仮面の道化師23コメント

1 ピエロ id:HvCJjeu.

2011-11-18(金) 22:02:27 [削除依頼]
プロローグ 

ここは誰も知らない場所
今もまだどこにあるのか
はたまたもうどこにもないのか
そんな事さえも誰も知らない場所

そこには昔 ずーっと昔
道化師が一人 住んでいた
たった一人で さみしさも感じずに
これは そんな哀れな道化のお話
  • 4 ピエロ id:2XgcPxg/

    2011-11-19(土) 09:56:53 [削除依頼]
    第2話 サーカスの始まりだ!

    よってらっしゃい見てらっしゃい!
    今からリカントサーカス団の不思議な舞台の幕開けだ!
    さぁさぁ!よってらっしゃい見てらっしゃい!

    「ピエロ〜そろそろ出番だよ〜。」
    猛獣使いのシルヴィアが俺を呼ぶ声がする。
    俺は鏡に向かってもう一度笑顔の確認をする。
    サーカス団にゃピエロの笑顔が必要不可欠だ。
    そしてドアに向かって進む。
    外では観客の声がいっそう大きく聞こえる。
    「何やってんの。早くしないと開演しちゃうよ!」
    シルヴィアに怒られながらも
    俺は急いで舞台に向かう。
    そして、舞台に上がる階段を一つ一つ上がりながら
    顔を笑顔にさせていく。
    舞台にたった。スポットライトが俺に集中し、それと一緒に
    観客の眼も俺にくぎ付けになる。この瞬間が一番緊張する。
    「本日は我らリカントサーカス団のショーにお集まりいただき、
     誠にありがとうございます。
     なあんてつまらない挨拶より、楽しいもんがみたいだろ!?」
    観客がワーキャー嬉しい悲鳴をあげる。中には口笛を吹く人も。
    「ではその期待にお応えして、まずはこのピエロめが、
     いろんな芸をごらんにいれましょう!」
    そういって玉乗り、ジャグリングなんでもござれの
    芸を披露する。途中おどけて見せたりするのがコツだ。
    観客からは笑いの声。そろそろ交代の時間だ。
    「お次は猛獣使いのシルヴィア!盛大な拍手で迎えてくれよ!」
    そしてシルヴィアが登場する。虎と一緒に火の輪くぐりやってみたり
    本当に獣の操縦がうまい。
    「さーてお次はお待ちかね、世界一バランスのいい
     ギリアムとリリアン兄妹の綱渡り、空中ブランコだよ!」
    ギリアムさんとリリアンが登場し、見事な綱渡りを披露する。
    そして、空中ブランコが始まろうとしたその瞬間…!

    キャー!!!
    観客の誰かが悲鳴をあげた。
    俺や団長のカーティスさんが向かう。
    あとからシルヴィアや次に出番を控えていた
    火吹き男のロイが駆けつける足音が聞こえる。
    「どうした?」
    そう声をかけた時には遅かった。
    その客は死んでいた。それどころか、どんどん周りの客たちも
    苦しみ始め、次々と倒れていった。
    一体何が起きたのか分からなかったが、
    とにかくここは危険だと判断した団長が俺に、
    避難の誘導指示を出せというので
    「本日のショーは休止させていただきます。
     順番に退場頂きますよう、よろしくお願いします。
     くれぐれも押し合いしないよう、ご協力お願いします。」
    そうアナウンスして、客が全員退場したところで俺たちも
    楽屋に戻った。
  • 5 ピエロ id:Wn5oBn7.

