混ざり生きている。

その不死の少年が死を望み
そしてただの人間であり死を目前にした少女が
生を望んだとき、2人は出会う。

種族を超え死を超え生を超え
死とは何で生とは何かを悟る時
新たな物語がまた、幕を開ける
  • 15 ピエロ id:QCNrX8k0

    2011-12-23(金) 00:14:33 [削除依頼]
    「ほんとに、それだけ?たったそれだけで?
     寂しいから逝きたいの?」
    「それだけ?それだけだと!?500年、俺のそばで何億もの人間が産まれ、
     俺を置いていった。そんな中で、たった一人で生きてきた。
     誰も俺を連れて行ってはくれなかった。俺がどんなに望んでも、叶えてくれる人間は
     誰ひとりとして、いなかたんだ。そんな中で生きてきた。
     もう、人が逝くのを見るのは、嫌なんだ。」
    サクヤの眼からは涙が溢れる。だれにも分からない悲しみや苦しみが、
    こみあげてきたんだろう。
  • 16 ピエロ id:QCNrX8k0

    2011-12-23(金) 00:16:00 [削除依頼]
    「あなたは、優しいのね。だからそうやって今まで死んだ人を想って泣けるんだ。
     だからあたしに同じ運命を歩ませることを拒みつつも迷ってるんだ。
     あなたが逝きたいという望みを叶えるか否か、と言う事より、
     あたしがあなたと同じ苦しみを味わうんじゃないかって思って、悩んでるんだ。」
    「っっ!!うるさい!お前には関係ない。俺の心をそれ以上観るな!!
     たのむからっ!観ないでくれっ!!」
    サクヤはあふれる涙をもうこらえずに泣いた。
    今までの苦しみや悲しみが、涙と一緒に流れてくれるわけはないと知りつつも。
  • 17 ピエロ id:QCNrX8k0

    2011-12-23(金) 00:17:46 [削除依頼]
    「ごめん。ごめんね。でも、あたしはサクヤほど優しくないから。
     どこか冷めてるんだろうね。それとも、逝くことが
    自分にとってあまりにも身近だったから
     イメージ出来すぎるからかな。泣けないよ。誰かが逝ってもあたしはきっと泣けない。
     500年も生きて、寂しかったっていうのはよくわかったよ。たくさんの人置いて行かれて、
     辛かったってこともね。でもさ、あたしにはそれでもあんたが羨ましいよ。
     だって500年だろう?あたしが16歳で一生を終えようと言うのに、
     あんたは500年生きたんだ。辛いことばっかみたいだけど、その分楽しいことも
     味わってきたんでしょ?やりたいこともやったんでしょ?なのに、何で自分一人が辛い
     みたいにそうやって泣けるの?あたしには無理だよ。」
  • 18 ピエロ id:QCNrX8k0

    2011-12-23(金) 00:19:09 [削除依頼]
    「そう、だな。確かにそうだ。俺はお前より楽しいこと経験したんだもんな。
     そんな簡単なこと、子供に言われるまでもねえが。
    悪かったな。今のは言いすぎた。まったく、ロクでもない男だよ。俺は。
    だからって、もう一度俺が生きなおすなんて出来ねえ。そしたらお前が死んじまう。」
    「そうよ。仕方ないでしょ!?
     どうしようもないのよ!あたしとあんたの両方が生き残る道なんてないの!
     今更気を変えて''やっぱり生きる''なんて言っても遅いんだからね?」
    「わかってるよ。エナがどんなに生きたがってるか。
     自分になかった生を持ってるくせに持て余してる俺が、許せなかったんだろう?
     だからといってほっとけるほど、冷たい人間じゃないから、出来たら一緒に生きたいって
     そう思ってる。
     でも、何を言われようと俺が生を終えることを望む気持ちに変わりはない。
    契約はすでに結ばれた。賽は投げられたんだ
     もう後戻りはできないんだよ。」
  • 19 ピエロ id:QCNrX8k0

    2011-12-23(金) 00:20:14 [削除依頼]
    「わかってるよ。エナがどんなに生きたがってるか。
     自分になかった生を持ってるくせに持て余してる俺が、許せなかったんだろう?
     だからといってほっとけるほど、冷たい人間じゃないから、出来たら一緒に生きたいって
     そう思ってる。
     でも、何を言われようと俺が生を終えることを望む気持ちに変わりはない。
    契約はすでに結ばれた。賽は投げられたんだ
     もう後戻りはできないんだよ。」
  • 20 ピエロ id:QCNrX8k0

