Am I wrong?7コメント

1 rain id:kTbJqxs.

2011-11-14(月) 12:35:52 [削除依頼]


どうすれば良かったの?


―Am I wrong?
(私、間違ってる?)
  • 2 rain id:kTbJqxs.

    2011-11-14(月) 12:53:25 [削除依頼]

    それは、夕焼けよりも目に焼きつく色をした少年だった。
    少し荒いワインレッドの髪を、秋の風がかすかに揺らす。
    夕暮れの公園には錆びた遊具と彼の影だけが伸びていた。
    キィキィと音を立てるブランコに彼は座っていた。
    周りの景色を飲み込む"紅"は少年の涙すらも隠した。


    それは、朝焼けのように穏やかな色をした少女だった。
    胸のあたりまで伸びる緩やかなウェーブがかった髪はブロンドに輝いている。
    彼女も別の地で、立ったひとりきりで立ちつくしていた。
    上品な顔立ちとは対照的に意志が強いのか、必死に目から溢れるものを堪えていた。
    幼い少女に感情を抑え込むには、やはり心は弱すぎる。


    それは、真夜中のように深い色をした少年だった。
    漆黒の髪は彼の目を隠してしまうほどに伸びている。
    同じように光輝かない漆黒の瞳を縁取る濃い隈。
    彼もまた孤独に生きてきた。体中に目立つ傷が痛々しかった。
    彼はもう泣くという行為すら忘れてしまっているのか、全てに幻滅しているように冷やかな表情を浮かべていた。


    死ぬこともできずに、生きていくには残酷すぎる世界を、
    彼らは歩むほか道はなかった。


    #00,prologue
  • 3 rain id:kTbJqxs.

    2011-11-14(月) 16:11:38 [削除依頼]

    戦士育成所とはいえ、6歳から12歳までの子供が集まる施設だ。
    普通の学校と同じように、訓練生――学校で言う生徒たちは過ごしている。
    訓練中のひそひそとした楽しそうな話声、休憩時間の賑やかな教室、登下校時の追いかけっこ……。
    荒れているとはいえ、いつの時代も子供だけは希望を捨ててはいなかった。
    何も変わってなどいない。そう、思いたいが時代が生んだ哀しい産物の存在を無視することはできない。


    "人間兵器"


    1人の子供がその運命を背負った。
    まだ戦争がはじまったわけではないが、国は警戒していたのだ。
    万が一他国が攻めてきたら?発展途上の本国では防ぎきれない。
    8年前に生まれたひとりの少年の中に国は"ソレ"を隠した。
    政府は少年の未来を奪ったといっても間違いではない。
    しかし、その人間的に狂った行為をした政府ではなく、兵器となってしまった少年が恐れられるようになったのは残酷すぎる。
    国民は一切の事実を話題として話してはならないと法律が生まれたが、それも時代の中で過去のものとなってしまった。

    全てを背負った幼い少年は、なぜ自分が避けられ嫌われているのかもわからずに。
    愛してくれる人ひとりもいない世界を、殺されるために生きていかねばならなかった。
  • 4 rain id:kTbJqxs.

    2011-11-14(月) 16:24:05 [削除依頼]

    少年は一昨日8歳になった。
    祝ってくれる友達なんていなかった。そもそも、その誕生日すら本当の日なのかもわからなかった。
    5歳のときに、周りの子は一年に一度ひとつ大人になると知り、その日を自分の誕生日として決めただけだ。
    少年はいつものように、廃れた公園の錆びたブランコに腰掛けていた。
    視線を上げればあたたかい家庭へと帰る子供たちが楽しげに笑っていた。
    少年が帰るのは、政府が用意した簡単な寮である。
    まだ8歳の彼にとってはあまるほどに広いその施設のなか、帰りを待っていてくれる人は誰もいなかった。

    夏はとっくに過ぎていたが、少年は薄着だった。
    勝手に国が孤児にしたというのに、彼に支給されるのは真夏か真冬にしか切れない数着の衣服だけ。
    母親も父親も知らない。何も知らされてはいない。
    肌を刺す冷たい風が、少年の涙を乾かしていった。

    だんだんと陽は沈んでいき、少年は腰を上げた。
    薄暗くなっていく帰路を辿り、寮へと戻る。
    荒い壁には「化け物」と赤いスプレーで落書きされている。
    冷たいドアノブをひねり、一歩足を踏み入れると見慣れない光景が目に飛び込んだ。

    粗末なポストに、真っ白い封筒が放られていたのだ。
  • 5 rain id:kTbJqxs.

    2011-11-14(月) 16:33:33 [削除依頼]

    ――宛先を間違えたのかな?