    2011-11-20(日) 08:59:46 [削除依頼]
    第3話 リカントサーカス団 これにて閉幕

    楽屋に戻った俺たちは
    とにかく原因が何だったのかを考えた
    あの苦しみ方は尋常ではないし
    現に死者がたくさん出た
    「こんなサーカス、もう誰も見ねえぜ?」
    ロイがそうつぶやいた。
    みんなの視線がロイに集まる。
    「だってそうだろ?俺達みてえな面白おかしくやってるとこで
     死人が出ちまったんだ。そんな悪い噂はそっこー広まんぜ?」
    「確かにそうだ。」
    ギリアムさんが言った。
    「兄さん・・・・・。」
    リリアンがその場の空気に耐えかねて言葉を漏らす。
    「ロイやギリアムの言っていることは確かに正しい。
     私たちの職業は生活に欠かせないことがない。
     そんなところへわざわざ死ににくるようなことはしないさ。」
    団長が静かに言った。
    「でも……!!!」
    シルヴィアがそこへ割って入る。
    「あたしたちにはここしか居場所がないの。
     ここが無くなったらどうしたらいいのよ。」
    シルヴィアの意見はもっともだった。
    俺たちは団長に拾われてここまで付いてきた。
    いろんな芸や技も団長が小さいころから仕込んでくれてるから
    出来るようになったことだったんだ。
    「シルヴィアが言ってることも間違ってない。
     でもな、シルヴィア。もしこのまま興行を続けたとして
     一体どれくらいの人が笑顔になると思う?
     むしろこのままの状況でサーカスなんて開いたら、
     多くの人が嫌な顔して、どの町でも受け入れてもらえないだろ?」
    俺は静かに、そういった。
    そのままみんな黙ったまま、時間だけが過ぎていった。

    今日はここに泊って、一晩考えてからまた明日話そう。
    そう誰かが言って、その場は一旦終わった。
    その後みんなで飯を囲んで、眠りについた。
    そんな中でも空だけは雲ひとつなく晴れていて
    嫌みの一つでも聞いてもらいたい気分だ、
    そう冗談で言ったら、横にいたシルヴィアが笑って見せた。

    朝、目が覚めた。
    やっぱり一番早起きはギリアムさんだ。
    俺が起きた時には既に飯の準備を始めていた。
    ほかのみんなが起きてくる前に、俺は街の方を
    見てみることにした。
    途中、起きてきたロイも一緒に行くというので
    2人で街へ出ていった。
  • 6 ピエロ id:Wn5oBn7.

    2011-11-20(日) 09:08:46 [削除依頼]
    「これは……。」
    ロイが思わず声をあげた。
    動物がそこらで死んでいた。
    雑草すらも枯れ果てていた。
    そんな異様な現実の中で、建物だけが
    今までと変わらずそこにあるのが、
    逆に不気味でしょうがなかった。
    「人は?人はどうした!?」
    「探そう。」
    ロイがそういった。
    俺たちは2人で街中を探した。
    でも、誰ひとりとして、生きてるものはいなかった。
    そう、すべてが死んでいたのだ。
    俺たちは怖くなって、すぐにそこから逃げ出した。
    走って走って、サーカス小屋の楽屋へ帰ってきた。
    そこではみんながもうすでに起きていて、
    俺たちの帰りを待っていた。
    俺たちは、街の様子を事細かに説明した。
  • 7 Dreamer id:kGcNNeO.

    2011-11-23(水) 09:34:19 [削除依頼]
    「もうこの街にはいられないね。」
    シルヴィアがつぶやいた。
    いつもどうりに朝を迎えて
    いつもどうりにサーカスを開いた。
    いつもどうりの芸をして
    いつもどうり、終わるはずだった。
    昨日、すべてが狂った。
    いつもどうりの開幕後、いつもと違う客の悲鳴と
    死人になった街の人々。
    建物だけが無事だったことが妙に気味悪かった。

    「この街が死んだ原因って、なんだと思う?」
    ギリアムさんが言った。
    「だってさ、おかしいと思わないか?誰も何もしちゃいない。
     猟奇的な殺人者がいるわけでもない、ただの街がだぜ?
     一晩で、人一人も生き残らねえようなことがありえるか?」
    「たしかにそうだ。」
    ロイが言った。
    「たとえば、たとえばだぜ?毒の煙か何かがまんえんしたとか?
     じゃなきゃ、あの傷のない遺体の説明ができねえ。」
    「じゃあ、誰がやったって言うんだよ?もう誰も生きちゃいねえ。
     この街にゃ今、俺達しかいねえんだ。」
    俺は、みんなを見渡しながら言った。
    「それあ…。」
    ロイが口をふさぐ。どうしようもない空気があたりにたちこめる。
    「ねえ、そんなことよりさあ、団長はどうしたの?」
    リリアンが言った。
    そうだ、確かに団長の姿が見当たらない。
    「腹いてえから休んでるっつってたぜ?」
    ロイが言う。
    「そういや、んなこといってたなあ。」
    ギリアムさんがロイの意見に乗じた。
    「でも、そろそろ起きてきても、いいんじゃな〜い?」
    シルヴィアが言った。
    「起してくる。」
    俺はロイと一緒に、団長の部屋へ向かった。