    2011-12-23(金) 10:09:10 [削除依頼]
    次の日も、サクヤはエナに会いに行った。
    生を終えたいと思う自分の中に、彼女を想う気持ちが
    芽生え始めていることに、気づかないではなかったが、
    それでも逝くことを選ぶ以外の方法は無かった。
    逝きたい目的も、変わった。
    今までは、生きるのが嫌になったからだったはずなのに、
    今じゃあのコを生かしてやりたいって、思うようになっていた。
  • 21 ピエロ id:QCNrX8k0

    2011-12-23(金) 10:09:26 [削除依頼]
    「よう!エナ。今日も来たぜ」
    「………」
    「エナ?」
    どうしたのだろう。エナの様子がおかしい。
    サクヤは布団をめくり、エナの顔を見ようとした、その瞬間
    「わっ!!!!」
    エナは大声を上げ、サクヤを驚かせようとしたのだろう。
    計画は大成功。サクヤは驚きすぎて、尻もちをついていた。
    「エナ!ふざけすぎだ。お前、今の状況わかってんのか?」
    少しキレぎみのサクヤに対し、エナは
    「なによ〜。おどかそうとしただけじゃん。サクヤが驚きすぎなの」
    「ったく。これだからガキは」
    「あ!ガキっていった!あたしはもうガキじゃないもん!立派な大人よ?」
    「はぁ?どこがだよ?俺から見りゃ、この世の人間は全員ガキだね」
    そう言って鼻で笑うサクヤに、エナはくすっと笑って、
    「作戦成功〜♪」といった。
    「どういう意味だ?」
    「今回のはねー。サクヤに元気出してもらおうって思って
     昨日喧嘩しちゃったから、そのお詫び的な?」
    「そっか。サンキューな。大丈夫だ。俺の気持ちに変わりはない
     お前にこの力、しっかりやるから。」
  • 22 ピエロ id:QCNrX8k0

    2011-12-23(金) 23:19:40 [削除依頼]
    「ありがとう、サクヤ」
    いたずらっぽいエナのその笑顔に、サクヤは思わず
    目をそらしてしまった。
    これ以上好きになったら、もうどうにもならない気がした。
    何度も何度も考えた。どうしたら二人一緒に生きれるか。
    でも、答えは無かった。どんなに考えても、それは無理だから
    答えが出なかった。サクヤに生まれつきあるその力は、
    誰かに移すことはできても、消すことはできないのだ。
    エナに最期の時が近づいている今、その時が来るまで
    出来るだけ二人でいることが、せめてもの救いに感じられた。
    辛くなるならもう彼女に生を与えることをやめようか。
    彼女の最期の時は、サクヤにだけわかっていた。
    おそらくは、残り1週間だろう、それがサクヤの見立てだった。
    それより短くなることはあっても、伸びることは決してない。
    だから今を大切に生きようと思った。エナに最期の時が近いということは、
    イコールサクヤの最期の時がすぐそこに迫っていることを意味していた。
    エナに生を与える約束をした。契約を結んでしまった。
    もう後には引けない。進み続けるしか、無い。
    それが許されない、叶わない恋だからこそ、
    その気持ちを伝えることが一番の罪だと、サクヤはそう悟った。
  • 23 ピエロ id:AmKzOcV0

    2011-12-25(日) 00:58:27 [削除依頼]
    「ねえ」
    ふいにサクヤに話しかけるエナ。
    「サクヤには、あたしの最期が見えてるの?」
    「ああ、まあな」
    「教えてくれない?自分の最期ぐらい、知っておきたいの」
    サクヤは迷った。教えた方がいいのか。でも、残り1週間なんて
    知ったら、思いつめるかもしれない。いや、エナは強いから大丈夫か?
    しかし、強いとはいえまだ高校生だ。幼い彼女にそんな辛い思いを
    させていいのか?それでも、今更そんな気を使ってだますようなことを
    するのか?俺が?どうすればいいのだろう。彼女の期待にこたえるのが
    最善なのだろうか。サクヤの迷った挙句の決断は、こうだった。
    「わかった。ただし、条件がある。どんな答えだったとしても、
     それが辛いなら素直に俺に言うこと。1人で抱え込もうとしてるなら
     教えられない。その条件を、のめるか?」
    「わかったよ。たとえどんな答えでも、しっかり受け止める。
     辛かったら、サクヤに全部言う。だから教えて。」
    「いいか、落ち着いて聞けよ。エナ、お前の余命は、1週間だ」
    「嘘……。たったの、1週間?」
    「ああ。1週間がお前の、ひいては俺の余命だ。」
    「たった1週間しか、一緒にいられないんだ…。そんな…」
    エナの眼には涙があふれていた。
    「そんな泣くなよ。お前が死ぬことはない。俺が保障する。お前は死の間際、
     俺の手によってふしとなる。だから、大丈夫」
    「そう、だけど……。サクヤは、怖くないの?もう終わっちゃうんだよ?
     もう喋ることも、何かを感じることも、見ることも聞くことも触ることも
     何もかもできなくなっちゃうんだよ?本当に、怖くないの?」
  • 24 ピエロ id:6JaKN6a0

