The uncanny valley of artficial intelligence43コメント

1 Awakevening id:APG68qC.

2011-11-23(水) 20:30:58 [削除依頼]

湿り気のある土を、疎らに割れた瓦が夥しく覆っている。しかし、宵からの雪により、今はその多くが隠れてしまっていて見えない。その中で、一筋の堀建て柱だけが、その土地のかつての姿を踏襲するように、白く立ち尽くしている。
ここはどうも家屋だったらしいが、小綺麗に整ったこの一角が、さながら夢の島のようなそれを許すとは思えない。
ここを通りすがるだけの僕に真相は知る由もないが、とにかく奇妙な光景に間違いなかった。
  • 24 Awakeve id:6a6ZPOK0

    2011-11-30(水) 19:49:36 [削除依頼]
    うつ伏せで地面に激突した上半身は、さっきよりさらにもぞもぞとした動きで、両手を使い起きあがろうと試みていた。
    ゆっくり少しずつ、再び見せたその顔は頬にひび割れを作り、つぶれた鼻から血のような液体を流していた。
    まるで壊れたセルロイド人形のようだ。顔がぐしゃぐしゃになっても、その表情は変わることがない。
    今もなお色のない顔をしたそれは、最後の力で吉祥草のあったほうを一瞥し、やっと小さく微笑んだ。


    女はそれから二度と、動くことをしなかった。
  • 25 Awakeve id:6a6ZPOK0

    2011-11-30(水) 19:58:38 [削除依頼]
    完結です。難しかった… 読んでいただいた方に、何か思うところがあったなら幸いです。 「The uncanny valley of artficial intelligence」 >>1+5-9+12-21+23+24 まとめです。よかったらこちらから
  • 26 ウォルター id:ez-.s7Gqtz.

    2011-12-01(木) 18:23:47 [削除依頼]
    日本語御上手ですね。……というか日本語お綺麗ですね。がしっくりくる作品。
    SFに身を置きながらも、主題を別に持った作品。
    既製感漂う大味な作品じゃ味わえない感覚を受けました。
    次回作にも期待大。
  • 27 Awakeve id:ZIDT6E.1

    2011-12-01(木) 19:48:00 [削除依頼]
    >>26 びっくりした すごくびっくりした まさかウォルターさんに感想をいただけるとはもう えっと、むこうのスレにも書いたけどありがとうございます テーマについてはメッセージを込めたので、くみ取っていただけたならとてもうれしいです
  • 28 Awakeve id:FGsTBYb0

    2011-12-02(金) 18:57:32 [削除依頼]
    ええと、ちょっと推敲したり、文章の区切りがあれだったり、なによりあまりにも単発なんで、もう一回投下します
    基本的には同じ文章です。すいません
  • 29 Awakeve id:FGsTBYb0

    2011-12-02(金) 19:13:19 [削除依頼]


    湿り気のある土を、疎らに割れた瓦が夥しく覆っている。しかし、宵からの雪により、今はその多くが隠れてしまって見えない。その中で、一筋の堀建て柱だけが、その土地のかつての姿を踏襲するように、白く立ち尽くしている。
    ここはどうも家屋であったらしいが、小綺麗に整ったこの一角が、さながら夢の島のようなその体たらくを許すとは思えない。
    ここを通りすがるだけの僕に真相は知る由もないが、とにかく奇妙な光景に間違いなかった。

    立ち止まる僕を、期せず見慣れない制服が追い越した。
    女だった。白い蒸気を上げながら、何やら携帯電話で話し込んでいる。
    カーディガンを着ているため、どの学校の生徒かは分からなかったが、背丈や骨の秀でた顔立ちからして、おそらく高校生だろう。
    融雪された路肩のみぞれを、鈍く光るローファーで踏みしめながら歩いている。

    もちろん、それを疑う余地はなかった。
    夕暮れ時に、駅前のこの道を通る女子高生など、あの瓦礫の山とは違い当たり前の光景であり、いわば注目に値しないものに他ならないはずだ。
    誰も気にとめるものはいない。気にしていないふりをしていなければならないのだ。
  • 30 Awakeve id:FGsTBYb0

    2011-12-02(金) 20:39:36 [削除依頼]

    しかし、一種の怖いもの見たさのような感情が働いたのだと思う。抜き差しならない何かを白日のもとへ晒すためにも、僕は目線をそらすわけにはいかなかった。
    女は携帯電話を切り、ふいに瓦礫の方面へ走り出した。今にも音を立てそうなくらい、盛んに蒸気を上げている。粟色のショートヘアが揺れ、赤熱した耳が見えた。

    ここで僕は気づいたが、この現象はどうやら今日だけのことではないらしい。
    得体の知れない熱気みたいなものにあてられた気がして、思わず目をやると、五人ほどの「連中」がすでにこちらへ視線を向けていた。
    どれもこれも炯々としたような具合で、少なくとも一介の通行人に向ける視線とは到底思えない。
    つまりここの誰もが、あるひとつのぼんやりとした真実を見抜き、疑っているのだ。