    「団長?あけますよ??」
    ロイが扉越しに尋ねる。でも、返事はない。
    「団長?起きてますか?団長?」
    俺も声をかける、どうして返事がない?
    ロイを見ると、おそらく俺と同じことを考えてる見てえだった。
    「入ろうぜ。」
    ロイは俺にそういうと、扉を開けた。
    「団長!?どうした?団長!!」
    「どうした?」
    ロイに尋ねたが、尋ねるまでも無かった。
    団長が倒れていて、街の人たちと同じ姿になっていた。
    そう、団長はもう、亡くなっていたんだ。
    「何か、あったのか?」
    騒ぎを聞きつけたのであろう、ギリアムさんがやってきた。
    後ろにはリリアンとシルヴィアがいる。
    「団長が……、」
    ロイが、言葉を出せずにいる。まだ、信じられないんだろう。
    「おい!どうしたってんだよ!団長は?」
    ギリアムさんが急きたてる。
    「団長、は……。すでに、もう……。」
    言葉より先に、涙があふれてくる。
    「そんな……。」
    その場にいる全員が口をつぐんだ。
    どうしようようもないのだ。なぜかも分からないんだから。
    ふいに、リリアンが倒れる。ショックで意識を失ったのだろう。
    ギリアムさんが、彼女を抱いてそっと部屋を出ていった。
    それについて、シルヴィアが部屋を出る。
    2人きりになった俺とロイは、このままでは団長が
    かわいそうだというのでとにかく彼をベッドの上に寝かせ、
    上に布団をかけてやった。
  • 8 たまえんざい id:64/II9O1

    2011-11-23(水) 09:58:41 [削除依頼]
    すごいシリアスな内容ですね!
    続きが楽しみです!
  • 9 Dreamer id:kGcNNeO.

    2011-11-23(水) 12:14:11 [削除依頼]

    ありがとうございます!
    ちなみに、ピエロとDreamerで作ってます!
    また見に来て下さいね
  • 10 たまえんざい id:64/II9O1

    2011-11-23(水) 12:14:44 [削除依頼]
    もちろんです^^
  • 11 ピエロ id:kGcNNeO.

    2011-11-23(水) 16:31:31 [削除依頼]
    「どうすんだよ、これから。」
    誰かが言った。いや、言ったのはロイだが、
    おそらくその場にいる全員が同じことを思ってた。

    俺達5人が団長に拾われたのは今から10年前
    俺がまだ8歳だった頃の話だ。
    その時、ギリアムさんは11歳、ロイは8歳、
    シルヴィアは9歳、そしてリリアンはまだ6歳だった。

    あれから7年か。長いようで短かった。
    団長に芸を仕込まれ、いろんな街でショーをした。
    それまでの貧しい生活が嘘のように
    充実してて、みんなが笑っていて、幸せだった。