    2011-12-26(月) 17:23:06 [削除依頼]
    「怖くない。…っていったら嘘になるかな
     でも、それでも俺は、エナが生きるためなら死んだっていいって
     本気で思ってるんだぜ?」
    「それは…。嬉しいんだけど…。でも…。」
    エナはあふれ出る涙を必死にこらえ、それでも流れる涙を
    必死で拭った。
    サクヤは、もう止められなかった。エナを思う気持ちを。
    今まで抑えていた想いを。
    (エナは俺が守んなきゃ)そう思った時には、
    既にエナを抱きしめていた。エナの涙がサクヤの服を濡らす。
    サクヤの胸に顔をうずめ堪えていた涙を もうこらえずに泣いた。
    もう二人を止めることはできない。せめてその事実を誰にも
    見られぬようにと全てを包み隠すように月はただ静かに、
    己の輝きを雲で覆った。
  • 25 ピエロ id:6JaKN6a0

    2011-12-26(月) 17:37:20 [削除依頼]
    第5話 別れの時はすぐそこに

    あの日から 5日の時が立っていた。
    エナの最期の時まで 残り2日。たったの48時間しかない。
    2人は誰に邪魔されるでもなく愛し合った。
    お互いの気持ちは包み隠さずに話した。
    エナには本来の望とは違う、また新たな気持ちが芽生えていた。
    それは本来の望とは正反対。相容れぬ考えであった。
    「サクヤが生き残るためなら 生を諦めてもいいかな」
    それは何もかもをさらけ出したサクヤに、唯一言えないことでもあった。
    そんな事を言えば、サクヤは止めるに決まっている。
    それに、その言葉は契約違反になってしまう。自分で望んだことだ。
    今さら覆すなんて出来ない。それがわかってるから余計に辛かった。
    エナは眠れぬ夜を過ごした。同い年の他の子たちと同じように
    恋愛がしてみたい。その願いは望まぬ形で叶ってしまった。惚れた。
    初めての感情だった。もう度にも止まらないその思いは、どちらかの
    命の終わりを持ってしか止めることが出来ない。
    いや、もしかしたら、それによって余計に想いが強くなってしまうかも
    しれない。それが一番怖かった。
    例えばその終りが予定通りあたしに訪れたとして、そしたらサクヤは
    どうなってしまうのだろう。サクヤに終りが訪れたら、あたしはどうなって
    しまうのだろう。そんな思いは、サクヤのいない夜中じゅう、エナの頭の
    中を巡り、それでも答えは出ないまま。時間だけが無情にも過ぎていった。