    戸惑いがちに少年は封筒を取り出した。
    裏返せば藍色がかった黒インクで「アビスくん」と記されていた。
    アビスというのは、確かに少年の名前だった。
    育成所の中でも同じ名前の子供は聞いたことがない。
    手紙が届いた喜びというよりは、疑心を胸に抱え少年は軋むベットに座った。

     
     アビスくんへ はじめまして


    子供の時だった。それも、まだ手紙の書き方もよくわかっていない子供の。

     わたしは、ルーナです。あいのくににすんでます。
     おともだちになってください。
     おへんじください。

    あいのくにというのは、アビスが住む琥珀の国の隣の"藍の国"のことだ。
    アビスにとっては"おともだち"という見慣れない言葉のほうが誰から来たかなんてことより重要だった。
    文章の下には同じようにつたない字で住所がかかれている。
    アビスはその手紙を眺めたまましばらく呆然としていた。
     
  • 6 rain id:kTbJqxs.

    2011-11-14(月) 19:30:33 [削除依頼]

    アビスのもとに手紙が来てから3か月の時が過ぎていた。
    季節は深い冬へと移り変わり、育成所の訓練も寒さゆえやや厳しいものとなっていた。
    防寒具など持っていないアビスは真っ赤に凍えた手に息を吹きかけ、育成所から真っ直ぐ寮へと帰宅する。
    公園もうずたかく積もった白い雪によって立ち入り禁止となってしまったのだ。
    ただ、環境は厳しくなった一方でアビスの顔は以前よりも子供らしかった。

    まず帰宅した直後、以前なら気にも留めなかったポストを確認する。
    アビスは躊躇しながらも3か月前の手紙に返事を返していた。
    それからは4、5日おきに手紙の交換が続いている。
    好きなものは何?毎日何してる?毎日何考えている?手紙交換楽しいね。
    他愛もないことばかりだった。それでも今まで孤独だったアビスにとっては大きな支えとなっている。
    手紙を交換していく中で知ったことは、ルーナも独り暮らしをしていること。そして、アビスと同じように育成所に通っているということ。
    あまり、友達が少ないこと……。

    遠い地に友達がいるという事実は、アビスを強くした。
    陰で化け物と言われてももう気にはならなくなった。
    ちゃんと、「アビス」と名を呼んでくれる存在ができたのだから。

    今日もルーナからは手紙が届いていたが、今回は紙袋がついてきた。
    何だろうと逸る気持ち抑えるなんて面倒なことはせずに、アビスは紙袋を破った。
    手袋だった。それも、まるでアビスを知っているかのような……髪と同じワインレッドの。

    ほんとうはね、3かげつまえからあんだんだよ。
    てがみにいつもさむいってかいてたからプレゼントだよ!

    網目も揃っていない。右手首が少し長い。不格好な手袋。
    でも、それをはめてアビスは泣いた。生まれて初めての贈り物に。
    無意識に、姿を見たことのない友達に「ありがとう」と呟いていた。
    もう、寒くなかった。
  • 7 rain id:kTbJqxs.

    2011-11-14(月) 19:44:26 [削除依頼]

    時折贈り物も交えて、たまに2週間くらい届かないときは不安になったりして、気づけば手紙を交換し始めて1年が経過していた。
    9歳になったアビスはいつもと同じようにポストを覗いた。

    ――何で?

    ポストの中には確かにルーナから送られた白い封筒。
    いや、封筒という原形をとどめてはいなかった。
    びりびりに破られ、足元の木の葉に交じっている物もある。

    「何、で……?」

    「アビスくんへ!ひひひっ」

    意地の悪いその声に弾かれたように振り返ると、同級生の5人が笑いながら立っていた。
    時が経つにつれ、子供たちのアビスに対するいじめがはじまっていたのだ。
    彼らにしてみれば「化け物」退治をしているだけ。
    こうして数人でかかれば、たとえ化け物相手でも怖くはない。

    「おたんじょうびおめでとぉ〜」
    大将を気取ったひとりの少年が言うと、周りの子分がアビスに向かって石を投げつける。
    ほとんど当たらなかったが、ひとつだけ最後に飛んできたものはアビスの額に当たり鈍い音が響いた。
    「何がおたんじょうびだよ!そんなのねぇくせに!」
    「何だ、化け物のくせに"かのじょ"いんのかぁ?」
    「んなわけねぇだろ!相手も化け物に決まってら」

    ――ルーナが化け物?

    アビスは自身の事を馬鹿にされるのには慣れていた。
    だが、友達を馬鹿にされたのははじめてだった。
    言いようのない怒りと憎しみが湧きあがり、握る拳が力を増した。
    足元に転がる、アビスの血がついた意志を拾い上げ、高い声で笑う彼らに向かって投げつけた。
    それは綺麗な軌道を描き、ルーナを化け物と呼んだ奴の顔に直撃した。

    あとはもう記憶が残っていない。
    意識がはっきりした頃には、バラバラになった手紙をかき集めて繋げていた。
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