    なのに、それを作ってくれた団長はもういない。
    寂しいけれど、もう二度と、会うことさえできない。

    沈黙が続く。そこへ、気がついたのであろう、
    リリアンを連れたギリアムさんとシルヴィアが
    入ってきた。
    リリアンはまだつらそうだ。無理もない。
    彼女は俺たちと違って、団長に育ててもらったような
    ものだもんな。
    不意にギリアムさんが口を開く。
    「なあ、みんなはどうしたい?このリカントサーカス団
     続けたいか?俺は年長だが、みんなの意見が
     聞きたい。」
    「俺は、続けたいです。」
    ロイが言った。
    「俺も。またやり直してえ。でも、無理だと思う。」
    俺も自分の意見を言った。
    「そうだよ。もう無理だよ。だって、団長いないんだよ?」
    シルヴィアが言う。間違ってはいない。
    「私も、そう思う。これ以上は、無理。
     団長もいなくなっちゃったし、もう、無理だよ。」
    リリアンが言った。
    一番幼いけれど、兄に似て賢い。
    「たしかに、そうだけどさ。」
    ロイが口をはさんだ。
    「じゃあ、どうするんだよ?俺達、行くところねえし。
     あのころには戻りたくねえし。そりゃあ、
     おれたち二人はもう15だしシルヴィアは16だ。
     だけどさ、リリアンはまだ13だぜ?どうやって生きてくんだよ。」
    ロイの意見はもっともだった。
    「じゃあお前は、このままサーカスを続けようってんだな?」
    ギリアムさんが念を押していった。
    「はい、そうです。」
    ロイがうなずいた。
    「俺は!俺は、それでもやっぱり、無理かもって思う。」
    俺は言った。
    とたん、ロイが怒りだす。
    「お前なあ!団長の恩を仇で返す気か!?
     このサーカス団が、団長の夢だったんだ!
     こんなところで、壊してたまっか!!」
    「確かにそうだ!俺もこのサーカスは守りてえ!
     でも仕方ねえだろ!団長もいねえ、笑ってくれる客もいねえ!
     そんなんでサーカスって言えんのかよ!?
     そんなにしがみついてまで俺たちがサーカスやることを
     団長が望んでるっつうのかよ!!!」
    思わず俺もキレちまった。ロイとは年が近いこともあって
    ガキの頃から1番仲が良かった。
    なのに、この場面でキレちまった。
    「やめないか!」
    ギリアムさんが割って入る。
    「今は仲間同士でケンカしてる場合じゃねえだろ。
     それよりも、だ。3人がもう無理ってか。
     続けてえのはみんな一緒でも、仕方ねえ、か。」
    ギリアムさんが場をまとめるようねそういった。
    「仕方ねえってよ、ロイ。続けてえのはみんな一緒だ。
     それに、お前の言い分もよくわかる。間違っちゃいねえ。
     でもな?よく考えてみろよ?
     サーカスだけが俺たちじゃねえ。もとはどん底で生きてた。
     もうあの頃とは違う。各自が働けるんだ。
     それを、よく考えろ。リリアンのことだって、俺一人で
     養っていける。大丈夫だ。お前は、優しすぎるんだよ。
     もう少し、自分のためを思って事を考えてみな?」
    諭すようにそう言ったギリアムさんは、
    「もうリリアンサーカス団はお終い!
     これにて閉幕!ってか?またみんなでやり直そうぜ!
     おれと一緒に来てくれる奴は、ここを出る準備、
     手伝ってくれ。」
    シルヴィアとリリアンはギリアムさんについて行った。
  • 12 ピエロ id:kGcNNeO.

    2011-11-23(水) 16:33:46 [削除依頼]
    下から五行目
    「もうリリアンサーカス団はお終い!

    訂正
    「もうリカントサーカス団はお終い!
  • 13 ピエロ id:kGcNNeO.

    2011-11-23(水) 16:59:40 [削除依頼]
    第4話 仲間の死、孤独のピエロ

    昨日結局、ギリアムさんにはリリアンと
    シルヴィアがついて行った。
    そこに残ったのは、俺とロイだけだった。
    長い間沈黙が続いた。夜になり、ロイが部屋から出ていったから、
    俺もそのまま寝室へ行った。
    そして、今朝。
    先に沈黙を破ったのは、ロイだった。
    「お前、何で一緒に行かなかった?
     お前はこのサーカスを続ける気はないんだろ?
     だったらとっとと用意まとめて行けよ。」
    静かに、しかし強くそう言った。
    「ロイ、お前をおいてはいけねえよ。ずっと一緒だったんだ。
     このままケンカ別れってのも、後味わりぃしよ。」
    どさっ
    俺が話し終えるが早いか、ロイが倒れた。
    苦しみ悶えているようだった。
    「おい、ロイ!しっかりしろ!どうした?どっかいたいか?
     ロイ!ロイ!ロイ!!」
    ロイは、あの日観客席で倒れた女性や
    まわりの客たちのように、だんだん息をしなくなって、
    そして、ついに、心臓の音すら聞こえなくなった。
    「ロイ!ロイ?おいロイ!しっかりしろよ!ロイ!!」
    俺はもうわけわかんなくなって、とにかくロイの名を呼んで喚いた。
    どうしたらいいか分からなくなって、とにかくロイを抱きしめた。
    でも、どんなに抱きしめても、ロイの体はどんどん冷たくなっていく。
    ロイの顔は悲痛に歪んでいた。相当苦しかったのだろう。
    苦しくて、たまらなかったのだろう。涙までこぼして、ロイは死んだ。
    「なんで?なんでロイが?なんで死ななきゃなんなかった!
     わけわかんねえよ。どうすりゃいいんだよ。俺にはロイしか
     いねえのに。なんで…?」
    ロイはおそらく体の異変に気づいてたんだろう。
    だからあの時俺に「行け」って言ったんだ。
    ロイは優しいやつだから。
    俺が1人で看取ったら死にかねないってわかってたから
    だから1人で死ぬ覚悟で俺に「行け」って言ったんだ。
    おれは、どうしたらいいんだよ。
    悲しくて寂しくて辛くて。
    今にもつぶれてしまいそうだよ。
    最後の最期で、けんかしちまった。
    最期の最後で、仲直りできなかった。
    悔しいよ。今のおれ、ダッセー。泣いてるよ。
    後悔と悲壮で 泣いてるよ。
    せめて謝ってりゃよかった。ケンカしたまま、もう二度と会えねえ。
    畜生。俺は正真正銘の 孤独なピエロになっちまった。
  • 14 Dremer id:kGcNNeO.