    女はとうとう、瓦礫のさなかへと足を踏み入れていた。
    他より少し低まった立地のそこは、むろん侵入のあとがあるはずもなく、今はまっさらの白い平地のようである。
    膝上ほどのチェックスカートをなびかせ、その体はひとつひとつ軽快に、地面に靴底の陰影を作り出していた。
  • 31 Awakeve id:FGsTBYb0

    2011-12-02(金) 23:42:35 [削除依頼]

    それを見た誰もが、目を疑った。
    いや、実際にそうだったかは、女へ意識の大半を向けている僕には分からない。
    でも、そうしないわけにはいかないはずだ。いよいよ尻尾を掴んだというか、そういう感覚があったと思う。
    僕たちの抱く疑惑、僕たちの向ける視線は、それこそ死体に対して感じるような本能に起因する嫌悪や拒絶、好奇に他ならない。
    そして今その好奇心が、おそらくは最高の山場を迎えるところなのだ。「あいつは何をやっているんだ?」と。

    そんな中、女は瓦礫の中ほどで歩みを止め、しゃがみ込んだ。雪の中に手を突っ込み、何かを探っているようだ。
    雪をかき分けるたびに、白い指が赤みを帯びていった。さすがに冷たいらしく、やけに整った顔の端々を歪ませている。
    そしてその何かを探り当てたようで、今度は周りの雪を隅へ押しやり始めた。
    おそらく、瓦礫の中のある表面を雪から掘り起こしたいのだろう。

    もぞもぞと芋虫のような格好で作業に耽る姿は、ひどく醜く思えた。
  • 32 Awakeve id:o8alZ6D1

    2011-12-03(土) 10:08:33 [削除依頼]

    そう、僕はこのあたりから、排他感情のような、女を完全に追いやりたい衝動に駆られていた。その原因を言葉で表すことはできないが、「完全に」なんだから、これは相当に強い気持ちで、しかもかなり非人道的な願望だ。
    そしてこの気持ちは、その場に居合わせた全員に共通しているはずである。ふとした拍子に、全員がまくし立てるように女を侮辱するようなことがあっても何ら不自然と思わないほど、小さな通りの一角はある種の熱狂を見せていた。
    どうしてって、それは決まっている。答えは紛れもなく、僕らの「疑惑」にある。

    そして女は掘り起こし、それは再び地表にその全貌を現した。
  • 33 Awakeve id:o8alZ6D1

    2011-12-03(土) 17:51:44 [削除依頼]
    吉祥草の花だった。
    季節外れに咲くそれは儚げに、お辞儀をするような角度で咲いている。真っ白な雪原に浮かんだ藍色は凛とした印象で、冬のはじめの澄んだ、透明な空気によく映えていた。
    女は愛しそうに眺め、満足げにひと息つくとゆっくり立ち上がった。スカートの端が小さく濡れている。

    僕たちの中に、このとき明確な悪意が沸き起こった。
    明確ではあるけれど、やはりそれを表現することも僕にはままならない。
    煩雑なのだ。生意気だと思ったし、ありえないと思ったし、何より腹が立った。
    黒い感情が頭の中を駆け巡り、増幅しあい、いよいよ僕は興奮を抑えきれなくなっていた。
    思い切り叫びたい。そしてあの女の胸ぐらを掴み、力いっぱいにぶん殴ってやりたかった。手を痛めるかもしれないけど、それでもまだ足りなかった。
  • 34 Awakeve id:o8alZ6D1

    2011-12-03(土) 20:30:20 [削除依頼]


    僕の思考は遠心力を増すいっぽうだったけど、それは後ろの方から聞こえる、どこか締まりのないエンジンの排気音でいったん中断された。
    スバル社のサンバー。振り向いてみるとそれは、なんてことのないただの軽トラックであった。煤けて、灰色がかったその車体は、欠伸の出そうな速度で、大通りの方からこちらに向かっている。そうとう年期の入った、ぼろい車らしい。よく見るとヘッドライトのカバーは経年劣化で黄ばみ、樹脂製のバンパーにも、雨跡をなぞるような形の色落ちができていた。

    僕はそんな情けないがらくたを尻目に、一度は大きく深く、長いため息をついたが、その後にすぐ、そいつがとんでもない真似をしようとしていることに気づいた。
    小路に入ったというのに、やけに加速している。もう欠伸を挟む間はなさそうだ。運転手が気を失っているのだろうか。
    そしてそのスピードで、僕の方に向かってきていた。やはりこいつはもう、ただ直進する鉄くずのようで、路肩の金網にミラーを擦りつけているのもかまわず、まっすぐ向かってくることだけをしている。
    女の方を見る。もう雪原から出ようとしていて、この事態にはまだ気づいていない。
  • 35 Awakeve id:WnHdbxX/

