Ambitious,6コメント

1 Lito id:hbNu/OD.

2011-11-15(火) 16:07:28 [削除依頼]


記憶の迷路で迷子の少女

廻る世界に孤独な羅針盤

導の輝きはいつも蜃気楼

辿りついた地は永久の闇

悟るのは報われない希望

笑いたいなら笑えばいい


熱望?


旅の途中に忘れ物ひとつ


――Ambitious,
(失くしたものの名前)
(誰も届けてはくれない)
  • 2 Lito id:hbNu/OD.

    2011-11-15(火) 16:32:56 [削除依頼]

    6月の湿った針葉樹の森。
    ひんやりとした風が通過していくたびに体温を奪っていく。
    静寂に包まれた空間、響く荒い呼吸と最後の言葉。

    「兄貴を……恨んでやるな、よ……」

    少女の手のひらから指先に血液がつたう。
    その手から生えるように握られた銀の刃は赤く染まってた。

    ――兄貴を……恨んでやるな、よ……。

    少女の未来を揺るがす言葉を残した男は息絶えた。
    胸は真っ赤に染まり、口の端にも赤い筋が見える。

    「馬鹿じゃん」

    男の死体の上に、ナイフを持ったままの手を翳した。
    力を緩めれば重力に従う鋭利なそれは再び男の胸を刺す。
    予想以上に跳ね上がった血液は少女の白い肌を濡らした。
    無表情に反して、男が残した言葉に苛立ちが込み上げる。

    ――恨むなだと?お前は私の何を知っているの?

    後方から数人の足音が聞こえてくる。
    少女にとってはうわべだけの"仲間"達だった。
    渦巻く想いを心の奥に押し込み、"本当の自分"を隠す。
    裏の顔?本性?偽らなきゃ生きては行けないでしょう。

    「カオルー!!」

    纏わりつく、一方的な絆。と、信頼だっけ。
    はじめからもう何も信じはしないと決意はしていた。
    だから、何も知らずに自分に笑ってくれる彼らへの想いはあまりに申し訳なく。

    「カオル……何で泣いてんの?」

    人の心を捨て切れずに、化け物になるしか道はなくて。

    「怪我したか?……立てるか?」

    抱えきれない感情に崩れ込むことしかできなかった。


    「何でもないよ。皆、ありがとうね」


    心からに近い笑顔を向けることが少女にできる精一杯。
    もう少し強くなれたら、大切を守れるようになったら、
    周りの誰かが泣いたり消えたりしない日常になったら。


    できればもう一度、絆を、信頼を、


    教えて欲しい……
    なんて、都合がよすぎるだろうか。


    血に濡れた手を、小さい子供みたいに背中に隠した。


    #00,ふたりの少女
    (偽って叶える)
    (曝けだすのはもう少し未来)
  • 3 Lito id:hbNu/OD.

    2011-11-15(火) 16:56:45 [削除依頼]

    冷たく濃い色の土の上には腐食した枯れ葉が積もっていた。
    まだ6月――新緑の季節だというのに、茶色いそれらは似つかわしくない。
    数年前から、世界中で時の巡りが狂いだした。
    あまりに長い冬と、うたた寝程度の春。
    桜は芽吹くことをやめ、冬眠し続けた生命は全滅した。
    寒さに強い針葉樹のみがかろうじて聳えている森ばかりがちらつく。
    季節と同じように、夜ばかりが長く、昼間は急ぎ足で過ぎていく。
    こういった異常現象は、とある組織が関係していると数ヶ月前明らかになった。

    組織の名、所属人数、目的、本拠地……何もかもが不明だった。
    それなのにある日、名ばかりの国際政府が世界に告げたのだ。

    ――この世界は悪質な組織によって支配されている。
      今日より全世界で軍事力強化政策を義務付ける。

    そして現在、「戦士」と呼ばれる人材の育成がはじまっていた。
    12歳というあまりに若い世代から、40歳までが対象の職だ。
    教育機関は全て訓練所になり、多くの土地は演習場と化した。

    そんな時代に生まれた彼らもまた、未来は決められていた。

    戦闘班037――篝火グレン、無月ヨル、泥深レン、霜雪カオル
    一般戦士は、戦闘班、諜報班、介護班、外交班などに区別される。
    それぞれ全ての年代を合わせて100班くらいずつ存在し、4人一つのチームとして活動していた。
    戦闘班037の4人はまだ全員15歳と若いグループを組織している。
    若いと言っても番号が若い順に手だれているので、彼らはやや優秀な部類の所属だった。
  • 4 Lito id:sXgUjGt1

    2011-11-16(水) 17:25:59 [削除依頼]