    2011-11-23(水) 23:12:10 [削除依頼]
    第5話 そして仮面の道化は生まれた

    「ピエロ!」
    もうそんな風に、誰も読んではくれない。
    俺はたった1週間もしねえうちに、
    俺の芸に拍手をくれた観客と
    親代わりで育ててくれて、芸を一から仕込んでくれた団長と
    生涯の大親友と
    兄弟同然に育った仲間たちを

    失った。

    あの日からもう1年がたった。
    俺はもう、悲しみに流す涙も
    後悔に流す涙も枯れた。
    1年間、泣いて、泣いて、泣き疲れた。
    もう涙すらでねえ。
    それと同時に気がついた。
    俺はもう、笑えねえ。いつのまにか、笑えなくなってた。
    それだけじゃねえ。怒りも苦しみも絶望も後悔も
    もう何にも感じねえ。
    俺は仮面をかぶった道化のように、表情を変えることも
    気持ちを変えることもできなくなっていた。

    そんなある日、昔の仲間が会いにきた。
    ギリアムさん、リリアン、シルヴィア。
    とくにリリアンは、1年で見違えるほど綺麗になった。
    「久しぶり。」ギリアムさんが声をかけてくる。
    俺には答える言葉も無かった。1年間ろくに人と会話してねえ。
    でも、ただひとつ、伝えたいことがあった。
    「ロイが、死んだ。」
    「え……?」
    リリアンが思わず声に出す。無理もない。
    「だってあんなに元気で、別れる前の日だって、あんたとケンカして…」
    「その次の日。あんたらが出て行ったあと。
     俺しか看取ってやるやつがいなかったから、
     でもあいつは最期まで優しいやつだったよ。もう誰にも文句を言われない
     世界にたった一人で行っちまったんだよ。」
    「そうか…。」
    ギリアムさんが言う。
    「1人で辛かったろう。すまなかったな。本当に悪かった。」
    心の底から謝ってる見てえだけど。俺にはもうどうでもよかった。
    「ねえ、あたしらと一緒に来ない?」
    シルヴィアが言った。
    「俺はいけない。ここを離れることはできないから。」
    「ロイを一人には出来ないし、な。誘ってくれて、ありがとよ。」
  • 15 Dremer id:2Eh3IQ2/

    2011-11-24(木) 15:22:50 [削除依頼]
    第6話 孤独との戦い 亡くした心

    昔の仲間は帰っていった。
    その日からだ。俺の孤独が始まった。
    いや、正確には、何も感じない日々の始まり。
    寂しいも悔しいも辛いも何もかも失くしてしまった。

    いや、失くしただけなら探せばよかった。
    もう、亡くしたんだ。この世のどこにも、心は無い。
    俺の心だけ先に、ロイのもとへ行ったんだ。

    俺はどうしたらいいと思う?
    寂しくて寂しくてたまらないことも
    泣きじゃくった日々も もうどこにもないんだよ。
    笑ってくれる客と、仲の良かった仲間と過ごした
    楽しかった日々も、もうどこにもない。


    この街にはもう誰もいない。
    俺と言う名の体だけ。
    抜けがらのようなこの 体だけだ。
  • 16 たまえんざい id:1WylRAl.