    2011-12-04(日) 20:50:32 [削除依頼]
    もしかして、まさか……
    そう思った頃には、古びた鉄くずはすでに目前を猛スピードで通過していて、僕にはそこから何もかもが、スローモーションのように感じられた。


    敷地の前の排水溝をもろともせず、駆け抜け小さく浮遊したように見えた鉄くずは、さっきまでとはほぼ据え置きの勢いで雪原に突っ込んだ。サスペンションをきしませ、暴れ回りながら直線を突き進んでいる。
    そのすえ、女をサンドイッチの具のようにしながら、またその先、コンクリートの壁に思い切り激突した。
  • 36 Awakeve id:WnHdbxX/

    2011-12-04(日) 22:59:55 [削除依頼]


    耳をつんざくような、ひどい衝突音が響いたと思うと、それからあたりはいやに静かになった。
    むろんその事故を、僕含め数人が目撃したけど、誰も口を開くことはしなかった。ただ、静かに事故現場を眺めていた。
    事故現場もまた静かだった。
    鉄くずはフロント周りの欠損がひどく、ピラーが歪んでいる。文字どおり、完全なスクラップだった。
    コンクリートの壁には、それなりに厚さのある、放射状のヒビが大きく入っていた。中心は深く陥没している。

    そして鉄くずのボンネットにすがりつくようにして、女は立っていた。いまだ整ったままの顔は感情を映すことなく、瞼だけを薄く見開いている。
  • 37 Awakeve id:E4Ce8Iw.

    2011-12-05(月) 18:52:14 [削除依頼]
    女は鉄くずの外装を伝うように、煤で薄黒くなった指を這わせ、ゆっくりと動き出した。つぶれて露出した、配線だらけの胸から腹にかけてのフレームが、ぎしぎしと音を上げながら、追従するように動作しはじめる。そのたびに細々としたビスやナット、歯車が陥落し、小さく音を立てた。
    50cmほど横にずれたあたりで、こんどは何の音も立てず、脆弱な、それでも腰と足をつなぎ止めていた1本のフレームが、ひん曲がり、ねじれて、折れた。
    同時に、糸の切れた操り人形のような動きで、女の体が崩れ落ちた。足はもう動かないらしく、気持ちの悪い形のまま停止している。
    うつ伏せで地面に激突した上半身は、さっきよりさらにもぞもぞとした動きで、両手を使い起きあがろうと試みていた。
    ゆっくり少しずつ、再び見せたその顔は頬にひび割れを作り、つぶれた鼻からは血のような液体を流している。
    まるで壊れたセルロイド人形のようだ。顔がぐしゃぐしゃになっても、その表情は変わることがない。
    なお色のない顔をしたそれは、最期の力で吉祥草のあった方を一瞥した。
    そして静かに目を閉じやっと、感情を表す一滴の涙を、頬に伝わせた。

    女はそれから二度と、動くことをしなかった。
  • 38 Awakeve id:E4Ce8Iw.

    2011-12-05(月) 18:57:51 [削除依頼]
    今度こそ完結です。 読んでくださった方、ありがとうございました。 「The uncanny valley of artficial intelligence」 >>1+5-9+12-21+23+24 「The uncanny valley of artficial intelligence」改訂版 >>29-37
  • 39 かむこ id:OUIZ5UW0

    2011-12-05(月) 21:53:15 [削除依頼]
    はじめまして。
    素晴らしい文章とどきどきする展開に引き込まれました。
    読了後には喪失感が残りましたが、それも情景を容易に想像させる描写力故だと思います。
    もしよろしければ他に執筆されている作品などあれば教えて頂けませんか。
  • 40 Awakeve id:M4tBqyh1

    2011-12-06(火) 19:39:02 [削除依頼]
    >>39 はじめまして…どうしよう泣きそう なんていうか、ありがとうございます 文章力についてはほんとに自信がないので、そういってもらえるとすごくうれしいです えっと、一番最近に書いたのは「堕胎行列」というやつですが、お気に召していただけない自信があるので、期待しないでご覧いただけると助かります
  • 41 地球 id:d1kVOnG1

    2011-12-23(金) 21:12:54 [削除依頼]
    きましたよ感想屋です
    かむこさんとカブってしまいますが描写がすごいです細かいところまでかかれていてはなしの中にひきずりこまれました
    私がその場にいるかのようで・・・
     次の作品もどうぞこちらで!大歓迎ですよ
  • 42 猫村 創 id:nSul8ne.

    2011-12-24(土) 18:02:44 [削除依頼]
    評価が終わりました。
    詳しくは小説準備板へ
  • 43 朱雀 id:4S6p03/0

    2011-12-27(火) 19:51:54 [削除依頼]
    Meknawpha(Awakeve)殿

    評価終了しました。
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