    「037班、迷夜の森に不審な影があるとの情報が入った。調べてこい」
    「御意」

    今日の任務を遂行するメンバーはリーダーのグレンとヨル、レンの3人だった。
    戦士には連絡用の通信機が渡され、肌身離さず持っていなければならないという規則があったが、もう一人のメンバーには連絡が繋がらなかった。
    彼女は戦士の中でも特に真面目で、そして実力もある。
    集まった3人は彼女の存在が心に引っかかったまま目的地へと向かった。

    時刻は午前11時を少し過ぎた頃だった。
    しかし、日はすでに沈みかかり当たりを茜色に染めている。
    特殊な訓練で一般の人間の10倍ほど早く走れる術を戦士は身につけている。
    沈みゆく夕陽を背景に、3人は足を無言で速めていた。


    「10分間別行動を取る。"不審な影"を見つけたら合図をかけろ」
    グレンは低い声で2人に告げ、右手で宙を切る。
    それを合図に3人は解散した。森に静寂が戻る。

    メンバーの一人である無月ヨルは東へと走った。
    漆黒の髪と漆黒の瞳、整った顔立ちと一種の才能である戦闘力の高さから戦士の中でも一目置かれた存在であった。
    通常彼のように実力のあるものが班のリーダーとなるのだが、彼は無口だった。
    人との関わりを好まず、孤独を好み、常に無愛想で無表情。
    一部の女戦士の間ではその冷たさが魅力となって映り、人気もあった。
  • 5 Lito id:sXgUjGt1

    2011-11-16(水) 17:44:45 [削除依頼]

    ヨルは足を止めた。人の気配が風に乗って感じられる。
    ――無月族。
    それは彼が所属する一族の名前だった。
    古くから彼の一族は"無"を操る能力があると知られている。
    この森のように音が"無"に近い場所では、かすかな音を感じ取るのも彼にとっては造作もなかった。
    わずかに視線を上げる。
    と同時に茂みの隙間から飛び込んだ赤……。
    音もなくヨルは前に進んでその光景を黙って見ていた。

    「馬鹿じゃん」

    腕を真っ赤に染めた少女が、地に転がる人影に向かって吐き捨てた。
    彼女の表情はなく、そのまま感情がない人形のようにナイフを掲げた。
    既に命ない遺体に向かって無情にも手を緩める。
    直後に飛び散った血液が彼女の白い肌を濡らした。

    ――カオル……?

    間違いなくその少女はヨルと同じ班の、今朝がた連絡がつかなかったもう一人のメンバーだった。
    でも、彼女が森中に放つ静かで、でも憎しみと迷いに満ちた感情によって別人ではないかと疑ってしまう。
    ヨルはとっさに通信機のボタンを押した。
    グレンやレンの腰もとでは今合図として通信機が振動しているだろう。
    数分経たないうちに"仲間"が集まり、異常を感じさせるカオルに、感情のままに手を差し伸べる。

    控えめな、でも惹かれるような雰囲気を放つ少女だった。
    チームにとっても、戦士たちの間でも、まるで陽だまりのような存在だった。
    そんな少女を支えて歩くふたりのメンバーを後ろを、ヨルは黙ってついていく。
    カオルの横顔を垣間見た時、あますほどの悲しみを抱えていることを知った。
    それがなんとなく自分と重なったがために……。

    「おい」

    一斉に振り返る3つの顔。
    ほとんど口を開くことのない彼の呼びかけに驚いているようだった。
    怪訝なグレンの顔を無視し、ヨルは言葉を続けた。

    「俺が連れていく」

    そう言い、ヨルは唐突にカオルの腕を掴み先に進んでしまった。
    残されたグレンとレンは顔を見合わせ、呆然と立ち尽くしていた。
    気づけば天には星が輝き、夜は深まっていた。
  • 6 Lito id:sXgUjGt1

    2011-11-16(水) 17:55:35 [削除依頼]

    「無、月くん?」

    森での出来事を見られていることに気づかなかったのだろうか。
    彼女は普段のカオルに戻っていた。
    細い眉を困り気味に寄せ、遠慮がちにヨルの名前を呼んだ。

    ヨルも本当は行くあてなんてなかった。
    なぜ自分がこんな行動を取ったのかもわからなかった。
    とっさに掴んでしまった細い腕も、今更離すこともできず中途半端なまま。
    しかし、このまま街に戻っても好奇の目が集まることは自覚している。
    彼女に迷惑がかかってしまうことも分かっていた。

    無月族が密集しているエリアの近くには、迷夜川と呼ばれる深い川がある。
    ふたりはそこへ向かっていた。
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