    2011-11-24(木) 15:43:48 [削除依頼]
    一気に急展開ですね^^
    ますます楽しみです!
  • 17 Dremer id:2Eh3IQ2/

    2011-11-24(木) 16:15:43 [削除依頼]
    第7話 新たな出会い、道化と旅人

    あれから何年経っただろうか。
    どこからか風に乗ってやってきた地図には
    もうこの街の名前は載っていなかった。
    でも、なんでだろう。怒りも悲しみもわいてこない。
    とはいえそのことにさえ、なんのためらいもねえけどな。

    それは何年経ったか。ある旅人が訪れた。
    それ自体は全く珍しいことじゃなかった。だが、そいつはちょっと違った。
    俺のこと、知ってた。いや、正確にはリカントサーカス団のことを知っていた。

    そいつとはなぜか話があった。
    ロイとしゃべってるような、そんな感覚。
    話なんてするつもりも無かったのに話し込んでいつの間にか、一晩が経ってた。

    俺は心も亡くしたはずだった。笑うことはさすがになかったが、
    そいつといる間、すごく楽しかった。楽しいと感じた。
    そいつの名はルイドといった。ロイにそっくりのその男は、
    まるで俺を小さいころから知ってるみたいに、語った。
    だから余計にロイに見えた。昔けんかしたまま二度と会えないところに
    行っちまった大親友にな。
    「すまなかった。」
    俺は思わず謝ってしまった。
    「お前がロイじゃないことはわかってる。ルイドだってこと。
     俺が亡くした大親友とは違う人間だってこともわかってんだ。
     自分が楽になりたいだけかも知れねえ。でも、それでもお前に
     謝んなきゃなんねえ気がする。だから、ごめん。」
    その時はじめて涙が出た。あの日から泣きじゃくって枯れたはずの涙が。
    「もういいんじゃねえの?楽になって。だって、もう何年も苦しんできたんだろ?
     もう誰も何もいわねえよ。あんたが笑おうと泣こうと、誰も怒りやしねえんだから。
     早く、楽んなって、こんな街、とっとと出ればいい。
     ロイさんの墓が此処にあるってんなら、たまにここに来ればいい。
     ひとりで悲しみを背負いながら、生きてく必要はねえんだ。」
    ルイドの諭すような、それでいてあったけえ言葉が身にしみた。
    「ありがとよ。」
    そう言った俺の顔は、笑顔を取り戻していた。
    涙と一緒に流した心がいま、俺ん中に帰ってきた。
    「本当はこうやってロイの話を誰かとずっとしたかった。
     思いだしたくなかったんじゃなくて、思い出して辛くなるのが怖かった。
     自分が弱いことを認めたくなかっただけなんだ。」
    「わかってる。あんたが心捨てたりできるわけねえんだ。
     捨てちまったら、楽しいとか嬉しいとかそんな大事なもんまで
     失っちまうってわかってるあんたが、捨てきれるわけなかったんだよ。
     こんな旅人にいろいろ打ち明けてくれて俺はうれしかったぜ。
     あんたにはまた会いたいな。この街を出るなら、どこに行くか教えてくれ。」
    「俺は、昔の仲間んとこに行ってみるよ。そこでもし受け入れてもらえんなら
     そこで暮らしてえ。それが無理でも、一度会いてえんだ。」
    「そっか。じゃあいっしょに行くか。俺もちょうど、そっちなんだよ。」
    ルイドはそういうと、旅の支度をまとめてきた。

    俺は孤独じゃなくなった。いや、孤独じゃないことに気づいていなかっただけだった。
    俺はずっと、ロイと一緒だったのに。自分の決断がいつの間にか、
    自分の足枷になって、ここから動けなくなってるだけだった。
    でも、その足枷をはずしてくれる奴に出会えた。
    まだ幼いけど、ロイにそっくりの心を持ったルイドに。
    それはきっと、ロイが会わせてくれたような気がした。
    あいつのおかげで、暗い深淵から抜け出せた。
    足枷も外れて、いつの間にか自由に動けるようになっていた。
  • 18 ピエロ id:2Eh3IQ2/