    別れの時まで 残り40時間
  • 26 ピエロ id:Xbgjlcx0

    2011-12-27(火) 00:50:41 [削除依頼]
    「おはよ」
    サクヤがいつものように病室にやってきた。
    エナはいつもどおり「おはよう」と返す。
    いつもどおり…そんな言葉が使えるのも、あと2日。
    正確には、38時間とちょっと。
    「調子はどうだ?」
    そんな日常的な会話さえ、いとしくてたまらない。
    今日が最後だって可能性もあるのだから。
    「うん。いつもどおり。いや、いつもより調子いいかな。
     サクヤが来てくれたらね、あたし元気になれるの。」
    「そう言ってくれると、嬉しい。」
    「そういえば、初めてサクヤに会った日、
     あたしサクヤがあたしのことを迎えにきたん
     だと勘違いしてたんだよね。」
    「あぁ、そういえばそんなことも言ってたっけな。
     で、俺はそうだって言ったんだよな。懐かしいな。」
    「そうそう!あたし、絶対に連れて行かれてたまるか!!!って
     思ってたから、あんたがしゃべってる途中で割り込んでさ。
     まだ逝きたくないって言って。ほんと、懐かしいよね。」
    「そうだな。あれからほんとにいろいろあったよな。
     喧嘩したり。お互い好き同士だってわかったり。
     なんか、すっげぇ昔のことみてえだけどさ、
     あれから大して日がたったわけじゃねえんだよな。」
    「そっか。あれからまだ1か月も経ってないんだよね。
     すごく昔からサクヤを知ってたような、そんな気がする。
     幼馴染も友達も彼氏もいなかったあたしにとって、
     サクヤは全部の役を一人でやってくれて。
     ほんとに、あたしの夢なんじゃないかってたまに思うの。」
    「そこまで言われると、何か照れるな。夢なわけないだろ。
     俺もお前も、ちゃんとこの世で生きてきたんだ。
     俺はお前と生きてること、誇りに思ってんだぜ?お前みてえに
     強い人間は初めてみたからな。」
    「もぉ!やめてよ。恥ずかしいじゃん。でも、ありがとう。」
    「ああ。俺の方こそ、ありがとな。お前のおかげで、
     最期が気持ち良かったぜ。今までの500年間のどんな事より
     お前と過ごした1か月足らずの方が楽しかった。」
    「うん。あたしも、今まで生きてきた中で、一番楽しかった。
     外で遊べなかった分、たくさん話したからね。お互い知らないことは
     もうないんじゃない?」
    「ああ、そうかもな。でもお前、何か俺に隠してることねえか?」
    その鋭い一言に、エナは驚き、言葉に詰まってしまった。
  • 27 ピエロ id:Xbgjlcx0

    2011-12-27(火) 01:13:07 [削除依頼]
    「ごめん」
    先に切り出したのは、サクヤだった。
    「なんか、聞いちゃいけないこと、聞いたか?」
    「ううん。そんなことないの。ただ、見抜かれてた
     ってことにびっくりしちゃっただけ。怒らないって
     約束する?」
    「ああ。」
    「サクヤさ、最近もっと生きてみよっかな、なんて
     思ってない?少しだろうけどさ、あたしにはわかるんだ。
     おなじだから、かな。前までのあたしと」
    「ああ、エナと一緒に生きれるなら、もうちょっと生きても
     いいかなって、思ったり」
    「やっぱりね。あたしね、考えたの。二人が生きるか、
     それか二人とも逝ける方法を」
    「それなら俺も考えたんだけどな。
     で、答えは出たのか?何かいい案があるのか?」
    「なかったの」
    「え?」
    「どんな手を使ってでもってんなら、いくつか方法が
     見つかったんだけど…」
    「それは、どんな方法なんだ?」
    「あたしみたいに生きたがってる別の仔を探してきて、
     その子をあたしの代わりにするの。
     そしたら二人で逝けるでしょ?
     それか、あたしがあんたみたいなしなずを探してきて
     あたしがしなずになる。そしたら2人で永遠を生きられる。
     でも後者は無理でしょ?あんたみたいな変わったやつ、
     そうそういないよ」
    「なるほどね。まあその意見は一理あるな。でも、それはできない」
    「なんで?」
    「1度結んだ契約は、執行されるか何らかの形で執行不可能に
     ならなきゃ解消されないんだ。」
    「どういう意味?」
    「しなずがしを選ぶってことは大変なことだから、いろいろと手順を
     踏まなきゃなんない。俺は契約を結ぶ時大分すっとばしたけど、
     本当はだいぶ面倒だ。それに、その契約を破ると…」
    「契約を破ると?」
    「契約した2人は生きることもしぬこともできずに、さまようことになる」
    「それって?」
    「要するに、しぬより辛い苦しみを味わいながらしねないってことだ」
    「そんな…」
    希望がたたれたエナ。しかし無情にも時間は流れ続け、
    外はもう夜の帳が下りていた。すでに時は夕方の6時。
    面会時間の終わりが近づいていた。
    明日は最期。正真正銘、最期の最期だ。
    いい案が浮かばぬまま迎える明日に不安を覚えつつも
    エナはまた眠れぬ夜を迎えるのであった。
  • 28 ピエロ id:Xbgjlcx0