    2011-11-24(木) 16:35:04 [削除依頼]
    第8話 そして帰るべきところへ

    俺は心を手に入れた。いや、きっとロイが返してくれたんだ。
    俺たちは新たな街についた。
    そこにはギリアムさんやリリアン、シルヴィアがいた。
    あの頃まだ幼かったリリアンはすっかり大人になって、美人になっていた。
    1コ上のシルヴィアも40だ。いつの間にかギリアムさんと結婚してたらしい。
    ギリアムさんとシルヴィアの間には子供がいた。
    そう、それが、ルイドだ。
    どうりで俺やロイやリカントサーカス団のことを知ってるわけだ。

    あの頃の団長と同い年になったギリアムさんは、貧しく暮らしてる子供たちを
    拾ってきて、芸を仕込んでるらしい。そう、リカントサーカス団は、再興していた。
    ルイドもそのうちの一人らしかったが、もう本当の親子みてえだった。

    たった一人で生きてきた今までとは違う。
    団長はギリアムさんで、猛獣使いのシルヴィア、
    火吹き男のロイはもういないが、ルイドが跡を継いでいる。
    世界一のバランスコンビはもちろんギリアム・リリアン兄妹!
    とはいえもうすでに後継ぎは決まっているらしい。
    もちろんギリアムさんが拾った子供たちの中で、だがな。
    そしてそして、お待ちかね!新生リカントサーカス団、ピエロはこの俺だ。

    メンバーは最高!ルイドはロイ以上の腕を持ってるし、リリアンは
    空中ブランコの跡継ぎを育てつつ、その器用さをいかして、手品の練習中だ。
    俺たちはいつだっって今日が最高の芸!本番のショーに向けて、
    日々特訓中だ!

    そしてついに明日いよいよ本番を迎える。
  • 19 ピエロ id:2Eh3IQ2/

    2011-11-24(木) 17:10:12 [削除依頼]
    第9話 新生リカントサーカス団、最高の舞台の始まり

    よってらっしゃい見てらっしゃい!
    今から新生リカントサーカス団の摩訶不思議でハラハラドキドキ、
    最高の舞台のまくあけだ!
    席はまだ空いてるよ!早いもん勝ちだ!
    さあさあ!よってらっしゃい見てらっしゃい!!

    「ピエロさ〜ん!ショー始まっちゃいますよ!早く早く!!」
    バランスコンビの跡継ぎ、サシャとセーラ兄妹が呼びにくる。
    俺はもう一度鏡を見て、笑顔の確認をする。
    長い間笑ってなかったせいか、練習中どこかぎこちなかった。
    でも、しっかり笑えるように努力し、今ではあの時のような笑顔で笑えてる。
    大丈夫だ。自信を持って楽屋を出る。
    「おそいですよ〜!ゆっくりしすぎです!ほら!もう観客のテンションはMAXですよ!!」
    サシャに急きたてられながらも、舞台に向かって進む。
    大きな歓声は、あの時と同じ。だからサシャに向かって言ってやる。
    「観客のテンションのMAXはな、こんなもんじゃねえんだぜ?
     今から、MAXを見せてやるよ!」
    そして舞台に立つ。スポットライトの光がまぶしくも俺一人に向けられる。
    気分は最高潮。これ以上は無いくらい、幸せだ。
    「久しぶりの人もはじめましての人も!今日は来てくれてありがとー!!
     新生リカントサーカス団、ここに始動するぜー!!
     みんな、面白いもんが見てえか!」
    きゃーという、嬉しい悲鳴。あの時と同じ、観客の楽しそうな叫び。
    「それじゃあその期待にお応えして!まずはこのピエロが芸をごらんにいれましょう!」
    そういって、玉乗り、ジャグリング、なんでもござれの芸を披露する。
    もちろん、途中でおどけて見せるのがオレ流だ。
    「お次はシルヴィア姉さんの可憐な猛獣ショーだよ!」
    シルヴィアが当時と変わらぬ、いや、当時よりも腕のあげた動物の扱いを魅せた。
    観客からの嬉しい悲鳴はどんどん大きくなる。
    「さあてお次はお待ちかね!バランスコンビ、サシャとセーラの二人だ!
     二人は今日が初舞台!大きな拍手で迎えてくれよ!!」
    ふたりが入って来る。
    空中ブランコを終え、綱渡りだ。
    命綱なし。正真正銘の命がけ。
    サシャは綱の上に立ち、ゆっくりゆっくり進んでく。
    観客は息をのむ。場が静まり返り、サシャ一人に視線が注がれる。
    そして…。見事、サシャは渡りきった!!
    「見事!サシャがやりました!皆さん!どうか大きな拍手を!!!」
    観客は今までで最高の拍手をする。ボルテージはMAX!これ以上ないほどに。
    「さあてお次はリリアンの単独手品ショー!絶世の美女だ!一目見て損は無いよ!
     もちろん!手品の腕も最高だ!奥さん!旦那さんが釘付けになってないか、
     見はっときなよ!!」
    かんきゃくから笑いが漏れる。リリアンのショーが始まる。
    見事な手品の数々。もしかしたら、バランスより向いてたかも知んねえ。
    「さあ!最後は火吹き男のルイド!美女の次は美男の登場だ!
     奥さん取られないように、旦那さん、気をつけなよ!!」
    またまた笑いが飛ぶ。思わずルイドにロイを重ねてしまう。
    ロイにそっくり、生き写しのような、そして女のように美しいその男に
    その場にいた全員が釘付になってしまう。