    2011-12-27(火) 01:55:07 [削除依頼]
    最終話 それぞれの決断

    エナの最期の時まで、のこり20時間。
    今は午前4時まだ外は薄暗い。
    久しぶりにベッドを抜け出し、廊下を突き進む
    つきあたりを左に曲がると、そこにはナースステーションが
    あって、そこを過ぎると外へ出られる。
    まだ一度も開けたことのないその扉は、
    前に立つだけで開く自動扉だったが、今の彼女にとっては
    重く決して開かない開かずの扉のように見えた。
    と、そとに人影が見えた。エナの顔は一瞬にして明るくなる。
    「サクヤ!」
    いつもより早い彼の来訪に今日が最期の日だということを
    一瞬だけ 忘れることができたような気がした。
    「おう。早いな。まだ面会時間始まってねえから中に入れねえし」
    「あ!じゃあさ、外行こうよ。庭ぐらいなら怒られないって」
    「いいけど」
    「ほんと?やったぁ!」
    さっきまで重苦しく感じていたその扉は、サクヤと一緒だと不思議と
    素直に開いてくれた。16年間、病院の中で暮らしてきて、
    外に出るのは初めてだった。まだ一度も出たことがない世界。
    まだ見たことのない未来は、どこにでも広がっている。
    そう思うだけで、まだ生きたいと思えた。
    揺るぎかけた気持ちを 立て直すことができた。

    お昼になった。運命の時まで12時間。あと半日しかない。
    もう時間がない。そろそろ決めなければならない。
    お互いの思い合うが故に決まらない。
    最終的にどうするのか、迷い続けている。
    「ねえ、サクヤはどうしたい?
     あたしがどうとかそんなの抜きでさ」
    「そうだな、もう、どうでもよくなってきた。
     エナと一緒なら、どこへだって行く。地獄だろうが天国だろうが
     このままここにとどまろうが、エナと一緒ならどこでも構わない。
     それが無理なら、エナに従うまでだ」
    「あたしね、昨日までサクヤと同じこと考えてた。サクヤとなら
     どこへでも行けると思った。サクヤがいないなら、生を貰ったって
     仕方ないって思った。でも、違うよね。もとはと言えばあたしの
     生きたいって一言から始まったんだし。サクヤは生きることを
     望んでなかったわけだし。あたしがいない世界で1人で生きるなんて
     500年生きたあんたに、これ以上辛い思いはさせられないし。
     あたしはまだ16年しか生きてないから、もっと別の生き方を
     見つけられるかも知れない。1人でも生きられる道を、見つけられる
     かも知れない。だから、あたしが生き残った方がいいと思う。
     サクヤはそれでいい?」
    「ああ。でも、お前が一人になって苦しむのは見たくない。
     出来ればお前が先に、天命どうりに逝けば、俺はもう苦しまないし。
     お前が生きたくて生きるなら構わないけど、俺に気を使ってるなら
     やっぱり俺が生き残る方がいいと思う」
    2人の会話に正しい答えなど無い。だからこそ迷い続けている。
    それでも時間は過ぎている。
    天命まで、残り8時間
  • 29 ピエロ id:Xbgjlcx0

    2011-12-27(火) 02:11:53 [削除依頼]
    「俺があきらめればすべて終わる」
    それがサクヤの意見だった。
    そもそも俺が言いだしたことなんだから、
    エナが全部を背負い込む必要はない、と。
    その考えは確かに間違ってはいなかった。
    人の最期をみとるのはつらいが、看取られるのは
    もっと辛い。その人が自分に頼って生きていた人間なら
    なおさらだ。一人にすることはできない。
    自分が生き残るのは、もともとそういう運命なのだから、
    甘んじて受けとめればそれですべては丸く収まる。

    「いとしい人の望を叶えたい」
    それがエナの意見だった。
    自分が望んだ結果なのに、勝手に好きになって
    そのせいで愛しい人が望をあきらめるなんて、
    自分のためにそこまでする必要はない、と。
    その考えも一理あった。自分が死ねば、確かに自分は
    楽になるが、生き残ったサクヤはどうなる?
    自分だったら、きっと壊れてしまうだろう。
    それにくわえて、自分の望も絶たれたならなおさらだ。
    1人置いて逝くなんて出来ない。
    自分が一人生き残るのは、自分で最初に臨んだ結果
    なのだから、甘んじて受けとめれば、すべては丸く収まる。

    2人の考えることは全く一緒だった。
    理由は違えど、二人とも自分が1人で生き残ればいい、
    そう考えていた。それはほかでもない、愛する人のため。
    あるいは、時間がないこの状況でなければ、もっといい案が
    出たのかもしれない。でも今さらそんな事を言っても手遅れだ。

    残り 4時間40分
  • 30 ピエロ id:Xbgjlcx0

    2011-12-27(火) 02:23:06 [削除依頼]
    「どうすればいいんだよ!」
    だんだんイライラしてきたのだろう。
    サクヤはついに自分の気持ちを言葉にした。
    そしてそれは、エナも思っていることだった。
    どうすればいいか分からない。タイムリミットが迫る。
    無情に過ぎていく時間は、いつもより早く流れている
    気がした。早く決めなければという焦りは頭の回転を
    鈍らせ、よけいに考えるのを遅くした。
    2人ともが、お互いのことを尊重するから答えが出ない。
    ならばどちらかがいっそ、嘘でもいいからもうひとりの意見
    に合わせればよいのだが、それをしない。そんなことで
    終わらせるつもりはないらしい。
    「となると、もう二人で魂となって彷徨うか」

    2人の議論は続く
    残り2時間を切っている
  • 31 ピエロ id:XQwUIT0.

    2011-12-28(水) 01:50:14 [削除依頼]
    残りの時間はもう1時間を切っていた。
    2人は最後の別れを惜しんだ。
    涙を流す時間さえもったいないというように。
    流した涙を拭う時間さえも2人にはなかった。
    その一瞬、目を離すのが嫌だった。
    答えは出ていた。お互いに生きたまま会えるのは
    これが最期だってことがわかっていたから、
    もう離れないように。
    サクヤは500年間の寂しさに終止符を。
    エナは16年の苦しみに終止符を。
    答えの出た二人に、もう迷いはなかった。

    そして約束の時が来た。
    2人が出会ってから、たった1か月の話。
    サクヤもエナも、後悔はない。
    サクヤの望は、生きることをやめること。
    生きる以外の方法なら、この世に留まるのも悪くないと思っていた。
    エナの望は、生きること。生きて、友情と恋を知ること。
    後者はサクヤとの出会いによってかなえられた。
    前者は今から叶おうとしている。生きているとは言えなくても、
    命に終わりが来るわけではない。サクヤと一緒にいられる。
    それで充分だと思っていた。

    「じゃあ、行こうか」
    体を捨て、自由になった二人の魂が、解き放たれる。
    「俺とともに、この世で自由になろう」
    「うん。一緒に。ずーっと、一緒に」
  • 32 ピエロ id:XQwUIT0.

    2011-12-28(水) 02:09:05 [削除依頼]
    エピローグ

    サクヤとエナ。
    たったの二人で旅だった。
    体を捨て、世間のしがらみを捨て。
    余計なものを何一つ持たず、
    大事なものは忘れずに。
    繋がれた手は離さない、反対の手には愛を確信した。
    もう離さない。絶対に。

    エナの病室では、エナが静かに息を引き取っていた。
    まるでいい夢を見ながら眠るかのように。
    16年の人生に 満足したように。
    眠るままに、最期を迎えた。
    彼女を看取った人間は、誰もおらず。
    最期まで家族は来なかった。

    その病室には、あるはずのサクヤの遺体は無かった。
    2人で体を抜けたはずなのに、そこにはエナだけが
    ただ綺麗な顔で、亡くなっていた。

    だから誰にも分からない。
    2人の答えがどうだったのか。
    もしかしたらこの物語自体がエナの夢だったのかもしれない。
    あるいは、サクヤは本当にいて、エナと愛し合って、
    自分が苦しみながらでも生きる道を選んだのかも。
    やっぱり、二人でさまよう道を選んだのか?

    もう誰にも分からない。
    それでもエナは笑顔で逝った。
    サクヤと言う人物はいて、確かにエナと愛し合った。

    だから、たとえ分からなくてもいい。
    エナが最期に笑っていられたのはサクヤのおかげで
    サクヤが500年の重みから解き放たれたのはエナのおかげ。
    その事実だけで、十分だ。
  • 33 ほし id:13kVfm/.

    2011-12-28(水) 02:22:13 [削除依頼]
    やっぱり、上手い人は上手いなぁ……
    思わず最後まで読んじゃうぐらい話にのめり入って
    しまいました……
    人に何か感じさせる話っていいですね。

    でも、俺なら「生きることの大切さ」を重視します。
    命を絶つって、本当に怖いと思いますから。
    でも、守りたい人のために命を絶つのはなんとなく共感
    できます(●´ω`●)
  • 34 ピエロ id:XQwUIT0.

    2011-12-28(水) 23:40:24 [削除依頼]
    ほしさん

    感想ありがとうございます。
    そうですね。
    「生きることの大切さ」も書きたかったんですが、
    話を進めていくうちにどんどん…。そっちの方向に…。

    また機会があったら
    その話も書いてみたいなって思ってます。

    読んでくれてありがとうございました。
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