    ショーは無事に、何事もなく終わった。
    サシャとセーラのショーの時に思わず思い出して押し殺した思いを、
    誰もがきっともっていた。
    今日はロイの命日だから、あえて今日ショーをした。
    ーあんたが笑っても、誰も怒ったりしねえよー
    ふいにルイドの言葉を思い出す。
    何年かぶりに、サーカスをした。誰もサーカスを捨てたわけじゃなかったんだ。

    俺はもう、一人じゃない。
    失ったもの全部、取り返した。ロイほどではないが、ルイドとも仲良くなれた。
    別れた仲間とも、こうしてサーカスができた。
    俺のトークやショーで笑ってくれる観客もいる。
    リカントサーカス団は、まだまだこれからだ!

    なあ、ロイ。おれはやっとお前のところに行ける。
    お前とは違って、たくさんの人に見守られながら
    たくさんの涙を連れて、そこに行くよ。
    なあロイ。
    またたくさん語り合おう。今度は秘密ごとなしで、
    けんかしねえように、な?

    ピエロは仮面をすて、笑顔で旅だった。
  • 20 ピエロ id:2Eh3IQ2/

    2011-11-24(木) 17:22:17 [削除依頼]
    エピローグ

    誰も知らない物語。
    その街は今でもどこかにあるのか、はたまたもうどこにもないのか。

    ルイドとの出会いからショーの全ての出来事は
    ピエロの夢だったのか、はたまた現実にあったことなのか。
    もし夢だとしたら、ピエロはそれに気づいていたのか。
    本当のことは誰も知らない。知るよしもない。

    ただピエロはロイのそばで死んでいた。
    眠るように安らかに、仮面を脱ぎ棄てた、本当の笑顔で。
    ただ再開を喜ぶように、一筋の涙を流しながら。

    ここは誰も知らない場所
    今もまだどこにあるのか
    はたまたもうどこにもないのか
    そんな事さえも誰も知らない場所

    そこには昔 ずーっと昔
    ピエロと言う男が住んでいた
    捨てたはずの心と仲間を取り返し
    親友のもとへと旅立った
    儚くも美しいピエロという男が

    でも、ピエロが本当にいたのか
    そもそもリカントサーカス団があったのか
    誰かの夢の中の出来事なのか

    誰も知らない 知る由もない
  • 21 ピエロ&Dreamer id:2Eh3IQ2/

    2011-11-24(木) 17:26:21 [削除依頼]
    ここまで読んでくれた皆さん、
    たまえんざいさん、ありがとうございました。

    まだまだつたない文章なのに、
    本当にありがとうございました。
    主人公ピエロの物語、いかがでしたか?

    このお話が、お気に召していただけて、
    少しでも心に残ってくれたのなら幸いです。

    また書いてみたいと思います!
    ピエロやDreamerという名をみかけたら、立ち止まって、
    のぞいてみてくださいね
  • 22 たまえんざい id:fRgXVOg/

    2011-11-25(金) 16:20:30 [削除依頼]
    とても心に響いた作品でした!
    わずか20スレでこんなに深いストーリーを作れるピエロさんはすごいですよ^^

    次回作楽しみにしてますよ^^。
    必ず見に行きます!
  • 23 ピエロ id:mreNgNz/

    2011-11-25(金) 22:37:09 [削除依頼]
    たまえんざいさん

    ありがとうございます!
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